杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3

2023年05月10日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2023年5月3日公開 アメリカ 149分 G

アベンジャーズの一員としてサノスを倒し、世界を救ったものの、最愛の恋人ガモーラ( ゾーイ・サルダナ)を失ったショックから立ち直れないスター・ロードことピーター・クイル(クリス・プラット)と、ガーディアンズの仲間たち。そんな彼らの前に、銀河を完璧な世界に作り変えようとする恐るべき敵が現れ、ロケット(ブラッドリー・クーパー )が命を失う危機にさらされる。固い絆で結ばれた大切な仲間の命を救おうとするガーディアンズだったが、ロケットの命を救う鍵は、ロケット自身の知られざる過去にあった。(映画.comより)

 クセが強くてワケありな銀河の落ちこぼれたちが結成したチーム「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の活躍を描いたシリーズ第3弾で、監督・脚本はシリーズを一貫して手がけてきたジェームズ・ガンです。

惑星ノーウェアで暮らすガーディアンズの前に、ソヴリン人のアイーシャ(エリザベス・デビッキ)が生み出した超人アダム・ウォーロック(ウィル・ポールター)が超高速で現れロケットに襲いかかります。グルート(ヴィン・ディーゼル)やネビュラ(カレン・ギラン)、マンティス(ポム・クレメンティエフ)、ドラックス(デイブ・バウティスタ)らが応戦、ガモーラを失って酒浸りのクイルも我に返って参戦しますが、ロケットが瀕死の重傷を負います。この時点ではクラグリンはまだ自分に自信がなくヨンドゥから受け継いだ口笛で操る“矢”も使いこなせていません。彼の相棒でノーウェアの警備主任のコスモ(宇宙犬)とのやりとりがユーモラス。
ロケットの体内には“キルスイッチ”(体内の情報を調べようとすると破壊される仕組み)が施されていて治療パックを使うことができず、ロケットを救うためには、キルスイッチ解除のパスキーが必要です。

パスキーのあるオルゴ・コープ社に潜入するため、ガーディアンズはクラグリン(ショーン・ガン)とコスモをノーウェアに残して、ボウイ号で惑星オルゴスコープへ向かいます。

スタカー・オゴルド(シルヴェスター・スタローン)率いる宇宙海賊ラヴェジャーズと合流したクイルは、メンバーに過去の世界からやってきたガモーラがいるのに驚きます。彼女が気になって仕方ないクイルですが、彼が恋したガモーラではないので彼に対してとても冷淡です。😓 

ボウイ号にグルートを待機させ、オルゴ・コープ社内へ入り込んだ一行は(ちなみにオルゴスコープは生物惑星です)、データバンクからロケットの情報を引き出すことに成功しますが、侵入がばれて警備員(ネイサン・フィリオン)らと 交戦状態になります。クイルの口説きが功を奏し、ピンチを脱します。

ロケットは、ハイ・エボリューショナリー(チュクーディ・イウジ) という、完璧な種族を生み出してユートピアを作ることに憑りつかれたマッドサイエンティストの被検体でした。
かつてロケットは「89P13」と呼ばれていました。同じ動物実験仲間の機械の手を持つカワウソのライラ(リンダ・カーデリーニ)、車椅子と体を接合されたセイウチのティーフ、クモ型の機械足と口枷を持つウサギのフロアとケージの中で暮らし次第に仲良くなっていく中で、彼らは自分たちで名前を命名します。
ロケットは、ハイ・エボリューショナリーの作る完璧な世界を信じて彼に協力します。しかし実験過程で狂暴な披検体が生まれることに頭を悩ましていたハイ・エボリューショナリーに解決策を提案したロケットが、自分以上に賢いと気付いたハイ・エボリューショナリーは、彼に嫉妬し、その脳を取り出して調べようとします。自分たちが殺されると察したロケットは隠し持っていた部品でケージの鍵を解除して仲間と逃げようとしますが、それを見越していたハイ・エボリューショナリーにより仲間を殺されてしまいます。ロケットは激怒して彼に襲い掛かり顔を引き裂いて独り脱出したのでした。

