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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

「環境基本法」成立から14年①

2007-12-06 16:10:43 | 政治/行政/地方分権


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一昨日、12月4日のブログで、15年前の地球サミットでの日本の振舞いの頼りなさの一端を紹介しました。翌年の1993年11月19日に「環境基本法」が成立しました。そこで、今日から数回にわたって、私もその成立にかかわった「環境基本法」(1993年11月19日成立)に関連した当時の私の考えをまとめておこうと思います。14年前に私が想定していたような状況が、いよいよ現実の問題となって日本で観察され始めているからです。

環境基本法はその第3条、第4条および第5条の3条を合わせて「環境の保全についての基本理念」と定めています。

    第三条 環境の恵沢の享受と継承等
    第四条 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等
    第五条 国際的な強調による地球環境保全の積極的推進

しかし、環境基本法はその基本理念を具現化するにはあまりに不十分と言わざるをえませんし、「政府素案」についても同様です。そこには環境保全の基本理念と環境問題に対する基本認識の大きな乖離があるからです。環境基本法が定める環境基本計画には「社会の構成員であるすべての主体が共通の認識の下に、それぞれ協力して環境の保全に取り組んでいくため、21世紀半ばを展望して、環境基本法の理念を受けた環境政策の基本的考え方と長期的な目標を示すとともに、21世紀初頭までの施策の方向を明らかにするものである」と書いてありますから、言葉を代えて言えば、「現在の大量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される『20世紀型の産業経済社会』を『人と環境にやさしい持続可能な社会』へ転換していくために、21世紀初頭までの施策の方向を明らかにするものだ」と理解してもよいと思います。 

1994年12月9日、中央環境審議会は地球環境保全に対応した今後の環境行政の柱となる「環境基本計画について」を村山首相に答申しました。このニュースを報じたマスコミの論調は「数値目標は盛らず、総論の先の目標示さずあいまいな印象(毎日)」、「環境保全、具体性乏しく(朝日)」、「焦点の数値目標先送り、既存策寄せ集めの感(日経)」と題する見出しを掲げ、失望感をにじませています。

ここで4月4日のブログ「今日の決断が将来を原則的に決める」を思い出してください。そして、1月11日から始めた市民連続講座「緑の福祉国家1~62」 に示した「持続可能な社会の実現をめざすスウェーデンの行動計画」をご覧ください。スウェーデンの行動計画は国民の総意に基づくものですし、日本のマスコミが求めている数値目標も掲げられています。日本とスウェーデンの“当時の対応の相違”は私が14年前に想定していたように、21世紀初頭つまり、現在、決定的な相違となって現れてきているのです

11月23日のブログで紹介した国連気候変動枠組条約締約国会議事務局が公表した「1990年/2005年」の温室効果ガス排出結果は、その具体的な例でしょう。

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「所信表明演説」と「施政方針演説」

2007-10-03 11:20:40 | 政治/行政/地方分権
  

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このブログでは、これまで小泉前首相の所信表明演説と施政方針演説と、安倍前首相の施政方針演説と所信表明演説における それぞれの首相の「環境問題に対する認識」をさぐってきました。そして、昨日は福田新首相所信表明演説をとりあげました。この2つの演説には明確な定義があります。

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2007年10月1日の福田新首相の所信表明演説 なんと「持続可能社会」が4回登場

日本の国会で内閣総理大臣(首相)が本会議場で行う演説には「所信表明演説」「施政方針演説」があります。フリー百科事典「ウィキペディア」によれば、両者の相違は次のように定義されています。

X X X X X 
所信表明演説は、政府の長(内閣総理大臣つまり首相)が自分の考え(所信)を述べる演説で、以下の場合に衆議院と参議院の本会議で行われる。

   ●臨時国会の冒頭
   ●特別国会で内閣総理大臣が指名・任命された後
   ●国会の会期途中で内閣総理大臣が交代した場合

施政方針演説は、政府の長(内閣総理大臣つまり首相)が年初における政府の方針を述べる演説で、通常国会(年に1回、予算編成のため必ず召集されることが憲法上義務づけられている国会のこと。憲法では「常会」という。1月末に召集、150日間の会期で6月まで行われるが、1回のみ両議院の議決で会期延長ができる)での冒頭で衆議院と参議院の本会議場で行われる。
X X X X X

つまり、通常国会の冒頭において、内閣総理大臣が内閣全体での方針や重点課題を説明する演説を「施政方針演説」と呼ぶのに対して、その他の機会に、内閣総理大臣の所信(個人としての自分の考え)として、国政についての方針や重点課題を説明する演説を「所信表明演説」とよぶのです。

余 談

この10年間の日本の首相の就任期間を調べてみました。次のとおりでした。

橋本龍太郎(1996.11.01~1998.07.30)通算在職日数: 932日
小渕恵造  (1998.07.30~2000.04.05)     616日
森 喜朗  (2000.04.05~2001.04.26)        387日
小泉純一郎(2001.04.26~2006.09.26)       1980日
安倍晋三  (2006.09.26~2007.09.26)        366日
福田康夫  (2007.09.26~          ) 

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2007年10月1日の福田新首相の所信表明演説         なんと「持続可能社会」が4回も登場

2007-10-02 23:59:50 | 政治/行政/地方分権
 

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私は9月17日のブログで、自民党総裁選に触れ、次のように書きました。

X X X X X 
当面の私の関心は、自民党総裁になられた方が国会の首相指名投票を経て首相となった後、国会での「所信表明演説」で何を主張するかです。いつものように、環境問題への基本認識、持続可能な社会に対する認識です。それは、私のブログの基本テーマが「環境」「経済」「福祉(問題)」、不安の根っこは同じだ!、「将来不安こそ」、政治の力で解消すべき最大の対象だ、だからですし、また、私の本のテーマが「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会 安心と安全の国づくりとは何か」だからです。
× × × × ×

さて、待望の福田新首相の「所信表明演説」が昨日午後、国会で行われました。いつものように、昨日の朝日新聞の夕刊がその全文を掲載しています。
環境問題への基本認識、持続可能な社会に対する認識はどうなっていたでしょうか。

そこで、上の図の赤枠部分を拡大します。

驚いたことに、上の図のように「これからの環境を考えた社会への転換」と題した部分で「持続可能社会」という21世紀のキーワードが4回も登場します。この言葉だけを取り上げれば、小泉前首相や安倍前首相の所信表明演説とは明らかに違います。もっとも、福田首相の「持続可能社会」は私の「持続可能社会」とは似て非なる概念かもしれませんけど・・・・・

素直に読めば、「地球環境問題への取り組みは待ったなしです。従来の、大量生産、大量消費を良しとする社会から決別し、つくったものを世代を超えて長持ちさせて大事に扱う『持続可能社会』へと舵を切り替えていかなければなりません。」と書いてあるのですから、「現行の大量生産、大量消費の社会」から「持続可能社会」へ転換するという国際社会がめざす方向に向かうと読めます。 

けれども、福田首相の認識では、自身がおっしゃる「持続可能社会」行政が進めてきた「循環型社会」がどのような関係にあるのかははっきりしません。

1992年のリオの地球サミットで世界が合意した「持続可能な社会」(Sustainable Society)の概念福田首相の「持続可能社会」の概念の内容が同じものかどうか、この点にも疑問が残ります。

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それは、これまで日本の21世紀について多くの発言をしてきた評論家や識者やエコノミストの「持続可能な社会」という言葉の使い方に次のような例があるからです。

まず、この記事で目を引くのが中央の見出し「持続可能な社会実現を」です。ここには、「持続可能な社会」という言葉を使いながら、環境問題に対する意識(認識)がスッポリ抜け落ちていることがわかります。田中直樹さんのような要職にある社会的影響力の大きい方がこのような言葉の使い方をするのは大変問題だと思います。この記事にはどこにも、「環境」という言葉が出てこなければ、環境を意識したこと箇所もまったくありません。

つまり、「持続可能な社会」という言葉は使っていますが、田中さんの「持続可能な社会」は田中さん独自の、あるいは日本の主流のエコノミストの概念で、国際社会で使われている「持続可能な社会」とは全く異質のものです。

もともと「持続可能な社会」という概念は、このブログで紹介してきたように、1987年に国連の環境と開発に関する世界委員会が提唱した「ブルントラント報告」にその源があるからです。

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今日9月17日は「敬老の日」:さらに2つの過去最高を更新、   そして 自民党総裁選:福田vs麻生

2007-09-17 22:44:41 | 政治/行政/地方分権
 
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今日は敬老の日。この日が近くになって内閣府の世論調査や政府が発表した関連統計がまたまた過去最高を更新したそうです。まず、次の統計から行きましょう。

これは内閣府が発表した生活不安に関する「国民生活に関する世論調査」の結果です。過去最高であった前回をやや上回り、今回、1981年の調査開始以来過去最高となったそうです。


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次は総務省からの統計結果です。65歳以上の高齢者の人口が2744万人で、総人口の21.5%に達したそうです。


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このような社会情勢を背景に、政治の世界では安倍首相の辞任発表に伴い、自民党の総裁選挙を巡る動きが活発になってきました。今日の朝日新聞は最近行った世論調査の結果を発表しています。



次の首相に一番力を入れて取り組んでほしい政策は、経済成長や競争力を重視する改革路線政策を次の首相に受け継いでほしい政策は、という問いに対しての国民の回答も従来通りであることが示唆されています。


そこで、自民党総裁選挙を巡る福田康夫さんと麻生太郎さんの訴えが次のようにまとめられている。

福田さんの「希望と安心のくにづくり、若い人に希望を、お年寄りに安心を」に対して、麻生さんは「日本の底力、活力と安心への挑戦」だそうです。

お二人に共通なのは「経済成長」テレビで、福田さんが「持続可能な社会」とおっしゃったので、おや?と思いましたが、上の記事にもストック型(持続可能な)社会とありますし、環境立国政策の推進という文字も見えます。一方、麻生さんはこの記事でみる限り、環境問題はゼロ。


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当面の私の関心は、自民党総裁になられた方が国会の首相指名投票を経て首相となった後、国会での「所信表明演説」で何を主張するかです。いつものように、環境問題への基本認識、持続可能な社会に対する認識です。それは、私のブログの基本テーマが「環境」「経済」「福祉(問題)」、不安の根っこは同じだ!、「将来不安こそ」、政治の力で解消すべき最大の対象だ、だからですし、また、私の本のテーマが「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会 安心と安全の国づくりとは何か」だからです。

ここまで日本の事態の進展がはっきりしてくれば、私の次の主張をご理解いただけるでしょう。



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テロ特措法

2007-09-16 22:59:24 | 政治/行政/地方分権
 

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「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」というのが通称「テロ特措法」の正式名称なのだそうです。


今日の朝日新聞の朝刊が、「テロ特措法」の正式名称がなぜこんなにも長いのかという解説をしています。しばらくこの記事をご覧ください。


なんで、今日、このような記事を取り上げたかといいますと、いかにも日本的、しかもその極に極まれりと思ったからです。

9月3日のブログ 「なぜ先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑫ プライバシーの保護」で、日本の法律の名前が長いのはなぜか、「個人情報に関する法律」を例に、私の解釈を書いたからです。1973に成立したスウェーデンの法律が「Data Act」、15年遅れて1988年にできた日本の法律は「行政機関の保有する電子計算機にかかわる個人情報の保護に関する法律」でした。日本の法律の名前がこのように長いということはこの法律の適応範囲が狭められていると私は解釈しました。


もう一度、法律の重要性を繰り返しておきます。    

法治国家では法律が社会のシステムを構成する重要な要素の一つであり、国の機能、自治体の機能や国民が法に縛られることを考えますと、法のたて方、法の制定時期、法の内容などが重要です。日本は法治国家ではありますが、「治療志向の国」であるために、法律の制定が遅いこと、法の対象が狭いことが特徴と言えるでしょう。 

そして、もうひとつ、法律をつくることによって、新たに人間の活動が規定されること、その結果、資源とエネルギーの消費量が増加すること。たとえ 「社会の安心と安全を大義名分とする正義の戦争」であっても、私の環境論では、現代のテロや戦争が「環境への最大の人為的負荷であること」も・・・・・

