思いつくままに書いています

間口は広くても、極めて浅い趣味の世界です。
御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

兵庫芸文センターの使用不可の車椅子昇降機のナゾ

2017年11月30日 | 日記
今回、偶然ですが、兵庫芸文センターが身障者には全く苛酷な施設だということがわかりました。

というのは、6日前の11月24日に、ヨメさんがデイケアからの帰宅時に玄関前でまさかの転倒。

幸い骨折等はなかったものの、麻痺側の足を打撲し、転倒時の恐怖もあって全く杖歩行が出来なくなってしまいました。それで現在はデイケア等で外出する時は、車椅子ごと送迎車に乗るという状態になってしまったのですが、問題は先行予約でゲットした観劇チケットです。

直近ではまず数日後に、兵庫芸文センターでの観劇予定が入っています。

なのでヨメさんは、二日前に劇場に電話を入れて、最近阪急中ホール上手側の階段通路に設置された車椅子昇降機を利用したいと依頼しました。

これですね↓


ところが、なんとこの昇降機、1か月前までに予約してもらわないとご利用できませんと担当者(女性です)にキッパリ断られたのです。

しかし、どこの世界に、計画して転倒する者がいるでしょうか。

今回の転倒までヨメさんは、兵庫芸文センターでの観劇のときは、毎回舞台下手側の長い階段通路を、手すりを頼りに一段一段下ってなんとか客席にたどり着いていました。

それができなくなったので昇降機を使いたいといったのに、「急に言われてもできません、これは劇場の方針です」との宣告。それなら元の席(最前部付近の良席です)は諦めるので、車椅子のまま観劇できる場所に変えてほしいと頼むと、これまた「全席完売なので席はありません」と全く取り付く島がありません。

しかし同センターのホームページには、
各ホール車椅子のままでもご鑑賞いただけるスペースがございます。詳しくは、芸術文化センターチケットオフィス(0798-68-0255)までお問い合わせください。また、ご来場の際には、スタッフに声をおかけください。」と書かれています。
スペース」であって「座席」ではありません。

それではどうしたらいいのかとヨメさんがすがる思いで聞いたら、ようやく何度目かの電話で、車椅子で行けるを用意するとの返事がありました。なんとか見られるようにはなったのですが、やはりスッキリしませんね。
ちなみに、こちらで手持ちの席はどうなるのかと聞くと、即座に「売ります」とのこと。商売にはきわめて熱心です。

しかしね、みなさん。

1か月前までに事前予約しないと使えない車椅子昇降機っておかしいと思われませんか?

これでは、私たちのように、観劇直前に歩行困難になったら、まったく使えない設備です。

まるで、デパートでエレベーターに乗ろうとしたら「このエレベーターは事前予約が必要です」といわれたような気分でした。

この一件のあと、宝塚大劇場と梅芸、ドラマシティでも観劇予定のチケットがあるので、不安になったヨメさんが、それぞれの劇場に事情を話して障がい者席を使いたいと連絡したら、どの劇場も、極めて柔軟かつ懇切丁寧に応対してくれて、すべてOK。
一安心でした。

兵庫芸文センターの担当者はみなさん言葉遣いは丁寧ですが、絵にかいたような慇懃無礼さで、木で鼻を括ったような返事ばかりで、とにかく昇降機の使用を断ろうという意図が丸ミエでした。

設備があるのになんで使えないのかと、ヨメさんが理由を聞いたら、動かすための人手がないとバッサリでした。

道理で、同センターの劇場であまり車椅子のお客さんを見かけないはずだと二人とも納得でした。

いったいどういうシステムになっているのでしょうか。

もう過去のものと思っていた地方公共団体の、官僚的で硬直した劇場運営の実態を見せつけられた思いで、本当にガッカリでした。



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こまつ座第119回公演『円生と志ん生』の観劇メモ

2017年11月30日 | 観劇メモ
兵庫芸文センターで、久しぶりにこまつ座第119回公演『円生と志ん生』を観て来ました。今回はその感想です。とはいってももう一か月以上も前のお話です。

順番からすれば、「神々~」のその2のはずでしたが、何を書こうか考えているうちに大劇場公演も東京公演も終わり、その間に今回の『円生と志ん生』が入って、その後星組を観て、さらにまたまた兵庫芸文センターで「オーランドー」を観て、10月26日にはドラマシティで「パジャマゲーム」と、観劇だけでも在庫の山。(殴)

その間に、2回万博公園に行き、ついでに民博の「よみがえれ! シーボルト‥」展と「カナダ先住民‥」展も観て、馬見丘陵公園にも3回足を運び、美術展も万葉文化館の美人画展で眼の保養のあと、兵庫県立美術館で「大エルミタージュ展」、11月5日には和泉市立久保惣記念美術館で「ピカソと日本美術 - 線描の魅力 -」、同じく12日は松柏美術館で「松園・松篁・淳之三代展」を観るなど、まったく貧乏暇なしです。(笑)

さらにその合間を縫って、増殖した(殴)ドローンを飛ばしに行くなど、もう体力の限界をはるかに超えて疲労困憊。おまけに、昔の職場の事業記念誌への寄稿依頼も安請け合いして、気ばかり焦る日々が続いていました。

