月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

ブブロン・オン・オージュ村でガレットを(5)

2017-12-18 20:39:16 | 海外の旅 パリ編


ブブロン・オン・オージュ村は、フランスの美しい村にも数えらられる美しい花々が
あちらこちらに咲く、可愛い村だ。

さてリネンの店を出ると、もう時間がわずかしかない。
けれど、どうしても飲食店に入ってみたくて(それも日本人が少ない店)
クレープとガレットを食べさせてくれる店へ急いで入った。

看板には「CREPERIE」と書かれていて、その上に
"LA COLOMB'GE"とある。

店内には日本人観光は少なく、フランス人が普通に食事している光景に、ほっと胸をなでおろす。




さてと、何を頂こうかとメニューのリストを開くと、あら、全てフランス語で書かれていた。
昨晩のカフェもそうだった。
この地はフランス語を愛し、尊ぶゆえにか英語メニューを置いている店が意外に少ない。

私たちは、気を取り直して慎重に、りんごの軽いお酒・シードルを。
そして、食事メニューの中からガレット・クレープを選び、一番安いスタンダードなバターのガレットと
りんごやアイスクリームの入ったデザートクレープをオーダーした。

地元のおじさんやグループ客が、真っ昼間からシードルやワインを飲みながら、鼻を赤くして
クレープをナイフとフォークで口に運んでいる食事風景を、微笑ましく、チラチラと盗み見しながら、
オーダーの品が運ばれてくるのをひたすら待った。

10分待ったけれど、まだ来そうにない。これは時間がないな。
焦る気持ちはあるが、今の心中を全く怒っている風でなく、集合時間がある上でここの食事を全力で楽しみたいというところを、情報として正確に伝える現地のフランス語を、Nも私も、当然のように持っていないのが悔しかった。
(Nはフランス語は中級クラス以上はあるのに…自信がなかったのだ)
それで、じりじりとした気持ちのまま、クレープの焼けるのを待った。

そんなこんなはいざ知らず。

店員は、にっこりと笑顔とともにシードルの瓶とグラス、そしてクレープをゆっくりと運んできてくれた。
(パリのキビキビしたウエイターとは違って、ノルマンディーのメルヘンチックな小さな村。時間の使い方も悠長である)




私たちはバターだけで焼いたシンプルなガレットと、
りんご、アイスクリームをのせたデザート・クレープを、ほんの5分ほどでお腹の中におさめた。




どちらも、想像以上!の味だった。

外皮は薄くカリッとして、中は濃厚なもっちりとしたガレット&クレープ。
小麦の質がいいのに加えて、ゲランドの塩が良い役目をしているのだろう。
それらは一瞬のうちに、おなかの中にするするっと溶けていった。とてもおいしかった。

もう少し、せめてあと10分。居座って、シードルのりんごの香りまでゆっくりと味わって、
この場の雰囲気を記憶におさめておきたかったなと
すこし心残りを残したまま店を退出。

さあ出発だ。私たちは再びバスに乗り込んだ。
次の到着地はモンサンミッシェルである。




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