月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

車でシネマへ行きましょう

2013-07-03 23:28:11 |  本とシネマと音楽と


日々の営みのなかで、溺れそうになったらどこに脱出しますか?

時々だが、ほんとうに時々なのだが。日々の営みのなかに、自分を見失いそうになることがある。
目の前の、生きるために、やらねばならないコトに向き合ってばかりいると、
時々、どこかに行ってしまいたくなる。
でも、だからといってすぐ旅の準備をできるほど、身軽な身の上でもないのだ。

そんな時、どこに行く?
(私の場合には、ウインドーショッピングをして気が晴れるタイプの人間でははい)。

電車に揺られて、美術館へも時々でかけた。一人美術館は、愉しい。
ひとりの画家が生きた見知らぬ国、生活、その人の見た風景、視点をゆっくりと
追いかけるうちに、心が洗われた。
でも、わたしは今、なら「シネマ」に出掛けるだろう。
友達と誘い合っていくシネマもいいけど、衝動的に出掛ける「シネマ」というのも、
とても贅沢なものがある。

先日、近所のミニシアター系の映画館で「マリーゴールドホテルで会いましょう」という映画をみた。





決めてから20分で準備して出掛けたので、普段着に近いスタイルで「車」に乗って出掛けた。
チケット売り場で、本当ならビールとポップコーン(塩味)を買うところを、この日はコーヒーで辛抱する。
映画はインドを舞台に紡がれた、イギリス人男女7人の物語だ。
男女といっても若い男女ではない。50代後半から70代の、人生の終末期を前にした男女。
熟年世代へのエールといってもいいかもしれない。

車とバイク、オートリキシャ(日本のオート三輪に似たようなもの)、自転車などの乗り物の洪水。騒音。
大勢の人の波。泥色の河。砂ぼこりの舞い上がる中の雄大な自然。最もエキサイティングな熱帯都市・
インドという舞台設定がおもしろかった。

7人は夫を亡くして初めての一人暮らしを決意したイヴリンを筆頭に、
皆それぞれの日常の混乱を抱えていた。
(イヴリンは40年間連れ添った夫に頼りきっていたため、多額の負債があることも知らず、
返済のために家を売り、一緒に暮らそうという息子の誘いを断り、インドへやってきた。
長年連れ添ったある夫婦の心はすでに別々の心でインドへ。持病の治療のために訪れたキャリアの老婆も)

そんな彼らを迎えてくれたのはインドの高級リゾートホテルとは名ばかりの、衝撃的な異文化の洗礼である。
カルチャーショックに襲われながらも、パワーに満ち溢れた国インドの風に背中を押され、
新しい世界に踏み込み、人生が 変わり始める7人の姿が描かれる。

「インドは、人の感覚、それまで当然だと思ってきたことのすべてを常に攻撃してくる」
「あらゆるコントラストを提示し、あなたを変えてしまう国です。時にスリリング、
時に魅惑的、そしてショッキング。 溢れる生命に満ちています」

という言葉に、インドという国の魅力がすべて込められている。
画面から溢れだしてくる熱い風のパワー、生きる人の笑顔、笑顔、笑顔。滴る花の色。
大きすぎる自然の姿に圧倒される。

この映画の根底に流れていたのは、自分の人生を変え、新しい何かと出会うのに、
遅すぎるということはないというメッセージである。
最後のセリフが衝撃だった。

「もう年だと諦めてしまうことがある。本当の失敗とはやらないないでおくこと」。
「朝起きたら毎日を懸命に生きる。それでいい」。

シネマというのは、一冊の本を読みおえたほどの爽快感と疲れと、満ち足りた気持ちを運んできてくれる。
帰宅したら自分の骨格がまっすぐになったような気がした。
せっかく近所のミニシアター系の会員になっているのだし、もっとせっせと足を運ばなきゃね。

そういえば、ゴールデンウィークは毎日連ちゃんで5本のシネマをおうちで観た。
おうちシネマも、積極的に続けたい…。





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