思いつくままに書いています

間口は広くても、極めて浅い趣味の世界です。
御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

スカステ・宙組公演「ロバート・キャパ 魂の記録」を観て

2013年03月23日 | 宝塚

スカイステージでの放送と前後して、NHKの日曜美術館でもロバート・キャパの展覧会の特集が放送されていました。
ご覧になった方も多いと思いますが、この番組の冒頭、宙組の「ロバート・キャパ 魂の記録」が紹介されていたのはちよっとビックリでした。
それもけっこう時間が割かれていて、作・演出の原田諒センセーまで登場して、舞台作品にまとめ上げるまでの話が紹介されていたのは驚きでした。

この先生、まだ若いですね。ちょっと汐風幸を連想してしまう初々しい容貌ですが(笑)、よくロバート・キャパとその時代を調べて劇にまとめられていました。
劇化するにあたって、アメリカでキャパの愛用していたライカと同型品を買い求めたりと、研究熱心です。
「ニジンスキー」や「南太平洋」も手掛け、「華やかなりし日々」とキャパで第20回読売演劇大賞で優秀演出家賞を受賞するなど、タカラヅカの次代を担う最有望株のひとりですね。

NHKの番組を見た後、WOWOWで2度目に放映された分を録画してじっくり見ることにしました。

今回はその感想など。

主な配役と出演者です。

アンドレ・フリードマン(ロバート・キャパ)      凰稀かなめ
シモン・グットマン                     汝鳥伶
ユリア・フリードマン                    光あけみ
ジャンヌ                          美風舞良
パブロ・ピカソ                       風莉じん
チーキ・ヴェイス                     春風弥里
アンリ・カルティエ=ブレッソン             蓮水ゆうや
マリー=テレーズ・ワルテル              愛花ちさき
セシル・ビートン/フェデリコ・ボレル・ガルシア  鳳樹いち
フランス軍副官                      天風いぶき
カフェの女給                       綾瀬あきな
質屋の女房                        百千糸
フーク・ブロック                      松風輝
デヴィッド・シーモア(シム)               星吹彩翔
オルガ・コクローヴァ                  愛白もあ
ヴァンサン・モンフォール                蒼羽りく
質屋の主人/ピーター・アダムス          風馬翔
ルカ                             花咲あいり
ルカの母                          桜音れい
ベルリンの警官                      星月梨旺
コーネル・フリードマン                  桜木みなと
フランス軍兵士                       実羚淳
カフェのギャルソン                    朝央れん
パリの女                           涼華まや
ゲルダ・ポホライル(ゲルダ・タロー)         伶美うらら
パリの女                          瀬戸花まり
エンマ                            花乃まりあ


オープニングは1954年インドシナの戦場。ロバート・キャパことアンドレ・フリードマン(凰稀かなめ)が愛用のライカを持って登場。
この場面が最後の場面につながるのですが、ちょっと細かいことを言うとフランス兵の持つ銃がM16ライフルなのはありえないです。小道具さん、時代考証をよろしく。(笑)

このシーンでキャパ(アンドレ・フリードマン)は「(映像が)ぶれたってかまわないさ それが真実なら」「この世から戦火が途絶えるその瞬間を俺はとらえて見せる」とつぶやいたあと、地雷を踏んで死んでいきます。爆死する様子は、無名に近かった彼を一躍有名にした「崩れ落ちる兵士」の映像とダブります。


その場面の後、アンドレの死後彼のライカを手にシモン・グットマン(汝鳥伶)が舞台に現れ、「(アンドレは)このカメラをまだ使っていたのか。懐かしい。このカメラとの出会いがお前の人生を運命づけたのだ。アンドレ、いや今やそんな名前は誰も知っちゃいない。ロバート・キャパ、私はお前が悔いのない人生を送ったと信じている。」と語って、物語は始まります。

舞台は1933年のベルリン。
質屋と揉めていたアンドレ・フリードマン(凰稀かなめ)は、たまたま通りかかったチーキ・ヴェイス(春風弥里)に警察沙汰になりそうなところを救われます。


もめた原因は、アンドレが質に入れたライカを質屋が流したことですが、そのカメラは写真通信社の社長シモンが代わりに受け出していました。

このシモンが貫録十分で、どう見ても男にしか見えません。実に味があります。こんな人物が応援してくれたら安心です。(笑)
商売道具を質に入れたアンドレに、シモンはいいます。
「カメラマンにとって一番大事なのはシャッターチャンスだ。そのカメラを手放すとは自らその瞬間を放棄するということだ」と諭します。しかし「お前の撮った写真には真実を写す強烈な光が宿っている。」と褒めます。
 
