杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

アガサ・クリスティー ねじれた家 ネタバレあり

2020年01月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年4月19日公開 イギリス 115分

〈伝説的人物〉の突然の死に、英国中が驚いた。アリスティド・レオニデス、ギリシャで生まれ、若い頃に無一文で英国へ渡り、レストラン経営で大成功を収め、巨万の富を築いた人物だ。その孫娘であるソフィア(ステファニー・マティーニ)が、かつての恋人のチャールズ(マックス・アイアンズ)が営む探偵事務所に現れる。一族の誰かが祖父を殺したにちがいないと打ち明ける彼女は、チャールズに捜査を依頼するのだった。ロンドン警視庁を訪れたチャールズは、タヴァナー主任警部(テレンス・スタンプ)から、レオニデスの死因は毒殺だと知らされる。 大豪邸に到着したチャールズを迎えたのは、レオニデスの前妻の姉イーディス(グレン・クローズ)だった。彼女を筆頭に聞き込みを始めるが、強烈な個性を放つ人々を相手に、捜査は一向に進まない。しかも、愛人のいるらしい若い後妻から、破産・倒産寸前の二人の息子とその妻に至るまで、全員に殺害の動機があった。そんな中、レオニデスの遺言書が無効であることが発覚したことから、チャールズは真相が見えたと確信する。ところが、その推理を覆す第2の殺人が起きる――。(公式HPより)

 

アガサ・クリスティーが自身の〈最高傑作〉だと誇る、1949年発表の「ねじれた家」の初映画化です。
かつて外交官としてエジプトに赴任した際に恋人関係にあったソフィアの頼みを一旦は断ったチャールズですが、探偵事務所の経済事情もあり(もちろん元恋人の身も案じたのでしょう)引き受けることにします。まずは、著名な警視監だった父の知人であるロンドン警視庁の警部に会い、死因と捜査状況を尋ねます。糖尿病を患っていたレオニデスのインシュリン注射が何者かにすり替えられた結果の薬殺と知り、警部からも事件の全貌を探るよう依頼されて屋敷に乗り込んだチャールズは、早速レオニデス家の人々に聞き取り調査を始めるのですが、彼らは一様に、一族の絶対的権力者であった老人により抑圧され続けた結果”ねじれ”てしまった人たちでした。誰がこの老人を殺しても不思議ではない動機のある者ばかりという、推理小説ではある意味お決まりの展開です。
 
レオニデスの亡き前妻の姉イーディスは屋敷を取り仕切っています。元ダンサーで彼の若い後妻のブレンダは注射を施した張本人で、家庭教師のローレンスとは愛人関係にあります。長男でソフィアの父のフィリップはえせ芸術家、妻のマグダは売れない舞台女優で、二人はマグダ主演の映画への出資を頼んで断られていました。次男のロジャーはケータリング社の経営に失敗して父親に泣きついていて、その妻のクレメンシーは毒の専門家。反抗的な態度のフィリップの長男ユースタスはロックと反権力主義に傾倒しています。そんなクレメンス家の人々をこっそり観察してはノートに記録している末娘のジョセフィンは探偵小説を愛読し、屋敷で一番賢いのは自分だと思っています。そんな彼女に振り回されるナニーは彼女を叱ってばかり・・・。たしかに一癖も二癖もありそうな面々です。

やがて、レオニデスが秘かに回想録を書いていたこと、親族一同に平等に分配すると記した遺言書が署名がなかったため無効であることが判明します。遺言書がない時は妻が全てを相続するので、ブレンダに疑いの目が向けられます。更にジョセフィンがツリーハウスから転落する事故が起こるとその犯人としてローレンス共々逮捕されるんですね~~。これで事件解決か?と思わせたところに、第二の殺人事件が起きます。今度の犠牲者はナニーでした。

また新たな遺言書が出て来て、その相続人はソフィアとなっていました。彼女が夜中こっそり回想録を燃やしている場面に遭遇したチャールズは問い詰めますが、彼女は「祖父の悪行を燃やした」と答えます。レオニデスはギリシャ内戦の際、CIAに協力することで事業を成功させ莫大な富を築いていたという 外交官だったチャールズがソフィアに近づいたのも、彼女の動きを探るためだったのですが、彼女を本気で愛してしまったため職を辞し姿を消したというわけです。

ブレンダ?ソフィア?それとも・・・と次々に浮かんでくる容疑者たちですが、その真相は「ぉぉぉ!!」となります。

ここからネタバレ

初めにチャールズを迎えたイーディス。もぐら撃退に銃をぶっ放しているシーンが重要な伏線になっていたり、その剪定鋏が証拠品として使われていたり、彼女が余命わずかな病に罹っているなど、一番濃い容疑者だったけれど、実は犯人はとても単純な理由から二人を殺していました。好きなバレエを才能がないと止めさせた祖父や、自分を叱ってばかりのナニーへの殺意。それに退屈な毎日への刺激が欲しかったという、それだけの理由で殺人に手を染めたのは12歳の少女だったという

印象的だったのは、亡き祖父の肖像画の前でトゥシューズを履いた彼女がバレエを踊るシーンです。その姿は、初めは祖父を偲んでいると思わせて、真実がわかった後、抑圧者から解放され自由を手に入れた解放感に満ちていたことに気付かされるという。

イーディスは彼女のノートを読んでしまい、真相に気付きます。余命いくばくもない彼女は、殺人犯として一生精神病院で過ごさなければならないだろうジョセフィンの未来を憂い、クレメンス家の対面を思い、自分が犯人となってジョセフィンを道連れに死のうとしたのね。チャールズとソフィアは二人の後を追いますが、間に合わず・・・映画はここで終わりますが、おそらくはイーディスの狙い通りの結末に落ち着いたのでしょう。

ジョセフィンはまさしく「ねじれた家」の申し子のような存在として描かれています。ブレンダたちを陥れるために、偽のラブレターを証拠品としてでっちあげたり、多少の怪我を覚悟で自分で事故を起こしたり、確かにその賢さは大人顔負けです。12歳の子供が犯した犯罪ということで、おそらく発表当時はかなりセンセーショナルを巻き起こしたのではないかしら。

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