杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

沈まぬ太陽

2010年07月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年10月24日公開 202分

昭和30年代。巨大企業・国民航空社員の恩地元(渡辺謙)は、労働組合委員長を務めた結果、会社から10年におよぶ僻地での海外勤務を命じられた。かつて共に闘った同期の行天四郎(三浦友和)が組合を抜けてエリートコースを歩みはじめる一方で、恩地は家族との長年にわたる離れ離れの生活で焦燥感と孤独に追いつめられ、本社への復帰を果たすも不遇な日々は続くのだった。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こり…。

山崎豊子の同名小説の映画化で、劇場公開時は間に10分の休憩時間を入れるという異例の興行でしたが、その時間的制約ゆえ、DVD待ちしていました。

御巣鷹の痛ましい事故とその前後の搭乗客と遺族の様子がオムニバス形式で描かれ、そこに恩地の経歴が挿入されていきます。
初孫を連れて祖父の家を訪ねようとした若夫婦、一人旅の子供、単身のサラリーマンなど、ごく普通の市井の人々の人生が突如として断ち切られる恐怖や絶望がまざまざと伝わってきて、いきなり涙が溢れてきて、そんな自分にちょっとびっくり。

どうみても日航の墜落事故そのまんまだし、物語が進むにつれ、フィクションだとわかっていても、本質的には変わりないのではという強い怒りが湧いてくるのを止められませんでした。

労働組合委員長として経営陣と激しく対立した恩地は、確かにちょっとやり過ぎな感もぬぐえないけれど、その報復でカラチ、テヘラン、ナイロビと足掛け8年も僻地(というのは差別になるかな?)勤務の左遷人事に遭います。彼は矜持を持ってこの仕打ちに耐えますが、実母の死に目にも会えず、家族とも別れて暮らすこと余儀なくされるのです。

東大卒のエリートから見たら不本意で劣悪な条件なのだろうけど、左遷といっても一応海外勤務だし、それなりの待遇はされているように見えて、あんまり同情の気持は起きなかったのですが、家族の辛さには大いに共感。我が道を行く夫や父の苦労は自分で選んだものだけど、妻や子供はねぇ・・・

帰国した後にジャンボ機墜落事故が発生し、その救援隊・遺族係へ回された恩地は誠心誠意遺族へ対応していきます。利根川総理の国民航空再建策で、関西の紡績会社の会長である国見正之(石坂浩二)が国民航空会長になったことで、恩地も「会長室」の部長に抜擢されようやく自らの理想の会社を目指して改革に奔走するも束の間、政治的取引やら親友の筈の行天の画策で志は中途で絶たれ、またナイロビに飛ばされる恩地・・・けれど、彼の心の中はむしろ穏やかです。強い信念と不屈の精神はどんな過酷な状況にあっても彼の心から消せないから。

アフリカの広大な土地に沈む太陽を背に遥か先の未来を見ているかのような恩地の視線の先に希望があるように思えたラストでした。

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