「鬼だ、悪魔だ」で話題の「セッション」先日レンタルで鑑賞。
最近中学校の教師がトイレで生徒をめった打ちにしたり、合唱で声を出していない(と思われる)生徒の口元にカッターナイフをあてたり・・といわゆる教師のパワハラ、虐待が問題になっているよね。
「セッション」に登場する音楽学校のエリート教師、フレッチャーのやっていることも、教室という密室での虐待になる。でも、小中学校の担任とフレッチャーの役割はかなり違うってこと。
この音楽学校は、将来音楽家として食っていきたい子供たちが入ってくるところであり、言ってみれば、生徒というより弟子ですね。師匠につく弟子というポジション。小中学校の生徒と教師は、そこまで高みを見据えた関係性ではない。なんせ、フレッチャーと生徒の関係は、将来の飯の種へとつなげっていくわけですから。
フレッチャーのバンドに入り、そこで認められれば、コンクールにも出演、スカウトの目にとまり、バンドマンとしてプロになれる可能性大。だから、生徒は緊張の上にも緊張する。
フレッチャーは生徒にフレンドリーに話しかけたりもするが、そこから得た情報をいびりのネタにする。生徒の身体的特徴も、彼にとっては罵倒のネタだ。
完全に「虐待」なんだよね。
でも、観客は救いを求める、きっとフレッチャーにも生徒への愛があるに違いない、最後には主人公の生徒、ニューマンとの心温まる交流を見せてもらえるに違いないと・・
フレッチャーを演じたシモンズのインタビューを読んだけど、彼は監督と話しあい、本作のクライマックスについても観客が自由に感じてもらってOKなように作ったと・・そして、紋切り型の「主人公が困難を乗り越えてチャンスをつかむ」的なストーリーにすることを拒んだと・・
自由に受け取ってもらってOKとのことなので、以下がワタクシの感想。
なんて嫌な奴なんだ、このふたり。
主要人物がふたりとも嫌な奴なのに、ここまでグイグイ引っ張ってくるのがすごい。
主人公のニューマンも相手を思いやって言葉を選ぶことが一切なく、目的のためなら、平気で人間関係を切る。(後半少し変わったが)しかも肝心な時に寝坊したりする。。
鬼教師のフレッチャーは「俺のバンド」「俺のテンポ」「俺に恥をかかせるなよ」「俺は育てたかった、バードを」俺、俺連発、自己愛満点の完璧主義者。
でも、偉大な音楽家として、音で人を翻弄し、酔わせ、狂わせ、夢中にするのに、「いい人」である必要なんてないとも言える。
本作は終始ひとつのことをつきつける「こんな狂った環境でも、やるか?それでも、音楽をやりたいのか?」と・・
衝撃のクライマックス、フレッチャーに笑みが・・でも、安心しちゃいけない、これは「俺のバンドが賞賛を浴びている」「俺はなかなかの者を育てられるのかも」の笑み。己のための微笑みなんだ。
本当にすごい強烈な映画でありながら、決して「いとおしく好きで抱きしめたい」映画にはならない。こんな嫌なやつ、ふたりだぞ。でも、職人系の仕事をしたいなら、見ておくべき作品かも。(ちなみにこのくらいきっついバンマスは結構いるそうです)
「戦って勝ち取れ。それでも、お前はやりたいのか」と胸倉をつかまれて叫ばれるから。
おそらく低予算でしょうが107分をじっぱし
緊張感持たせたのは大したもんだと。
ホラー的風味も加味されてたかと。
ほんと、このふたり、性格わるい。
先日この映画のことでお世話になっている
ミュージシャン達に感想をお聞きしましたら
華やかに見えても狭い世界で上下関係がきっぱり
してて血は出なくても足の引っぱり合いは日常
茶飯事ということでした。
性格悪いったらありゃしません。
でも、この緊迫感はすごい、こんなに嫌なものを見せつけているのにねー見事です。しばらく体にきましたもん。
裏はすごい世界でしょうね。お前どけ、そこ俺が座る、席取りゲーム、熾烈そう・・