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2001年5月7日の小泉首相の所信表明演説(米100表の精神)、9月27日に2回目の所信表明演説

2007-09-13 22:00:40 | 政治/行政/地方分権


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今日は昨日よりも少し時間を遡って、小泉さんが首相に就任し、初めて国会で行った「所信表明演説」を検証してみましょう。2001年5月7日の朝日新聞夕刊がこの日の午後行われた所信表明演説の全文を掲載しています。


この所信表明演説は次のように構成されています。

●新世紀維新を目指して
●日本経済の再生を目指して
●経済・財政の構造改革
●行政の構造改革
●社会の構造改革
●21世紀の外交・安全保障
●むすび



次の図は上の図の赤枠の部分「新世紀維新を目指して」の冒頭の部分です。


次の図は演説の赤網をかけた部分、すなわち、「環境に関する部分」です。



そして、次は「むすび」の部分です。


この演説を読む限りは、小泉内閣は「20世紀型社会の改善内閣」の域を出ていません。21世紀の経済活動を大きく左右する要因である「資源」「エネルギー」については、「資源」という言葉は「新世紀維新を目指して」の項で「資源に恵まれないこの狭い国土で」という表現で一度登場するだけですし「エネルギー」という言葉は一度も登場しません。 


20世紀後半に明らかになった「少子・高齢化問題」「環境問題」は、20世紀の国づくりではまったく想定されていませんでした。しかし、21世紀の国づくりでは決して避けて通ることができない大問題です。このことは、「経済規模の拡大」を前提とする日本の21世紀前半の国づくりに大きな疑問を投げかけることになります。 「資源・エネルギー・環境問題」が、「これから50年後の社会のあるべき姿はいまの社会をそのまま延長・拡大した方向にはあり得ない」ことをはっきり示しているからです。 

ここで述べられている「環境問題」は「公害」の域を出ません。このことは、次の記事が報じている環境省の見解からも明らかでしょう。


この記事には、「担当の環境省内にさえ想像以上で正直驚いている。環境問題をこれだけの重要テーマにあげたのは『70年代の公害国会』以来ではないか(幹部)との声が上がった」と書かれています。


当時、私はこの記事を読んで、たいへん驚ろき、大ショックを受けると同時に、やはり、 「日本の政治家の環境問題に対する意識」への私の理解が誤ってはいなかったという印象を持ちました。この点では、日本とスウェーデン政治家の間に30年の落差がある(はっきり言えば、日本の政治家は30年遅れている)といっても過言ではないと思います。


余 談

小泉前首相が首相就任後初めて国会で行った「所信表明演説」のむすびの項に「米100表の精神」が語られています。私は、1週間前の9月6日夕方、長岡商工会議所で行われた私の講演会(主催:国立長岡技術科学大学)の機会に、長岡市内を散策しました。この日は台風9号が関東地方を直撃し、被害をもたらしましたが、なぜか新潟県は台風の影響を受けませんでした。

会場付近で撮った写真を2枚掲載します。「米100表の碑」と「米100表の幟」です。長岡駅西側大手通りに「米100表の幟」「常在戦場の幟」が交互にはためいていました。一昨日テレビを見ておりましたら、安倍首相の突然の辞任に伴う対応でなんと民主党の小沢党首が「常在戦場」という言葉を使っておられました。


 



さらに、2001年9月27日に小泉首相は2回目の所信表明演説を行いました。9月27日の毎日新聞(夕刊)に演説の全文が掲載されています。



そして、環境問題に関する部分(上の図の赤網をかけた部分)を拡大します。


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2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説

2007-09-12 11:42:11 | 政治/行政/地方分権


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私は昨日のブログで、 「持続的な経済成長」という表現は、2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」で用いられた表現そのままです、と書きました。今日は久しぶりに「日本あの日・あの頃」のカテゴリーで、2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」を振り返ってみましょう。

この施政方針の中で示された「持続的な経済成長」という表現は一昨日の安倍首相の所信表明演説に引き継がれただけでなく、私の本「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会 安心と安全の国づくりとは何か」(朝日選書 2006年2月)の論旨の展開の基礎の一つとなっているからです。

次の図をご覧ください。2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」の全文です。


「はじめに」のところで、小泉首相は日本のめざす方向を次のように述べています。「我が国が持続的な経済成長を取り戻すためには」 「改革なくして成長なし」 という表現に象徴されるように、小泉首相のビジョン(政治目標)は 「持続的な経済成長」 (つまり、20世紀の経済社会の延長上にある「経済の持続的拡大」)です。その意味で、21世紀初頭に発足した小泉・連立内閣は 「行き詰まった20世紀経済を再生するための内閣」 といえるでしょう。  


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2001年4月の小泉・連立内閣発足以来、政府の「経済財政白書」のサブタイトルが、2001年の「改革なくして成長なし」に始まって、2005年が「改革なくして成長なしⅤ」であったことからも、この内閣が従来の経済拡大路線を着実に踏襲していることは明らかです。
 
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次の図は上の図の環境に関する部分(緑の網をかけた部分) 「美しい環境に囲まれ、快適に過ごせる社会」を拡大したものです。


私の本のもう一つのテーマであり、さらに大きな地球的規模の問題である「持続可能な開発」という、21世紀社会の最重要キー・ワードについてはたった一言、「9月に開催される『持続可能な開発に関する世界首脳会議』においては、環境保護と開発を共に達成すべきことを訴えてまいります」と述べたにすぎません。

ちなみに、持続可能な開発に関する世界首脳会議(環境・開発サミット、WSSD)は2002年8月26日から9月4日まで南アフリカのヨハネスブルクで開かれた国連主催の環境サミットで、1992年の「国連環境開発会議〈UNCED〉=地球サミット」後10年を期して開催されました。