ウォーロックがロケットの回収に失敗したとアイーシャから報告を受けたハイ・エボリューショナリーは、二人に再度ロケット捕獲を命じます。(彼がソブリン人を生み出し、ソヴリン人のアイーシャがアダム・ウォーロックを生み出したらしい)
捕まえたラヴェジャーズの一人を拷問しようとして勢い余って殺してしまうウォーロックってまさに単純腕力バカ😀 でも彼が殺したラヴェジャーズのブラープという名前のペットが何故かウォーロックに懐いちゃうところをみると悪い奴でもなさそうな。遺体から見つかった通信器でガモーラから情報を引き出しガーディアンズを追います。

ロケットがハイ・エボリューショナリーに受けた仕打ちの残酷さを知り、ネビュラは自分がサノスから受けた仕打ち以上だと話します。
パスキーの情報がハイ・エボリューショナリーの側近に持ち出されていると気付いた一行は、カウンター・アースへ乗り込もうとします。この時、ガモーラがラヴェンジャーズと連絡を取ろうとしてアイーシャに位置を知られてしまうのね。(^^;

カウンター・アースは地球にそっくりで驚くクイル。住人はハイ・エボリューショナリーが作った半人半獣の種族です。ドラックスの行動が誤解され侵略者と思われ攻撃されますが、クイルが怪我した女性を気遣ったことで誤解が解け、ピラミッド型の施設にパスキー所持者がいることがわかります。
クイルとグルートが中に入ってハイ・エボリューショナリーと接触する中、ドラックスとマンティスも中に入ることを拒否されたネビュラとピラミッド前で合流します。
地球の音楽や文化の素晴らしさに触発されてカウンター・アースを作ったと語るハイ・エボリューショナリーは、完璧な世界を作ることが目的だと話しますが、そうでないと指摘されるとあっさりカウンター・アースを見捨てて星を爆撃し施設(宇宙船だった)を飛び立たせようとします。

その頃、ボウイ号にウォーロックとハイ・エボリューショナリーが派遣したウォー・ピッグ(ジュディ・グリア )が現れロケットを狙いますが、ガモーラが2人を退けます。
アイーシャが爆破に巻き込まれる瞬間を目の当たりにしたウォーロックは呆然自失。(彼にとっては母なんだものね)
グルートが体の中に隠していた爆弾と武器を取り出してクイルと反撃し、側近の頭に埋め込まれたパスキーを回収してガモーラが操縦するボウイ号に乗り込みます。木の翼で滑空するグルートがメチャカッコイイです。💛
ところが、二人がまだピラミッドの中にいると思ったネビュラたちは逆に中に入っちゃうんですね~。

ボウイ号では、クイルがパスキーを入力して救命措置を始めますが、心肺停止状態になってしまいます。それでも諦めず、必死に心臓マッサージをして呼びかけるクイル。死の淵を彷徨っていたロケットが、死んでしまったライラたちと出会い、そちらへ一緒に行きたいと尋ねると、ライラから「まだその時じゃない」と止められ「創る手もあれば導く手もある」「これはあなたの物語」と伝えられるシーンが切なく、蘇生したロケットを抱きしめるクイルとグルートの姿も胸に迫ります。

クイルたちを助けようとピラミッド船に乗り込んだ3人が見たのは捕らえられた大勢の子どもたち。互いに行き違いになったことを知ったクイルはクラグリンに協力を要請し、回復したロケット共々ピラミッドへ向かいます。

子どもたちの言葉を理解し話せたのはマンティスではなくドラックスでした。差し向けられたアビリスクたちを、マンティスが手懐けます。
惑星ノーウェアごと駆けつけたクラグリンとコスモによりピラミッドとドッキングさせて子どもたちを避難させることに成功します。グルートに助けられたウォーロックが理由を聞くと、グルートは「誰にでもセカンドチャンスがある 」と答えます。

あくまでロケットに執着するハイ・エボリューショナリーは、反乱を起こした部下たちを皆殺しにします。こうなるとただの狂人だなぁ。ノーウェアに入ってきた敵を、ヨンドゥの幻影に自分を信じるよう励まされたクラグリンがヤカの矢を使いこなして撃退するのも彼の成長を感じさせる一コマです。

