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キャリコンまっちゃんのホッとひと息

キャリアコンサルティングの合間にホッとひと息。
その日に感じたことや起きた出来事などを
日記形式でつぶやきます。

区分が変わる貸借対照表(B/S) 資本の部

2006年06月29日 | 会社法入門
今日は、新会社法における財務諸表について投稿します。
これまで、私たちが財務諸表を見る時には、主に貸借対照表、
損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(CF)を
見ているかと思うのですが、この中でB/Sについては
新会社法の施行に伴い、表示の仕方が大きく変わります。

まず、変更点について説明します。

・資本の部の廃止
従来、株主資本や純資産とも呼ばれていた「資本の部」が廃止
され、「純資産の部」が新設されます。

この純資産の内部構成は、株主資本、自己資本、純資産の3つであり、
従来の資本の部の「株主資本=自己資本=純資産」という意味合いとは
異なっています。

つまり、新会社法では、「株主資本<自己資本<純資産」となる内部構成
となるのです。

その理由は、株主資本に属する範囲は、資本金、資本剰余金、利益剰余金、
自己株式までであり、最も広範な純資産では、株主資本や自己資本を全て
含むことはもちろんのこと、新株予約券や少数株主持ち分も含むからです。

ところで、この表示方法の変更によって、企業においては混乱が
生じています。
それはなぜなのでしょか?

その一つは、決算短信の開示による、株主資本利益率(ROE)の計算方法
が不明なこと、です。

ROEは従来、税引後当期純利益/自己資本(株主資本)という計算方式を
とっていた財務諸表の一つで、株主にとっての投資収益性を端的に表す財務
諸表として知られている指標です。

このROEの算定方法をどうするか?というのが、微妙になってきたというのが
企業を悩ます原因になっています。
それは、上記に変更点を記載しましたが、自己資本の意味合いが新会社法では
大きく異なっているからです。

つまり、新しい株主資本は、純資産全体ではなく、より限定された部分を示す
言葉になっているのです。
これは困った、どうしましょう!ということで、この問題を解消するべく、
金融庁と東京証券取引所が打ち出した新しい「自己資本」の概念が以下のとおり
発表されています。

自己資本=純資産-(新株予約券+新株予約券)

この自己資本の算出方法により、短信上の計算がスッキリしたのですが、
短信上の表示も、以下のとおり変更されました。

株主資本当期純利益率 → 自己資本当期純利益率
株主資本比率 → 自己資本比率

あまりよくわからない変更点なのですが、この「あまりよくわからない」と
いう変更こそが、企業を悩ます原因なのです。
今年の株主総会では、こういった会計制度の変更点もあり、総会担当者を
例年以上に悩ませているのではないでしょうか。


  

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役員定数の削減について(データでみる新会社法)

2006年06月27日 | 会社法入門
最近忙しくて、なかなか投稿できずにいます。すみません。

ということで、1回1回の投稿に気合を入れて充実した内容に
したいと思っています。

今回は前回に引き続き、敵対的買収に対抗した、中部主要企業の
取組みについて投稿します。

そこで、前回は授権資本枠の拡大についてでしたが、今回は役員定数の削減
について投稿します

まず、役員定数の削減についてですが、これは主に取締役を中心とした
会社役員をさしています。

各企業は今回の株主総会において役員(主に取締役)定数の削減案を
提案しています。

たとえば、名古屋にある某有名自動車メーカーでは、
現行:30人以内としている役員定数→20人以内 へと削減しようと
しています。
また、岐阜の有名部品メーカーでは、15人以内→10人以内へと削減を
提案しています。

このような中部主要企業の動きは、日経新聞の記事によると9社です。
もちろん、実際にはもっと多くの企業が役員定数削減の方向にあると
予想されます。
ちなみに、この9社合計では、44名の役員定数の削減が提案されています。

ところで、この役員定数の削減が、なぜ敵対的買収への対抗策と
なりえるのでしょうか。

まず、考えなくてはならないのは、役員で構成されている会社の取締役会で
決議できる議案については、議決に加わることが出来る取締役の過半数が
出席し、その取締役の過半数の賛成をもって決議が得られた場合に、
原則的にその議案は可決される、ということです。

したがって、会社の経営の方向性などは、まず役員会の承認によって定められ、
あるいは、株主総会によっても諮られるため、会社にとって役員の存在は
当然ながら絶大な影響力があります。

