Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

ラストセールinShanghaiTang

2009-09-04 20:31:21 | 私の日々
上海滩、Shanghai Tang、香港ブランドだが日本では銀座にブティックがある。
2年前に友人から教えてもらい、その後、買物をするようになった。
皮、シルク、カシミアなどの高品質素材、
あるいは手刺繍や翡翠にレリーフなど細工の凝ったもの、
仕立てもいくつか段階があるようで、とても手が出ない商品もあれば、
リーズナブルな価格のTシャツやセーター類もある。
思いのほか安い物もあれば、上質の素材に手仕事が込んでくると高額になる。
また輸入する際に確か皮製品、靴などは税金が割高になるのでは。

コートやカーディガン、ジャケットの裏に鮮やかな色、
また華やかな柄物のシルク素材の裏地、見た目も綺麗で暖かい。
ウールやコットンにカシミアやシルクがブレンドされているものなどは、着心地が良い。
だんだんとファンになっていった。

8月の終わりごろ、上海滩から丁寧な封書が届いた。
実はちょっと嫌な予感がしていた。
その前の週に銀座のお店を見た時に、何となくそんな気配があった。
閉店のお知らせだった。

80%オフの閉店セールが9/3、11時よりと書かれていた。
友人でバーゲン会場が得意な人が何人かいる。
嬉々として自分に似合ったもの、お買い得なものを人込みに紛れながら引っ張り出す。
私はそういう才能がなくて、既に20歳前から自分はバーゲンに向いていないと気がついた。

欲しいと思っていたサンダルがシャンハイタンにあった。
履き心地も良かった。
でも値段は¥40,000を越えている。
靴に凝って散在する女性、靴が趣味の人がいる。
私はとてもそんな金額を靴に払う気持ちにはなれない。
でも80%オフなら、その靴が¥8,000。
それなら買える、行ってみようと思う。

愛着があったブランド、スタッフの方たちとも心安くしてきた。
その閉店セールに出かけるのは寂しさと気が引ける部分もある。
11時に入店し、お別れのご挨拶などして、12時にはお店を出ることになると思っていた。

11時数分過ぎ、店の前で私は仰天した。
長蛇の列。整理券も配っている。

この店は2階建てだがお客はいつも2~3人しか見かけなかった。
店内一部セールという時も、決して混雑はなかったそうだ。
後で知り合い、話をした常連客、空いている時に2階でスタッフと話したりするのが、
癒しになっていた、新店舗の案内状かと思ったら、愕然としたとか、
恋人から別れの手紙を突きつけられた気がしたとか。

30名ずつ、30分毎に入店させていくという。
私が入店できるのは12時半頃とのこと。
したがって整理券を受け取った後、食事や席を外しても順番に入店できる。
お腹も空いていないし、思ったよりも早く入店できそうにも思えるので、
そのまま待ってみることにした。
あきらめようという気持ちも起きたのだが、その日は1日休みの日、
この状態、シャンハイタン・ジャパン最後のセールを見届けたいという思いもあった。

入った人達はいっこうに出てくる気配がない。
ようやく入店することができて状況がわかった。
一階は買物をする人、レジに並ぶ人でごった返し、たった一台のレジ、
それに買物をする人は商売をするのではと思うほどの荷物を抱え行列は増える一方。
スタッフのOさんに「あの靴ある?」と聞くと、「ごめんなさい。もう売れちゃった」
Wさん、「Aさん、これどう?」
パープルのロングカーディガンでマオカラー。裏は鮮やかな柄のシルク。
「同じので黒持ってるし・・・」と断ってしまったが、
その後、店内を物色した所、それは最もお買い得な商品だったと知ることになる。
あ~あ、取り合えず預かっておけばよかった・・・

Tシャツやリーズナブルなセーターなど一つもない。
残っているのはLLサイズ、子供サイズ。
鮮やかな柄物や赤やオレンジ、紫、コバルトブルー。
いかにものチャイナドレス。
これはもう出ようと思った。

しかし、少しするとレジで気が変わってキャンセルする人や、
違うところにお客が移動した商品が戻ってきたり。
もうちょっと見てみることにする。
2階のメンズのコーナーに白のコットンのマオカラーのTシャツ、発見。
80%引きなので¥3,000余り。
スタッフのIさんに聞くとそれはレディースだという。
誰かが手放して置いて行ったのだろう。
それを手に取る。

残っているパンツ類を薦められるが試着ができないので、
買ったことがないだけに不安。
白のカシミア、ポンチョ風のカーディガンを見つける。

目の前にあるメンズから夫の物を捜すことにする。
夫に買物をして喜ばれたことは一度もない。
趣味がはっきりしているし、着心地とかサイズにこだわりがある。
見ているだけでは分からないので、自分でメンズのジャケットを着てみる。
ジャケットは袖丈とかあるからやめたほうがよさそうだ。
袖の折れるニットジャケットとシャツを手にとった。
長袖シャツは¥4000、これはつぶしが利きそうだし、今の時期にちょうど良い。

ニットジャケット、マオカラー、これは迷った。
Wさんに相談する。スタッフの男性は皆忙しそうだし、
買いに来た男性も物色に必死だ。
Wさん、「だいじょうぶ、暇で1階のレジが空くのをここで待っている人がいるから。」
身長172センチ、スポーツマン体型の男性が着てくれる。
その人には似合うけど、夫にはどうかなぁと迷っていると、
その男性は、次々と他の女性に夫や彼のための試着をと頼まれ、
ショウモデル状態になり、ウエストサイズ、体重まで聞かれていた。

1階の状況はレジの混雑がひどくなる一方。
現金で支払う人用にもう一台のキャッシャーが特設された。
キャッシャーなんてものではない、お金を受け取りお釣りを渡している。
現金払いの人は整理券を貰い席を外すこともできることになった。
カードの人はそれはなしとのこと。収集がつかなくなるからだろう。
今にして思えば、整理券を貰って現金を降ろしに行くこともできたんだなぁ。

広島から来たという女性が山のように品物をゲットし、
商品棚に積み上げていた。業者の人らしい。
その人はスタッフに「お取り置きはできません」と言われたが、
「預かっておいて。低血糖だからお昼食べないと倒れちゃう。」と出て行った。

1階を覗くが恐ろしくて降りていけない。
かといってゲットした商品を破棄するのも。
二階の椅子に座り、外を見るとますます行列は膨らんでいる。
私と同じようにして待っている男性が一人いて、お話しをする。
その方が先ほどの男性より夫の体型に近いのでニットジャケット、着てもらう。
OK! 夫にも合いそうだ。
目の前にあるルームキャンドル、「これって80パーオフだと数百円ですよ。」
3つしか残っていないので、そのうちの一つ、Summer Palaceを取る。
絵柄の付いた大きな灰皿、取り合いになっている。
80パーオフという言葉が呪文のように聞こえ、これもゲット。
かなり重い荷物となった。

スタッフが忙しそうなので、残っている商品を目立つ棚に移動したり、
ストックされていたルームコロンを物置から出してきて並べたり、
商品の説明や値段について答えたり。

彼は「そのコロンもうないのなら、テスター出しておかないほうがいいよ。」
とか、私がカウンターに陳列したボストンバッグの向き、
「もうちょっとこっちに向けたほうがいいですね。」なんて。

残っていた女性のグループはレジへと向かった。
男性がもう一人、待ち組みに加わる。
私が陳列した旅行カバン、そしてその中にゲットした商品がたくさん。
水色のスウェードのジャケット、とてもよく似合いそうだ。
「よく見つけたわねぇ。」
「入ってくるなり、Wさんが『これ!』って渡してくれて。」
私も頂いておけばよかったのになぁ。
3人で立って、商品確保しつつ1階を見に行く人の荷物番をしたりしながら、世間話。

店内の売り物はほとんどない状態。
映画「ラストコーション」に出てくるようなマージャンテーブルがあった。
黒で彫刻が施され、小さな引き出しが四隅に付いている。
買い手がついた。これは備品なので2万円だそうだ。
こんな素敵なテーブル、そして同じ彫刻が背についた椅子も4客売れた。
コーナーテーブル、背が高い物と低い物、翡翠がついたランプシェード2つ。
何もかもなくなっていく。

「あっ、これどうですか?」と先ほどの男性。「ぼくはもう持ってるから。」
リバーシブルのカシミアニットのマフラー。
昨年、夫の誕生日にプレゼントしようとして正札をみてあきらめた。
しかし80%オフなら買える。
「どうしてこんな物が出てきたの?」
「誰かが今、戻しに来て、置いていきました」