ロケットは監禁されている動物たちもノーウェアへ避難させ、ハイ・エボリューショナリーとの最後の対決に臨みます。「俺はロケット・ラクーンだ」と宣言し、ガーディアンズたちと共に彼を倒すのです。ハイ・エボリューショナリーの仮面のような皮膚の下は過去にロケットが引き裂いた無残な姿でした。このこともロケットに固執していた理由だったのかもね。ロケットは彼にトドメを刺さずに去りますが、それは命を軽視するハイ・エボリューショナリーとは対称的な行為であるとともに、彼への最大の罰でもあったのかも。

爆発するピラミッド船から脱出する際に、クイルは落としてしまった音楽プレーヤーのZune(ズーン)を拾って遅れてしまいます。宇宙空間で瞬時に顔が膨張し凍っていくクイルを助けたのがウォーロックです。まさにセカンドチャンスを生かした形ですね。😊 

一件落着後、メンバーはロケットとグルートを残してそれぞれの道に進みます。
ネビュラとドラックスは理想の街を作るためノーウェアに残ります。
マンティスはアビリスクを連れてノーウェアを離れ一人旅に出ます。
クイルは地球に戻り、祖父のジェイソン・クイルと再会します。(このエピソードはポストクレジットに登場しますが、その最後に「伝説のスター・ロードは帰ってくる」という文字が映し出されて幕を閉じるので、続編は大いにありそうです。) 
ガモーラはラヴェジャーズに戻り仲間たちの歓迎を受けます。(クイルは今いるガモーラはかつて自分が愛したガモーラではないことをやっと受け入れられたようです。)

クイルから助けを必要としている他の誰かのためにガーディアンズを率いることを求められたロケットは、クラグリン、コスモ、ウォーロック、ファイラ=ヴェルと新たなガーディアンズを結成するのね。生死を彷徨い過去の自分と対峙したロケットは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのロケット・ラクーン」だとありのままの自分を受け入れるのです。(ラクーンとはあらいぐまの意)この対極にいたのがハイ・エボリューショナリーというわけですね。

今回、ロケットがクイルからズーンを譲られます。ヨンドゥかクイル、そしてロケットへと受け継がれていくズーンから流れる音楽もこの作品の大切なコンセプトですね。

皮肉とウィットに富んだセリフの数々に思わず吹き出すことも度々で、ドラックスやグルートの天然ボケ も健在ですが、一方でおバカ呼ばわりされてきたドラックスに隠されていた人間的な深みや優しさにも気付かされることになりました。単純バカに見えたウォーロックだっていいとこあるもんなぁ~。

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ヒポクラテスの試練

2023年05月08日 | 
中山七里(著) 祥伝社文庫

浦和医大法医学教室に城都大附属病院の内科医・南条がやって来た。急死した前都議会議員・権藤の死に疑問があるという。埼玉県警の古手川刑事は甥による毒殺の証拠を摑むが、光崎藤次郎教授が司法解剖から導き出した答えは恐るべき感染症だった! 感染源特定に挑む新米助教・栂野真琴が辿り着いた驚愕の真実とは――!?(公式HPより)


一、米の毒
権藤の甥による毒殺の疑い(工業米に含まれていたアフラトキシン)で解剖したところ、爛れた肝臓に隠れ蠢いていた寄生虫、エキノコックスが確認されます。通常、感染から死亡するまでの期間は長く、その間には何か自覚症状がある筈ですが、権藤の体内のエキノコックスは成体ではなく幼虫でした。光崎教授は突然変異を疑うと同時に、発生源を突き止めなければパンデミックになると感じます。
自覚症状がないまま突然悶絶死させる突然変異体って・・・読んでいるだけでも恐怖を感じます。😱  
これまで遺体=解剖室の中での見事なメス裁きに特化していた教授が、今作では病院や警察を動かし、議員たちの口を開かせるために自ら赴くという姿をみせます。パンデミックを何としても防ごうという決意をひしひしと感じさせます。

