思いつくままに書いています

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御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

兵庫芸文センターで、再び「頭痛肩こり樋口一葉」を観てきました。よかったです。

2016年09月23日 | 観劇メモ
3年ぶりに、またこまつ座「頭痛肩こり樋口一葉」を観てきました。今回は、前回唯一残念だった樋口一葉がバッチリで申し分なし。
他の配役は前回と同じ豪華メンバーなので非の打ちどころがなく、名実ともにこまつ座の看板芝居といえる見応えたっぷりの舞台でした。

今回も、最前列センターブロックでの観劇でしたが、オープニングでの子供たち!?の提灯踊りなど、こちらが
恥ずかしくなるほどの至近距離でした(笑)。
セットも前回同様、四本の柱と仏壇だけの極めてシンプルなもの。担当は宝塚の舞台もよく手掛けている松井るみさんで、この人の舞台
装置では『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』が記憶に残っています。でも今回はチラシで初めて知りました。(笑)

しかし、我ながらあきれるほど見事に話を忘れていました。
前回の観劇はほんの3年前、なのに筋書きはきれいさっぱり忘れていました(笑)。まあその分、新鮮な観劇となりましたが。(殴)
そして改めて感じたのが、同じ樋口一葉を題材にしていても、2月の二兎社「書く女」とは大違いということ。
「書く女」は、主人公・一葉と、彼女を取り巻く人々との関りが史実に即して丁寧に描かれていて、彼女とその作品の時代背景もよく理解
できました。登場人物も、半井桃水に斉藤緑雨、馬場孤蝶、平田禿木、川上眉山などの文学青年たちや、ライバルの田辺龍子など一葉と深
いかかわりのあった人物が登場して、明治の文壇の一端がよく理解できました。

でも「頭痛肩こり~」は全然違う話。
まず配役はすべて女だけ。
そしてテーマも、一葉が話の中心ではなく、一葉の生きた明治という時代を、一葉を含む6人の女性の生きざまを通して描くといった感じ
でした。
でも私は(ヨメさんも)先に書いたように、話をすっかり忘れていて、ただ若村麻由美の幽霊が本当にキレイとか(殴)、苦界に身を沈めた
熊谷真実がド迫力だったとか、妹の邦子が実に健気だったとか、断片しか覚えていませんでした。

それで今回、全く先が予測できない展開に、よくまあこんな芝居の脚本が書けるものだと改めて感心しながら観ていました。
それと、この「頭痛肩こり~」がユニークなのは、一葉だけに幽霊・花蛍が見えること。
このわけは、脚本家自身が、今回購入したプログラム(中身が濃くて値打ちがあります)中の、架空のインタビュー記事「樋口一葉に聞く」
(初出は「季刊the座」1984年5月創刊号)で解説してくれています。
井上ひさし一流の、非常に面白くかつ深い一葉論が展開されていますので、ぜひプログラム↓をお買いになってご覧ください。

この一葉と花蛍の関係、「エリザベート」に通じるものがありますが、それをずっと以前の1984年に舞台で上演していたのですから、
本当に大したものです。

ということで、出演者ごとに感想です。例によって敬称略です。

まず今回一番気になっていた一葉役の永作博美から。


よかったですね~。滑舌もよく、表情も身のこなしも、メリハリがあって強い。3年前の一葉とは大違いでした。
強くてもヤリ過ぎ感は全くなく、たたずまいもバランスよく周囲に馴染んでいました。でも本当に若見えで、実年齢との乖離がすごい!!(殴)
そのおかげで、24歳で没したまさに夭折作家の典型・樋口一葉に、ぴったりハマっていました。
プログラムで、稽古中は苦労したと語っていますが、周りにはそう見えなかったようで、対談記事では「涼しい顔して稽古していた」
と冷やかされていました。

稽古風景です↓



でも本当に大した演技力でした。つくづく知らないことが多いです。
前回の舞台では、一葉の台詞の場面になると、滑舌とか声量とか果ては演技全般が気になって、舞台にまったく感情移入できなくなって
いました。
でも今回はそんな懸念材料がすべて解消、話に自然に入り込めました。脚本家の言いたかったこと、考えていたことがストレートに
伝わってきた感じです。

