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細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

土木史の教え方

2012-10-30 18:28:21 | 教育のこと

今日は「土木史と技術者倫理」の5回目で、教科書では第10章「現代の自動車道路と空港の建設」でした。

日本経済をマクロ経済の点から見てみることから講義をスタートしました。道路網とは国の経済活動の根幹であり、まずは経済から入っていきました。マスコミで得られる情報とほぼ真逆の情報もたくさん見せて、適切に情報収集することの重要性にも気づいてもらいました。

我が国においては、道路網は自然災害とも切り離して考えられません。東日本大震災の「くしの歯作戦」や、新東名高速道路、3環状道路に期待される役割なども説明しておきました。

この講義は、とにかく学生に興味を持ってもらうことが最重要ミッションなので、情報が「面白い」必要があります。やり方はいろいろありますが、物事をプラスの面から見るか、マイナスの面から見るか、どちらかに絞る、という手法も私はよく使います。

例えば、前回は「都市の巨大化と環境問題」がテーマだったので、東京という過密都市の抱える問題や、豊島の産業廃棄物不法投棄事件の話など、ネガティブでインパクトの大きい情報を提供し、「当事者意識」を持ってもらいました。

今日は一点して、ポジティブな情報です。東京という過密都市で異様とも言える交通網の発達のおかげもあり、日本はエネルギー効率で世界先端を行っています。同じGDPを生み出すためにロシアの18分の1のエネルギーで足りるのです。高速道路網ももちろんこの高効率に寄与しています。

導入部のマクロ経済のデータからも、日本経済の持つ潜在力のすさまじさと、それが十分に発揮されていない現状、デフレギャップの問題など、日本が適切に舵を切れば、非常に明るい未来が待っているであろうことも伝えました。レポートを読む限り、学生たちは驚いており、物事には必ずプラスマイナスの両面があることにも多くの感想を書いてくれていました。

情報は多くてもかまわないと思いますが、一貫したストーリーが必要です。今日はポジティブ路線だったので、「いつにも増して面白かった」という女子学生の感想もあり、うれしかったです。

来週は、「自然災害の克服」です。これも、ポジティブにもネガティブにもどちらでも話せるのですが、昨年は「治水」一本でポジティブに攻めました。今年はどうしようかな。これから考えます。