愛と情熱の革命戦記

猫々左翼の闘争日誌

労働者階級の可処分所得を増やす方法

2009年11月03日 19時02分08秒 | 人間らしく働くルールの確立を

 もう11月に入りました。おそらく、今頃は多くの労働組合では冬の一時金を巡って使用者側と交渉(交渉という名の条件闘争か)のことを会議の議題としてあげて戦略などを練っていることかと思われます。

 資本主義社会のもとで労働者階級の生活を向上させようとすれば可処分所得を増やすことは欠かせません。それでは、可処分所得を増やす方法にはどのようなものがあるでしょうか。

 賃金を引き上げる―労働者階級は自分自身では生産手段を持っておらず、雇われる、つまり労働力を資本家階級に売り、自身の労働力の対価としての賃金を得ることでしか生活ができません。したがって、賃金を引き上げることは労働者階級の可処分所得を増やすためのもっとも古典的な手段であり、いつの時代も欠かせないといえるでしょう。労働者階級は、自身を雇う相手を選ぶことができたとしても雇われない、労働力商品を販売しない自由というのがありません。ですから、どのような時代でも労働者階級の生活を守るための賃金闘争なくしては、労働力という商品の値段としての賃金は絶えず引き下げられる傾向があります。ですから、賃金をめぐる労働者階級の闘争は資本主義社会が資本主義社会である限りは避けては通れません。

 さて、労働者階級の可処分所得を増やす、生活を向上させる方法として考えられることは賃金引上げ以外にもあります。というより、賃金引上げ以外の方法ということを労働組合の活動として固有の問題として追求していく必要があります。これは、個別資本家に対する経済闘争ではなく、労働者階級の生活を守り、向上させていくために必要な制度、労働法や各種社会保障制度、福祉制度を労働者階級のための方向へ切り替えていく、なければ新たに制定することを政府に要求するということです。こういったことは、分類としては政治闘争にあたります。

 日本では、昨年末に社会問題として共通の認識になった派遣切りなど貧困の問題があります。こういう問題が発生する原因の一つの要素としては労働者階級がいったん労働市場の外に締め出されるとたちどころに生活が立ち行かなくなる、ということがあります。そのために、とくに非正規雇用労働者の間では、条件が悪くても受け入れざるを得ない「ノー」といえない労働者が大量に生じました。労働者階級には雇われない自由といういうものがないので、労働市場の外でもある程度生活できる仕組みがないと結局は労働力商品が不当に安く買い叩かれてしまいます。ですから、労働者階級の可処分所得を増やすために、少なくとも減らさないためには社会保障分野を発展させて労働市場の外に締め出されたとたんい生活が破綻するという状況を改善する必要があります。

 労働市場に密接にかかわる部分として最低賃金法の抜本的改正が欠かせません。全労連などは全国一律最低賃金を1,000円以上にすることを要求事項として掲げています。これも、労働力商品の値段の最低限度を設けることにより働いてもまともな生活ができない状況をなくすとともに悪条件をも飲み込まざるを得ないような「ノー」といえない労働者をなくしていくために必要です。ほかにも、やるべき事柄はたくさんありますが「ノー」といえない労働者をなくしていくことが労働者階級の可処分所得を減らさずに増やしていくために必要です。

 労働者階級の可処分所得を増やしていくためにどうしても欠かせないこととしては、社会保障、福祉の分野にかかわる事柄だけではなく税制の問題が避けて通れません。

 現在、所得税の基礎控除の額は38万円です。だいたい38万円で1年間暮らしている人はまずいないわけです。憲法25条がある日本においては、生活の基盤、最低の生活費の部分に課税することは生存権の侵害といわざるを得ません。税制の民主的原則としては、生計費非課税の原則は譲ることのできないものです。ですから、過渡的な段階が必要であるにしても、基礎控除の金額は少なくとも生活保護基準を下回らないようにするべきです。生計費非課税の原則として考えるべきこととしてあげられることとして問題視しなければいけないことの一つは、消費税の問題です。昔の物品税は、消費税の一種でしたが、嗜好品に限っての課税であり、また課税される対象が法律でもって決められていました。消費も担税力という考え方が成り立つのは生活必需品ともいえない嗜好品、ぜいたく品に限ったことです。しかし、現在の消費税は一部の例外をのぞいて生活のあらゆる部面にかかわってきます。とくに食料品にまで消費税が課税されるのは、生計費非課税の原則に反します。どれほど低所得であっても生きていくために食事を摂取しないわけにはいきません。そういう部分に課税すること自体が生存権の侵害です。なお、低所得者ほど最低限の生活必需品の消費の所得に対する割合が高くなります。消費税が低所得者ほどに重くのしかかる逆進性は一つにはここに起因します。ですから、労働者階級の可処分所得を増やしていくためには、当面食料品を非課税にしながら大企業や高額所得者を優遇するような不公平税制を正しながら、最終的には現在の消費税廃止への展望をきりひらくことが避けられません。

 マルクスやエンゲルスが生きていた時代においては、労働者階級の可処分所得を増やす方法は主として賃金引上げでした。もちろん現在でも、この問題に取り組むことは大切です。同時に、現在の社会においては労働法制や各種社会保障、福祉制度を充実させることなくしては、労働者階級の可処分所得を増やしていくことなど望むべくもないことです。ですから、今の時代の労働組合は、自分の職場だけの狭い範囲にとらわれるのではなくて、広く政治や経済のあり方と労働者階級の生活環境とを有機的に結び付けて考えて運動していく必要があります。

 すべての事柄を網羅的にここで手際よく扱っているとはいえないかもしれませんが、労働者階級の可処分所得を増やすということと社会における制度のあり方と結びつけるような記述をしたのには、特に中小企業の労働組合の運動の展望を見ていくためにはどうしても政治闘争と経済闘争とを車の両輪のようにとらえて運動を進めていく必要があるからです。大企業は、多額の内部留保を有しているので、その一部を取り崩すことによって賃上げを勝ち取ることができます。しかし、特に今のような不況の元では中小企業では会社の経営そのものが圧迫されており賃上げといっても、経営者側にその能力がまったくない、あるいはほとんどありません。そういう状況で、中小企業の労働組合が使用者側との経済闘争、条件闘争一本やりでは労働組合自体の存在意義が見失われかねません。また、中小企業の労働組合においてはとくに今のような不況のときにこそ労働組合が政治闘争に本格的に取り組む必要性がいっそう浮き彫りになってきます。

 それにしても、今の状況だとまた派遣村を立ち上げる必要があるかもしれません。すでに、また派遣村をつくる必要があるという声すら聞こえてきます。

 労働者階級の可処分所得を増やす、それだけではなく労働者階級をはじめ勤労市民などの諸階層の生活と営業を守っていくためには政治と経済のあり方を根本的に変革する必要があります。

 来年の夏には参議院選挙があります。労働者階級の生活を抑圧し、日本社会に貧困を拡大させてきた自民党や公明党には、厳しい審判が今年の総選挙に続いて来年の参議院選挙で下すことが労働者階級に求められています。そして、労働者階級が中心になって、日本の政治と経済のあり方を民主的に変革することが今こそ必要です。