外苑茶房

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国立公民権博物館

2009-10-15 16:40:10 | 大学野球
楽しい思い出ばかりを作ることができたメンフィスですが、最後に国立公民権博物館を訪問した時の体験をお伝えしたいと思います。

黒人の公民権運動に歴史的な足跡を残したマーチン・ルーサー・キングJr.牧師が、1968年(昭和43年)4月4日に暗殺されたのが、写真のメンフィス市内のモーテルの二階。
そのモーテルが国立博物館に改装されて公開されています。

1968年は私が中学校に入学した年。
キング牧師暗殺のニュースがテレビで繰り返し放送されていたことを、はっきり記憶しています。

このような社会不安や不満が海を越えて、当時の日本の学生運動にも影響を与えていたと思います。

さて公民権博物館は、アフリカの黒人たちが奴隷として売買されて、米国に強制的にやってきた時代のイラストから展示が始まり、
農園から逃げようとした黒人青年や少年が絞首刑された写真、
公民権を求めてデモする黒人たちに放水し警察犬をけしかける白人警官、
人種をミックスすることは共産主義につながるから絶対に反対という白人女性の大学教授
学校の入学式で白人学生によって追い出され、悲しそうな表情でキャンパスを去る黒人の女子学生

正視に堪えない画像の連続なのですが、私が一番ショックを受けたのは、
テーブルに座る黒人夫婦の二人を白人男性たちが取り囲み、タバコの煙を顔面に吹き掛けたり、黒人男性の眼鏡を外して灰皿代わりにタバコを揉み消したり、ついには黒人男性の頭部でタバコを揉み消すというフィルム映像。

私の周りに立って同じ映像に見入っている入場者の表情をチラッと見ると、涙を流す人、深いため息をついて天井を眺める人、「今は本当に自由なのか」という呟く若者など、誰もが強いショックを受けている様子。
私はというと、吐き気に襲われて、トイレで嘔吐してしまいました。


アメリカの黒人たちに参政権が与えられたのは1965年(昭和40年)。
その前年に行われた東京五輪で世界新記録を連発した米国の黒人選手たちには、実は選挙の投票権がなかったことになります。

博物館の展示の最後には、白人中心に運営されている団体から奨学金を受けて大学を卒業した黒人女性のインタビュー映像なども紹介されているのが、ちょっぴり救いでした。

今回、レンタカーで町中を走り回りました。
カーナビが装着されていなかったので、地図に記載されていない路地に迷い込んでしまうこともありました。
その結果、貧困に苦しむ黒人の人たちが今も少なくないことを目撃してしまいました。

雨の降る中を、傘もささずにハイウェイの脇を歩く人、
貨物鉄道の線路を歩いて仕事に向かう人、
いつ来るか判らないバスを雨に濡れながら待つ人

広大な公園、あるいはミシシッピ川の土手で草刈りや落葉掃除をする人

みんな黒人でした。

そして、貧困は犯罪を生み出します。

道を尋ねようとして入った、黒人街の酒屋さん。
店内の顧客スペースと商品棚は、分厚い防弾ガラスにより床から天井まで完全に分離され、まるで刑務所の面会室のような感じで会話しなければなりません。
支払いや商品のやりとりも、ピストルを店員に向けることのできないような角度にコンクリートに窪みを堀り込んだ小さな穴から行います。

親切に道順を教えてくれた中年の黒人夫婦は、「最近は悪い連中が増えたから、こんな店構えになっちゃった」と苦笑いしていました。


オバマ大統領が誕生した際に、涙を流す黒人たちの映像がテレビで流されました。
人種差別問題が今も完全に解決されているわけではないことを、改めて理解できました。
そして、差別の問題は、現代の日本社会も無縁ではありません。

決して簡単には結論の出ない差別の問題を最後に、私のアメリカ南部旅行はおしまいです。

おつきあい頂いた皆様、ありがとうございました。

帰りは、アトランタ経由で成田に向かいます。

そして土曜日の早法一回戦は、神宮球場で応援いたしますよ!!
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