思いつくままに書いています

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御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

宝塚月組公演『『グランドホテル』 『カルーセル輪舞曲(ロンド)』の観劇メモ

2017年01月24日 | 宝塚
1月12日に月組トップお披露目公演「グランドホテル」と「カル―セル輪舞曲(ロンド)」を観てきました。
去年5月に梅芸で、グルーシンスカヤを安寿ミラが演じるグリーンチームの「グランドホテル」を観ていたので、
タカラヅカではどんな舞台になっているのか興味津々で出かけました。
梅芸版「グランドホテル」です↓




当日は車も少なく、9時40分には車椅子を押して劇場へ。団体客が少なくて、開場前でもホールがまばらだったの
で客足が心配でしたが、立ち見こそなかったものの、1階席はほぼ満席でした。

梅田芸術劇場で「グランドホテル」を観たとき、今回の月組メンバーも観劇に来ていて、一階通路端のヨメさんの
車椅子席の横にもそのうちの一人が座っていました。なので、他の月組生が通路を通るときは挨拶を交わしたり立
話していくので、至近距離で美弥るりかさんとか見られてプチ・ラッキー。(笑)
でもまあみなさん、近くで見ると心配になるほど華奢で細い。(笑)

という余談はこれくらいにして、「グランドホテル」の感想です。例によって敬称略です。

良かったです。正月公演にふさわしい作品でした。
珠城りょうの新生月組、上々のスタートでした。梅芸版とは違ってわかりやすく、すぐに話に浸れました。(笑) 
ただし梅芸版と違って時代背景の描写は希薄で、終盤にホテルの従業員が客の衣服や荷物を暴力的に奪うといった
刺激的な場面もない脚本でしたが、まあそれはそれで宝塚らしくていいかなと思ったり。
舞台装置も梅芸版のような二階建ての重厚なものではなく、回転ドアもいたってシンプルでしたが、その軽さも宝
塚らしさかな。

でもこの話は、まさに元祖群像劇なので、誰が主人公であってもいい設定ですね。初演は退団する涼風真世のオットー
が主役になっていたし、梅芸版はオットーとグルーシンスカヤに焦点が当たっていました。

以下、役ごとの感想です。
珠城りょうはガタイが大きくて(笑)、安心して観ていられるトップさんでした。
プログラムです↓



20世紀になって、もはや時代錯誤な存在の「男爵」フェリックスを、貧乏でも気品とダンディさを失わない人物として好演し、
トップらしい存在感を十分に見せてくれました。大劇場でのトップお披露目公演でも力まずに、自然に演じていて、好感度極大。




ただ、善人に見え過ぎて、金もないのにホテルに居座り続け、コソ泥というか詐欺師まがいのいい加減な人生を送って
いる男のように見えないのは、彼女のキャラクタのせいでしょうか。(笑)
まあ私としては、とにかく恰幅が良くて(笑)、立ち姿がまことに男らしいのがなにより。(笑)
やはり男トップはこうでなくては。(笑)


フェリックスがグルーシンスカヤと鉢合わせして一目惚れする場面は、短いながら息の合った演技で、その後の展開の
いい伏線になっていました。いいコンビになりましたね。

その愛希れいかグルーシンスカヤですが、安寿ミラの印象が強く刷り込まれていたので、最初は「やはり若過ぎでムリかな」
と思いながら観ていました。
安寿ミラのグルーシンスカヤです↓(プログラムより)


でも、話の進行につれてそんな違和感は消し飛んで、いつのまにか見惚れていました。





最盛期を過ぎたプリマ・バレリーナの、踊りへの自信喪失と、それでも過去の栄光が忘れられない揺れる心情がよく表現
されていて、演技力に改めて感心しました。もちろん歌もダンスも大したものです。

今回私が一番注目したのが美弥るりか

ようやく二番手確定で本当に良かったです。(笑)
それで自信もついたのか、簿記係・オットー・クリンゲラインを、初演版の涼風真世のオットーと比べても全く見劣り
しない演技(ヨメさん談)で、登場するたびにオペラで追い続けてしまいました。細身で小柄な体型もピッタリでした。





余命数カ月の病弱なしがない簿記係が、一生の思い出にホテルにやってくるが、そのあまりにも場違いな風体に、ホテル
での宿泊を断られて門前払い。でも通りかかったフェリックスのとっさの機転で無事、宿泊できるようになるという場面では
こちらもついホッとしたり。(笑)

ようやく彼女もいい役に巡り合えて、本当によかったです。
でも余談ですが、これからこの人を歌劇団はどう遇するのでしょうか。二番手といっても珠城りょうよりかなり上級生で、
月組でトップは無理かなとか、つい老爺心(笑)ながら心配してしまいますね。

あとはグルーシンスカヤの付き人のラファエラ(朝美絢)が大湖せしるみたいな強さのある美人で嵌りました(殴)。
このまま女役に転向してもいいのではと妄想したり。
億万長者のスケベな実業家プライジング(華形ひかる)や、