そして、大企業になればなるほど、色々な経済的事情やしがらみなどもあり、
役員数は膨らむ一方です。

しかしその一方で、上記に挙げた企業においても、定款の定めで役員定数を
30名と定めてはいるものの、実際に30名の役員がいるわけではありません。

20名だったり、10名だったりする場合もあるでしょう。
つまり、役員定数はあくまでも上限であり、かならずしも定款どおりの役員数で
ある必要はなく、「空席」が存在します。

そこで、敵対的買収を仕掛ける側としては、この「空席」に着目し、株を大量
取得した後に、買収先の企業へ過半数の役員を送り込み、会社経営に積極関与
しようとすることもあります。

この具体例としては、村上ファンドさんが阪神鉄道に対して実施しようとした、
敵対的買収(TOB)や、ホリエモンのニッポン放送を通じたフジテレビとの
提携など、一連の買収騒動をみればよくわかると思います。
(たしか、フジテレビでしたよね?)

というわけで、企業としては出来る限り、役員の空席を削減し、本来の企業に
必要な役員で脇をガッチリと固め、敵対的買収の危険を回避しようというのが、
この役員定数削減の主な狙いです。
他にも、迅速な決議や事務的費用や報酬などの削減といった効率的な取締役会
運営という狙いもあるため、企業にとって役員定数の削減は大きな効果が
あるといえるでしょう。

とはいえ、役員定数が必ずしも良いということではありません。
前回の授権資本枠の拡大の際にも説明しましたが、会社にとってのメリットと
株主にとってのメリットは必ずしも一致せず、トレードオフの関係になる場合が
あるからです。

すなわち、役員定数が削減されるということにより、毎度おなじみの経営陣に
よって馴れ合いの会社運営が行われかねず、株主にとっては意図しない
会社経営がされる可能性もあります。いわゆる、「お手盛り」経営です。

したがって、前回の授権資本枠の時と同様に、企業は定期的なIR活動を
通じたディスクロージャーを行い、企業経営の透明化を図り、株主の理解
を得て、株主との良好な関係を築き、その関係を維持する必要があるのです。

この良好な関係が築かれない企業の場合、今回の株主総会では議案が
否決されるかもしれませんね。



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企業の敵対的買収が過剰防衛策となりうる可能性(データでみる新会社法)

2006年06月26日 | 会社法入門
久しぶりの投稿です。
ここのところ、身の回りで色々とあって、なかなか投稿できずに
いました。

今日は、企業が講じている敵対的買収策について投稿してみたいと思います。
中部企業の主要企業における株主総会に向けた買収防衛策を盛り込んだ
定款変更の動きは進んでいます。

たとえば、授権資本枠の拡大を盛り込んだ定款変更を提案する中部企業は、5社。
さらに、役員定数の削減を盛り込んだ定款変更を提案する中部企業は、9社。

ちなみに、授権資本枠とは、企業が発行可能な株式数の上限枠のことです。
一般に、企業が発行する株式数は、定款にあらかじめ定められており、この発行
株式数を増加させる際には、定款変更が必要となっています。
今回の改正では、この株式発行枠が拡大されたため、企業はこれまで以上に
株式の発行をすることができるようになりました。

とはいえ、この定款変更には、株主総会にて決議を諮らなければなりません。
この理由は、発行株式数が増えるということは、株主に対する配当金が減少する
と予想されるからです。
つまり、「1株利益の希薄化」が挙げられます。
したがって、買収防衛を睨んだ定款変更などの過剰防衛策が、結果として
株主価値の毀損(きそん)につながるなら、株主の賛同を得られない可能性も
あります。

ちなみに、授権資本枠の拡大を提案をする中部主要企業の中で、某自動車部品
メーカーでは、3億株→4億株へと変更案を提案しており、1億株もの発行
株式数を引き上げる予定のようです。

ところで、説明が遅れましたが、この授権資本枠を拡大することによる、企業に
とってのメリットを解説します。

これは、今後村上ファンドさんのような投資ファンドが企業に乗り込んできた
時に、授権資本枠いっぱいまで株式発行することで、投資ファンドの持ち株比率
を引き下げる狙いがあります。

ここで、上記の企業を例にとって、詳しく説明します。
これまで、3億株を発行しているこの企業株の3億株のうち、投資ファンドが
いきなり25%にあたる7500万株を大量取得してしまったとします。
この場合、企業が取りうる買収対抗策としあらかじめ定められた定款変更に
基づいて、残りの1億円を発行すると、この投資ファンドの持ち株比率は
18.75%まで持ち株比率が引き下げられてしまいます。