新聞の一面をほぼ埋め尽くす1万2000字を超える施政方針演説は9本の柱からなっています。

はじめに
●経済財政運営の基本姿勢と金融安定化への取り組み
●構造改革断行の基本姿勢
●努力が報われる再挑戦できる社会
●民間と地方の知恵が活力と豊かさを生み出す社会
●人をいたわり安全で安心に暮らせる社会
●美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会
●子どもたちの夢と希望をはぐくむ社会
●安全保障と危機管理の基本姿勢
●外交の基本姿勢
むすび

しかし、小泉首相のこの所信表明演説の要旨は、「20世紀の社会が行き詰まっているので、それを改善した20世紀型の経済成長が今まで通りできる社会をつくろう」ということではないのでしょうか。

私がそう考えた理由は、環境問題に触れてはいるものの、21世紀の国づくりの大前提である「環境問題を十分踏まえた21世前半社会への展望」が見えないからです。このことは21世紀のキーワードである「持続可能性あるいは持続性」にかかわる言葉の使い方から明らかでしょう。この施政方針演説には「持続可能性あるいは持続性」にかかわる言葉が次のような表現で6か所登場します。

1. 持続的な経済成長(はじめに)
2. 効率的で持続的な財政への転換(経済財政の運営の基本姿勢と金融安定化への取り組み)
3. 特に医療制度は、厳しい医療保険財政の下、持続的な制度(人をいたわり安全で安心に暮らせる社会)
4. 「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会)
5. 年間500万台に上る使用済み自動車の持続的なリサイクルを行うための仕組み(美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会)
6. 両国の持続可能な経済成長を図るため「成長のための日米経済パートナーシップ」(外交の基本姿勢)

このように、地球温暖化に象徴される21世紀最大の問題である「環境問題」に対して、日本のリーダーの関心が極めて薄いということは、次の世論調査の結果が示すように、日本の市民の「環境問題への関心」が薄いことによるのかもしれません。




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2007年9月10日の安倍首相の所信表明演説 ハイリゲンダム 美しい星50

2007-09-11 22:00:26 | 政治/行政/地方分権
 

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安倍首相は昨日(9月10日)午後、衆参両院の本会議で所信表明演説を行いました。昨日の朝日新聞夕刊に、安倍首相の所信表明演説が掲載されていました。


「はじめに」の項に、安倍首相が強く主張する「戦後レジームからの脱却」について述べられた部分(上の図の赤枠部分)があります。その部分を拡大します。



所信表明演説の「持続的な経済成長」の赤枠部分と「環境で世界主導」の赤枠部分を拡大します。





持続的な経済成長」という表現は、2002年2月4日の小泉前首相の施政方針演説で用いられた表現そのままです。およそ4900字の今回の安倍首相の演説には、21世紀のキーワードである「持続可能な開発という言葉はまったくなく、「持続的」という言葉が「持続的経済成長」という表現で登場するにすぎません。つまり、安倍首相の21世紀論は「行き詰った戦後レジームを改善することによって、20世紀型の持続的な経済成長を再現する」ということに尽きるのではないでしょうか。


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次の図は安倍首相の就任直後(2006年9月)の所信表明演説と今回の所信表明演説の変化を示した図です。



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進化してきた福祉国家⑥  官庁の地方分散と福祉

2007-08-28 08:08:45 | 政治/行政/地方分権

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今朝の朝日新聞の一面トップの記事はもちろん、昨日行われた安倍改造内閣発足に関するものです。 「地方を重視」という見出しがあり、増田寛也・前岩手県知事を総務相に登用することで、「地方軽視」と指摘された改革路線の修正をにじませた、と書かれています。そして、総務担当大臣の主な任務として「地方分権改革 道州制地方・都市格差是正 郵政民営化」が掲げられています。 

今日は「進化してきた福祉国家⑥」で、官庁の地方分散と福祉を取り上げます。日本の「これから(明日)」を考えるときのヒントが含まれているかもしれません。とは言っても、今から数10年前の話、1970年代初めに遡りますけれど・・・・・ちなみに前回の「進化してきた福祉国家⑤ スウェーデン型社会民主主義」 は8月17日の記事でした。

スウェーデンでは、国の官庁を首都ストックホルムから地方に分散する試みに、40年近く前から取り組み、地方の活性化に効果を上げてきました。国会が官庁の移転を最初に決めたのが1971年のことだったそうです。官庁のうち移転の対象になったのは国の政策立案に当たる省を除いた、実務を担当する行政機関でした。90年頃までに50近い政府機関や軍事施設が移転し、およそ10万人がストックホルムから地方に移り、同時に鉄道や道路、空港、通信設備、大学、公共サービスへの投資も行われました。

スウェーデンのこの官庁の分散化で注目しておきたいのはこの移転計画が「平等の生活条件、機会均等」などの福祉政策に裏打ちされた分散化であったという点です。当時、政府は民間にも分散を求めましたが、企業は、生産施設は移しても本社機能を移そうとはしませんでした。今後は民間の分散が課題だそうです。
 
日本でも、東京一極集中化を是正するために、新たな経済圏や東京遷都などがこれまでマスコミで何回となく論ぜられましたが、このような議論が煮詰まり行動の時が近づくにつれて、おそらく、問題になるのは日本の労働力に流動性がないことだろう思います。

「ハイテクを駆使した立派な器はできたけれども、その中に入るべき肝心の人が集まらなかった」などということが起こりかねません。日本は技術への信仰が強すぎるあまり、工学的志向が強すぎて、しばしば、私たち人間の心理的な側面をおろそかにしがちだからです。

その意味で、スウェーデンの福祉制度が労働力の流動化にプラスの作用をしている点を考えてみる必要があると思います。日本の企業が“人手不足”を理由に、“人集め”という目先の目的で競って社宅の改善をはじめとする福利・厚生施設の整備を進めますと、ますます福利・厚生をはじめとした様々な企業間格差が増大し、大企業への労働力が集中し、労働市場の労働力の流動性は失われることになるでしょう。

労働力の流動性が失われれば、大都市への一極集中を解消するのはほとんど不可能でしょう。スウェーデンは「機会均等」とか「平等」ということを福祉国家の基本理念の一つとして掲げていましたので、企業は自社の社員の福利・厚生施設を充実する必要はありませんでした。この原則は大企業であろうと中小企業であろうと変わりません。

