細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

学生による論文(31)「過去・現在・未来から鉄道の社会貢献を考察する」 松尾 祐輝(2021年度の「土木史と文明」の講義より)

2021-12-03 09:49:57 | 教育のこと

「過去・現在・未来から鉄道の社会貢献を考察する」 松尾 祐輝

 鉄道が社会に貢献する、すなわち社会で有効なシステムとして働くためには、車両とレールの「建設」および「補修」、そしてそれを行うソフト的なシステムが必要である。さらに、利用者である「人間」に対して正しい鉄道の使い方を教授し、実際に正しく使ってもらう必要がある。私のような大学生は、これまで記憶のある範囲で約10~15年の鉄道発達の歴史を目にしているが、歴史年表的にはその期間は短く、大まかに「現在」として近似することができると考えられる。それゆえ、普通に生活しているだけでは鉄道の「過去」を知ることはできず、「未来」についても自主的な意欲がなければ想像するのは難しい。しかし、現在鉄道が多大な社会貢献をしていることを認知し、その社会貢献を未来にわたって持続可能にするための方法を考えることが重要であり、そのためには鉄道について過去・現在・未来の3つの視点から考察することが必要である。レポートでは、講義で得た情報からこの考察を行い、自分なりの意見をまとめる。

 まず過去についてであるが、講義を聞いて今の鉄道の安全性との違いに驚いた。0から1の建設がメインであったことから、技術としてはまだ浅い時期であり、欠陥や事故もたくさんあったが、それが起きるたびに知恵を結集して改善策を考えた先人たちの努力は評価すべきものである。特に、過去の多大な努力が現在の安全性に直接関わっていることは認知すべきことである。多くの欠陥があった過去の事例は決して忘れてはならず、現在や未来に反省として活かしていく必要がある。現在や未来において新たな技術を開発するとき、これらの欠陥を忘れていると再び同じ欠陥を招く可能性があるからだ。

 現在においては、鉄道は運転の技術がない人でも簡単に乗れ、誰でも遠くまで早く安全に行くことができる優れものであるように感じる。もともと「歩行」という能力でしか移動できなかった人間が、鉄道という乗り物を通して高速で移動できることは、昔では考えられない輸送力である。さらに、乗り換え検索アプリの発達や、秒単位の緻密なダイヤ構成によって、事前に綿密な移動計画を立てることも可能になっている。これは鉄道ならではの強みであり、トラブルとなる事象がなければ到着時間の不確実性はかなり小さい。

 未来の鉄道を明るくするために現在求められることとしては、補修技術の促進と、高度な技術社会における安全性の確保が挙げられる。現在は、建設のピークが過ぎ、建設と補修の狭間にいる時期であると考えられる。今は過去に建設した「ストック」が問題なく効果を発揮している時期であるため、鉄道の社会貢献度と安全度は高いように思われるが、過去の技術をないがしろにし、補修すべき部分があっても何もしなければ、未来にわたって鉄道が社会に貢献することは難しい。そのため、建設の技術だけでなく補修の技術を発展させ、未来に備えることが必要である。また、高度な技術社会においては、誤った人間教育や過度な技術開発が安全性崩壊の命取りとなる。「誰でも」乗れるが故の電車内での殺傷事件や、他社との直通を発展させるが故の運転見合わせ時の影響など、過去に比べると起こり得る危険事象の数が増えているため、一人一人の考えの変化や、技術の発達の仕方にも気を配る必要がある。

 いずれにしても、今のうちから持続可能なシステムを作っておくことが、未来でも鉄道が社会貢献をできるための最低条件である。なお、このシステムは日本全体の鉄道を指しているため、システムの向上のために、一部の路線を廃線にするなどの要素の調節が必要となる場合もある。今後の人口減少による人手不足への対応や、欠陥が見つかった際の代替手段の準備など、未来に向けた課題はたくさん残っている。

 


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