もし、仮にファンド側がこの企業の51%の株を取得しようとする場合は、
発行株式数が3億円の場合は、1億5300万株の取得です。
その一方で、4億円の場合は、2億400万株となります。
ということは、4億円の場合は、ファンドは5100万株も余分に株式取得
をする必要性がでてきます。
もし、1株100円と仮定した場合でも、5100万円×100円=51億円ですので、
買収はかなり困難になるといえるでしょう。

とはいえ、先ほども書きましたが、これだけの株式が発行されるということは、
当然1株利益の希薄化が予想されるため、既存株主が嫌がるのは当然の事態
といえるでしょう。

既存株主にとって、企業から納得できる説明がなされないと、この株式発行枠
の拡大については、総会で否決されるケースもでるのではないでしょうか。

一方、企業にとって、安易な株式発行枠の拡大は、1株利益の希薄化を意味し、
やがて株主離れを引き起こし、結果的に敵対的買収を仕掛けられる危険もないとは
いえず、定款変更には慎重な検討が求められると思います。
したがって、企業にとって大切なことは、いかに長期保有を目的とした優良な
安定株主(特に個人投資家の場合)を増やすか、ということになるでしょう。
大手企業が株主総会で、さまざまなイベントを行っているのは、自社の経営
活動を理解してもらうだけではなく、長期保有を目的とした優良な安定株主を
増やしたい、という狙いがあると思われます。

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最近の主要企業の株主総会事情

2006年06月21日 | 会社法入門
先週から今週に掛けて、主要な企業の株主総会が相次ぐせいか、
日経新聞には会社法絡みの記事が目白押しとなっております。

その多くは「定款変更」に関するものであり、これまでに投稿してきた
ような会計監査人についてとか、株主総会の会場、M&A対策としての
ポイズン・ピル(毒薬条項)、責任限定契約などに関するものが、
株主総会の議題に取り上げられているようです。

そして、もう一つ大きな株主総会の議題として、剰余金の配当政策があります。

今回の新会社法では、企業の剰余金を株主に対して、原則的に1年に何度でも
配当できる内容に変更されています。

したがって、企業にとって形式上は、株主をつなぎとめる、あるいは納得させる
好材料が増えたということになります。

ただ、企業にとっては、この配当政策の変更がプラスに働くばかりではありません。

それは、配当回数が増えるということは、その分決裁を得るための書類を作成・
提出する回数も当然に増えるということです。
したがって、社員の事務手続きやコストが増加する、ということを意味するのです。

また、血族による世襲的性質の強い主要企業はまだまだ多くあります。
これらの企業において、発行株式総数の大半を血族が占めている場合では、
自分たちに有利な利益配当という、株主の独走を許してしまう危険性も捨て切れません。

そんなわけで、剰余金の配当回数を一年に何度もするということは、企業にとって
いわば「両刃の剣」となってしまうかもしれないのです。

新会社法では、剰余金の配当政策について、定款で定めをするか、あるいは
株主総会で決議された場合は、原則的には取締役会にて決定することが出来る
とされています。

しかし、ここのところの企業の動きをみますと、取締役会ではなく、あえて
株主総会に剰余金の配当政策の決定権を委ねることにより、株主の厳しい目の
中で、企業のコンプライアンス体制を貫こうという強い意思が見えます。

新会社法は、企業による企業のための強力な内部統制をしていくことを支持
しています。
このことからも、企業のこうした強い意思は、まさに新会社法の意図するところ
なのかもしれませんね。


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株主総会の開催地について(補足説明)

2006年06月19日 | 会社法入門
先日、株主総会の開催地について説明しました。
今回は、この株主総会の開催地について、補足説明したいと思います。

会社法においては、招集地に関する規定は削除され、置かれていないと
いうことでした。
したがって、開催地の制限はなくなり、どこで開催してもよくなりました。
さらに、衛生中継等を利用して複数会場で開催することも可能です。
また、外国で株主総会を開催することも一応適法ですが、特定の株主の議決権
行使を妨げる意図でそのような場所での開催を決定した場合には、株主総会決議
の取消時由(会社法第831条第1項第1号)になりうるので注意が必要です。

次に、会社法施行規則第63条第2号により、株主総会の開催場所が過去に
開催した株主総会のいずれの場所とも著しく離れた場所である時は、原則として
その場所を決定した理由を定めなければならないとされています。

ここまでは、前回説明したとおりです。

さて、ここからが今回の内容の焦点です。

日本における株主総会の開催自体を、インターネット上で行う、
すなわち、物理的な開催場所を持たない完全な「バーチャル株主総会」の
開催も可能か?という問題を考えてみましょう。