一般論としては、スウェーデンでは企業の従業員に対する「福利・厚生」の面での企業間の格差はほとんど無いということです。その代わり、国は企業の大小に応じて税金を取り、従業員の属する企業の大小や業種に関係なく、その税金を福利・厚生の面から国民に均等に分配するという形を取ることになっています

つまり、健康障害を起こした場合、あるいはその他の福祉サービスの必要な場合に、どのような職業に就いていようと、どのような企業に属していようと、あるいはどこに住んでいようと、大都市に居住していたときと同程度の福祉(社会サービス)が国から得られるということが国の制度で原則的に保証されていることがわかれば、国民はいっそう自由になれるでしょう。

この種の「安心感」からスウェーデンの労働力の流動性は先進工業国の中でも大きかったといってよいでしょう。ここにも、「福祉国家」スウェーデンを支えている基本理念である「機会均等」や「平等」という考えが具体的な形で生かされています。



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今度は、過去最低を更新!

2007-08-27 06:35:49 | 政治/行政/地方分権


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今朝の朝日新聞の2面の「時時刻刻 きょうがわかる」には「米に並ぶ排出国 温暖化対策 中国そろり」「石炭消費量5年で1.7倍」「CO2の原因認める」「途上国を全面 排出権売り手に」「成長持続へ省エネ指令」「非効率工場次々閉鎖」という見出しが躍っています。そして、この大きな記事に添えられたデータをみれば、この記事は当然のこと、想定されたことは言え、かなりショックな記事です。


でも、今日の私がもっと大きなショックを受けたのは「埼玉知事選」と「盛岡市長選」の結果を伝える一面の比較的小さな次の記事です。


両候補とも再選されましたが、埼玉知事選の投票率はなんと27.67%、盛岡市長選は30.94%で前回の投票率を大きく下回っています。

比較のために、2006年のスウェーデンの議員選挙の投票率を紹介します。スウェーデンにはつぎの3つのレベルの議員選挙があります。

① 国会議員の選挙(Riksdag)
② 地方議員の選挙(County Council)
③ 基礎自治体議員の選挙(Municipality Council)

スウェーデン統計局のデータを参照します。それぞれの図の投票率(%)の後のかっこの中の数値は選挙区の数を示しています。たとえば、図の中で80.2・84.6(5)とあるのは80.2~84.6%であった選挙区が5つあったということです。


数字が小さく、読み取りにくいので、リライトします。

国会議員選挙投票率(2006年) 地方議員選挙投票率(2006年) 
83.2・84.6%(選挙区数5)   80.3・81.1%(選挙区数5)
81.8・83.2%(選挙区数13)  79.4・80.2%(選挙区数4)
80.4・81.8%(選挙区数5)   78.5・79・4%(選挙区数4)
79.0・80・4%(選挙区数5)   77.6・78.5%(選挙区数4)
77.6・79.0%(選挙区数1)   76.7・77.6%(選挙区数3)

基礎自治体(市町村)議員選挙投票率(2006年)
83.5・89・4%(選挙区数27)
77.5・83.5%(選挙区数186)
71.5・77.5%(選挙区数71)
65.5・71.5%(選挙区数5)
59.5-65.5%(選挙区数1)

スウェーデンの議員選挙投票率をみると、国会議員選挙投票率も地表議員選挙投票率も日本に比べて非常に高いことがわかります。


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スウェーデンの国会議員の投票率の推移


昨日のブログでは、過去最高を更新したことを取り上げましたが、今日は過去最低を更新です。好ましくないと思われることが過去最高を更新し、好ましいと思われることが過去最低を更新する「日本の今」はどうなっているのでしょう。

「地方分権」こそが、環境問題やその他の問題を解決する21世紀の有効手段だと考え、スウェーデンの状況を先に紹介しましたが、日本の地方分権はどうなっていくのでしょうか。

ますます日本の現状に不安を覚えます。「国民の不安解消」こそ、国や地方を問わず、政治の対象であるべきというのが私のブログのテーマなのですが・・・・・



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なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑩   地方分権:国と地方の役割分担

2007-08-27 04:46:30 | 政治/行政/地方分権

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スウェーデンは少ない人口にもかかわらず、世界で最も非中央集権的な基礎自治体(288のコミューン=市町村)があり、日常生活に密着した各種の責任を担っています。スウェーデンの地方分権の理念は、「行政の決定は、できるかぎりその影響を受ける人々の近くでなされるべきである」という点にあります。

この理念を支えるために、地方自治体は1974年から「課税権」と「税率の決定」79年から「起債権」を持ち、93年からは、国からの補助金は一括して地方自治体の裁量で自由に使える「一括交付金」に変更されました。
 
詳しいことは難しすぎて私にはよくわかりませんが、日本でも先の小泉政権下で「地方にできることは、地方に」という理念(?)のもとに進められた「三位一体の改革」(「国から地方への補助金・負担金を廃止・縮減」「地方への税源移譲」「地方交付税の見直し」を同時に行う改革)に相当するような行政改革が30年以上前に一段落し、およそ15年前に追加措置が取られたということでしょう。


スウェーデンには環境問題のみならず、ほかの多くの問題の解決に、地方の自主的決定、独立が必要だとする確固たる認識があります。



このような認識に基づいて、スウェーデンでは、国、地方の役割分担がはっきりしています。外交、防衛、経済、労働市場の政策など、国家レベルでの対応を求められる分野のみが国の担当分野です。
 
一方、社会福祉サービス、義務教育、保育、環境、文化、住宅政策など市民の身のまわりに直接関係する諸課題は、基本政策の策定を除いて、ほとんどすべて地方自治体(コミューンと呼ばれる)地方自治体の権限で行なわれます。これは地方自治体の予算の支出項目を見れば明らかです。
 