表面的にはチャラいけど実際はけっこう苦労しているタイピストのフラムシェン(海乃美月)、老医師
オッテルンシュラーグ(夏美よう)も、それぞれ人物造形が巧みで、やりがいのある役になっています。
夏美ようは、ほぼ出ずっぱりの狂言回し的な役回りですが、まさにいぶし銀のようないい味出していました。
暁千星は、妻がお産で入院しているフロント係のエリック役。メガネの制服姿がよく似合っていてスッキリ
さわやかな好青年です。あと、宇月颯の運転手役が、出番は少なくてもインパクトがありましたが、結構謎な
人物ですね。

結局群像劇といっても、最後はフェリックスとグルーシンスカヤ、クリンゲラインとフラムシェンという4人の話に焦点が絞られ
ていくので、散漫にならず緊張感が持続する作品になっていました。たった一日の出来事とは思えない濃密な舞台で、しかも
サスペンス風なドンデン返しもあって、見ごたえたっぷり。

一方、「モン・パリ誕生90周年レヴューロマン」と銘打ったショー「カルーセル 輪舞曲」もいいできでした。
舞台上に、淡い照明に照らされて4頭の回転木馬が浮かんでいるのを見ただけで、いやおうなしに期待が高まりました。

本当によくできた完成度の高い回転木馬で、大道具さん、いい仕事をしていました。

ショーは、「この星は廻り続ける 命の輪のように 回転木馬は回る 今白馬に命
を預けて廻る世界へ行こう
」という歌詞に合わせて、レヴュー発祥の地パリからアメリカ・ニューヨーク、
メキシコ、ブラジル、シルクロードからインドへと旅をして、最後は日本のタカラヅカにたどり着くという設定です。
水先案内人の華形に誘われて、白馬たちの世界一周の旅が始まります。

まず「白馬の王子」珠城りょうが登場して歌い、
















やがて白馬の美女・愛希れいかや白馬の紳士たちが華やかに歌と踊りに加わって、ニューヨーク、メキシコ、ブラジルの場面へと進み、途中でカポエイラも登場して



見せ場が続きました。
カポエイラといえば、以前にも稲葉センセイが星組公演『パッショネイト・宝塚!』のファベーラの場面で、アフロブラジリアン
ダンスを交えて好評でしたが、今回も同じ森陽子を振付に起用して、インパクトのある場面になっていました。

愛希れいかがドッキリな衣装&抜群のスタイルで超セクシー↓










珠城りょうもリフトを頑張っていました↓








私はいまだにショーの出来の良し悪しがよくわかっていないのですが、今回の「カルーセル 輪舞曲」はそんな私でもよくわかる
いい作品でした。やはり稲葉先生、今回もGood Job!です。
場面展開がよく練られているし、衣装の色遣いのセンスが良くてきれいです。音楽も、シルクロードの場面での男女のカゲソロ
が印象的でした。

終わってすぐ、プログラムで誰が歌っていたか確認したほど。それ以外もいい曲ばかりで、月組メンバーとトップコンビの持ち味
がよく生かされていました。
珠城りょうは歌と踊りいずれもトップにふさわしい完成度で、愛希れいかも持ち前の身体能力の高さと、手足の長さを活かした優美
な踊りと、いっそう磨きのかかった歌で魅せてくれました。


まことにバランスのいいコンビで、これまでは敬遠気味だった月組の観劇が楽しみになりました。

おすすめです。


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万葉文化館「万葉コレクション展 新しき仲間たち4」、おすすめです!

2017年01月09日 | 美術館を訪ねて
大谷記念美術館に続いて、7日に万葉文化館に行き、「万葉コレクション展 新しき仲間たち4」を観てきました。この展覧会は2月26日(日)まで開催されています。

今回も大谷同様に館蔵品展で、絵画は三部構成の展示でした。

第1部は「新しき仲間たち」として2015年度に寄贈された37点の作品を展示、第2部は「万葉コレクション」として歴代の寄贈作品18点が展示され、第3部は「万葉日本画大賞展」で、これまで万葉文化館が主催した「万葉日本画大賞」の受賞作品のうち15点が展示されていました。他に、万葉陶磁器人形10点と、常連の感がある大亦観風の「万葉集画撰」から10点が展示されていました。

絵画はいずれも名品ぞろいで見ごたえタップリ。

第1部は、井上 稔と烏頭尾 精の作品がズラリと並んでいて壮観でしたが、私は中路 融人(なかじ ゆうじん)の『山湖』と、三瀬 夏之介の『風土の記(かぜつちのき)』が良かったです。『山湖』はそれほど大きな作品ではないのに遠目からも目立つインパクトのある絵でした。対照的に『風土の記』はパネル8枚組の大作で、力強い筆致でド迫力。

第2部では、新井 冨美郎の『穂高岳』、久保 嶺爾の『曽爾冬声』、三輪晃久の万緑』と由里本 出の『激つ瀬(たぎつせ)』が印象に残りました。

三輪晃久の『万緑』です↓


とくに久保 嶺爾の『曽爾冬声』は、学生の時よく通った曽爾高原がリアルに描かれていて、冬の静かな高原のたたずまいや、遠くに描かれた古光山がなつかしく、しばらく画面に見とれていました。

