外苑茶房

神宮外苑エリアの空気を共有し、早稲田スポーツを勝手に応援するブログです。

サブプライム・ショック (その3 )

2008-09-30 15:30:33 | ビジネス
米国下院が金融安定化法案を否決したことによって、今日の金融市場は大荒れです。

メディアの多くが法案の可決に楽観的な見方をしていましたが、一方では、次のような意見が米国内で有力な学者から発せられていました。
「金融機関は今や清算と統合の時期に入っており、脆弱な銀行は倒産するか、合併すべきである」
「中央銀行の役目は、業界統合の促進だ」
「自動車産業や鉄鋼産業は救済されず、銀行だけが救済されるのは何故か」
「何百万ドルものボーナスをもらっていた連中の救済に、納税者がコストを支払う正当性は無い」
このような論調が、選挙を間近に控えた政治家たちの判断を、少なからず左右したことは間違いないでしょう。

もっとも、地域金融機関から大手へと経営破綻の連鎖が拡大しかねない状況ですから、このまま金融市場を放置しておくこともできません。
いずれ何らかの代替案が公けになるのではないかと思います。

さて、そのような状況で、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)が、投資銀行の雄・モルガンスタンレーに出資して筆頭株主となるというニュースが報じられました。

野村證券がリーマンブラザースの事業部門の一部を買収したニュース以上に、このニュースを私は興味深く読みました。

今回の出資が純投資の目的で、すなわち株価低迷期に出資して、いずれ売却益を得ることが目的であれば、かなりの確率で投資は成功するはずだと私は考えます。

一方、戦略的な投資、すなわち投資銀行業務のノウハウを取得したり、有能な人材を獲得することがMUFGの考える主たる目的である場合には、成功までの道のりは簡単ではありません。

例えば、MUFGの若手行員をモルスタに派遣して投資銀行業務ノウハウを習得させるというような観測が一部の報道にありました。
でも、もし投資銀行ビジネスのダイナミックな動き方と業務の基本を若手行員が実際に身につけたならば、彼らの多くは国内の一般店舗への人事異動は二度とご免だと考えるようになるはずだと私は想像します。金融技術は日進月歩あり、プレーヤーたちの入れ替わりも激しいので、業務上のブランクは致命的。ですから、邦銀では一般的な定期人事異動は全く馴染みません。
そして、国内一般店の行員と同じ給与体系で働きたいと彼らが思わなくなる可能性も高いです。

また、従来からモルスタで働く社員たちも、お金を出してもらうような苦しい時期は黙っていても、危機が去ったときにはMUFGの意向どおりに動かなくなってくる懸念があります。
そもそも外資に憧れて、MUFGからモルスタに転職したという経歴の社員も少なくないはずです。
そこでMUFGの文化や秩序を無理強いすれば、彼らはチーム単位で他社へと移籍していくことでしょう。

ちなみに野村證券は、リーマンの商号は今後使用せず、リーマンから移籍する人員と業務を野村証券に直接吸収する方針と伝えられています。経営破綻したリーマンから野村への移籍を承諾した社員たちは、気持ちの上でも吹っ切れているでしょうから、彼らをマネージすることは比較的容易かと思います。
この点、モルスタの社員たちの多くに経営破綻の意識は無く、単に資金繰り面で支援を受けただけだというのが彼らの本音でしょう。

そんな組織を大株主の立場でマネージしようとするMUFG。不安材料の数々は承知の上での出資のはず。
最も邦銀らしい企業文化、気風を有する金融集団であるMUFGが、どのようにモルスタを統治していこうとしているのか、本当に興味深いです。

MUFGのお手並み拝見です。
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2 Comments

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なるほど (ロッキー)
2008-09-30 17:10:52
今回のトピックも興味深く拝見しました。
今回の米国の金融危機,税金を注入するか否か,というあたり,約10年前の日本の金融危機に状況がよく似ていると思いました。決定的に違うのは,議会がソフトランディングではなく,税金を注入しないハードランディングを選択した,という点ですかね。

買収の話も,表層的なメディアでは書かれない,事情通の管理人様ならではの分析で,なるほど,と拝見した次第です。私もMUFGの今後を興味をもって見守っていこうと思います。
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人間ドラマ (ay1881)
2008-09-30 20:20:49
外資系企業が日本に進出する場合にはM&Aを伴う場合が多いので、そこには様々な人間ドラマが生まれます。

前に勤務していた企業での職場の雰囲気に馴染めずに転職したのに、現勤務先が前勤務先に買収され、かつての後輩たちが進駐軍のように会社へ乗り込んできた

現勤務先が前勤務先の子会社を買収したために、昔の上司たちを対象にして退職勧奨者リストの作成を命じられた

中途採用候補者の中に前勤務先の同僚が含まれていて、『君がOKならば採用するよ』と在日代表から言われた


『世間は広いようで狭い』

『陰・日向なく、ワイワイガヤガヤと仲間同士で頑張るのが一番』

業種・職種にも左右されるのでしょうが、これが私の実感です。
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