日々是好舌

青柳新太郎のブログです。
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縁日に 露店の店も 出しました

2012年12月13日 20時53分33秒 | 日記
人が落目になるときは、たのむ木陰に露もれる。これは浪花節の一節だが、人間、落目にはなりたくないものである。
 土建業界一筋に生きてきた私もバブル崩壊後の不況時にはリストラを受けて失業したことがあり、その際に東海道丸子宿、大鈩不動尊(おおだたらふどうそん)の参道で露天商を営んだことは以前にも何かの折に書いた。
 大鈩不動尊の縁日は何々一家の縄張りだということもなく、土地の世話役の人に念達さえすれば堅気の人間でもショバ代一〇〇〇円を支払って露天の商売が出来るのである。勿論、露天商の多くは本職のテキヤであることは他のタカマチと何ら変わりは無い。だから、私が茣蓙を広げて店を出した隣もその隣も本職のテキヤで、道の向い側の店は中年の女性だったが、その人も本職のテキヤだった。この人はずぶの素人の私に色々と商売のアドバイスをしてくれたり、お茶を振舞ってくれたりして親切に接してくれた。
 最初に誤解の無いようお断りしておくが私は博徒でもなければテキヤでもない。素っ堅気の土木技術者である。現在、私は鳶職の会社に在籍しているが、敢て附言すれば鳶職はその由来からして新門辰五郎や野狐三次などの火消衆とは同類であり、その伝統かどうかは知らないが背中に彫物をした職人さんたちが今でも多いことは事実である。また、私が属していた土木業界には元何々という人間が多くいて中には元ヤクザという経歴の持ち主も少なからずいた。
 何の商売でも同じだが商売人同士の間には仲間内だけに通じる符丁というのがある。我々、鳶土工の仲間で「長太郎・ちょうたろう」といえば、仮の支柱のことである。丸太や角材、鉄パイプなどを使って仮の支えをすることを「長太郎をかう」という。
 「甚九郎・じんくろう」というのはトロッコなどのレールを曲げたり、曲がりを直したりするのに使う一種のジャッキでレールベンダーというのが正しい呼称である。
 「まんぼ」というのは、作業の回数や材料の納入回数を記録することで、その役目を「まんぼ取り」と呼ぶ。砕石場の受付などには勝気でおきゃんな「まんぼとり」の姉ちゃんが多い。ダンプトラック運転手を相手の仕事だから上品で大人しいお嬢さんでは勤まらないのである。
 「陸・ろく」というのは水平であること、平坦であることを言う。陸墨は水平を示す墨出しのことである。
 ところで隠語といえば卑猥な言葉は数知れずというほどたくさんあるが、場所柄を弁えてここでは遠慮しておく。今回は締切りに追われて原稿が間に合わないので、お目汚しではあるがテキヤの隠語について書いてみた。
 以下、テキヤの隠語を幾つか列挙してみよう。
【あいつき】あいずきとも言う。仁義、挨拶のことであり交際のはじまりを意味する。
【あおた】青田のことでテキヤが青果物を売る場合に使う。例えば、胡瓜、トマトなどを売るときは「今日のネタはアオタだ」という。果物はアオタアカモノという。
【あおかん】野宿のこと。屋外で寝ることを意味する。
【あかたん】金魚のこと。金魚売りもいう。
【あかなま】銅貨のことで昔なら一銭、二銭、或いは五厘の銅貨。今なら十円銅貨。アカウマともいう。
【あめ】うまいことをいって相手を乗り気にさせる。「あめをくわせる」「あめをなめさせる」などと使う。
【あけろく】ひよこ。
【あご】駄目。顎を押さえるのがダメの合図から。
【あらめん】初対面。
【あわ】石鹸。
【いもひく】恐れること。
【うきす】浮巣ということで船を意味する。
【うすい】バカという意味。「あいつは、うすいから」などと使う。
【うたう】泣くこと、或いは泣かせること。「うたわせてやった」などと使う。
【えんこ】手のこと。えんこずけるというと手をつけるの意味で、女性と関係したことになる。
【おーとん】自動車。
【おひん】金銭のこと。
【かくらん】布団。小カクランは座布団。鬼カクランは蚊屋。
【がせ】偽物、粗悪品のこと。ガセネタというと偽物、粗悪品の商品のこと。
【かりす】僧侶。
【がり】しんがりのガリからきた言葉で、一番おしまいのこと。「おれのショバはガリだ」などと最低だという意味にも使う。
【がん】眼のことで、眼のくばり、注意力などを意味する。「ガンが高い」といえば、よく見極めが利くということだし、「ガンをつける」といえば、睨むように見たということになる。ガンスイは涙。
【かんたん】唐の沈既済の小説『枕中記』にある故事の一つ、邯鄲の枕に因む言葉で眠ること。
【きす】酒のこと。オニキスは焼酎。ヨウキスは洋酒。キスボケは酔っ払い。キスグレも同じ。キスモロは酒に弱いこと。キスヒクは飲酒。
【きゃあ】客のこと。キャアタローともいう。
【ぎる】盗むこと。
【ぐに】質のこと。グニヤといえば質屋。グニにやったといえば質入れしたこと。丁半博打の五二(ぐに)からとも、七の字は下部が曲っているから、それをグニャリとしているからとして七をグニといい、転じて質になったともいう。
【げそ】本来は下駄のことだが、履物をすべてゲソというようになった。「ゲソをつける」というと入門すること。
【ごと】不正行為、詐欺行為などをいい、「ゴトをかまえた」といえば不正行為の仕掛をしたことになる。ゴトシは詐欺師。仕事のゴトからきた言葉。
【ごらん】子供の見物人。ゴランバイというと子供相手の商売。
【ごろ】喧嘩のこと。「ごろをまく」といえば喧嘩を吹っかけたことになる。ヤゴロは道具をつかった喧嘩。スデゴロは素手の喧嘩。
【さくら】客のふりをした仲間のこと。ぱっと咲いてぱっと散るところから。チルは売れるという意味。
【さじ】医者。
【ざんぶり】入浴。ズンブリともいう。
【しき】家のこと、屋敷からきた言葉。カリシキといえば借家。転じて店舗もシキという。
【しま】縄張り、或いは勢力範囲、或いは一定の地域を指していう。
【しゃり】ご飯のこと。ナマシャリは米。ギンシャリは白飯。バクシャリは麦飯。ナガシャリはウドン。
【じゃり】子供。ジャリスケともいう。
【じゅうろく】糞。小便はショウスイ。
【しょば】場所のこと。ショバ割りは商売をする場所を決めること。