二、蟲の毒
発生源をつきとめるため、光崎教授は埼玉県警に協力を要請します。渡瀬との間に暗黙の了解ができていて古手川が働かされるんですね😓 
彼の捜査で、前都議会議員以外にも突然変異種に寄生されている可能性のある議員たちが浮かび上がります。彼らには4年前のアメリカ視察団のメンバーという共通点がありましたが、何故か日程の詳細な記録は残されていませんでした。議員たちのもとを訪れた古手川と真琴が、エキノコックスの危険性を説明し問い詰めても彼らは一人として口を開こうとせず、その頑なな態度に疑惑が決定的になります。

三、職務に潜む毒
四、異国の地の毒
発生源を突き止めるべく、NYに赴き彼らの視察場所を調査することになった真琴とキャシー。キャシーの旧友のNY検死局副局長ペギョンから、前任の所長も同様に肝臓がんの急変で死亡していたと聞き、感染源はNYだと確信します。前局長と議員たちが食事をした高級レストランで話しを聞くと、彼らが訪れたのは猛暑の真夏だったため生野菜は提供していなかったとわかり、振り出しに戻ったかに見えましたが、従業員の女性から彼らがレストランの後でもう一軒行くと話していたと聞きます。そこはなんと韓国系の高級売春宿でした。
そりゃ~議員たちは行き先を言えない筈ですね。
税金を使った視察先での売春行為という都議たちの呆れた行動に憤りを感じながら、売春宿で韓国料理の犬料理が提供されていたことを知った二人は、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のグレッグと一緒に犬肉の卸業者を訪ねます。そこで彼らは、劣悪な環境で檻に入れられている犬が食用ではなく野良犬だと気付き、これがエキノコックスの感染元だと突き止めます。

自由の国アメリカの人種差別の実態に触れ、キャシーの生い立ちを知って動揺する真琴です。日本にも差別はあるけれど、これほどあからさまではないものね。

五、人の毒
NY市内が野良犬の大量殺処分に驚く中、キャシーが旧友ペギョンに突きつけた事件の真相が哀しい。
ペギョンは、今回の事件以前に検死したキムという売春婦の体内からエキノコックスの卵を採取していたのです。そしてそれを局長や都議たちの料理に混ぜて食べさせていました。韓国人である彼女は差別主義者の局長から散々にヘイトスピーチを聞かされて憎悪が募っていたのです。

都議たちを巻き添えにしたのは彼らが児童買春目的で訪れていたことが理由です。売春だけでも破廉恥なのに幼女趣味とはまさにばれたら身の破滅。死んでも口を割れないわけね。😡 

真琴と古手川は電話の中で「これは蟲の毒ではなく人の毒だ」というような会話を交わします。確かに直接の死因は寄生虫の毒素による肝臓がんですが、そもそもの発端となったのは差別という感情が生んだ憎悪ですものね。

小説が発表されたのは令和2年6月。コロナ禍の最中ということで、ウィルスと寄生虫の違いはありますが、パンデミックの恐怖という意味では実にタイムリーな内容となっていました。



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ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択

2023年05月07日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2016年製作/106分/アメリカ

アメリカ北西部モンタナの田舎町を舞台に、厄介なクライアント(ジャレッド・ハリス)に振り回される弁護士ローラ(ローラ・ダーン)、新居の建設のことで頭がいっぱいのジーナ(ミシェル・ウィリアムズ)、夜間学校で法律を教える弁護士エリザベス(クリステン・スチュワート)、牧場で馬と暮らすジェイミー(リリー・グラッドストーン)ら4人の女性たちが、それぞれ悩みを抱えながら懸命に生きる姿を描く。(映画.comより)