ということで、いったんすべてリセットすることにして(ヲイ!)^^;、とりあえずこまつ座の『円生と志ん生』の感想から、在庫整理開始です。よろしければお付き合いください。

当日は、幸い阪神高速の渋滞もなく快走。一時間で地下駐車場に到着しました。
まず近くの「グラッチェ○○○○」で腹ごしらえ。ここは値段が手ごろで他に店もないのでよく利用しますが、店舗が車椅子に全く優しくないのが難点。店内に入るには車椅子を片手で押しつつ、重い二枚のドアを次々に開けて店内に入るという、近頃珍しい多重バリアー(笑)の店です。しかも最近メニューが大幅に整理され、気に入っていたものが無くなったのも残念。

トイレも済ませてロビーに戻ると、劇場入り口横に一つ花がだけありました。大空ゆうひさん(いつのまに祐飛から変わったのかな)への花でした。

まあ今回は彼女の姿を拝むというのも観劇の動機だったり。

この公演は12年前に初演、その2年後に再演されてから10年ぶりの再々演ということになります。

演出はこまつ座の常連となった鵜山仁。最近この人の演出作品とは縁があって、こまつ座では「芭蕉通夜舟」「イーハトーボの劇列車」、こまつ座以外では「トロイラスとクレシダ」や「幽霊」などを観ていますが、「トロイラス‥」と「幽霊」はよくわからない話だったので、やはり井上ひさしの脚本のほうが私などにもわかりやすくて好みです。

それはさておき、話は日本の敗色濃厚な1945年の満州が舞台です。
日本本土では空襲が続き、落語では食えなくなった円生と志ん生が、満州で関東軍の慰問をやれば白いご飯は食べ放題、酒も飲み放題という美味い話に飛びつき、1945年に渡ったものの、すぐに敗戦で避難民となり、あちこち流浪の末、ロシア国境近くの大連で足止めを食らって、600日間苦難の生活を送るというお話です。

筋としてはかなり地味な話で、しかも前半はテンポが遅く、時折睡魔が襲ってきましたが、休憩をはさんで後半は俄然面白くなりました。
ということで主な役ごとに感想です。いつものとおり敬称略です。


まずラサール石井の志ん生です。初めて舞台でお目にかかりましたが、飄々とした演技でかつ台詞は明瞭、風貌が志ん生そのもの。(笑) 
かなり自堕落というか、行き当たりばったりの「宵越しの金は持たない」的な志ん生を等身大に演じていました。大したものです。

一方、大森博史演じる円生のほうは、志ん生とは違って何事にもしっかり計算が行き届いた実務家的な人物です。ところが意外にも落語は、心に沁みる人情噺が得意という面白い人物です。この対照的な二人の掛け合いが見せ場になっていました。

その二人の周りに登場する20人の女たちは、みなそれぞれに不幸を背負っています。当時の満州に生きて死んでいったそうした女性たちを、大空ゆうひ前田亜季太田緑ロランス池谷のぶえが一人五役を演じていました。

私たちの今回の観劇の目的は『Familia -4月25日誕生の日-』以来久しぶりにお目にかかる大空ゆうひ
期待通りのしっかりした演技でしたが、少し残念だったのは、演じるのが教頭先生や修道院のテレジア院長など、かなり年長の女性なので、ちょっと勿体ない感あり。

オルテンシアほか4役の前田亜季の舞台は初めてですが、来年観劇予定の「TERROR テロ」にも出演するということで、楽しみにしていました。終わってみれば期待通りで、個性の全く違う5人の女性を好演していました。この人、8年前にきらめく星座に出ていたとのことですが、私たちが観た深谷美歩(良かったです!!)版の小笠原みさをとはまた違ったみさをを観てみたかったですね。

そして、マルガリタほか4役の太田緑ロランス
海の夫人のボレッテ役では、社会に出て自己実現したいと願いながら叶わず、半ば人生に諦観して生きる女性役をしっとりと演じていましたが、今回は全く違う役でした。(笑)
とにかく眼の力がすごい。(笑) 女優陣の中で一番目立っていました。頑張っているのが嫌味にならず、役の演じ分けが鮮やかで演技の幅が広いです。

たとえば野に咲く花のようにでも生活感に溢れた女性をリアルに演じていた池谷のぶえも同様にベルナデッタほか4役をこなし、それぞれ年齢も設定も全く違う人物を演じていて、その変わりようを観るのが楽しかったですね。途中で、これも池谷のぶえ?と驚いたことが何度もありました。いい仕事をしています。

音楽はこまつ座の芝居に欠かせない朴勝哲のピアノ演奏。焼肉ドラゴンのアコーディオン弾きも良かったですが、今回もリチャード・ロジャースの三曲をはじめ劇中歌の伴奏や転換音楽などで大活躍でした。

今回の舞台は、敗戦後の落語家二人の外地での足止め生活を描いた地味な感じのテーマなので、観終えて高揚感に包まれて帰途に就く、みたいにはなりませんでしたが、対照的な芸風の二人の噺家の、ほとんど紹介されてこなかった大連での生活を、井上ひさしが丁寧に舞台化したことには感心しました。

もっとこまつ座の舞台を観たいのですが、最近関西に来ないことが多くて残念です。



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