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感想:『白夜行』

2009年11月13日 20時33分50秒 | 本と雑誌
白夜行 (集英社文庫)白夜行 (集英社文庫)
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2002-05


ドラマは未見。文庫ではあるが850ページを越える大著。
13章構成で、章ごとに視点や時期、場所などが大きく変わる。1973年10月に起きた殺人事件から、1992年までが描かれる。
事件当時小学五年生だった桐原亮司と西本雪穂の二人が主人公。しかし、この二人の視点は極力排され、内面描写もない。セリフでもその心情を描いたものはごくわずかである。

この膨大な原稿量は、二人の周辺の出来事や視点によって二人の姿を浮かび上がらせるためだった。周囲を緻密に緻密に描くことで、描かれていない二人の内面が鮮やかに伝わってくる。計算され尽くした構成、著者特有の押さえ気味の内面描写による距離感、淡々とした文体、巧みに織り交ぜられた事件の数々。東野圭吾の代表作と呼ぶに相応しい完成された作品であることは間違いなく、強烈なインパクトがあったのは確かだ。

しかし、同時に、この作品を読んでいて面白いと感じなかったことも事実である。
ミステリとして重要な「驚き」はストーリー上には感じられない。感情移入できるようなキャラクターも見当たらない。強いて言えば園村友彦だろうが、途中で舞台から消える。
波乱の物語ではあるが、それをどこか遠くから眺めているだけの気になってしまう。そして、それを傍観しているだけにしては850ページは長すぎた。

以下ネタバレ。
最初の事件の秘匿が至上命題であるとするならば、その後の立ち回りは賢い行動と果たして言えるのか。悪の物語ではあるが、それだけに悪を犯す必然性が問われる。二人の内面を浮かび上がられるために事件の数々が起きている印象が残った。二人の内面から浮かぶ上がった事件ではなく。いくつかの事件は確かに必要なものだったろう。また、いくつかの事件は犯行の内容は仄めかされているだけで、実現可能性や犯行のリスクが軽視されている感じがする。小説としての完成度は高いが、ミステリとしては砂上の楼閣めいた印象も残った。(☆☆☆)




これまでに読んだ東野圭吾の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)

放課後』(☆☆)
探偵ガリレオ』(☆☆☆☆☆)
予知夢』(☆☆☆☆)
容疑者Xの献身』(☆☆☆☆☆☆)
卒業 雪月花殺人ゲーム』(☆☆☆)
眠りの森』(☆☆)
どちらかが彼女を殺した』(☆☆☆☆☆☆)
悪意』(☆☆☆)
私が彼を殺した』(☆☆)
嘘をもうひとつだけ』(☆☆)
赤い指』(☆☆☆☆)
秘密』(☆☆)


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