天国はまだ遠く瀬尾 まいこ新潮社このアイテムの詳細を見る |
パステルのほのぼの系の表紙を開くと、いきなり自殺行の話が始まる。
暗くなく力が抜けている筆致で緊迫感のなさは表紙に通じる。
どうやって死ぬのかと思えば、北へ向かって人気のない場所の宿で睡眠薬14錠を飲んで眠るだけ。
おめでたい。死ねるワケないでしょう
息子も飲みました。貰ったばっかりの精神科の薬1ヶ月分の3分の1位。
死のうと思ったんじゃなくていっぱい飲んだら楽になるんじゃないかと。
駅のプラットフォームで。
駅公安警察から救急車搬送先が私に通報され、お迎えに行ったら大いびきデシタ。
そうそう、朝っぱらから妹から電話で騒いでいた。
「母がアリセプトと間違って眠剤を飲んだけどどうしよう?」
テーブルに夜の分まで薬をセッティングしておかなおと母が不安がるんで、
眠剤まで習慣で置いておいたそうな。
こういう時、有難いことに、おかしな経験の場数だけは踏んでいるから動じなくて済む。
なんの心配もなくこちらは2時間の熟睡の後に起きてきて、自分が間違って薬を飲んだことすら覚えていなかったそうな
まぁ~そういうワケで一昼夜、一晩だけ続けて余計に寝て
翌々日、主人公はさわやかに目覚め
すっかり死ぬ気が失せて、自分を取り戻すまでの一泊1,000円の民宿21間のお話。
民宿は半農でもあり、ほぼ自給自足生活をしているな薄汚い三十男ひとりがやっていた。
人里離れたで交通事故で両親をいっぺんに亡くしたため長男だから後を継いだんだという設定。
食べるためにだけに漁をし鶏を絞める。無駄な殺生はなし。
ほんとうのシンプルライフが淡く淡く書かれている。
死ぬほどつらくなる前にどうにか方法はあるもの。
最後の民宿たむらの田村さんの主人公観察の言葉でうふふと笑える。
「あんた、自分のこと繊細やとか、気が弱いとか言うとるけど、
えらい率直やし、適当にわがままやし、ほんま気楽な人やで」
「なんですか、それ」
「ほめてるんやで、あんたみたいな人は、長生きするわ」
たった14錠の睡眠薬で死のうを思う時点で長生き出来る人だったかも?
力まなくて素のままんまで無理しなくても良いんじゃないの?と言うメッセージ。
休日のブランチのお供には最適な話だった。
作者は現役の中学教師とか。生徒に人望ありそうな。
読み終わったら『元気は食から』のような気になり、
ヨモギとユキノシタの若い葉を庭から摘んできて夕食の天麩羅にした。
私も結構率直に物言い適当にわがままの自覚もあり。お気楽で長生きする?
あんまり長く生きたくないんだけどなぁ~