Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

5月の香港

2012-05-07 15:29:05 | その他の旅
東京駅の地下から中央線のホームへと向かうエスカレーターに乗っていると、
香港の匂いがする微かな風が鼻先をかすめる。
一瞬のことだったが、どこからそれは漂ってきたのだろう?
地下の中華料理店の厨房から階上へと換気口を通して上って来る内に、
私に香港の裏通りを思い出させるような
ほこりと湿気を含んだ風に変化したのかもしれない。

返還前の香港は圧倒的に九龍側が好きだったが、
ここのところは香港島、中でも中環、セントラルを中心に動くことが多く、
食事をしたりするのはソーホーかランカイフォンがほとんどになってきた。
香港のタクシー料金は日本と較べると破格の値段だし、地下鉄も整っているが、
それでもどうせなら徒歩圏内のホテルの方が動きやすい。
前々回はソーホー、前回と今回はランカイフォンの中心にあるホテルを選んでいる。
この辺り一帯は坂の街なので歩き回ることでかなり良い運動にもなる。

4時半に羽田を発つと4時間後、一時間の時差を経て8時前には、香港に到着する。
以前は空港からホテルまで運んでくれるエアポートバスを利用していたが、
ソーホー、ランカイフォン周辺は曲がりくねった狭い道ゆえか、
バスの運行はなく、空港から中環まではエアポート・エクスプレス、
駅からはタクシーでホテルへと向かう。
この電車、バスよりも早いのと便利さで気に入っている。
本数も多く、帰りは中環の駅で航空機のチェックインをして荷物を託すことも可能だ。

ホテルの表玄関から入り、フロントで手続きを済ませる。
荷物を部屋に置き、今度は裏玄関から階下へと降りると、
そこにはランカイフォンの街の喧騒が広がる。
気温は30度、もう歩く人は夏服を着ている。
この街は9時頃では宵の口だ。
11時過ぎには狭い通りに人が溢れてくる。
ビールが中心のサッカーバーで料理もそこそこに美味しいパブへと繰り出す。
外のテラス席に座るとたっぷりの殻付ピーナッツが運ばれてくる。
殻は皆、床へと投げ捨てる。
地元のドラゴンビールを飲んだ後はイギリスのロンドンプライド。
香港に来るといつもこの店へと来てしまうのは、
ここで通りを行きかう人を眺めるのが楽しみの一つだからだ。
以前、この店はホテルの隣にあったが、今は一つ奥の通りの前へと移動している。

ホテルの中にも2階と6階、最上階の2フロアにレストランがあり、
週末はそこに行くためのエレベーターを待つ長い行列ができる。
滞在客は並ぶことなく、客室階へとエレベーターを利用することができる。
それを仕切る寡黙な黒服達が渋い。
ホテル内のレストランやバーにも行ってみたが、
やはり街中の方が格段に香港にいるという実感が湧く。

香港に来るとだいたい同じようなことをして過ごす。
朝は飲茶、昼は上海灘で買い物をしたりして、周辺の店でマッサージを受ける。
夜はヨンキーで好物の皮蛋とローストグースを食べ、
夜店を冷やかして、ランカイフォンの路地裏のバーで飲む。
観光や名所旧跡、一通りの場所、評判の高い店等にはもう行ってしまったので、
その後は毎回、こんな感じだ。
それでも毎年のように来てしまうのは、この街は私にとってのパワースポットだから。

ランカイフォン、裏通りにもいくつも多国籍な店が並ぶ。
エジプト、タイ、ベトナム料理、水煙草を吸わせる店、
入場料を払い、ビリヤードをするクラブもある。
人気の店は夜遅くなると店の前の通りで飲む人で一杯になる。
夜遊びに来ている女性たちの服装はもうタンクトップ、
ベアトップなドレスが多く、白黒が基本だが
今年はオレンジやターコイズブルーも目に付いた。

5日の日の晩、夕食後にそんなバーの一つで飲んでいたら、
小振りだった雨がいきなり大粒になり、雷も鳴り始め、稲光が走り土砂降りとなった。
わずかな距離だがとても帰る気にはなれない。
テラスの路上寄りから店側の席へ、それでも雨が降りこんで来るので、
そこから更に店内に移動して、レッドサングリア、クラシックモヒートを飲む。
向かいの店では雨の中、店の軒下の大きなテーブルを囲んで食事をしているグループがいる。
香港の冷房はきついのでやはりオープンエアの方が格段に心地良い。
夕方までが暑かっただけにつかの間のスコールが恵みの雨に思える。
ここには晴れよりも薄曇りや雨が似合う。
最後にメニューにアイリッシュコーヒーがあるのをみつけてオーダー。
雷雨が収まるのを待ってホテルへと戻った。

香港周辺の島では長州島が印象深い。
ローカル色があり、市場で見繕った食べ物をその場で調理もしてくれて、
地元の人の生活感も覗うことができ、自然も残っていた。

今回、初めてマカオに行ってきた。
高速フェリーで約一時間余りだが入出国の手間がかかるのと、
香港の雑多で混沌とした佇まいが好きな私にとって、マカオは余りしっくりこなかった。
昔は異国情緒のある街並みが残っていたのかもしれないが、
今は巨大ホテルとカジノが建ち並び、高層のタワーではバンジージャンプをする人、
ロープを付けて60階の塔の周辺を歩く人達もいた。

マカオから夕方には香港に戻り、初めて和食の店、寿司屋の暖簾をくぐった。
外から見ていて何とも心惹かれる風情があったからだ。
お通しや煮物、一つ一つが薄味で京風の懐石料理、
寿司も握りが小振りで上品な味わい。

料理長に話を聞くと「なだ万」に勤めた後、独立して10年近いとのこと。
食材、調理、サービスすべてに深いこだわりを感じ、
香港でこれだけ本格的な日本料理が食べられることに感嘆するばかりだった。

最終日、なかなか取れない夕方の便が今回は取れた。
いつもは朝便なので早起きをしなければという緊張感があるが、
ゆっくりと起きて、また飲茶を食べ、地元の香港ブランドの店、
ドラッグストアなども見た後、早めに空港へと向かう。
空港内のショップやレストランは充実しているので飽きることない。
しかし朝や夜遅くとは違い、日中の空港内はかなり混雑している。

帰りも約4時間。
羽田から家まではタクシーで15分余り。
東京に付くとこちらは初夏。
風が爽やかだ。
花粉もまだヒノキが残っているようで早速くしゃみが出た。

25年前に行ったきりのヴィクトリアピーク、
今はずいぶん様子も変わったと聞くので、次回は久々で行ってみようかと思っている。