この時期、ヒットラーがドイツの首相に就任。

シモンはユダヤ人であるアンドレに、ユダヤ人への迫害が始まるからパリへ行けとすすめます。その勧めに従ってアンドレはチーキとともに新天地パリに向かいます。


しかしまあ、凰稀かなめの足の長いこと。
そして憂いのあるマスク、甘い声がいいですね。大人の男の魅力という点では、今のタカラヅカのトップの中では群を抜く容姿だと思います。
ただ歌は決していいとは言えませんが(笑)、その後の『銀河‥』観劇で感じたほど悪くなかったですね。
それと、まだまだ歌唱力は伸び代があると思いますね。精進すればグッとよくなる可能性大です。オーシャンズの例もありますし。(笑)

舞台に戻ると、パリへ向かう列車の表現がいいです。新しい世界へ向かうワクワク感が舞台にあふれていて、よくこちらに伝わってきます。
セットはシンプルですが洒落ています。
同行することになった春風弥里のチーキはいい相棒です。なにより歌が聞かせます。

パリでは、シモンの紹介でチーキとともにフーク(松風輝)の通信社で働くことになります。
しかしこのフークが食わせ者で、関心は金儲けだけ。社会性のある写真を撮りたいアンドレに、ゴシップ写真や奇をてらったスタントマンまがいの写真ばかり撮るよう指示します。
アンドレは生活のためと、そんな写真を撮る不本意な日々を送りますが、次第に仲間もできていきます。
この仲間がいい感じです。
アンリ・カルティエ=ブレッソン(蓮水ゆうや)↓と

デヴィッド・シーモア(星吹彩翔)

この二人のキャラクターの対比が面白いですね。

一方ゲルダ・ポホライル(ゲルダ・タロー・伶美うらら)は雑誌ボーグの記者ですが、ファシズムの勃興とそれを容認している世情に強い危機感を持っています。


伶美うららもなかなかの美人で、知的で落ち着いたいい雰囲気を持っていますが、彼女も歌はまだまだ課題が多いですね。その点ではうまく二人のバランスはとれていますが。(笑)

ある日アンドレの写真を雑誌で見たゲルダが会いに来ます。そして二人は、次第に意気投合していきます。そしてゲルダは通信社をやめて独立することを勧めます。このふたりの出会いの過程で、欧州で勢いを増しつつあるファシズムの脅威が明らかにされていきます。

この時代設定は現代に通じるものがありますね。ほんの一握りの繁栄の陰で、圧倒的に多数の人々が生活苦にあえぎ、その不満を利用して「独裁者」が救世主を装いながら登場し、喝采を浴びる。この作品に込めた作者の意図がよくわかります。正しい時代感覚だと思います。

やがてパリでも、権利と自由を求める民衆の運動が巻き起こります。アンドレも一緒に運動に参加しながら、その様子をカメラに収めます。


しかし彼の撮った写真が、過去に名声を博した別人の写真とされて雑誌に掲載される事件が起きます。
それがフークの差し金とわかって、ゲルダは架空の経歴を持つ写真家の作品として発表することを提案、アンドレも同意します。そして二人で考えた名前が「ロバート・キャパ」でした。

その後次第にアンドレの写真は、ゲルダの解説記事とマネージャーとしての能力のおかげで、ロバート・キャパとして売れ始めます。

そんなある日、アンドレはピカソ(風莉じん)と会い、共和国政府とフランコの反政府勢力の衝突の危機を知ります。なかなか面白いピカソですね。




写真を次々発表して有名になりつつあったある日、母ユリア・フリードマン(光あけみ)と弟コーネル(桜木みなと)が会いに来て、母にロバート・キャパがアンドレであることを見抜かれます。

それを契機にアンドレはキャパが自分であることを公表する決心をします。母ユリアの演技もリアルです。

ここで第二幕。

スペイン内乱が勃発。ドイツとイタリアがフランコに加担し共和国政府は劣勢に立たされます。しかし英・仏は静観したまま。アンドレたちは「この戦いはファシズム対反ファシズムの戦いだ」としてパリを離れ、スペインに赴き、国際義勇軍のメンバーに加わります。当時世界各地から駆けつけた青年たちの熱気がよく伝わってきました。
ここで舞台はマドリッドに代わり、闘牛士とフラメンコダンサーのダンス場面に。この場面、完成度高いです。

アンドレは仲間たちと写真家のグループ「マグナム」を結成し、結束を固めます。


マドリッドの市街戦の中で民兵のフェデリコ・ボレル・ガルシア(鳳樹いち)と出会って、苦戦する共和国政府の状況を聞かされます。このあたり、「ネバーセイ‥」とダブりますね。ファシズムと戦うためピレネーを越えた若者たちの純粋な気持ちがよく伝わってくるいい場面です。同時にフェデリコの家族の状況がわかってきて、彼の悲劇的な死を際立たせます。
妻のエンマ(花乃まりあ)が健気です。似合いの夫婦ですね。