【しん】金銭のこと。オシンともいう。
【じん】人間のこと。「ジンを集める」といえば人を集めること。「あの人はいいジンだ」といえば人柄がいいという意味。
【すい】水のことだがスイバレといえば雨降りのことになる。スイチャモというと水素ガスを入れて空中に浮遊する風船。チャモはオモチャをひっくり返した言葉である。カクスイは氷。スイチカは水の入った風船ヨーヨー。
【すいびら】手拭。
【すけ】女のこと。元は女をひっくり返してナオンといった。それから転じてナオスケになり、その上を捨てたのがスケである。スケコマシといえば女を騙すことになる。コマスとは、うまく丸めこむ、手なずけるという意味。
【せこ】景気がわるいことで賭博に負けたことなどを意味する。「セコモノだよ」というと、新品ではないという意味。「あいつはセコイ」というとカネを持っていないの意味になる。セコハンもセコモノに同じ。
【せんまつ】千松で歌舞伎の『伽羅先代萩』(めいぼくせんだいはぎ)の空腹を我慢している子どもからきた言葉。「おれは千松だ」といえば空腹だという意味。
【たかまち】高市と書く。縁日、祭礼などで人が集まって露天の店をだすのに適したところ。
【たかもの】興行のこと。奈良朝、平安朝の頃、農作物の収穫の後に、丘の上のような高いところに多くの人が集まって歌ったり踊ったり、異性の相手を求めたりした。それを「かがい」或いは「歌垣」といった。そこへ物売りがきたり、芸をする者もきた。そこからタカマチ、タカモノという言葉が生じたものと考えられている。
【たく】口上のこと。タクヅケというと口上をのべること。タクバイというと口上をいって売ること。
【だち】友達のこと。ダチコウなどともいう。
【だふ】札のことで、切符、入場券などを意味する。ダフヤというと入場券を買い占めて高く売りつける商売。
【たろう】太郎のことで、ぼんやりした客、あるいは田舎者。
【たんか】口上のこと。タンカバイというと口上をいって売ること。
【ちょお】客のこと。「きたか、ちょうさん待ってたほい」というのは客がきたということで朝鮮の人がきたという意味ではない。チョウコウ、チョウタともいう。
【ちょうふ】分け前。
【ちる】売れる。
【つぎもの】食べ物。
【つなぎ】通信のこと。ツナギをつけたといえば、挨拶をしたことになる。
【でか】刑事。昔、和服を着ている刑事を角袖(カクソデ)といったのを略して逆に呼んだもの。
【てけてん】ブス。器量の悪い女。
【てっかり】マッチのこと。
【てらこや】学校。
【てん】上等という意味。テンショバというと一番よく売れる場所。ガリショバの反対。
【てんがい】天蓋で傘のこと。洋テンガイはコウモリ傘。
【でんすけ】街頭のイカサマ賭博でテキヤがやる。それに使う持ち運びのできる道具をデンスケといったところから、すべての街頭イカサマ賭博をそういうようになった。語源は不明。
【とは】鳩を逆さにしたものでサクラと同じ偽の客の意味。
【とぶ】逃げる。高とびをするといえば遠くへ逃げるということ。
【どや】宿屋からきた言葉で旅館も意味するが、借りて住んでいるところのすべてをいう。
【とろ】油。ガマトロは蝦蟇の油。マキトロは蛇の油薬。ペテントロは白髪染め。ゲソトロは靴墨。
【どろん】逃げること。ドロンをしたというと、逃げてしまったことになる。
【とんすけ】嘘。スケトンともいう。
【ながれ】外れだが意外と客が来る場所。
【なく】雨が降ること。天気が泣くというわけである。
【なし】話のこと。ナシヲウツといえば話をするということになる。
【なま】現金。ナマイレは財布。ゲンナマともいう。
