Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

「ジャッキー・ブラウン」

2012-02-17 00:00:23 | 私の日々
クエンティン・タランティーノ監督の"Jackie Brown"
観たのは12年程前だろうか。
ボビー・ウーマックの来日が決まってから、
この映画、もう一度観てみたいと思っていたところ、DVDを入手し鑑賞。

12年前とこんなにも印象が違うものかと驚いている。
あの頃から、もちろん70年代前後のR&Bが好きだったが、
この映画にはそんな曲がたくさん散りばめられている。

前作「パルプフィクション」がエキセントリックな人物だらけだったのに対し、
こちらにはどこか人生をあきらめているような、
あるいは全く何も考えていないような厭世的なキャラクターが登場する。

冒頭のパム・グリア扮するジャッキー・ブラウンの空港で歩く姿、
バックに流れるのは、Bobby Womack"Across 110 Street"

麻薬の元締め、オデール(サムエル・L・ジャクソン)が、
手下のボーマンを車のトランクに入れるシーン、
車の中で流れているのは、the Brothers Johnson"Strawberry Letter 23"

曲はThe Supremes"Baby Love"に変わる。
画面ではオデールの愛人の一人、シモーンが派手な衣装を付けて、
歌いながら踊り、オデールの刑務所仲間ルイス(ロバート・デニーロ)
に見せている。

空港ではジャッキーがLAPDの警察官二人に呼び止められる。
警官の一人レイ(マイケル・キートン)はジャッキーに優しい。
バックに流れる曲は、Roy Ayers"Brawling Broads"

今までパムの主演してきた映画のテーマソング、
所々に使われている。

荷物から多額の現金ばかりか麻薬までみつかり、
刑務所に収監されるジャッキー。
この時はPam Grier"Long Time Woman"

保釈請負人のマックスがオデールから仕事を請けて、
ジャッキーを迎えに行く。
この時の曲は"Natural High"Bloodstone
歩いてくるジャッキーの姿を見ながら、
何かの感情、恋心にも近いものがわいてくるのを暗示させる。
フライトの後に取り調べを受け、投獄されたジャッキーは疲れ切っているが、
むしろ、その姿がマックスの心を掴んだ。

ジャッキーを待ち伏せするオデール、
車の中ではなぜか、Johny Cash"Tenessee Stud"

翌日、マックスはジャッキーが車の中から持ち出した拳銃を取り返しに家を訪ねる。
シャワーを浴びバスロブで寛いだ様子のジャッキー、
一つのLPを取り出し、プレイヤーに乗せる。
The Delfonics"Didn't I Blow Your Mind This Time"
この曲はこの後もマックスのテーマとして彼の核となるシーンに使われる。
この曲をジャッキーと共に好きになってしまったマックス、
探しにレコードショップに行き、カセットを買うシーンもある。

「年を取るのは怖い?」とジャッキーに聞かれて、
「君はずっと29歳の時と同じだよ。」答えるマックス。
引き続き、Delfonics"La-La (means I Love You)"

31歳の時に逮捕されたジャッキーは職を失い、
ようやく今の仕事を得て13年。
もう一度、懲役を受けたら刑に服すことになる。
その時に出所して人生をやり直すことを考えると、
「どん底に落ちることはオデールよりも怖い。」

オデールと取引するためにバーで会うジャッキー。
店内でかかっているのはMinie Riperton"Inside My Love"

この辺りからジャッキーがどんどん美しくなってくる。
ジャッキーは麻薬元締めと警察、両方を手玉に取り、
マックスという自分への協力者も得て自信に溢れている。
疲れた中年のスチュワーデスという姿からすっかり変わってしまった。
真っ赤なドレスに黒いバッグとサングラス、
黒いスーツに白いシャツが良く似合う。
バサバサのストレートだった髪も艶やかにカールされている。
リップはいつもベリーレッド。

刑事のレイと食事するシーンでは輝くばかりだ。
横から彼女が話す様子を捉えるカメラ、
監督がパム・グリアの大ファンで彼女のために、
原作では白人だった主人公をアフリカ系の女性へと設定を変えた。
クエンティン・タランティーノ監督のパムへの長い間の憧れと
遂には彼女を主役にした映画を製作した喜びが滲み出る。

二回目の現金引渡し、ここではRoy Ayers"Aragon"
が聴こえてくる。

いよいよという勝負時、ジャッキーのテーマは
Randy Crauford, the Crusaders"Street Life"
オデール、そして二人で組むロバート・デニーロとブリジット・フォンダ、
違う曲が流れている。
ジャッキーのバックアップに行くマックスのテーマは先ほどの"Didn't I"
それぞれの時間が交差していく。
Roy Ayers"Vittroni's Theme-King Is Dead"

計画が成功した時、流れ始めるのはRoy Ayers"Aragon"

すべてが終わり、三日後にマックスの事務所を訪れるジャッキー。
白いジャケットにジーンズで清々しい表情。
「あなたを一度も利用したことはなかった。」
マックスも「俺は56歳だ。後悔するようなことはしたくない。
君に利用された覚えなんかないよ。」

言葉とは裏腹にジャッキーには、少ない報酬しか受け取らず、
自分の計画に命がけで協力してくれたマックスの気持ちに
充分こたえていない思いが残っている。

「街を離れるけど、一緒に行かない?」
と誘うジャッキーの気持ちだけ受け取るマックス。
二人が良い雰囲気になった時に仕事の電話が掛かってくる。
電話を切るとジャッキーはもういない。

最初と同じ曲"Across 110 Street"の曲と共にジャッキーは去っていく。
車を運転するジャッキー、オフィスに残されたマックス、
どちらにも未練の表情が読める。
それでも戻ったり、追ったりしないところがいい。

ボビー・ウーマック、"Across 110 Street"
「生き残りたいなら強くなれ、生きるか死ぬかを選ぶのは自分だ。」
と歌詞が出る。
"Street Life"とこの曲は映画の中でジャッキーを象徴するかに使われる。
一方デルフォニックス"Didn't I"はマックスのジャッキーへの仄かな想い。

状況を受け入れるだけであきらめていた女性が
自分の人生を仕切り直し始めた時から輝き始める。
彼女と共に大きな賭けに出た中年の男性が、
最後は自分の分をわきまえて、元の場所に留まる。

主役のパム・グリア、脇を固める一流の役者達、
選りすぐりの音楽がQuentin Tarantinoの映画を彩っている。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。