そして劣勢の人民軍と行動を共にするアンドレは、フェデリコからカメラマンとして生きろと諭されますが、直後にフェデリコはアンドレの目前で自由団を浴びて戦死。その決定的な場面を捉えた写真は「崩れ落ちる兵士」として世界に流れます。

実写も映されます。

このシーン、凰稀かなめの涙ながらの表情が印象的です。

彼の写真は衝撃を与えますが、パリでは名声の一方でねつ造との中傷も流されます。
そしてナチス空軍のゲルニカでの無差別爆撃。
ピカソは傑作「ゲルニカ」でその悲劇を世界に伝えます。彼の信条は「世の中の悲しみと喜びに敏感であること」でした。

そんな中、ベルリンのシモンから電話があり、日中戦争の取材のため中国・重慶にアンドレを派遣するよう米のライフ誌から依頼があったと告げます。戦火のスペインから離れがたいロバートに、ゲルダは中国行を勧めます。


見送りに来たゲルダと最後の別れ


ベルリンに戻ったアンドレは抗日運動の報道を依頼されます。そしてブダペストから来た母との和解のあと、悲報がもたらされます。ゲルダが共和国軍の戦車の下敷きになる事故で死亡したのです。

彼女の死を知らせるアンリの悲痛な表情


それを聞くアンドレ

ここでも涙が胸に迫ります


ラストは冒頭の場面に戻ります。

フィナーレは短いですがよくまとまっています。










渋い衣装のマタドールの群舞が魅せます




デュエットもよく似合っていてきれいでした


実際の公演はチケットが全くなくて見られず残念でしたが、今回の放送でじっくり観られたのがせめてもの慰めになりました。いい舞台でしたね。ナマで見られた方が羨ましいです。
原田先生、本当に期待の星です。

この公演の後凰稀かなめはトップ就任となったわけですが、観終わって改めて全く至当な人事と思いましたね。

考えてみたら宝塚はスペイン戦争をよく取り上げていますね。
この作品の前でも「誰がために鐘は鳴る」と「ネバーセイグッバイ」がありました。

先にも言いましたが、今の時代にこれらの作品を観ることは大きな意味がありますね。社会の一部への巨大な富と権力の集中と、他方での無権利な状態での過酷な労働の横行と、その結果としての広範な貧困と窮乏化の進行。
その矛盾をついて出てきた独裁的な「ヒーロー」への危険な期待感。
スペイン戦争の悲劇的な歴史は、死んだ遠い過去のことではなく、新たな衣装をまとって今もなお立ち現われてきているということを考えさせられました。

今月30日は『モンテ・クリスト伯』の観劇です。脚本・演出がアレなセンセーなので(笑)、期待と不安が入り混じる観劇ですが、また感想など書いてみようと思います。只々いい出来であることを祈るばかりです。(笑)

しかしポスター、よくまあこんな格好させるものですね。これだけで観劇意欲が失せてしまいます。↓


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タバコはPM2.5の塊 ~喫煙可の飲食店は北京の最悪値と同じかそれ以上!~ 

2013年03月13日 | 日記

新聞記事の見出しは、「たばこ PM2.5の塊」となっていて、サブタイトルでは「禁煙ない居酒屋 北京並み 脳卒中やがんリスク高まる」としています。

でも記事に紹介されている日本禁煙学会の「見解と提言」の表をよく見ると、この見出しはかなり控え目な表現になっていることがわかります。

以下、日経記事と、そこで紹介されている日本禁煙学会の「見解と提言」を読んだ感想を書いています。
引用した図表は同「見解と提言」に掲載されているものです。

PM2.5は直径が2.5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下の微粒子のことで、化石燃料や草木が燃えたときに発生します。

ちなみに一般的なPM2.5の主成分は、元素状の炭素(いわゆる黒いスス)、有機炭素(芳香族炭化水素などの発ガン物質等)、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニアなどの化学物質と重金属でとても小さいので、たやすく肺の一番奥の肺胞まで入り込み、そこで様々な病気をおこします。

たばこの煙もPM2.5のひとつで、フィルターを通過せず広がる「副流煙」に多く含まれています。日本禁煙学会に所属する医師らは、中国から飛来するPM2.5より、副流煙を吸い込む「受動喫煙の影響の方が大きい」と指摘しています。