実際、株主総会をインターネット上で「バーチャル」的に開催できたとしたら、
一体企業の株主総会に費やす費用はどれほど浮くでしょうか?
便利ですよね~。
また、総会屋さんが混じっていたら、総会屋さんの回線接続だけを、ブチッ!と
切ってしまえばいいですしね…。

話は横道に逸れましたが、問題の答えは、残念ながら日本では否定的に
解されているのが現状です。
つまり、バーチャル株主総会は開催できない可能性が高い、ということです。
理由は、会社法第298条第1項第1号で、「株主総会の日時及び場所」を
定めなければならない、とされているからです。

ちなみに、アメリカのデラウェア州会社法の下では、完全なヴァーチャル株主
総会も実施可能とされ、現実に実施した会社も現れています。
いずれ、日本でもバーチャル株主総会が可能になる日がくるかもしれませんね。

その時には、総会屋さんのネット接続は不可能になるかも…。


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最低資本金制度の撤廃について(データでみる新会社法)

2006年06月19日 | 会社法入門
今日は、最低資本金制度撤廃について、なぜ最低資本金制度を撤廃したのか、
具体的なデータを見てみようと思います。

実は、最低資本金制度が撤廃された理由は、これまでもかいつまんで
話してきました。

つまり、株式会社が1000万円→1円で開業できるようになったことで、
開業率を促進する狙いがあるということです。

では、本当に政府の思惑通りに開業率は促進されるのでしょうか?
政府は、最低資本金制度の撤廃という大きな改正を何を根拠に行ったのでしょうか。

その根拠には、アメリカの法人企業設立件数があります。
アメリカにおける個人開業数+法人開業数を合計した統計をみてみると、
雇用者数と遜色ないことがわかっています。

特に、2000年以降は、法人開業企業数の力強い伸びに支えられ、開業者数が
雇用者数に比較して特段低迷している様子はみえないのです。

このことは、他の就業形態に比べて、自己雇用者(開業者)が伸び悩んでいるという
よりも、事業のあり方に法人形態を選択するものが増えただけで、実質的には
他の就業形態に比して遜色なく伸びているといえるものです。
つまり、アメリカでは法人企業を選択し開業する企業が増えているということなのです。

日本では、1986年以降、開業率と廃業率の逆転現象が起こり、以来、現在に
至るまでサービス業を除く全産業で開業率の低下が問題視されています。

政府としても、この状況を改善すべく手立てを考える中で、アメリカの状況を
調査し、法人形態での開業率を促進することを検討に入れたといえます。
そこで、政府が行った施策として、2003年2月から資本金が1円でも
株式会社や有限会社を設立できる「最低資本金規制特例制度(新事業創出促進法の
一部として運用)」が始まりました。

この施策の運用の結果、2003年2月から2004年12月までの約2年間の
間に設立された法人企業数は2万件を突破しており、資本金1円による会社設立数
をみても、制度利用数は順調に伸び続けています。

これらの内容を鑑み、政府は日本経済の持続的成長・発展を目指し、法人企業に
おける最低資本金制度の撤廃を行ったといえるでしょう。

とはいえ、幽霊会社や休眠会社に対する策もあり、長期間(12年間)特に営業活動を
行っていない企業については、裁判所の権限にて廃業することができることに
なっています。

最後になりますが、最終的に企業数がどれだけ増加するかというのは、単に
最低資本金だけの問題ではないことを意識してください。

つまり
・新規事業アイデアの創出やビジネスモデルの構築が可能
・具体的な顧客ニーズが見込める
・自分がやりたい仕事が明確になっている
・家族の理解がある
・日本経済やGDPの伸び率が高い など

上記の要因やそれ以外のさまざまな、あらゆる要因が合致した時にはじめて、
開業はなされるのであり、株式会社を選択・開業するというのは、あくまで
そうした自分の夢を具体化する1つのツールに過ぎないということなのです。







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会計監査人について(データで見る新会社法)