マイリー・メロイの短編小説の映画化。
群像ドラマには違いないけれど、正直「で??」っていう・・・。

弁護士のローラは、フラーというクライアントに振り回されています。彼は仕事中の怪我で会社から補償金を受け取った後に再度会社の責任を追及しろと主張していますが、それは受け入れられない旨何度説明しても納得しません。仕方なく別の弁護士を紹介してその見解を一緒に聞きにいきますが、その回答はローラと同じでした。ところがフラーはあっさり引き下がります。その弁護士が男だったから?とローラはもやもや。
その夜、フラーは警備員を人質に取り、以前勤めていた会社に籠城します。その場に呼ばれたローラは、フラーの要求する会社の保管資料を読み上げさせられます。そこには会社側の保証金をできる限り支払わないようにする対策が記されていて、それを聞いたフラーは人質を解放します。ローラは彼との約束を破って警察に通報し、フラーは逮捕されます。クライアントに振り回されながらも見捨てず対応する姿勢にローラの人柄が現れていますね。

ジーナとライアン(ジェームズ・レグロス)夫婦は、娘ガスリー(サラ・ロディエ)を連れて郊外に建てる予定のセカンドハウスの敷地でグランピングした帰りに、アルバート(ルネ・オーベルジョノワ)の家に立ち寄ります。そこで新居にぴったりな砂岩を見つけたジーナは売ってくれるようアルバートに頼みますが、彼はジーナを無視してライアンの話に耳を傾けます。
無神経な夫と思春期の反抗的な娘にうんざりし苛々が募っているジーナにとってセカンドハウスを本物の砂岩で装飾するのが夢なのですが、その交渉も夫頼りにならざるを得ないのが何とも悔しく歯痒いのです。

エリザベスは、弁護士の傍ら夜間学校で法律を教えています。牧場で働く孤独な先住民のジェイミーは、ある夜、人恋しさから夜間学校の授業に紛れ込んでエリザベスと親しくなります。でもエリザベスは片道4時間の通勤が重荷になり突然夜間学校の教師を辞めてしまいます。それを知ったジェイミーは、夜通しハンドルを握りエリザベスが暮らす街に向かい会いに行きます。エリザベスはジェイミーに対し差別することなく接していましたが、学校を辞めることを彼女に話すまでの気持ちはなかったのね。ジェイミーが確固たる目的(別れ)のために車を走らせているのとは対照的ですね。

モンタナという田舎の小さな町で暮らす4人の女性の平凡な生活を切り取ったような物語ですが、男女や人種の差別がさりげなく盛り込まれ、彼女たちの閉塞感の土壌になっていました。


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寝台特急はやぶさ60分の1秒の壁

2023年05月04日 | 
島田庄司(著) 南雲堂

1.寝台特急はやぶさ60分の1秒の壁
双眼鏡で覗きをしていた男が、豪華マンションの浴室で顔の皮をはがされた若い女の死体を発見!だが、割り出された死亡推定時刻に彼女は、「はやぶさ」に乗っていた。不可能を可能にしたトリツクは何か?時間の壁と“完全犯罪”に敢然と挑む捜査一課の吉敷竹史の前に、第二、第三の殺人が…。

被害者が殺害推定日時に個室寝台特急に乗車していたというトラベルミステリーの謎が解けた後も犯人を巡って二転三転する展開が面白かった。
吉敷の推測は半分当たっていたわけで、被害者が実はある目的をもってアリバイ作りをしていたことや、複雑な家族関係、姉妹の確執などが次々明らかになり目が離せませんでした。第二、第三の殺人をした人物は第一の殺人者に比べたら衝動的・短絡的です。吉敷たち警察が、偽の脅迫手紙で犯人を誘き出すのはちょっと強引な気もしますが・・。

2.嘘でもいいから殺人事件
嘘でもいい、インチキでもいい、殺人事件を!テレビ界にこの人あり、“やらせの三太郎"と異名をとる迷ディレクターとスタッフが東京湾の無人島で遭遇した奇々怪々な大事件。

作者が若い頃に書いたユーモアミステリ。1話のシリアス路線とは全く異なる作風に戸惑いましたが、最後にどんでん返しのある筋書きは似ていました。
猿島は横須賀から船で行く無人島で、BBQなどの観光で訪れる人が多いと聞いています。80年代前半のバブル期のTV業界人が登場し、いかにも軽薄なバラエティ製作の裏側を見ているような気分になりました。そういえば当時は「何とか探検隊」とか怪し気な番組が大流行りでしたっけね(^^; 皆がそうとは言いませんが、やっぱり「やらせ」だったのかと思ってしまったぞ。

島にただ一つ建つ別荘で起こる密室殺人と死体消失の謎。消えた死体が再び現れ、別の一人が消えるというまさにミステリーな展開ですが、語り口がとにかくコメディチックなので、怖さはありません。島にいる間には犯人もトリックも謎のままですが、犯人がわかってみれば、確かに行きの船で伏線は仕掛けられていました。それにしても日本刀で首を切断はいくら多少の武術の心得があるとはいえ、普通考えつかないだろ?と思ってしまいましたが。

3.出雲伝説7/8の殺人
山陰地方を走る6つのローカル線と大阪駅に、流れ着いた女性のバラバラ死体!なぜか首はついに発見されなかった。捜査の結果、殺された女は死亡推定時刻に「出雲1号」に乗車していたらしい。休暇で故郷に帰っていた捜査一課の吉敷竹史は、偶然にもこの狂気の犯罪の渦中に…。

吉敷竹史シリーズ2作目は、列車の乗り継ぎや時刻表で謎解きするトラベルミステリーです。そういえば、昭和のミステリードラマはこの時刻表トリックが大流行りでした。
早々に、死体がばらまかれた経路・順路が吉敷により解明され、容疑者も絞られるのですが、二つの寝台列車のトリックがなかなか解けずにいます。でも、ちょっと視点を変えるだけで、殺害場所がどこかは簡単に推理できると思うのですが・・・。バラバラというのが重要ポイントではあります。
犯人の被害者への強い殺意の理由には同情の余地はあるけれど、動機が単純なだけに、どんなトリックを用いてもやがて暴かれるのは必須だったような😓 

4.漱石と倫敦ミイラ殺人事件
英国に留学中の夏目漱石は、夜毎、亡霊の声に悩まされ、思い余って、シャーロック・ホームズの許を訪ねた。そして、ホームズが抱える難事件の解決に一役買うことになる。それは、恐ろしい呪いをかけられた男が、一夜にしてミイラになってしまったという奇怪な事件であった! 

夏目漱石のロンドン滞在とシャーロック・ホームズの活躍時期が重なることや、漱石の最後の下宿とホームズの住居ベーカー街221Bが近いことから着想を得たフィクションで、ワトソンの未発表原稿が発見され、国会図書館に眠っていた漱石の「倫敦覚書」と共に語られるという形式で、漱石がしばしば下宿先を変えたことや、シェークスピア研究の大家クレイグ先生の存在も加味された内容です。

章ごとに、漱石とホームズ・ワトソンが語り手となるのですが、漱石はホームズをコカイン中毒で精神に異常をきたした人物と捉えているのに対し、ワトソンの記述ではホームズは名探偵そのものです。
生き別れた弟を探し出し、一緒に暮らしだした財産家の未亡人の屋敷で、一夜のうちに弟がミイラ化して死亡するという超自然的な事件の謎を、漱石とホームズが協力して解決する展開。一種の密室殺人と思われましたが、結局は財産目当てに身代わりを立てた犯人の目的を正しく見抜いたホームズの圧勝でした。
ホームズの女装や奇抜な行動は映画でも登場していましたが、漱石の目には精神異常者に見えたわけですね😓 

吉敷刑事が登場する1と3は光文社カッパ・ノベルズから出ていて、これはトラベルミステリーのジャンルで安定感があります。対して2と4は集英社から出ていて、斬新さがあります。
個人的にはトラベルミステリーの方が面白かったかな。






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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

2023年05月01日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2023年4月28日公開 アメリカ=日本 94分

ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージが、謎の土管を通じて魔法に満ちた世界に迷い込む。はなればなれになってしまった兄弟は、絆の力で世界の危機に立ち向かう。マリオとルイージに加え、ピーチ姫、クッパ、キノピオ、ドンキーコング、ヨッシーなど原作ゲームシリーズでおなじみのキャラクターが多数登場する。(映画.comより)