一人の若い女性が入ってきた。
壷を見たいと言う。奥から3つの壷が。
二つは鮮やかな柄。最後の壷は赤で金の縁取り。
男性二人が3つめのは景徳鎮、100万近い品だと言う。
中がすべて金張りだそうだ。
二人ともやたら詳しい。
彼女は赤い壷を選んだ。
約9万円也。

びっしりとレリーフが刻まれた大きな長持ち。
もし、これから新居に移るなら、あれをソファーの前のテーブルにして、
ダイニングテーブルは麻雀卓、ランプシェードは翡翠。
壷を棚に並べたら、完璧だろう。

時計を見ると3時を周っている。
喉もカラカラ。気分が悪くなりそう。
階下に行くと依然としてすごい列。
外もまた大行列。
「レジを待っているんだけど、外に飲み物を買いに行きたいんだけど?」
近くに自販機がないそうで、中のスタッフルームでお茶を飲ませてもらい、
化粧室もお借りして、また男性二人のところに戻る。

「これって仕事じゃなくて、遊びなのよねぇ・・」とため息。
二人とも笑っている。
「ずっと立ち通し、飽きちゃうから手伝ったり、メンズモデルやったり」
スタッフの人達も2階に来ると、ほっとするのか、「だいじょうぶ?
ごめんね~」と声を掛けてくれるので、こちらこそ、「がんばってね。」と労う。
私達もスタッフもお昼抜き。信じられない状況だ。
いや、最近、こういう経験をした。
ルイジアナスーパードームでマックスウェルを待っていた時だ。

4時半になった。
「5時に仕事を終えた女性達が来ると、更にレジは込むだろうから、
そろそろ行きましょう」と。

3人で下に下りる。人込みの中、「前を失礼いたします」
「恐れ入りますが、後ろを通ります」などと声を掛けながら、
「最後尾の方はどなたですか?」と聞くと「私です」と若い女性。
4人で会話が始まる。
皆、入店は同じくらいの時間だが、彼女は30分くらい遅かった。
手に取ったのはコロン一つ。
「後から、ストックを出して今、上にあるよ。」と男性が教えてあげる。
「ほんとですか?場所とって置いて下さい。」と彼女は2階へ。
戻ってきた彼女、男性一人の山のような荷物を「持ちましょう!」
朝、ヨーグルトを食べただけで彼女もランチ抜きだそうだ。

ハンガーを持っている人達がいる。
ハンガーも持ち帰りOK、箱もどうぞ、と出てくる。
ハンガーは重いので3つほど取る。
箱をたくさん取った女性が何度か落としてしまい、先ほどの若い女性が、
拾ってあげる。
「ビニール袋でもあるといいんだけどねぇ。」と私が言うと、
前に並んでいた男性が自分のスーツをくるんである袋を出して差し出した。

コロン、2つだけしか買えなかった女性に2階で一緒だった男性が
ルームコロンを、一個譲る。
彼女は一つ残っていたベビー帽、友人の赤ちゃんにと手に取る。
先ほどの箱をたくさんゲットした女性、私達の話を聞いていて、
「この箱に入れてプレゼントすれば?」と差し出す。
みんな、それぞれ自分に似合いそうな物を手に並んでいる。
ふくよかで華やかな女性は赤のジャケットを二つ、抱えていた。
入店の際に見かけた人もまだ、何人も店内にいる。

レジには1時間ほど並んだだろうか。
「一人だったら、きっと耐え難い時間だったと思うけれど、
こうやってお話してて気が紛れて、ほんとに良かった」
とお馴染みになったメンバーにお礼を言う。

スタッフの二人、接客に現れないと思ったら、
ず~とレジだった。顔が憔悴しきって表情もない。
それなのに最後に別れの挨拶を丁寧にしてくれる。

ようやく馴染んできて自分なりの着こなしのできるようになった上海滩。
無くなってしまうのは寂しい。
お世話になっていたOさんと別れを惜しむ。
店長にも挨拶。
待ち時間を和やかにしてくれた方たちにも感謝。
みんなで「お疲れさまでした!」
一期一会というのだろうか。ほのぼのとした出会いだった。
こんな素晴らしいスタッフと顧客に恵まれていたシャンハイタン。
ぜひ、再オープンして欲しい。

外に出ると5時半。もう薄暗くなっている。
長くて不思議な1日が終わった。
立ち通しで足腰は重い。でも心はなぜか軽やかだ。


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