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モンサンミッシェルは、青々としたサラダのような柔らかい草原のかなたに忽然と現れた。
なんだか幻のような光景だ。
荒野のむこうにも見えた。
原っぱには黒い羊が放牧されていて、その向こうにもモンサンミッシェルは同じように存在していた。
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視覚の端に、モンサンミッシェルを認めてからは、バスがどんな景色の中を移動しようと、
モンサンミッシェルは決して裏切らずに堂々と現れ続けていた。
ピラミッドのように、その地に根を下ろす威厳がある修道院。
日本の富士山を思い出した。
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我々は車窓から、どんどん大きくなっていくモンサンミッシェルを見続けていた。
バスを降りると、真冬のような寒さだった。
灰色の空に、まっすぐに突き抜けて建つ灰色の修道院。
周囲には観光客もいて騒がしいはずなのに、驚くほど静かに建っていいる。
ここ対岸から島内は、徒歩で30分は軽くかかるということだったが、
私たちはシャトルバスを選ばず、自分たちの足でモンサンミッシェルに近づいていくルートを選んだ。
その日はものすごい風だった。
寒くて震えそうだったし、時折、突風にあおられながら
干潟の脇の歩道に沿ってひたすらに歩いた。
鼻も頬も赤くなって、ぶるぶる震えながら、ようやく、対岸から島へ着く。
島内出入口にはアヴァンセ門。
今は夕方の3時50分で。夜の8時15分までは自由行動である。
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門をくぐり進むと、観光ルートだ。
島の入り口の門を通ると「グランド・リュ」(大通りの意味)と呼ばれる、修道院まで続く参道があった。
狭い道の両端には、ふわふわオムレツで有名な「レストラン・ラ・メール・プーラール」や
おみやげ物店や絵はがきを売る店、レストランが続き、ホテルがあり、ものすごい人と食べ物と、雑居ビルのような商店群に
圧倒されながら、モンサンミッシェル修道院の入り口へと進んでいった。
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