医療については、その技術的水準を保つことが地方自治体(市町村)の規模ではむずかしいと考えられているので、全国20のレン(日本で言えば「県」)が対応しています。
 
地方自治体への権限移譲は環境問題を含む多くの分野でつぎつぎに導入されてきましたが、これはスウェーデンの伝統的な「個人の民主的な権利」を確保するためのものです。
 
福祉問題の専門家、山井和則さん(民主党・衆議院議員)と斎藤弥生さんによる『スウェーデン発 高齢社会と地方分権――福祉の主役は市町村』(ミネルヴァ書房、1994年)に、スウェーデンの中央政府と地方自治体との関係をたいへんわかりやすく説明した、 「ダイヤモンドモデル」「砂時計モデル」があります。

ダイヤモンドモデルは、広域行政(州レベル)が最も大きな権限を持っています。ヨーロッパでは、スイスやドイツがこの型に当たります。スウェーデンは、砂時計モデルに最も近い国です。

スウェーデンの環境政策が変化しはじめたのは、80年代に入ってからのことです。それ以前は、環境政策の主な目標は、地域と地方に影響を及ぼす主な固定発生源からの排出をモニタリングし、汚染物質の排出量を低減することが中心でした。それであっても当時としては先進的で、いくつかのスウェーデンらしい方法はあったものの、具体的な対応策では日本の環境対策とそれほど大きな違いはありませんでした。

80年代後半になると、環境政策は交通、農業、製品、原料などの日常の経済活動から拡散された排出に対応するようにシフトしてきました。
 
90年代に入ると 「持続可能な開発」、さらには「緑の福祉国家の実現」をめざして、問題が起こる前に発生源で問題を解決する手段(予防原則)を見出すことにいっそうの力点を置く政策がとられるようになってきました。20世紀の国づくりでは想定外であった「環境問題への対応」が、21世紀の国づくりの大前提としてはっきり意識されるようになってきたわけです。
 
このような考え方の変化は国の役割を変え、地方自治体への権限の移譲をいっそう促しました。

「緑の福祉国家の実現」には、これまでの役者(国会、中央政府)から、これからの役者(地方自治体および住民、個人)に役割の重要性が移行してくるという明確な認識から、1992年1月に「新自治法」が施行され、地方自治体の権限がさらに強化され、地方自治体は必要とする「行政局や庁」を自由に設置することができるようになりました。

96年末までに、全国288のすべてのコミューン(市町村)が、持続可能な開発をめざす行動計画「ローカル・アジェンダ21」を策定しました。国の政策は地方自治体と住民の協力により、具体化されます。
 
地方自治体と住民の協力こそが現実的な問題解決の基本であるという考えです。まさに、環境問題に関心のある方ならご存じの「Think globally, Act locally」の標語どおりです。



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なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑨   省益に左右されない「意思決定システム」

2007-08-26 06:36:22 | 政治/行政/地方分権


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スウェーデンでさまざまな先駆的試みが実現する背景には、行政府がつねにビジョンを打ち出していること、そのビジョンのもとで、方向のはっきりした政策を立案し、ビジョンが現実のものとなるための制度を用意していること、があります。今日からその主な社会システム(制度)の一端を紹介していきます。


★エコロジー的視点に欠ける日本の環境法体系

日本の環境行政の最大の欠陥は環境関連の法体系の中にエコロジーの視点が入っていないことです。 “エコ”という言葉がマスメディアで安易に使われるために、「エコロジー」という環境問題を考える際の根本をなす「自然の法則あるいは概念」空洞化させてしまっているのが現状です。もし私たち人間に“英知”があるなら、今すぐにでもその英知を出し合って、協力しなければなりません。

エコロジー的な考えの根本はたくさんの異なったものがそれぞれに影響しあいながら共存するという前提ですから、エコロジー的発想があれば、分野の異なる研究者や省庁の枠を越えた行政官が共通の目的のために協力することが可能になります。このような体制が社会の中になければ環境問題の解決はほとんど不可能でしょう。そう考えた時に、日本の現行の行政システムはそれからかなり離れた方向を向いているのではないかと思います。
 
スウェーデンの環境問題に対する取組みは決して高価な最新の公害防止設備の設置を誇示するのではなく、「足元の一般の生活意識」にその基礎があります。国の政策に国民の要望を汲み上げ、様々な現象を総合的に考え、それらの整合性をはかり行動に移すとき、その構成要素の一つ一つは最高のものではなくてもその行動は大きな力となることは、これまでのブログでも繰り返し書いてきました。。

ですから、政治、行政、司法、企業、科学者、国民など社会を構成する各主体の調和のとれた協力が重要となるのです。その具体的な試みとして、国の政策を左右する政府の政策案がまとまる前に「国民各主体の声を反映できる仕組み」「『利害の異なる国民の合意形成を助ける仕組み』が国の意思決定プロセスの中に組み込まれています。


★環境政策策定のプロセス(レミス手続き)

国の基本的な環境政策の決定までのプロセスを日本のプロセスと比較しながら簡単に説明しましょう。次の図をご覧下さい。


日本では、 「環境問題」は原則的に環境省の所管事項ですから、環境大臣は、必要に応じて、その諮問機関である「中央環境審議会(1993年11月に環境基本法が成立するまでは中央公害対策審議会)など」に諮問し、その答申を受けます。答申に基づいて、環境省は政策を立案し、実行に移します。 「エネルギー問題」の場合には、経済産業省が所管官庁ですから、図の環境大臣が経済産業大臣に、中央環境審議会が総合エネルギー調査会に、環境省が経済産業省に変わります。これが、悪名高い、しかし、容易に変えられない「縦割り行政」です。税金の問題であれば、財務省となります。

これに対して、スウェーデンの場合は、日本のように所管事項によって諮問の関係官庁が変わるということはなく、基本的には、各省の長である大臣の集合体である内閣主導型の「政府」が諮問機関(様々な調査委員会)に案件を諮問し、その答申(報告書)を受けます。調査委員会の報告書はあくまで政府の立場で作った報告書であるという認識です。

平たく言えば、調査委員会の報告書は社会の構成員である国民各主体を代表する各団体からコメントを求めるためのたたき台となる共通資料です。政府は政府の政策案を策定する前に、調査委員会の答申を政府の公式な報告書(SOU)として公表すると共に、この報告書の同一コピーを利害関係の異なる関係機関・団体(具体的には行政機関、産業界、労働組合、消費者団体、環境保護団体およびその他の諸団体)に送付して、それぞれの機関・団体の立場からの文書による意見を求めます。場合によっては、この報告書を隣接諸国に送り、相手国の意見を求めることもあります。

