杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

街とその不確かな壁

2024年02月10日 | 
村上春樹(著) 新潮社

十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを――高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そしてきみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。村上春樹が長く封印してきた「物語」の扉が、いま開かれる。(内容紹介より)


村上春樹の作品は「1Q84」くらいしか読んだことがなく、それすら「難解な」という印象で終わり今現在内容も思い出せないので、たぶん波長が合わないのだろうと感じていた・・・のにまた手に取ったのは発売当時世間で話題になっていたから。図書館で数十人待ちでやっと今手元に届いたけれど・・・やっぱり合わないなという思いを新たにしてしまいました。😖 

現実の世界と「壁で囲まれている世界」という二部構成で進む物語です。

第一部
海に近い静かな郊外住宅地に住む高校生の「ぼく」は、エッセイコンクールで知り合った私立の女子校に通う一つ年下の女の子に恋をし、彼女の語る「壁の向こう側の世界」を共に創ります。ところが突然彼女からの連絡が途絶えてしまいます。喪失感を抱えたまま高校を卒業した「ぼく」は、東京の私立大学進学後に書籍取次会社に就職します。

ある日、どこからかその世界に現れた「ぼく」は門衛に影を引き離され壁の向こう側の街の図書館で夢読みの仕事 をするようになります。この時既に40歳を過ぎている「ぼく」ですが、図書館で夢読みの手伝いをしてくれる少女は出会った頃の年頃のままなのです。引き離された影はやがて衰弱して死ぬ運命でしたが、「ぼく」は影に乞われて街から出してやります。

第二部
現実世界に戻った「ぼく」は、退職して福島県のZ**町の図書館館長の職に就きます。前館長の子易さんは実は一年前に亡くなっていましたが、「ぼく」と司書の添田さんだけには姿が見え会話もできました。
子易さんは代々造り酒屋を営んでいる素封家の跡取りでしたが、妻子を亡くした後、家業を譲ったお金で財団を作り図書館の運営に関わっていました。ベレー帽とスカートを愛用していた彼の姿は奇異ですが、その人柄と町の名士であることからそのことを揶揄する人はいなかったのです。
幽霊となった子易さんは、かつて影を亡くした「ぼく」に図書館を任せることを望んでいて、適切な助言を与える存在でもありました。

町の生活に慣れた頃、一人の少年(M**くん)・・・イエロー・サブマリンの少年が「ぼく」が墓所で子易さんに語りかけていた「街」に惹かれ、そこに連れて行って欲しいとやってきます。彼はサヴァン症候群のようです。生年月日から曜日を当てる特技を持ち、読んだ本の内容をすべて記憶することができますが、通常の人間関係を結べません。彼にとって現実世界はとても生きにくいものだったのです。「ぼく」は彼を「街」に案内することは出来なかったのですが、ある日突然少年は煙のように消えてしまいます。
「ぼく」は彼が「街」に行ったのだと直感しますが、彼の家族にそれを伝えることはできません。なにしろその「街」は「ぼく」の想像の世界なのですから・・・。

第三部
再び「壁の向こうの街」で夢読みをしている「ぼく」はある時イエロー・サブマリンの少年の存在に気付きます。二人は一体の存在だと語った少年は「ぼく」と同化します。「ぼく」が開いた夢を読み解くのは少年です。
やがて「ぼく」は現実世界に戻る選択をします。

主人公は高校生の時に出会った少女への想いを大人になっても忘れられずに彼女と創った「街」に精神が呑み込まれていきますが、現実世界を捨て去ることも出来ずにいるように感じました。
現実の町で、離婚してこの町にやってきて喫茶店を営む女性に親しみを感じるようになった彼は、やがて「壁の向こうの街」ではなく現実の町で生きていく選択をします。

「ぼく」が「壁の向こうの街」にいた間、現実の「ぼく」は消えていたわけではなく「ぼく」の引き離された影がちゃんと普通に生活していたらしい😥 
少年の方は「影」ではなく「木のマリオネット」の本体を森に隠して「壁の向こう」に行ったから現実世界でも神隠しのように消えてしまっているのね。😔 現実世界でのあの少女も彼女の作り出した「壁の向こう」に行ってしまったのかな😥 

作品に登場するジャズの曲(音楽)や少年が読んだとされる数々の書物については殆どわからないし興味も持てないのですが、林檎の焼き菓子とか食べ物の方には少なからず惹かれるものがありました😋
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