Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

興福寺仏頭展@東京芸術大学大学美術館

2013-09-20 10:08:48 | 私の日々
何の予備知識もないまま、友人に誘われるままに行ってきた。
国宝、重要文化財などに指定される70点余りの展示物の素晴らしさはもちろんとして、
この仏頭の辿った数奇な運命、目、眉、口元の曲線の美しさ、
火災に遭い片耳は失いながらも、変わることのない信念を貫いているかの表情。
むしろどんな時にも侵されることのなかった中庸さと言った方が正しいだろうか。
厳かで凛としていながらすべてを浄化して受け止めているかのようだ。
これを拝観するだけでも足を運ぶ価値が充分にあると断言したい。

685年(天武14年)に作られた仏頭は鎌倉時代の初期1187年に東金堂の本尊となり、
200年余りの間、衆生の信仰、祈りのシンボルとなるが、
1411年に雷を受けて火災となり焼失し胴体部分を失う。
その後所在不明となっていたものが500年を経て、
1937年(昭和12年秋)東金堂の解体修理中に須弥壇後方の来迎壁を撤去したところ、
その内部に収められているのが発見された。

このお顔の大きさから坐像だったとされる全体像は約5メートル近い高さになる。
火災で受けた影響も修復するのは大きな部分だけに留め当時の現状を尊重し復元されている。
芸術作品が後世に残るのには偶然ではなくその作品そのものの持つ力が大きいと聞いたことがある。
まさにこの作品が発見されこのような形で拝観できる運びになったことの運命を感じる。

仏頭の眷属である木造十二神将立像もまた共に並べられている。
仏頭と十二神将像が一堂に会するのは600年振りというこの得難い機会に遭遇することができる。

十二神将像は一つ一つに干支をそれぞれ頭につけ、毅然と仏頭を護る姿は共通だが、
表情や佇まい、身に着けている装束、武器、などが表現力豊かで、観ていて飽きることがない。

最後に後方から再び仏頭とまみえる。
拝観するというような存在を越えて正座して三礼、あるいは五体投地をして崇めたい、
そんな衝動に駆られた。