研究者が実際に測定したデータにはショッキングな数値が挙げられています。

例えば、自由に喫煙できる居酒屋のPM2.5濃度は、中国政府が北京市の大気で「最悪」と評価したときの数値400マイクログラム超をはるかに上回る700マイクログラムを超えています(日経の記事の表の数値はなぜかかなり控えめです)。ガラスや壁で仕切られていない「不完全分煙」の禁煙席で420マイクログラムと、米環境保護庁の「緊急事態」数値=251マイクログラムをはるかに超えているのです。



喫茶店でも深刻です。居酒屋ほどでなくても、日本がん学会など18の学会で構成された禁煙推進学術ネットワークの調査では、福岡市のある喫煙可能な喫茶店での数値は300マイクログラムを超えて米の「緊急事態」の数値を上回っていました

国のPM2.5の環境基準値は1日平均で35マイクログラム、外出自粛となる暫定指針は70マイクログラムです。しかし、上記の禁煙学会などの計測値は「速報値」なので単純に比較できないとしても、一般的な大気汚染の「速報値」で100マイクログラムを超えることはまずありません

私たちが観劇の際よく利用するシアタードラマシティ近くのコーヒーショップも喫煙可なので、いつもたばこの煙がただよっています。おそらく福岡の例と同様の数値になっているのでしょう。最近は禁煙施設が増えているので、喫煙者はなおさら少なくなった喫煙可の場所に集まりやすいのでしょうね。

こうした高濃度の環境では、客として短時間滞在するだけでも悪影響が指摘されていますが、さらに深刻なのは1日中働いている従業員のみなさんへの影響です。
産業医科大学の大和教授は「屋外のPM2.5汚染を怖がるなら、喫煙可能な喫茶店や飲食店をもっと怖がって欲しい」と言っています。


家族に喫煙者がいると、住宅内のPM2.5濃度の数値は急上昇。大阪市立環境科学研究所の調査では、非喫煙家庭ではPM2.5濃度は20マイクログラム程度なのに対し、喫煙者のいる家庭では倍の50マイクログラムに達しています。

これは上掲のアメリカの分類表では「弱者に危険」の41~65マイクログラムに該当します。

最近はベランダなどでたばこを吸う「ホタル族」が増えていますが、PM2.5はサッシなどの隙間から室内に入り込むほか、呼気に含まれたり衣服に付着して室内に持ち込まれるといわれています。そしてPM2.5は粒子が小さいので空気清浄機では取り除くのが困難とか。

さらに重要なのは、一般に大気に漂うPM2.5よりたばこの煙の方がはるかに有害なこと。たばこの煙には70種類近くの発がん物質が含まれています。
さまざまな調査から、受動喫煙によるたばこに起因する死亡リスクは、大気中のPM2.5によるリスクよりはるかに高い。怖がるなら明らかにたばこの方だ」と大和教授は強調しています。

ただ席を分けただけの禁煙は効果がなく、完全に部屋を分離するか、全面禁煙でなければ受動喫煙の被害は防止できません。国立がん研究センターの推定で年間に受動喫煙が原因で死亡する人は6千800人に達しています。
(2012年の厚生労働省資料によると日本の喫煙による死亡者は年間およそ12万人から13万人といわれている)


越境汚染を心配するなら、もっと身近にある危険にも目を向けないといけないと、記事は結んでいます。

私の居住する地域の近くにアスベストを使った製品を製造していた工場があり、その補償問題が報道されたりしています。でも、アスベスト製品の製造は今は禁止されていますが、たばこの販売は依然として国が大株主のJTにより続けられています。
健康影響調査が示すように体に悪影響を及ぼすことが明白なたばこ。

意に反して受動喫煙を強いられて健康被害にあった国民に、国はどう責任を取るつもりでしょうか。

【出典】受動喫煙ファクトシート 2 敷地内完全禁煙が必要な理由(日本禁煙学会Hp)
http://www.nosmoke55.jp/data/1012secondhand_factsheet.pdf

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宝塚花組公演 『オーシャンズ11』を観て感じたこと

2013年03月11日 | 宝塚
観劇の感想は驚き!の一言です。
トップコンビ、まあ変われば変わるものですねぇ。(笑)

もともとこの公演は、私たち夫婦にとってはファントム・ショック(笑)が続いていて、いくらオーシャンズでもパスしようと決めていました。

でもヨメさんのリハビリのため「宝塚は原則どの公演も一度は観る(さすがに「仮面の男」はパス!)」としてきた手前(笑)、星のような出来は望むべくもなくても、小池センセーなら観られるようにしているだろう程度の気持ちでチケットをゲット、3月9日11時公演の観劇となりました。

