時に全然期待していなかった作品を観た時、
「ああ~こんなにいい映画だったんだ。良かったな~~観て良かった~」
と思うことがある。
先日機会があって鑑賞した「この世界の片隅に」もそんな作品だった。
このアニメのヒロインは、ナウシカのような強烈なカリスマがある人物ではなく、
あの時代、どこにでもいたであろう女性、すずさん。
(旦那さんがずっと「すずさん」と呼ぶのがいいね)
今の若い姉ちゃん、兄ちゃんには信じられないだろうが、あの時代、娘たちは10代の後半くらいになると「あんたのこと、嫁に欲しいってよ」と言われて、そのまんま嫁いでいったりしていたんだよね。
見たことも会ったこともない相手からのプロポーズを受けて、
ほぼほぼお嫁に行っていたわけだ。
(すずの場合、会っているが、すずの方に記憶がない。)
嫁ぎ先では、嫁は次世代を残す「労働力」。
「お父さん、お母さん、末なごう、宜しくお願いいたします」
と挨拶をして、翌朝から早速家の中のことを任される。
そういう時代だったんだね~
すずの舅も姑も温厚な人だが、小姑がなかなか。
まあ、昔は全員が嫁いびりを楽しむくらいの家もあっただろうから、すずは恵まれていた方かもしれないね。
戦争が始まり、食料の配給がどんどん減るが、
野草などを使って工夫するシーンがいい。
終盤、残酷な運命に胸がつまるけれど、強いて「泣け、感動しろ」という感じがないのが良かったです。
母が生きているうちにソフトで一緒に見たかったなと思う。
繰り返す空襲の恐怖など、母は身をもって知っているので。
ただ、すずとの違いは玉音放送を聞いてのリアクション。
すずは怒りと涙で叫ぶ。おそらく、失った体の部分と愛おしい姪のために。なんのために失ったのか!最後のひとりまで戦うのではなかったのかと。
母は「これで夜眠れる」と思って本当に嬉しかったそうだ。
戦争で身近な人が亡くなった人とそうではなかった人との違いなのかもしれないね。
絵もとても美しく、実写では表現できなかったであろう良さがあった。
観て良かったよ。