第3部は万葉文化館が主催した「万葉日本画大賞」の第1回から第5回までの受賞作品が展示されていました。いずれもさすがに受賞作品だけあって逸品ぞろい。この展示だけでも見ごたえ十分でした。
中でも第2回の大賞に選ばれた古屋 雅子の『緑薫(りょくぶ)』がよかったです。↓(当日購入した絵葉書から)


次は第1回の準大賞に選ばれた大矢眞弓の『秋色』と、

第2回の準大賞作品の長谷川 喜久の『アサヨヒ』が

甲乙つけがたいいい絵でした。

でも、館蔵品展とはいえ今回も観客は少なくて、その分ゆっくり観られたものの、いささか寂しかったです。おかげで何度も展示会場を往復したりして楽しめましたが、ヨメさんも「せめて大谷ぐらいのお客さんがあればね」と嘆いていました。やはり交通の便が悪いのでしょうか。でも定期バスは通っているので、知名度が低いせいかもと思ったり。

観終えて、館内のカフェで昼食。
私は、サンドイッチ+カレーセット、ヨメさんはスペシャルサンドと水出しコーヒーを注文しました。パンは天然酵母でおいしかったですが、ランチメニューが少し前から無くなってしまったのが残念。
ミュージアムショップで絵葉書や便箋などを買いましたが、会場内に見本があった中路融人展の図録が売り切れでプチがっかり。

というわけで、館蔵品展なのであまり期待せずに出かけたのですが、大谷記念美術館に続いていい絵が観られて、満足でした。

万葉文化館は完全バリアフリーで、車椅子利用者も快適に見られるし、富本銭の出土遺構や、万葉集の時代の生活を紹介する展示も多彩で、本当にいい施設だと思います。

ぜひ皆さんもお出かけになってご覧ください。おすすめです。



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今年の美術展は、大谷記念美術館『日本画にみる四季のうつろい』から。

2017年01月04日 | 美術館を訪ねて
明けましておめでとうございます。昨年は、中小零細・人跡稀な当ブログをご覧いただき、ありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年初の美術館巡りとして、1月2日に大谷記念美術館に行ってきました。
館蔵品の中から「日本画にみる 四季のうつろい」と題して約50点が展示されています。
(画像は当日購入した絵葉書から)
ちなみに去年の最終は、大阪国立国際美術館の「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」でした。(1月15日まで開催)
宗教画が中心で、ジョヴァンニ・ベッリーニからクリヴェッリ、カルパッチョ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼまで、ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たちの傑作が展示されていました。とくにティツィアーノの晩年の大作「受胎告知」(サン・サルヴァドール聖堂)は圧巻でした。


それはさておき、大谷美術館の開館は午前10時なので、9時すぎに出発。予定通り10時には駐車場に到着しました。まず庭園のロウバイの開花を確認しましたが、今年はまだ蕾ばかりで、ちょっとガッカリ。

気を取り直して館内に。初日ですが、正月とあって、観客は少なく、ゆったり鑑賞できました。

まず目に入ったのは山下摩起の「」。

これまでも何度か観ていますが、いつ観ても新鮮です。
笹に積もった重い湿った雪が、時折葉から落ちて、静かな庭にその音が響くといった感じがよく表現されています。近くで細部を見ると何が描いてあるのかわからないような荒々しい筆致ですが、少し距離を置いて観ると、くっきり笹や雪が見えてくるのが不思議です。

この画家の作品は他にも「椿」・「さざんか」・「女三態之図」が展示されていましたが、とくに後者の「女三態之図」は、古典的な女性を題材にしながら現代的な表現が印象的でした。
          「さざんか」↓


「女三態之図」↓


今回の目玉は河合玉堂上村松園伊藤深水の作品群です。いずれも代表作といえる逸品ぞろいで見ごたえ十分。中でも河合玉堂の「乗鞍」をはじめとする8点の作品はどれも詩情があふれ、分かりやすくて(笑)、いい絵ばかり。

「乗鞍」↓


上村松園は3点、伊藤深水も4点並べて展示されているので、両者の作風の違いがよくわかりました。
松園は端正で上品、それに比べると深水は親しみやすい(平たくいうと俗っぽい(殴))し容貌も写実的です。でもどちらもいい傑作ばかりで、しばらく足が止まってしまいました。
松園の「蛍」と

深水の「菊」がとくに良かったです。

単品でも小倉遊亀の「赤鉢絵」や

横山大観菱田春草前田青邨堂本印象山元春挙など、日本画の大家の名品が展示されていて、お正月にふさわしい豪華な展示でした。

          菱田春草「秋林遊鹿」↓


         山元春挙「雪渓遊鹿図」↓ さて鹿はどこにいるでしょう?


観終えて受付で絵葉書(@50円!!)を買ってから、庭園巡り。
先に書いたようにロウバイはまだでしたが、シコンノボタン(紫紺野牡丹)がたくさん花をつけていました。


この展覧会は2月12日まで開催されています。ぜひご覧ください。おすすめです。


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