![]() | 戦う司書と雷の愚者 (スーパーダッシュ文庫) 価格:¥ 580(税込) 発売日:2006-01-25 |
「戦う司書」シリーズ2作目。
残念ながら1作目ほどの面白さはない。この世界独特の《本》の設定よりも、魔法に関する話と言えよう。そうした設定をエピソードに変換する点はこの作品でも巧みだ。ただ本書の主人公の一人である武装司書見習いの少女ノロティが物語を支え切れていない印象が残った。
一応、正義と悪という分類にはなっている。正義側はバントーラ図書館に属する武装司書たち。悪側は神溺教団。1作目2作目とユニークなキャラクターを生み出しているのは悪側である。その内面にまで迫った描写には迫力がある。正義側でも館長代行ハミュッツ=メセタは単なる正義の枠に収まらない魅力的なキャラクターだ。だが、彼女は強すぎ、能力が高すぎて、物語の展開に繋げにくいため、本書ではノロティが正義側の主人公を担っている。
ノロティはライトノベルの主人公らしい甘いキャラクターで、しかも過去や想いがほとんど描かれてないため空っぽに近い存在だ。確かに狂言回しとしてはそれでもいいのだろうが、周りのキャラクターたちとの関係ではとてもバランスが取れているとは言い難い。
ハミュッツ以外の戦う司書たちのキャラクターがもっと肉付けされていかないと厚みは出てこないだろう。ハミュッツ=メセタをメインに据えない限り。メインに据えれば、強さのインフレでも起こさないと物語の展開が容易ではなくなりそうだ。シリーズとしての評価は次巻の展開が大きく左右しそうだ。
これまでに読んだ山形石雄の本の感想。(☆は評価)
『戦う司書と恋する爆弾』(☆☆☆☆☆)