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感想:『戦う司書と黒蟻の迷宮』

2009年10月30日 19時01分28秒 | 山形石雄
戦う司書と黒蟻の迷宮 (集英社スーパーダッシュ文庫)戦う司書と黒蟻の迷宮 (集英社スーパーダッシュ文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2006-04


シリーズ3作目。

ハミュッツ=メセタに匹敵する戦闘力を持つという武装司書モッカニアの反乱を描く。時に、どちらが正義でどちらが悪かその明確さが消失するストーリー。
モッカニアとウインケニー。この両者の内面描写と絡み合う物語は非常に素晴らしいものだった。

一方、武装司書の組織性の無さや、ハミュッツとモッカニアを除く武装司書たちの行動には精彩が無く、物足りなさを感じた。また、ミレポックがモッカニアの反逆の理由に母の存在を挙げるところの唐突さは気になった。
非常に優れた部分がある一方で、お粗末な面もあり、もう少し完成度が高ければ傑作足りえたものをと思ってしまう。エンターテイメントとしては一ヶ所でも群を抜いて秀でていれば価値はあるとはいえ、それだけで済ますには惜しい作品だ。




これまでに読んだ山形石雄の本の感想。(☆は評価)

戦う司書と恋する爆弾』(☆☆☆☆☆)
戦う司書と雷の愚者』(☆☆)


感想:『嘘をもうひとつだけ』

2009年10月30日 19時00分08秒 | 本と雑誌
嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)
価格:¥ 520(税込)
発売日:2003-02


加賀恭一郎シリーズとしては初の短編集。

表題作「嘘をもうひとつだけ」は『眠りの森』に続くバレエを舞台とした作品。動機がユニークだったが、ミステリとしての冴えはそれほど感じない。

「冷たい灼熱」は心理面に無理を感じた作品。殺す動機は理解できるものの、そこから隠蔽に出るきっかけが必要だろう。

「第二の希望」は動機に難がある。トリックにしてもかなり強引で、全体としてもう一つという印象だった。

「狂った計算」は少ない登場人物の中で凝ったストーリーが組み上げられている。ミステリとしては収録作の中で随一だろう。加賀の予測を裏切った展開も見事。

「友の助言」は加賀の個性が溢れた作品。シリーズと呼ばれるほど数多くの作品に登場する加賀ではあるが、内面を描いたり、個性を強く印象付けるエピソードを提示したりすることは稀だ。友人に助言をする加賀の姿はファンサービスといったところか。

探偵ガリレオシリーズはもともと連作短編であり、著者の技量が余すところなく振るわれていて楽しめる。そこには物理学者湯川というユニークな存在がいて、理学や工学的なトリックを暴きだしている。
それに比べて本書は、加賀である必然性に乏しい。短編なので登場人物は限られ、犯人を捜す楽しみはあまりない。独創性もさほど感じられず、ミステリとしての楽しみもそれほど得られない。短編の面白さを引き出すにはもう少し何かが欲しかった。




これまでに読んだ東野圭吾の本の感想。(☆は評価)

放課後』(☆☆)
探偵ガリレオ』(☆☆☆☆☆)
予知夢』(☆☆☆☆)
容疑者Xの献身』(☆☆☆☆☆☆)
卒業 雪月花殺人ゲーム』(☆☆☆)
眠りの森』(☆☆)
どちらかが彼女を殺した』(☆☆☆☆☆☆)
悪意』(☆☆☆)
私が彼を殺した』(☆☆)