調査委員会の報告書に対するそれぞれの関係機関・団体から送られてきた意見を参考にしながら、政府は法案だけでなく、重要な政策案(政府が国会に出す法案や政策案を英語ではBillと言います)を策定し、国会に提出して国会の審議に付し、国会の承認を得るという手順を踏みます。

この一連の手順を「レミス手続き」と言います。レミス手続きは国の基本的な政策を策定する際に取られる一般的な合意形成のための手順です。「レミス=Remiss」とはスウェーデン語で「照会する、問い合わせる」という意味で、英語のReferenceに相当します。国の政策を左右する政府の政策案がまとまる前に国民各主体の声を反映できる仕組みが国の意思決定プロセスの中に組み込まれているわけです。

行政、学者、市民、産業界、政治家など社会を構成する国民各主体が国の政策決定に参加する仕組みです。この手続きは国民のコンセンサス(合意)を基礎としていますので、時間がかかりますが、一たん政策が決まれば国民の協力が得やすいと言えるでしょう。

スウェーデンには、日本と違って、基本的に「省の決定」というのはありませんので、「省益」はないと言ってよいでしよう。この政策決定プロセスを支えるのは「国民各主体の参加」「情報公開」および「チェック機能」です。

一方、省庁主導型(官僚主導型)の日本では、各省庁の大臣の諮問機関である「審議会」は所管の分野で日本の政策を方向づけたり、あるいは決定する際に重要な役割を担っています。日本とスウェーデンの政策決定のプロセスの相違を意識しながら新聞やテレビを見ておりますと、ことあるごとに「審議会はいつも政府の言いなりになっている。審議会は行政の隠れ蓑になっている。今までのようなやり方ではこれからの問題に対応できないのではなかろうか? もっと幅広い対応が必要である」という趣旨の記事や主張に出会います。日本の構造改革でまず最初にしなければいけないのが「縦割り行政」だ、というのが私の以前からの主張なのですが・・・・・

このような記事を見るにつけ、スウェーデンの国の意思決定システムには、日本の参考になりそうなヒントがいくつかあるような気がします。


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なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑧    国の方向を決めた政治的選択 

2007-08-25 07:42:52 | 政治/行政/地方分権

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今年1月1日に開設したこのブログ「環境・経済・福祉(社会)、不安の根っこは同じだ! 将来不安こそ、政治の力で解消すべき最大の対象だ」は、早いもので今日、237日目を迎えました。この間、一日も休むことなく掲載し続けた記事は今日のこの記事で、通算300本目となります。

スウェーデンは、1813年のナポレオン戦争以来190年以上、戦争に参加していません。第2次世界大戦後から「非同盟・武装中立の立場」を守ってきました。1990年8月に始まり、91年1月に終わった「湾岸戦争」や、2003年3月に始まった「イラク戦争」へ軍隊を派遣していない国(北欧諸国では、ノルウェーとデンマークがイラクへ軍隊を派遣)でもあります。
 
60年代末に核兵器の開発と保有の権限を放棄するという平和主義路線の選択を決定したこと、軽水炉型原子炉技術を独自に開発したのは、世界で米国、ソ連、スウェーデンの3カ国だけであること(英国、フランス、ドイツ、日本などは米国からの技術導入)という事実はあまり知られていないかもしれません。

また、よく知られるように、240年もの歴史がある「情報公開制度」と、195年以上の歴史がある「オンブズマン制度」(行政の独走や不正をチェックする国会の制度)があること、

男女同権の立場から第一子に王位継承の最優先権を認めた世界初の国であること、世界初の「個人情報保護法」 (1973年成立、98年改正)を持つ国であることなども、日本の近未来を考えるときに参考になるでしょう。ちなみに、日本の「個人情報保護法」は2005年4月1日から全面施行されました。
 
そして、「郵政民営化」を11年前の1994年に実施したこと、いま最もホットな話題である「年金問題」では、世界に先駆けて「新公的年金制度」 (1999年施行)をつくりあげた国であること、EUの環境戦略をリードする国(EU内閣の環境担当相は2004年4月までスウェーデンのマルゴット・バルストレムさんであった)であること、などの事実を知る人は少ないでしょう。

また、スウェーデンは日本とは違って、バブルの崩壊を克服し、それにともなう「不良債権の問題をすみやかに解決した国」でもあります。

1987年には米国に次ぐ世界第2位の経済規模(GDPの大きさ)を誇った日本は、最近でこそ多少明るいきざしが見えてきたとはいえ、10年以上も経済停滞を続け、国際社会を驚かせました。一方、スウェーデンは、90年代初めには日本と同じようなバブル崩壊で経済が一時停滞しましたが、短期間で停滞を抜け出しました。

1993年から現在に至るまで好調な経済を維持しながら、2025年には、主な環境問題を解決した新しい社会である「緑の福祉国家」を次世代に引き渡すことをめざして、力強い一歩を踏み出したところです。
 
これらの政治的選択が、現在のスウェーデンの基礎をつくっていることは間違いないでしょう。私の環境論の考えの一つの柱である「今日の決断が将来を原則的に決める」とする経験則の応用問題です。

こうした両国のあり方の違いは、政治のリーダーシップにあると私は見ています。

ですから、日本にできなかった実績を持つスウェーデンの政治や政策、すなわち21世紀前半の具体的な行動計画を分析し、提示することは、21世紀前半にめざすべき日本の「持続可能な社会」の方向性を議論するときの参考になると考えました。

このブログでは、こうしたスウェーデンの、主として80年代半ば以降の、「緑の福祉国家」に転換するための政策の枠組みと私が理解した20世紀の「福祉国家」の大枠を紹介し、大きな見取り図を支える制度がどのようにして整えられてきたのかを明らかにしよう試みています。

私にとってスウェーデンはどうでもよいのです。グローバル化した市場経済システムのもとで、彼らが自ら選択した「生態学的に持続可能な社会」の実現に向けてひたすら努力を続けてくれさえすれば・・・・・

