大学にて学生の研究を指導し始めて10年以上経過しています。卒論生や修論生は数えきれないほど指導してきましたし、博士課程の学生も3名が修了し、今は2名を指導中です。計5名のうち4名は留学生です。
私自身は出来の悪い学生でしたので、30歳で助教授として仕事を始めたときには大したレベルの研究ができず、学生たちにも迷惑をかけたと思っています。
ですが、10年が経過したので、学生の指導についてはそれなりに作法を体得してきてはいます。
博士課程の留学生は、母国ではトップエリートですから、その指導は容易ではありません。ご自身のプライドが高い場合がとても多い。上には上がいくらでもいますので、私自身も大学で不要なプライドなるものを粉々に砕かれましたが、彼らにも謙虚になってもらうよう、教師側も全力で対峙します。
彼らと研究を進めていく上で、まずは研究と勉強は違う、ということを納得してもらうことから始めます。
例えば、数値シミュレーションを活用した研究を行うとして、最初は数値シミュレーションを使いこなすようになることから始めます。そして、既往の実験結果等を練習としてシミュレーションしてみることになるでしょう。
そのような研究の初期段階で、私との打ち合わせで、「できました」という人が多い。「そうですか」で終わってしまいます。
数値シミュレーションなど、中身のモデルや、インプットデータの作成方法をしっかりと理解していないと、何の議論もできません。
シミュレーションしてみた結果、うまく合わないときに初めて、「なぜなんだろう」と考え始め、鍵になるモデルの勉強を真剣に勉強したり、インプットデータの作成方法等について深く考えるようになります。要はうまく行っているときは大して考えないのです。課題にぶち当たって初めて人間は本気で思考します。課題を解決するために、知識を使いこなすようになります。
特にトップエリートの留学生は、母国では、研究というものを行ってきていません。答えの決まった問題を上手に解くことで褒めてばかり来られたエリートたちです。「できました」というのも当然でしょうか。
でも、我々がやるのは、答えの分かった演習問題ではありませんし、ちょっと取組んだらすぐに答えがでるような低レベルの研究テーマを設定するつもりもありません。
「できません」が失敗ではなく、真実に到達するために必ず通らなければならないステップだと認識できるところから、研究はスタートします。
同じように、文献を読んで、「読みました」という学生も、基本的には何も分かっていないに等しい。そこからどういう知見が得られたのか、研究と関連付けて説明できなければならないはずだし、分からないところも自分なりの仮説で分析したものを指導教員と議論するくらいでようやく本当の「読みました」、です。
答えのある問題を正確に解けるようになる教育も大事なのですが、研究的な思考方法を身に付ける教育も同様に非常に重要と思います。自然に身に付ける方もたくさんおられると思いますが、多くの国民が研究的な思考をするようになるだけで、世の中は相当に変わるのではないか、と思っています。世の中をポジティブに見ることができるようになるので。
最新の画像[もっと見る]
-
YNU dialogue 「福島の今を知り、100年後の豊穣な社会を考える」のご案内 1年前
-
元気なインフラ研究所 第2回セミナー(3月22日(金)15:30~、オンライン) 1年前
-
都市基盤学科の卒論生たち5名の発表会 2年前
-
元気なインフラ研究所 第1回セミナーと、能登被災地の調査 2年前
-
元気なインフラ研究所 第1回セミナーと、能登被災地の調査 2年前
-
元気なインフラ研究所 第1回セミナーと、能登被災地の調査 2年前
-
元気なインフラ研究所 第1回セミナーと、能登被災地の調査 2年前
-
元気なインフラ研究所 第1回セミナーと、能登被災地の調査 2年前
-
元気なインフラ研究所 第1回セミナーと、能登被災地の調査 2年前
-
元気なインフラ研究所 第1回セミナーと、能登被災地の調査 2年前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます