私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

広沢長季の桂雲集

2013-05-25 20:19:16 | Weblog

 広澤長季の歌に
   “年も今つれなくのころあり明の月よりかすむ春は来にけり”
が、ありますが、その歌を例に挙げて、更に、高尚は説明しております。

“たくみにはあれど歌のさまにあらず。春のたつころに、いかでかあり明ののかすむべし。深夜の月のかすむは三月頃なるべし。かようの歌を、あはれげにさやうなりと、たれかは感じおもうべき。”

 と。
 俊成卿や先にあげた頓阿法師の歌と比較してみても一目瞭然であろう。此の二人の歌は万葉の柿本ノ大人や山部ノ大人のこころを思える人であり、あはれなる情を、うつくしい詞で、ものしずかに表現しているのである。巧みな技巧をこらして珍しそうにさも面白そうに詠んでいる歌が今の世には多く見られるのだすが、それは、歌としての何の価値もない、「ただのいたずらごとなり」と、これ又大変いて厳しく批判しております。
 広澤さんには、誠に気の毒ですが、そんな風にしか、彼の歌は、高尚先生はうつらなかったようです。