私にとって心配なのは、この日本です。私が意を決して今年1月1日にこのブログを開設し、私が理解したスウェーデンと日本の状況を「私の環境論」に基づいて書き続けてきたのは、21世紀前半の日本の国づくりの話のお役に立てば、と考えてきたからにほかなりません。

明日、8月26日(日)に、21世紀に生きる若い人たちが中心となってつくる 「持続可能なづくりの会<緑と福祉の国・日本>の設立総会が開かれます。



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EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国の1位はスウェーデン

2007-08-18 22:44:50 | 政治/行政/地方分権


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先ほどのブログで
「世界共通の環境問題やエネルギー問題に対して、スウェーデンが他の工業先進国とは一味違う先進性のあるアプローチを展開するのは人口の大小の問題というよりも『国民の意識』『民主主義の成熟度』の問題だと思う」と書きました。

「環境問題と民主主義」の関連は私の長年の主張でした。私の前著「21世紀も人間は動物である 持続可能な社会への挑戦 日本vs」(新評論 1996年7月)の書評を岩波書店の雑誌「科学」(1996年11月号)に書いてくださった京都大学大学院経済教授の植田和弘さんはこの書評の最後の部分で次のように書いておられます。

X X X X X 
結局著者は、環境問題に対する日本とスウェーデンの相違の原因を、 “国民の問題に対する認識度”と“民主主義の成熟度”の問題に基づく社会システムの相違に求めている。環境問題に対する日本社会の態度に疑問を感じ、スウェーデンとどこが違うのだろうと漠然と想っていた人々には、ぜひ本書を読んでいただきたい。両国の差異の実態や原因が明確に認識できるであろう。 
X X X X X 

私の主張を強力に支えてくれる資料をインターネット上で見つけました。この資料はThe Economist Intelligence Unit’s Index of Democracy」by Laza Kekic, director,Country forecasting services, Economist Intelligence Unit」 というものです。Economist Intelligent Unit(EIU)は英国の著名な経済誌「The Economist」の企業間事業部門で、世界200カ国の政治経済に関する分析やデータを、世界中の企業や公官庁や教育機関に提供している専門組織です。

この資料によりますと、民主主義の成熟度を測る、これまで最もよく知られていた方法は米国のFreedom House Organizationが作成したものだそうです。その方法を超えるものとして新たに開発した5つのカテゴリー

●Electrocal Process and pluralism(選挙のプロセスと社会の価値観の多様性)
●Functioning of government(政府の機能)
●Political participation(政治的な参加)
●Political Culcure(政治的な文化)
●Civil liberties(市民の自由度)

を用いて、EIUは165の独立国と2つの地域の民主主義の状況を調べました。

その結果、およそ世界の半分の国(82カ国)が“民主主義国”とみなされましたが、 「full democracies(成熟度が高い民主主義国)」と判断されたのは そのうち28カ国にすぎませんでした。次の図に示すように、成熟度が高い民主主義の国の1位はスウェーデンで、アイスランド、ノールウェー、デンマーク、フィンランド、いわゆる北欧5カ国はすべてベスト10入りしています。ドイツ13位、米国17位、日本21位、英国23位、フランス24位、28位はウルグアイ、G7のメンバー国イタリアは31位で「flawed democracies(成熟度がまだ低い民主主義国)」に位置付けられています。



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なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう①    国民の意識と民主主義の成熟度

2007-08-18 08:46:25 | 政治/行政/地方分権

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スウェーデンでは、「よい環境は基本的人権である」という認識が、広くゆきわたっているといってよいでしょう。ですから、環境をこれ以上損なわず、できれば改善するためのさまざまな施策が、利害関係を超えて受け入れられるのだろうと思います。また、政治が強いリーダーシップを発揮して明確なビジョンを打ち出し、その実現のための制度を整えていく条件も伝統的に整っています。そのような土壌に支えられて、スウェーデンは、独自に考え出した先駆的なシステムを、国際社会に向けて発信しつづけているのです。

「福祉国家」スウェーデンの福祉制度や福祉社会については、多くの方々の調査・研究があり、書籍や様々な形で公表されておりますので、詳しくはそれらを参考にしてください。ここでは、このブログのテーマである「20世紀の『福祉国家』から21世紀の『緑の福祉国家』(生態学的に持続可能な社会)への転換」を理解するのに必要な環境問題やエネルギー問題を考える際の参考になりそうないくつかの基本的な事実と、私なりに理解したことを述べるにとどめます。

私がここで強調しておきたいことはスウェーデンが長年かかって築き上げた福祉国家をさらに維持・発展させるために、「環境問題」「労働環境」「住環境の問題」「エネルギー問題」そして、「経済問題」が重要なのだということです。言い換えれば、福祉と環境問題、労働環境、住環境の問題、エネルギー問題、そして経済問題は密接に関連しているということです。

環境問題のキー・ワードである「持続可能な開発(Sustainable Development)」が、なぜ今、必要なのかと言えば、これまでの経済活動の延長では私たちの生存基盤が危ういということに、今、私たちが気づいたからにほかなりません。「現実主義の国」スウェーデンの福祉社会の中心は人間です。人間の健康を守ること、もう少し広く言えば、 人権を守ることが福祉国家のすべての政策の根底にあります。
 
関連記事
緑の福祉国家3 スウェーデンが考える「持続可能な社会」 

緑の福祉国家4 21世紀へ移る準備をした「90年代」① 

緑の福祉国家5 21世紀へ移る準備をした「90年代」②

スウェーデンの話をすると必ず出てくる質問の中に「スウェーデンは人口が850万(現在は900万)だから……」というのがあります。しかし、世界を眺めれば、スウェーデンと同じような人口の国は他にもたくさんあります。スウェーデンの人口が少ないということはまぎれもない事実です。 

しかし、世界共通の環境問題やエネルギー問題に対して、スウェーデンが他の工業先進国とは一味違う先進性のあるアプローチを展開するのは「人口の大小の問題」というよりも「国民の意識」と「民主主義の成熟度」の問題だと思います。


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