参考までに星バージョンのポスターです↓


幸いこの日も道は空いていて往復とも一部の渋滞以外は順調に走行、10時には大劇場に到着しました。トイレをすませ、お菓子売り場で「フィナンシェ」と「天下もち」(初めてです!)を買ったり昼食用の弁当などをゲットしてから、劇場入り口に並びました。

劇場ロビーはさすがにベルバラのような活気はないものの、チケット売り場前には当日券を求める長蛇の列。1階席はほぼ満席でした。私たちの席は9列20番台センター寄りの通路側という最近まれな良席での観劇でした。

↓これは初演と同じですね


さて、舞台が始まってすぐ気づいたのがトップコンビのびっくりの変わりよう
まず蘭寿とむ。歌がうまくなっていますね!! これまでとは別人といえるほど声が出ているし、尻すぼみにならず最後まで伸びています。
人間、やればできるものですね。最近コンサートをやったりしていますが、そんな特訓の成果でしょうか。
スカステニュース千秋楽のデジカメ撮影映像です


↓ついパンフレットも買ってしまいました ^_^;


これまで私は、「歌や演技力はいくら頑張っても変わらない・変われない」と思っていたのですが、間違っていましたね。
さすがに絶品とまではいえませんが、これまでみたいに話の進行が中断されずに(笑)、舞台に入り込んだままでいられる歌になっていました。ヨメさんも幕間の第一声で「えらいうまくなったねー」と感心しきり。


役作りも、礼音の「ジョージ・クルーニー風」ダニーと違って、蘭寿とむオリジナルの自然な演技のダニーで、星バージョンとは異なる魅力の舞台になっていました。ただ、私が抱くこの人の役のイメージには「生真面目」さが強くて、刑務所に入っていたといっても「それは冤罪じゃないか」と思ったりしてしまいます。(笑)
もうすこし洒脱な遊び人の風情が出ればもっとよくなると思いました。
同じく千秋楽のニュース画像


相方の蘭乃はなも、歌も演技も本当によくなっていて、これまで私が抱いていたイメージは一掃されました。
歌は高い声まできれいに伸びて、劇中「こんなにうまかったかな」と思いながらの観劇でした。
スカステニュース千秋楽のデジカメ映像です


演技も表情が豊か。喜怒哀楽が自然な演技でよく表現されていて、見違えるようでした。
夢咲ねねの若干「水商売が体に馴染んだ」(笑)テスとは違って、いかにもエコな感じがしっくり合っていました。痩せすぎてないのも私的には好感度大幅アップの要素になっていましたね。(笑)

同じく


この作品で、蘭乃はなは少し遅咲きですが娘役トップにふさわしい力を示したと思いました。

公演のフィナーレでトップ二人が踊る場面が、この芝居の出来を象徴していました。二人の息がぴったり合って見ごたえがありました。
とくに私が出色の出来と思ったのは蘭乃はなのダンスです。久々に観る優雅でしかもキレのあるダンスで、蒼乃夕妃の再来かと思える見事なものでした。これだけでも価値がありました。もっと観ていたいと思いました。
同じく千秋楽のニュース画像


私たちが期待していたのは贔屓の北翔海莉のラスティー・ライアン。星の涼紫央の薄い(笑)芝居との対比が楽しみでした。スカイステージの「ミュージックパレット」で歌ウマを改めて痛感していたので、演技も楽しみにしていました(最新の同番組にゲスト出演してうまさを再認識の春風弥里の歌も)。

同じく


でも、ちょっとがっかりでした。前回観た勝海舟と同様、頑張りすぎな感じがします。
ご存知のようにこの人、実に多芸多才で、何をやっても水準が高いのですが、逆にそれらが役になりきるのを阻んでいるのか、いつも一度頭で描いてから役柄を演じているような違和感がありますね。
今回もトップコンビをはじめみんな自然な芝居をしているのに、彼女だけ一人浮いている感じが強かったです。気持ちが自然に台詞になる感じがしないのが残念でした。

ただ、西郷ドンの医者は大ウケでした
開き直ったコメディエンヌぶりをいかんなく発揮して、爆笑を誘っていました。あまりに客席(団体客が多かったのに客席のノリのいいのが不思議でしたが)がウケるので、舞台の共演者も吹き出し、つられて最後は彼女自身も吹いていました。(笑)
この路線で行くのがいいのかも(笑)と思ったぐらいハマっていましたね。

千秋楽のバージョンです


でもさすがに歌は大したものでした。この歌と演技のギャップで専科配属となったのでしょうか。

今回の花バージョンと星との違いを一番感じたのはテリー・ベネディクトですね。

紅ゆずると違って、今回の望海風斗はいかにもマフィアかギャングとつるんでいそうな濃い悪党ぶり(褒めています)で、はまり役でした。エコを売り物にしてあくどく儲ける腹黒い悪党と、商売上手な辣腕実業家という二面がよく出ていました。歌もうまく、聞かせてくれました。
同じく千秋楽のニュース画像