他の五人の女たちの配役は前回と同じで、それぞれの役と役者さんの持ち味がうまくマッチしていて申し分なし。

母親・樋口多喜役は三田和代

3年前が初出演とのことですが、もう円熟の多喜になっていましたね。維新前夜の混乱の中で、故郷を夫則義とともに出奔し、江戸で艱難
辛苦の末に最下級の武士となったのも束の間、明治という生き難い時代に翻弄されながら生活を送る姿がコミカル&リアルでした。
故郷の村人を見返すかのように、貧困の中でも絶えず武士のプライドを強調する多喜ですが、一方では、気前よく他人に物を与えたりする
憎めない人物です。前回と同じく、三田和代は文字通りのハマリ役でした。

家族の役では、一葉の妹・邦子深谷美歩もよかったですね~。

前回も最後の場面が印象的でしたが(この場面だけははっきり覚えていました(殴))、今回もやられてしまいました。うまいエンディング
でついホロリとな。この場面に作者がすべての思いが凝縮しているようないい場面でした。

邦子が、プライドだけ高く、経済観念は希薄で能天気な母と、いろんな小商いに失敗した後、背水の陣で小説書きに没頭する一葉の間に
立って、生活を切り盛りする健気な姿が瞼に残ります。
演出家は、邦子は「とにかく働き続けている役」だといっているそうですが、その通り、舞台では甲斐甲斐しく働きづめ。(笑)
この人、同じこまつ座の「きらめく星座」で長女「みさを」役を演じていましたが、そこでも同じような、感情を押さえ
た中にも、よく人となりが伝わってくる演技でした。台詞もすっきりさわやか。本当にいい役者さんです。
「きらめく星座」のみさをです↓


樋口家に出入りする女性の一人、中野八重役は熊谷真実


もともと私たちは、初めてのこまつ座観劇となった「黙阿弥オペラ」での二役をこなす熱演に驚かされましたが、
2013年のこの演目の公演でも、渾身の演技で圧倒されました。
でも今回は、さらに力の入った演技で、とくに後半、苦界に身を落としたあとの場面では、前回以上のド迫力の、
凄みさえ感じる演技でした。
本当にこの人の役への入り込み方は大したものです。

そしてもう一人、樋口家に出入りしていた稲葉鑛役は愛華みれ

宝塚時代から個人的に好感度極大なトップさんでしたが、前回同じ役で出演し、その元気な姿を観ることができてうれしかったです。
そして今回、体調はさらに良くなっているようで、舞台での表情もスッキリきれい。役の人物像がさらに深まっていて、歌の場面も多く、
よかったです。
稲葉鑛も没落士族の子女で、暮らしの内情は火の車。知り合いを回って、返す当てのない借金を頼みに回りながらも、育ちの良さは
なくしていないお嬢様です。でも彼女も最後はやはり不幸な結末となります。
愛華みれのキャラクタと演技が役柄によくマッチしていて、見ごたえがありました。3年ぶりの歌もさらに磨きがかかっていて、
胸に染み渡りました。
プログラムによれば、彼女は2009年の「きらめく星座」に出演していたとのことですが、それもぜひ再演してほしいですね。

そして花蛍若村麻由美

相変わらずというか、ますますきれいな幽霊で、やっぱり一度は憑りつかれてみたい。(殴)
でもこの花蛍は一番運動量の多い役で、大変ですね。舞台狭しと駆け回りながらの長台詞が多くて、それでも息も切らさず
頑張っています。
小松座のサイトに、この公演の制作発表時の画像がありましたが(笑)、生前の花蛍(笑)が美人で売れっ妓だったのがよくわかります。↓

彼女を通して、明治という、とくに女性にとって極めて過酷な時代がくっきりと浮かび上がってきます。
でも花蛍は優しい幽霊です。というか、かなりお人好し(笑)。自分の非運は嘆くけど、決して他を責め続けることができず、
次々に自分を絶望に追い込んだ原因を探っていくうちに、結局女たちの不幸の根源が明治という時代そのものにあるという
ことを私たちにわからせてくれます。

しかし幽霊が出てくると一遍に舞台が華やぐというのもなんともシュールです。(笑)