2006年06月18日 | 会社法入門
今日は、新会社法における監査役について投稿します。

まず、監査役とは、会社の業務や会計について監視する人のことを
指しています。

ライブドアを例えに出しますと、取締役等の重要な方々などが不法行為を
した時に、抑止力となる重要な役割を担う方のことです。

この監査役は色々な方が就任できるのですが、社外監査役も当然存在し、
その代表的な方は「監査法人」「公認会計士」などです。

そして、新会社法では、彼らを会社の会計監査人に就任させる際には、
会計監査人の業務独立性と登記を求めていますが、さらに、対会社責任の
制限や免除も認めています。

つまり、会計監査人が会社の不法行為に加担したとしても、取締役の方々
と連帯責任を一定限度までに抑えることが出来るという規定です。

この規定は、従来、監査役までに留まっていましたが、新会社法では会計監査人
が株主代表訴訟の対象に加わったことから、新たに付け加えられたものです。

それでは、この規定を詳しくみてみましょう。

対会社責任の制限・免除の方法

1.総株主・総社員の同意による免除
2.株主総会の特別決議により、善意無過失の役員の責任を年間報酬数年分
 に限定するもの
3.定款の定め、及び取締役会決議による、2と同様の措置
4.定款の定めによる、会社と役員との事前の責任限定契約
となります。

ちなみに、2の年間報酬数年分とは、会計監査人の場合、2年分と役員の中で
最も軽いものです。

ただし、第三者責任については、悪意(知っていたこと)または重過失があった
時には、会計監査人は他の取締役と同様に、第三者に生じた損害を賠償する
責任を負います。

さて、この「対会社責任の制限・免除」ですが、もちろんこれは義務規定では
ありません。いわゆる任意規定というものです。

つまり、会計監査人における対会社責任を制限・免除することができる、という
ことなのです。

現在、多くの大手企業が株主総会まっさかりですが、この「対会社責任の制限・免除」
規定をどうするかで、企業は頭を悩ましているようです。

その理由は、中央青山監査法人のカネボウ粉飾決算事件が影響しています。
つまり「監査不信」が背景にあるのです。

まあ、監査法人も人の子ですので、粉飾決算などは利害が絡めば、やってしまう
でしょうし、粉飾決算については多くの企業で往々にして行われていることでしょう。

ということで、企業の立場にしてみれば、会社の業務や会計を監査する立場の
者に役職を与えるからには、役職に応じたそれ相当の責任を与えなければ、
イザという時に抑止力として機能しないのではないか?と、考えるわけです。

ですから、この「対会社責任の制限・免除」を規定することが果たして適当なのか、
という点は企業にとってとても悩ましいわけです。
さらに、この規定は上記で見たとおり、株主総会の議題に掛ける必要性も
出てきますので、当然に株主を納得させなくてはなりません。

現在、対会社責任の制限・免除(いわゆる責任限定契約)を定款変更議案から
除いた主要企業は9社ですが、その中で中央青山の監査先企業は5社あります。

ちなみに、責任限定契約の導入を決めた主要企業は、約60社以上となっています。

さらに、会計監査人の交代などを求める議案も増えており、2006年6月現在、
57社(新興企業を除く全国上場会社)を上回る公算が大きくなっています。
これは、資生堂など約80社が中央青山監査法人との契約解除を決めたからです。

今後は、さらにこの責任契約免除を定款から除く企業が増えることも予想され、
監査法人の果たす役割の重要性は厳しさを増すといえるのではないでしょうか。

日本経済新聞新聞 記事「06株主総会の焦点 会社法が変える①」より抜粋






















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総会会場といえば(データで見る新会社法)

2006年06月15日 | 会社法入門
先ほどライブドアの総会について投稿しましたが、せっかくですので
新会社法における総会会場について書きます。

総会会場を前年から変更する主な企業が、先日の日経新聞に掲載されました。

たとえば、居酒屋大手のワタミさんのケースでは、
東京ベイNKホール→両国国技館

(もしや、株主の席はマス席でしょうか。
株主総会開催に先立って、塩をまいたりして…)

インターネットサービスプロバイダー大手のヤフーさんでは、
赤坂プリンスホテル→東京国際フォーラム

コスメティック大手の資生堂さんは、
高輪プリンスホテルから→帝国ホテル  などです。

これまで、総会の開催地は本社所在地またはそれに隣接する地、あるいは
定款に記載のある場所に限定されていました。

しかし、世界的企業が増加する中で、これらの規制は企業にとって過大な負担を
強いるものとなってきたというのが、今回の改正の背景にあります。

そこで、今回の改正では、これらの制限は廃止され、原則的に、企業は株主総会
開催地を自由に選択できるようになりました(例外規制あり)。会社法第298条 
このことで、企業にとっては、株主にとって不利益な開催地でなければ、柔軟に
開催地を決定することが可能になります。

ちなみに、不利益な開催地とは、株主が総会に参加できなくなるような、意味のない
開催地のことです。

つまり、主に東京に営業拠点を持つ企業が、総会開催地をパリとする場合などです。

極端な例でしたが、この例でいえば、株主が総会に参加するには多大な費用が
掛かるばかりか、会社の場所となんら関連がないと思われます。

したがって、開催地は原則自由ではあるけれど、開催地と会社との関連性も
必要になるわけです。

ですから、前年まで東京での開催をしていた企業ならば、より多くの株主に
参加していただけるようにという意味で、同じく東京の前年より大きな会場に
移すという理由は妥当だといえるでしょう。


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新会社法について(名称変更)

2006年06月13日 | 会社法入門
昨日の日経新聞にも取り上げられていましたが、この新会社法については、
様々な名称が変更されています。

たとえば、公開会社や非公開会社の意味あい、そして委員会設置会社、
事業報告など。

私たちが「公開会社」と聞くと、上場会社のこと?と考えますが、新会社法に
おける公開会社は、上場会社よりもさらに広義の意味合いを持ちます。

つまり、自由に売買できる株式を1部でも発行したら、公開会社という意味です。
反対に、非公開会社は、全株式に譲渡制限を付けたら非公開会社という意味です。

したがって、新会社法においては、上場・非上場という言葉は関係なくなりました。

次に、委員会設置会社なのですが、以前は委員会等設置会社と言われていました。

この「等」をなぜ外したかということですが、日経新聞の記事によれば、
一番の理由は「語感が悪い」(法務省関係者)とのこと。

さらに、事業報告ですが、以前は営業報告書のように呼ばれ、しかも最後に
「書」が入っていましたが、この「書」についても省かれました。

この理由は

①「営業」という言葉を使用しない業界があること
②電磁的記録(インターネット)での作成も出来る、との注釈を省く狙いがある

 ということです。

この時期、企業では定時株主総会まっさかりですが、総会を控え各企業の
総会担当者は新会社法の解釈で頭が痛いのではないでしょうか。

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有限責任事業組合(LLP制度)について

2006年06月12日 | 会社法入門
今日は、有限責任事業組合(LLP制度)について投稿します。

このLLPとは、limited Liability Partnership の略で、有限責任の
組合制度のことです。

前回、合同会社(LLC)の説明をしましたが、このLLPとどこが同じで、
どこが違うのか、わかりにくいと思いますので、まずその説明から入りましょう。


LLCとLLPの共通点

・有限責任制
・内部自治原則 
・最低資本金規制がない
・定款の認証や「払込金保管証明」も必要なし
・登録免許税は必要(最低6万円)

LLCとLLPの相違点

・合同会社(LLC)は、会社の一類型、つまり新会社法に基づいた会社組織
・LLPは、民法組合の特例という位置づけのため、法人格を有していません。
 (LLPは、平成17年8月施行の有限責任事業組合契約に関する法律に
 基づいています)

 したがって、LLPから株式会社や合同会社への会社組織の変更はできません。

なお、LLPは、課税上は出資者に直接課税される構成員課税の適用を受けます。

ところで、このLLPは、どういう場合に活用が出来るのでしょうか。
次に、活用例を挙げてみます。

・経営コンサルタントの共同事業展開といった、専門人材の集合体
・ロボットの共同開発や製造といった、ジョイント・ベンチャー
・異業種間の新製品開発などを目的とした、中小企業の連携
・新薬の共同開発事業を目的とした、大学や企業の連携、つまり産学連携 など

上記の活用以外にも色々考えられますが、要するに共同事業を行う場合に、
LLCやLLPは活用可能だということです。

どちらを選択するかということについては、やはり上記の活用例でいえば、
会社を将来どうしたいのか、という目標によって変わるかもしれません。

つまり、新商品開発の成功後に、株式会社にするぞ!という場合は、
合同会社(LLC)を選択し、成功後に解散するプロジェクト的な位置づけで
あれば、LLPといった具合です。


いずれの組織を選択するにせよ、両方とも、内部自治原則が適用されるため、
専門性や技術力に優れ、貢献度の大きい企業・個人に出資比率以上の議決権・
利益配分を行うことでインセンティブを高めることが出来ます。

また、組織設計が柔軟に出来るため、機動的な事業展開が出来るのも、これら
組織の魅力的な点といえるでしょう。


さて、LLPについてはこれくらいにして終わります。
次回からは、新会社法の個別の具体的内容に移ります。
題して、「データでみる新会社法」です。

皆さんに新会社法について興味を持ってもらえる内容にしますので、
どうかお楽しみに!



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