任天堂のゲーム「スーパーマリオ」シリーズを、イルミネーション・スタジオと任天堂が共同でアニメーション映画化した作品。
今回は日本語吹替版2Dで鑑賞しました。
声優は以下の通り()はオリジナル版
マリオ:宮野真守(クリス・プラット)
ピーチ姫:志田有彩(アニヤ・テイラー=ジョイ)
ルイージ:畠中祐(チャーリー・デイ)
クッパ:三宅健太(ジャック・ブラック)
キノピオ:関智一
ドンキーコング:武田幸史

ファミコン・スーファミ時代によく遊んだゲームです。マリオカートくらいまではやったかな😁 最初の頃はクッパに攫われたピーチ姫を助けに行くパターンだったと記憶していますが、今作ではピーチ姫と共にクッパに戦いを挑んでいます。というか、ピーチ姫の方が主導権握ってるような😅 
お馴染みのゲーム音楽や、旗に飛びついてのゴール、何度も失敗してはやり直すマリオや、虹のサーキットをカートで爆走するなど、ゲームの世界そのままのキャラがスクリーンを縦横無尽に動き回ってとても楽しかったです。

しっかり者で 弟思いなマリオは、弟のルイージと 新しく配管工の仕事を始めますがうまくいかず、お父さんも認めてくれません。ところが、ひょんなことから突然キノコ王国に 飛ばされてしまい弟のルイージ と 離れ離れになってしまいます。ルイージはダークランドに飛ばされ全世界を支配しようと目論むクッパ大魔王に捕まってしまいます。ペンギン王国からスーパースターを略奪したクッパは、キノコ王国のピーチ姫に求婚しようと巨大な飛行要塞でキノコ王国に向かいます。ピアノを弾きながら、ピーチへのラブソングを歌いあげるなど意外に可愛い面も。ちなみに彼の側近のカメックは魔法使いです。

マリオを助け、ピーチ姫の城に案内してくれたのは冒険好きのキノピオです。
キノコ王国を守るためコング族と同盟を結ぼうとジャングル王国に行こうとしていたピーチ姫は、マリオからルイージを救うために手を貸して欲しいと請われます。訓練用のコースでマリオの腕試しをした姫は、彼が何度失敗しても諦めずにクリアを目指す姿に心意気を認めて、マリオとキノピオと共にジャングル王国へ向かいます。

ジャングル王国の国王の条件(息子のドンキーコングを倒せたら同盟を結ぶ)を受け入れたマリオは、圧倒的な力の差に何度も窮地に陥りながらも諦めずに立ち向かって、遂にドンキ―に勝利します。様々なパワーアップアイテム(マメキノコやネコマリオなど)が登場してゲームさながらの楽しいシーンです。
同盟を結び、コング族の兵達とカートでレインボーロードを走るマリオ達にクッパ軍団が襲い掛かるバトルシーンではカメやバナナを投げつけて対抗します。

ルイージやペンギンたちと一緒に捕まっている中にルマリーという可愛い外見ながらかなりのネガティブ思考の星の子がいて、皆に嫌がられていました。どうやら長い間牢獄に囚われていたことも性格に影響しているらしいですが、本筋とは絡まないので何故このキャラが出ていたのか個人的に謎。😔 
クッパとの戦いは人間世界(マリオたちが暮らしているブルックリン)にも持ち込まれますが、気弱なルイージの思いがけず勇気ある行動により、最後は兄弟及びピーチ姫、コングたちが勝利します。
この戦いでマリオとコングが父親から認められて誇らしげな姿も見られました。彼らの成長を示すエピソードですね。

小さくなったクッパ・・・あれ?でもダメージ受けたり時間が経てば元に戻るんじゃなかったっけ??
エンドロールに挿入されていたヨッシーの卵は続編への予告と受け取って良いのかな😀 

鑑賞特典は「ハテナブック」とピーチ姫のシール(シールは何種類かあるようです)でした。久しぶりに「マリオ」ゲームやりたくなりました。
映画の帰り、ユニクロでコラボTも買っちゃった😙 

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