テスへの愛情は本物ですね。
千秋楽のデジカメ撮影映像です

このまま二番手定着となるのでしょうか。

オーシャンズの面々もよくやっていましたが、華形ひかるのヨーヨーは内心ハラハラしました。(笑)

最近顔を覚えたばかりの春風弥里は、いい演技で中堅の演技派になれそうな予感。ただ楽しみにしていた歌が少なく、物足りなかったですね。キャパでは大活躍だったので期待していたのですが。

歌劇団が売り出しに躍起なのがミエミエ(笑)の芹香斗亜のライナス・コールドウェル、目立つ容貌ですが、歌はよく聞いていなかったので(殴)、実力はわかりませんでした。帰途の車中でヨメさんに聞くと「?」な返事でした。
同じく千秋楽のニュース画像

ただ、この役どころ、星でも思ったのですが、こんな大きなヤマなのに、嫌がる初心者の若者を無理に引き込んで大丈夫かと心配してしまいます。観劇しながら前回も不安に思いました。(笑)

娘役で私が気に入った人は花野じゅりあのポーラさん。美人でスタイルがよく北翔海莉が羨ましい。出て来るたびについオペラで追ってしまいました。

印象に残った場面の一つが雑技団の練習風景。一輪車やジャグリングのパフォーマンスは大したもので、特に一輪車は抜群の安定感。これで食べていけそうです。(笑)
いつものことですが、宝塚の生徒たちはいろんなことを器用にやれるものですね。

舞台装置も基本的には前回を踏襲していますが、イリュージョンは「あれ前これあったかな」と思うような装置で、よくできていました。レーザービームでのセキュリティシステムなども前回よりリアルになった感じがしますが、同じものでしょうか。
同じく千秋楽のニュース画像

マルチディスプレイの監視装置もプロジェクタでうまく表現していました。
金庫室に降りるのにワイヤーを使うところでは、実際の昇降に合わせて背景のプロジェクタ画面を同期させて動かし、実際以上の移動距離に見せるところがよくできていました。

今回私たちが観たのが楽近くなのでリラックスしているのか、アドリブも多くて楽しい芝居でした。台本がいいので生徒のノリも違いますね。

チケットを買ったのが遅かったのでココを利用しましたが、運よくリーズナブルな価格でいい席をゆずってもらえてよかったです。おかげで客席降りでは至近距離でトップコンビが駆け抜けるのを見られて幸運でした。

大劇場ではチケットの売れ行きが伸びず心配しましたが、出来栄えは上々、星とはまた違った味わいのある舞台になっていて満足の観劇となりました。なによりトップコンビの長足の進歩が見られたのが収穫でした。

東京公演ではぜひたくさんの方に観劇いただきたいと思います。トップコンビの進化も堪能できておすすめです。




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SONY Duo11で見たDVD ~海の上のバルコニー~

2013年03月08日 | パソコンあれこれ

映画の感想の前にパソコンの話です。興味のない方は下のほうへどうぞ。(笑)

SONYのVAIO Duo11を2か月使ってみて、気に入っている点は、液晶の綺麗さ。
特に動画の表示は最高です(我が家比です)(笑)。
古い映画ソフトのDVDでも、別ソフトと思うほどきれいに再生できます。

次は音。小さい内蔵スピーカーも充分実用可能な性能です。もちろん外部スピーカーのほうが高音質ですが、繋いだり外したりが結構面倒なので、無しですむとWOWOWの無料視聴サービスも気軽に利用できます。

それと、この手のノートとしては処理が早く、でも発熱が小さいのがいいですね。膝の上で文書作成していても全然熱くならないのは大したもの。
この点は、CPUを交換してさらに熱くなったMS-1057とは大違いです(でも冬は膝が温かく快適です)。(笑)

不満な点はキーボード。透過光式のキーボードのせいかキートップの文字が見にくいことと、上から照明があたるとキートップがテカるので見えなくなり使いにくいです。
キーボードのバックライトを常時点灯すればいいのですが、バッテリーの減りが気になります。
それと構造上キーボードがディスプレイと離せないので、窮屈なポジションを強いられる上、ディスプレイの角度が固定なので、膝の上に乗せて入力するのは結構ストレスがたまります。
これらはディスプレイをキーボードの上でスライドさせる方式に固有の問題ですね。やはり他の機種のようにセパレート式のほうが融通が利きます。