【にわ】自分のところの商品を持っていって売る者、あるいは子分。ニワバというとそういう人たちが売り歩くきまった場所。
【にん】人のこと。ただニンといえば素人。バイニンといえば商売人のことでテキヤのうちで物を売る人のことをいう。
【ぬくい】あやしいということ。
【ねき】飴のこと。棒ネキというと棒状のアメ。スイネキは水アメ。
【ねす】素人のこと。
【ねた】品物。転じて商品。ネタモトというと商品の卸売りをする者。
【ねんまん】万年筆。
【のみや】公営ギャンブルの馬券、車券などを客に代わって買い若干の手数料をとる商売だが、実際は公営ギャンブルに便乗して自分が胴元になることが多い。主としてテキヤ系のヤクザがやっている。
【ばい】商売。
【はくい】良い、美しいという意味。
【はこ】列車。電車。汽車。ナガバコともいう。ハコバは駅。
【ばした】親分の妻でテキヤだけの言葉。博徒はアネサンという。
【はぼく】葉木というわけで植木屋。単にボクともいう。
【はやい】盗むこと。「これは早い品物だ」といえば盗品のこと。「ハヤノリした」といえば盗んだことになる。
【はやせん】電話。
【ひつじ】紙。ヒツジモノは紙製品、印刷物。
【ひも】情夫。
【ひらび】平日ということで普通の日。ヒラバというと特定の祭礼などではなく普通の日にきまって店を出せる露天商の場所。日曜、祭日、祭礼、縁日などはモノビという。
【ぶうたれる】不平をいう。
【ふかす】隠すこと。フカシチャッタなどと使う。盗品を売ってしまうことも意味するから泥棒の符丁かもしれない。
【ぶりかまる】恐れおののく。
【へがば】便所。悪い場所もいう。
【へたり】露天商のうちの口上をいわないで、だまって商品を並べて売るだけの者。
【ぽたん】ご飯のおかず。
【ほやく】食べる。ホヤキモノは食べ物。
【まえ】前科のこと。マエモノというと前科者。「マエが無い」というと前科がないということ。
【まぶ】本物。マブネタは上等な商品。ヤクザ用語だと拳銃を意味する。
【めん】顔、人相のこと。メンガアルというと顔を知っているという意味。メンガトオルは顔を知られたこと。
【もく】煙草。洋モクは外国煙草。
【もんもん】彫り物のこと。くりからもんもんの略。
【やあさま】香具師、野師のことでテキヤのことである。よく、ヤクザの略と思われているが、博徒、グレン隊はヤアサマ、ヤアコウなどとは呼ばない。
【やさ】住居、家。刃物をおさめる鞘からきた言葉。ヤサグレというと家出人。
【やち】谷地ということでくぼんで湿り気があるという意味。すなわち女性の性器。ヤチモロというと性的に女に弱いことをいう。ヤチグレは性的乱行のこと。女性器に関する隠語はたくさんあるが、これを代表としておく。
【やばい】危険。
【やほん】本。
【やりとり】鋸。
【よろく】思わぬ儲けのこと。
【らんかい】博覧会。
【りこ】氷。
【ろく】宿六。男または亭主を意味する。
【ろくま】易者、占い師。仏教でいう六魔から。
【ろせん】露栓。男性器。
【ろは】ただ。只をロとハに分解。
【わじるし】春本春画のこと。春画を「笑い絵」といったことからきている。
【わたり】交渉。ワタリヲツケルというと交渉を持ったことになる。ときには、言い掛かりをつけたことにもなる。
【わり】分配すること。
【わんちゃ】茶碗。陶器。

 テキヤが使う隠語は他にも数々あるが紙面の関係もあるからこの辺りでお終いにする。

◆ てけてんにがんつけられている  白兎

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