行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

蟻の円ときりぎりすのドル

2011-08-07 23:01:31 | Weblog

これまで、日米の金利差が原因とされていたドル安、円高、確かにその要素は見過ごすことはできないが、新興国の台頭と欧米のソブリン危機(国債の信用不安)でかなり複雑な様相となってきた。日本みたいに国の借金がGOPの倍もあり、国債格付けが欧米より低いのに通貨の信用度が最高という現象は難しい経済学では説明しづらい。

ここは簡単に蟻ときりぎりす論の方がわかりやすい。これまたマスメディアでは報道しづらい点だ。日本と米国の関係では日本は民間銀行も政府も長い間、世界一米国債をせっせと買ってドルを支え、米国の赤字を金融面で助けてきた。米国民は赤字を気にすることなく質の良い日本の自動車など製品を買い、近年では安い中国製品を買いまくっている。iPhoneやipadが典型例だが、中国人は安い賃金でものづくりをし、完成製品を輸出してドルを稼ぎ、米国債を買って、米国の赤字をカバーしてきた。今や、中国は日本をぬいて1兆5998ドルの米国債を持っている。

日本人は1400兆円もの貯蓄を貯め込み、日本国国債をも買い支え、日本政府は何とかやりくりしてきた。中国や日本が蟻で、米国がきりぎりすであることはお判りだろう。通貨はその国の実力であり、こうした状態が長い間続いて来たのであるから当然、ドルの価値は下がる。円は相対的に高くなっただけの話で、中国の元は国際競争力喪失を恐れた中国の意図で流動性を犠牲にし、固定相場で元高をコントロールしてきた。

ドルの代替通貨としてユーロが登場したが、ギリシャに始まり、今やイタリア国債までソブリン危機がささやかれ、ユーロ自体の信用も低下し、たよる通貨はスイスフランか円かということになり、対ユーロでも円高となっている。イタリアの財政赤字はGDPの4.6%だから日本(10.5%)に比べればはるかに健全だが、ところがイタリア国債の買い手を探すのが難しい。成長率1%のイタリア経済の信用度が低いことが原因だが、自国民が日本みたいに国債を買うどころか手厚い社会保障に浸っている。例えば医療費は信じられないけど全国民無料だ。

では何時までも円高が続くかというと、そうでもない。日本の貯蓄は高齢者が主に持っており、私もそうだが年金生活者はもっぱら預金を引き出しながらの生活で、今後、1400兆円の貯金は確実に減少する。日本社会のきりぎりす化が進めば国債の引き受け手は海外の新興国に求めることになる。国の借金も世界最悪のまま残れば、円の信用力はなくなり暴落することになる。この事態は食糧、エネルギー、衣料、などほとんどが輸入しているので、生活は苦しくなるだろう。円安になれば輸出が伸びるはずだが、その時に輸出する物があればの話で、自動車や電子部品の工場が残っていることが前提だ。

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