ということで、私の普段の使用スタイルは↓のようにしています。

まず家では付属のキーボードは使わず畳んだまま、こんな形で使っています。

ディスプレイの支柱は、閉じた状態ではこんな形で↓


開くとこんな形になって↓


Duo11を載せたらこんな形になります。↓


キーボードは普通のUSB接続の有線タイプです。エレコムの製品でDUO11より少し狭い幅のキーボード。↓
Bluetoothのキーボードはどうも私にはしっくりこなかったのでやめました。

まあなんのことはない、普通の一体型デスクトップの小型版ですね。(笑)

DVDを見るために買ったブルーレイ対応外付けドライブがこれ↓


カバーがガバッと開くタイプで、薄くて外形も他のものより一回り小さいので携帯に便利です。



さて、本題は映画の感想です。まくら長過ぎ。m(__)m

WOWOWで2月に放送された「海の上のバルコニー」というフランス映画(原題 Un balcon sur la mer)です。

DVDにダビングしてあったものを見ました。ダビング時に標準画質になりましたが、小さいディスプレイで見るには十分です。

主演はジャン・デュジャルダンマリ=ジョゼ・クローズ(二人とも初めて見ましたが、いい感じです。)

この映画、日本では劇場未公開ですが、フランスでは観客動員100万人を達成した人気映画とのことです。
で感想ですが、主演二人の感情の駆け引きが味わい深く、見終わってからまた何度も見直しました。
女優のマリ=ジョゼ・クローズはカナダ出身ですが、現在は主にフランスで活躍しているとのこと。この人の眼のチカラ、すごいです。こんな眼で見つめられたらたまりませんね。降参です。
この映画ではストーリーの展開に応じて見せる表情の変化が魅力的でハマりました。

以下ストーリーのご紹介です。(挿入した写真はディスプレイを撮影したものです。)

ジャン・デュジャルダン(最近映画『アーティスト』でカンヌ国際映画祭男優賞とアカデミー賞主演男優賞を受賞しています!)演じるマルクは妻の実家の不動産屋で働いています。この俳優もいい味出していて、こちらも気持ちよく感情移入できます。(笑)

ある日、マルクは、義理の父の運転手として出かけた先で不動産の売買契約の代理人として現れたマリ=ジョゼ・クローズ演じるマンドナート夫人と出会います。出会いからミステリアスな雰囲気で期待が高まります。


そして彼は、駅まで送る車中で、どこか見覚えのある彼女が、少年時代にフランス領アルジェリアのオランで共に過ごした初恋の女性キャティだと気付きます。









少年時代の二人↓


マルクは、再会を喜ぶとともに彼女に強く惹かれていきます。(それも無理がありませんね。こんな美人ですから。)


オランでの過去の日々を語り合ったあと、2人はごく自然に深い関係となります。しかし、それっきり彼女は逃げるようにマルクの前から姿を消します。




その後、妻と子と実家を訪れたマルクは、母親や妹から、キャティがアルジェの戦いの中で亡くなっていることを知らされます。


奥さんはいかにもな配役(笑)です。↓ただ、マルクが現在の養子のような立場に鬱屈した感情を抱いていることには無頓着です。


キャティと少年時代の思い出話などを語り合ったあとなので、死んだとはにわかに信じられないマルクですが、自分を避けるように姿を消した彼女を不審に思い、行方を追います。
この辺からようやくWOWOWが宣伝する「ラブ・サスペンス映画」風の展開になっていきます。

キャティの行方を追っていたマルクは、やがて彼女の父親の家を探し出し、そこで彼女の写真を見てすべてを悟ります。


実は彼女は、幼い頃マルクやキャティと一緒に遊んだマリ=ジャンヌでした。当時の彼女は、マルクに一途な片思いして、キャティにも憧れていたおとなしい少女でした。でも彼女が自分の思いを伝える勇気もなく過ごしている間に、マルク一家は一足先にフランスに引き上げてしまったのです。

少女期のマリ=ジャンヌ。↓眼差しは似ていますが‥。


そして彼女は今、なんとマルクの勤務する不動産会社の同僚・セルジオの愛人でした。
セルジオ↓


父親の借金を返済するために、セルジオの言うままに不動産詐欺の片棒を担ぎ、偽の売買契約の代理人を演じていたのです。


マリ=ジャンヌが働いているという会社がダミーであることを突き止めたマルク。それと知ったマリ=ジャンヌは「追いかけてきてはダメ」とマルクに告げて去ります。
全てを知ったマルクはセルジオを会社から追い出します。その時にセルジオからマリ=ジャンヌとの関係を聞かされます。

