東日本大震災の直後に、このブログで社会を支える重要な機能の一つとして、資金決済を挙げました。
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銀行に就職すると、新人研修で「銀行の三大業務とは、預金、貸出、為替である」と叩き込まれます。
この「為替」は、内国為替と外国為替に分かれますが、いずれの場合も「依頼人に替わって資金決済を為す」、すなわち物理的に離れた人同士の資金のやりとりを、当事者になり代わって行うということを指します。
コンピュータの発展によって、クレジットカード、Suica、プリペイドカードなど、小額な資金決済には様々な手法が開発されてきました。
しかし、例えば国や大手企業との間の億円、十億円単位の規模の決済ともなれば、やはり資金力の裏付けのある銀行の独壇場です。
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私が新米銀行員の時、ちょっとした事件がありました。
社員数200名余りの地元企業で、給与振込依頼書の記入ミスが原因で、朝一番の送金が処理されなかったのです。
その企業の社長さんが銀行に飛んできて、「何とか、今日中に給料を渡したい」と、支店長に懇願。
結局、支店の行員が分担して現金を振込先の幾つもの銀行に持参して、当日中に社員の方々に給与を届けることができました。
私も、地元の信用金庫に現金を運びました。
そこの店頭には、社員の奥さまたちが家賃や公共料金などの支払いのために待機されていて、私が到着するや、「よかった、よかった」と喜んでくださいました。
当時は、一件あたり十万円前後の給与振込でした。
しかし、それを所定の時間内に完了することが如何に大切なのかを実感したのでした。
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その資金決済において、それも今般の大震災直後の非常時に大失態を、日本を代表するメガバンクが、しでかしてしまいました。
金融専門誌によれば、全国から大量の入金取引が見込まれる災害支援募金の口座を、リーフ式ではなく通帳式で開設したことがシステム障害の原因だそうです。
すなわち、1口座当たりの未記帳取引へのシステム上の上限が1万件あまりであったところに、それを超える送金が殺到したために、銀行のシステム全体がフリーズしてしまったのだと。
このような取引ボリュームが予想される口座の場合には、通帳ではなく、リーフと呼ばれるカードに取引明細をどんどん吐き出すように設定するのが通例です。
顧客の利便性もさることながら、未記帳取引のデータを抱えることが、銀行のホスト・コンピュータに重い負担となるからです。
預金口座をリーフ式にするのは、いたって簡単な社内手続きです。
口座開設用紙のどこに丸印を付けるかというぐらいの違いです。
しかし、そんな些細な判断の誤りが、メガバンクの巨大なシステムを停止させて、銀行全体の信用を揺るがす大事件に発展してしまうという恐ろしさ…。
資金決済という機能を担うことの責任の重さを、銀行に働く全ての人間が痛感する出来事でした。
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銀行に就職すると、新人研修で「銀行の三大業務とは、預金、貸出、為替である」と叩き込まれます。
この「為替」は、内国為替と外国為替に分かれますが、いずれの場合も「依頼人に替わって資金決済を為す」、すなわち物理的に離れた人同士の資金のやりとりを、当事者になり代わって行うということを指します。
コンピュータの発展によって、クレジットカード、Suica、プリペイドカードなど、小額な資金決済には様々な手法が開発されてきました。
しかし、例えば国や大手企業との間の億円、十億円単位の規模の決済ともなれば、やはり資金力の裏付けのある銀行の独壇場です。
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私が新米銀行員の時、ちょっとした事件がありました。
社員数200名余りの地元企業で、給与振込依頼書の記入ミスが原因で、朝一番の送金が処理されなかったのです。
その企業の社長さんが銀行に飛んできて、「何とか、今日中に給料を渡したい」と、支店長に懇願。
結局、支店の行員が分担して現金を振込先の幾つもの銀行に持参して、当日中に社員の方々に給与を届けることができました。
私も、地元の信用金庫に現金を運びました。
そこの店頭には、社員の奥さまたちが家賃や公共料金などの支払いのために待機されていて、私が到着するや、「よかった、よかった」と喜んでくださいました。
当時は、一件あたり十万円前後の給与振込でした。
しかし、それを所定の時間内に完了することが如何に大切なのかを実感したのでした。
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その資金決済において、それも今般の大震災直後の非常時に大失態を、日本を代表するメガバンクが、しでかしてしまいました。
金融専門誌によれば、全国から大量の入金取引が見込まれる災害支援募金の口座を、リーフ式ではなく通帳式で開設したことがシステム障害の原因だそうです。
すなわち、1口座当たりの未記帳取引へのシステム上の上限が1万件あまりであったところに、それを超える送金が殺到したために、銀行のシステム全体がフリーズしてしまったのだと。
このような取引ボリュームが予想される口座の場合には、通帳ではなく、リーフと呼ばれるカードに取引明細をどんどん吐き出すように設定するのが通例です。
顧客の利便性もさることながら、未記帳取引のデータを抱えることが、銀行のホスト・コンピュータに重い負担となるからです。
預金口座をリーフ式にするのは、いたって簡単な社内手続きです。
口座開設用紙のどこに丸印を付けるかというぐらいの違いです。
しかし、そんな些細な判断の誤りが、メガバンクの巨大なシステムを停止させて、銀行全体の信用を揺るがす大事件に発展してしまうという恐ろしさ…。
資金決済という機能を担うことの責任の重さを、銀行に働く全ての人間が痛感する出来事でした。