細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

学生による論文(33)「細田先生はバグ?」 村岡 泰輝 (2021年度の「土木史と文明」の講義より)

2021-12-03 09:52:45 | 教育のこと

「細田先生はバグ?」 村岡 泰輝

 私は新幹線技術というものが幾度も事故やトラブルを起こしながらも地道な技術者の努力によって構築されてきたことを知り誇らしく思った。いまや世界中の多くの人々が新幹線を完全なシステムだと思っている。そのため、マスコミは新幹線のちょっとした事故でも騒ぎ立てる。しかし中の技術者たちはそうは思っていなかった。人間が作ったものに完全なものは無いと分かっているのだ。『大切なのは常にバグ(南京虫)に注意し,大きなバグになる前につぶすことである。』とおっしゃっていたが、たくさんのバグをつぶしてきたからこそ、新幹線は人間が作った交通システムの中で最も安全性の高いシステムだと胸を張って言えるのだろう。

 人間が作ったものには常にバグが存在する。プログラミングでも人間が作ったセキュリティならばバグや弱点がありそこを突かれればたちまち大きな障害を引き起こす。人類は失敗から学び、失敗を引き起こす悪いバグを修正することで地道に発展してきた。

 さて、バグの話を聞いて、あるアニメ作品を思い出した。「世界の“システム”と呼ばれるものに支配された人類の中にバグで生まれた主人公があらわれる。主人公は“システム”から逃れながら、世界の仕組みを解明し、世界の不合理を壊す。」ここで先ほどまでとはバグが違うとらえ方をされているのに気付いただろうか。バグである主人公が世界を正しい方向へと変えるように導いた。バグが世界を変えた救世主のように描かれている。作品中でバグは世界の“システム”にとっては悪いものであるが、人類にとってはハッピーエンドに導く英雄だ。

 バグや異端なものと思われたものが世界を変えたことは歴史上にもあるだろう。例えばガリレオ=ガリレイが地動説を唱えたときに異端とされ有罪となったのは有名な話である。世界の常識を変えてきたのはその時代に異端者ともてはやされた人が多いのではないだろうか。彼らは決して特別な人ではない。大衆性に流されず自らを信じて学びを続けたからこそ真理に気づけたのだ。このような人たちは大衆性(常識)という“システム”にとってはバグなのかもしれない。

 人が理想のシステムを追い求める限りバグは生まれる。だから理想のシステムにするために悪いバグはつぶさなければならない。私は工学的な技術システムにはバグは不要だと考える。そして同じように考えると、「彼ら」は全人類を自分に都合のよいシステムとして稼働するように誘導し、大きな力で邪魔になるバグを排除しているのかもしれない。「彼ら」は彼らなりに完全なシステムを目指してバグとなる意見を排除しているのかもしれない。しかし世界には多様性を守る意味でもバグと呼ばれるものがあっていいと私は考える。

 私たちは「彼ら」が作ったシステムに縛られてはならない。自由な考えを持ち、システムが不合理ならばシステムのバグになってシステムに対抗すればいい。「彼ら」はバグをつぶそうとするだろうが、負けてはならない。所詮は人間が作ったものだから必ずシステムの弱点があるはずだ。その弱点を突いてバグが世界を変えないとハッピーエンドで終われないだろう。「彼ら」の作ったシステムの洗脳から抜け出した細田先生や土木史と文明を受けた私たちはシステムの中に生まれたバグなのかもしれない。

Ps.『デカダンス』という最近の作品でテレビアニメのみの作品です。世界観が独特で面白いです。

 


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