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感想:『戦う司書と雷の愚者』

2009年10月27日 21時25分29秒 | 山形石雄
戦う司書と雷の愚者 (スーパーダッシュ文庫)戦う司書と雷の愚者 (スーパーダッシュ文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2006-01-25


「戦う司書」シリーズ2作目。

残念ながら1作目ほどの面白さはない。この世界独特の《本》の設定よりも、魔法に関する話と言えよう。そうした設定をエピソードに変換する点はこの作品でも巧みだ。ただ本書の主人公の一人である武装司書見習いの少女ノロティが物語を支え切れていない印象が残った。

一応、正義と悪という分類にはなっている。正義側はバントーラ図書館に属する武装司書たち。悪側は神溺教団。1作目2作目とユニークなキャラクターを生み出しているのは悪側である。その内面にまで迫った描写には迫力がある。正義側でも館長代行ハミュッツ=メセタは単なる正義の枠に収まらない魅力的なキャラクターだ。だが、彼女は強すぎ、能力が高すぎて、物語の展開に繋げにくいため、本書ではノロティが正義側の主人公を担っている。
ノロティはライトノベルの主人公らしい甘いキャラクターで、しかも過去や想いがほとんど描かれてないため空っぽに近い存在だ。確かに狂言回しとしてはそれでもいいのだろうが、周りのキャラクターたちとの関係ではとてもバランスが取れているとは言い難い。
ハミュッツ以外の戦う司書たちのキャラクターがもっと肉付けされていかないと厚みは出てこないだろう。ハミュッツ=メセタをメインに据えない限り。メインに据えれば、強さのインフレでも起こさないと物語の展開が容易ではなくなりそうだ。シリーズとしての評価は次巻の展開が大きく左右しそうだ。




これまでに読んだ山形石雄の本の感想。(☆は評価)

戦う司書と恋する爆弾』(☆☆☆☆☆)


感想:『私が彼を殺した』

2009年10月27日 21時20分38秒 | 本と雑誌
私が彼を殺した (講談社文庫)私が彼を殺した (講談社文庫)
価格:¥ 730(税込)
発売日:2002-03


袋とじのヒントのついた文庫版で読んだ。『どちらかが彼女を殺した』に続くリドル・ミステリ。『どちらかが彼女を殺した』はどこに謎を解く鍵があるかは読んでいて分かったが、本書ではヒントを見るまで気付かず仕舞い。容疑者の数が増えただけでなく、難易度も上がったと感じられた。

三人の容疑者の視点で、ストーリーが描かれている。それぞれの動機や事件を巡る経緯は丹念に描かれてはいるが、東野らしい距離感とも相俟って、キャラクターは誰もが非常に遠く感じられた。それは謎解きにとっては悪いことではない。純粋な推理小説とも言える。だが、同時に謎解き以外の面での評価は皆無に等しい。
2度目のリドル・ストーリーということでインパクトには欠ける。謎を解く喜びはヒントを見ながらではあるが得られたが、驚きといったものは感じられなかった。『どちらかが彼女を殺した』はどちらが犯人かに関わらず楽しめたが、本書はそのレベルには達していない。一回解けば終わりの推理パズルの長編版といった趣だ。
多数の著作の中にこのような作品があることは悪くない。ただし、読み手としてはあまり印象に残らない一冊になりそうだ。




これまでに読んだ東野圭吾の本の感想。(☆は評価)

放課後』(☆☆)
探偵ガリレオ』(☆☆☆☆☆)
予知夢』(☆☆☆☆)
容疑者Xの献身』(☆☆☆☆☆☆)
卒業 雪月花殺人ゲーム』(☆☆☆)
眠りの森』(☆☆)
どちらかが彼女を殺した』(☆☆☆☆☆☆)
悪意』(☆☆☆)