一方でマルクは、妻との関係も冷え込んで、家に帰らず会社に泊まり込むようになります。


マリ=ジャンヌは、父の負債を清算するためセルジオの指示に従いさらに危険な犯罪に手を貸そうとしますが、ギリギリのところでマルクへの思いを断ち切れず踏みとどまります。


そして、過去のすべてを清算した彼女は、これまでずっと追い続けてきた役者としての道だけに励むようになっていきます。
演技の練習に打ち込む姿。↓ 芝居の台詞が意味深で、魅力的な眼が印象的です。





季節が変わった頃、マルクの前に再びマリ=ジャンヌが訪ねてきます。
最初マルクは、自分を騙した彼女を皮肉たっぷりにあしらいますが、彼女はマルクが自分を勝手にキャティと間違えたこと、キャティのフリをすることで過去に戻れるなら、あえて訂正せずにいようと思ったこと、そしてキャティの最期について語ります。


ブロンドに染めていた髪を元の色に戻してマルクの下にやってきた彼女の姿がいじらしくて泣かせます。ここが一番の見どころでした。

話しているうちにマルクも、偽らない彼女の真情がわかってきて、近況などを尋ねたりします。

彼の表情が会話とともに次第に穏やかに変化していくのもいいですね。

彼女も今は芝居だけは続けていると話します。


その後マルクは、キャティとマリ=ジャンヌとの思い出を辿るために、引上げ後訪ねたことのないオランを訪れます。その際マリ=ジャンヌから父の店だったところがどうなっているか見てくるよう頼まれました。その店の屋上で、かつての思い出に浸るマルク。そこで見せる彼の涙がいろいろ解釈できて意味深でした。

そして、ある雨の夜、女優として舞台に立つマリ=ジャンヌがカーテンの隙間から客席を見ています。


彼を待ちきれずに、彼女は舞台衣装の上に上着を端折って、雨の中を探しに出ます。クライマックスシーンです。

マルクを見つけたマリ=ジャンヌ。

ここは、単に劇場に来る彼を探したというより、彼女の人生はずっと彼を探し続けていたということでしょうか。

それに答える彼は

これも劇場への道を迷ったのか、これまでの人生に迷っていたのか、解釈はいろいろですね。

二人の会話は短いですが、ずっしりと響いてきます。
そして映画は終わり。

この映画の私のツボはふたつ。

-その1-
初めて二人が出会った冒頭の古い屋敷(グルなので当然ですがセルジオも同席していました))。細かく見るとこの場面の中にその後のストーリー展開の鍵がありますね。

-その2-
マリ=ジャンヌは、偽った名前のままベッドを共にしたが、なんとか本当の自分を思い出してもらおうと、「お菓子屋さん(父の店です)の名前を憶えている?」とマルクに聞きます。
しかしマルクは憶えていませんでした。その時の彼女の落胆した表情が何とも言えません。
でもそのあと、子供の芝居に共演した時の台詞を彼が口にしたのを聞いた彼女のうれしそうな顔が対照的です。
これもその後の話の展開を暗示していていいです。

この映画は、女性監督らしく他にも細やかな描写や伏線があちこちにあり、一度見ただけではなかなか読み取れませんね。鈍い私は何度も見直す羽目になりました。(笑)

でも何度見ても新鮮でした。ただし、サスペンス性はきわめて薄いです。(笑)
マリ=ジャンヌが加担していた不動産取引に絡む犯罪も詳細は不明。セルジオとの出会いや、彼女の結婚歴もちらっと話に出てきますが説明はなく、よくわかりません。マルクが離婚したのか、離婚したとしたらこれから仕事は続けられるのかもわかりません。

結局そんなことはどうでもよくて、重要なのは二人の偶然の再会と、それから始まる少年期のアルジェでの思い出を背景にした二人の感情の駆け引きですね。それがこの映画のテーマです。

最後に後で知ってびっくりしたのが、マルクの母親役がCCことクラウディア・カルディナーレだった!こと。
けっこう好きな女優でしたが、長くスクリーンで見かけなかったので、もうとっくにお亡くなりかと思っていました。(殴)
まだご存命だったとは‥。
同じ頃活躍していたカトリーヌ・ドヌーヴは今も映画出演が多く、私たちもたまにスクリーン上で見かけますが、容貌からしても、CCとの6歳の差は大きいですね。

さて、幸いこの映画、今月(3月)26日(火)午前11:00に再度WOWOWで放映されます。見逃された方は是非ご覧になってください。私のこんなお粗末な紹介では伝えきれていない濃い中身の映画ですから、これを読まれた後でも十分楽しむことができると思います。

その際は是非録画して何度も見直すようお勧めします。(笑)

コメント
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