とまあ、豪華な女優さんと極上の脚本、それを十二分に生かす手練れの演出家の仕事ぶりがあいまって、至福の観劇タイムと
なりました。
小松座の看板公演といわれる理由がよくわかりました。
感動のうちに幕が下りて、さあスタンディング!とタイミングを見計らっているうちに二回でカーテンコールが終わってしまった
のが唯一心残りでしたが(笑)、いい舞台に満足しながら帰途につきました。

今度は筋を忘れないようにしましょう。(殴)

次は星組退団公演の観劇感想です。がんばって書かないと。(^^;

コメント (2)
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宝塚宙組公演 『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』観劇メモ

2016年09月05日 | 宝塚
とっくに大劇場の公演が終わったのに、ようやくエリザベートの感想です。
見に行ったのはお盆の真っ最中。かなり遅すぎ&薄い感想ですが、よろしければどうぞ。

行った日は当然ながら、帰省した車で道は最悪の状態でした。これを予測していつもより一時間早く出たのに、阪神高速池田出口から大渋滞。3時間も車列に閉じ込められて、大慌てで車椅子を押して劇場にたどり着いたのは11時25分を過ぎていて、舞台はすでに第7場になっていました。すべての観劇でこんなに遅刻したのは初めてです。^^;
ようやく客席に着いても、車中でのストレスと、それから解放された安堵感と、通常の料金に上乗せしてまでゲットしたチケットなのに、貴重なプロローグ場面などを観逃した残念感が一度に襲ってきて、しばらく舞台に感情移入できない状態が続きました。(笑)

それはさておき、何度も観たはずのエリザですが、私たちが劇場で直近に観たのは春野寿美礼トート以来。ということで、久し振りのエリザ感想ですが、これが非常に良かった!!
無理してゲットしたチケットの価値(まだいうか!)は十分にありました。(笑)
これを見逃していたら、残り少ない人生に大きな禍根を残すところでした。(ややオーバーかな(殴))
↓久しぶりに買ったプログラムです

とにかくキャストが良かった。主役二人はもちろん、すべての出演者が役にピッタリ嵌っていて大満足。久しぶりにこの作品自体の良さを味わえました。

まず朝夏まなと




この人は守備範囲が本当に広いですね。
当初はどんなトートになるか予測できず、ちょっと心配でしたが、観ていて初演を何度も思い出してしまう原点回帰のトート。でも一路真輝ともちがうオリジナリティもあって、歌と演技の完成度が高かったです。





観慣れているので次の台詞が予測できるエリザですが、そんな類型的な予想を超えてしまう新鮮な演技が良かったです。例えば「死ねばいい」とか、おおそう来るかと感心しました。20周年の記念公演にふさわしいトートです。





でもやっぱりこの人は目が大きい。朝夏まなこ。(殴)


実咲凜音のエリザベートも良かった。遅刻のせいで少女時代↓は見逃しましたが^^;、

結婚するあたりからでも、

晩年までの各場面に即して、役年齢にふさわしく演じていて、内面までよく伝わってくる自然で丁寧な演技で、見応えがありました。

歌も本領発揮の伸びやかでしかも繊細な情感のこもったもので、聞きながら、この作品の楽曲の完成度を改めて感じました。


観終えて数日後この公演のナウオンを見ていたら、これまでにない柔らかい表情で話していて別人の印象(殴)。男トップに寄り添う姿が新鮮でした。(笑) 前トップとの微妙な距離感はもはや遠い日々。(殴)


真風凉帆フランツも久し振りに見るいいフランツ。



エリザベートと母親との板挟みになったフランツの苦悩がひしひしと伝わってきました。
当初、今回はルキーニとフランツが逆じゃないかと配役が疑問でしたが、実際に観ればどちらもドンピシャ。

真風フランツは、抑揚の効いた感情表現ながら存在感があって、若い時のシシーへの愛と、長じての国王としての風格と苦悩と寂寥感がよく出ていて、最近では出色の出来でした。



歌も長足の進歩があり、情感タップリで聴かせてくれました。

でも今回特によかったのはルキーニの愛月ひかる
彼女は私たち夫婦にとって以前から好感度大な生徒さんですが、どちらかというとキャラクタ的には地味な印象でしたね。これまでのナウオンなどの対談番組でも、ニコニコ笑っているけど控えめで、その笑顔のえくぼが印象的な人でした。


大体主役を見守り&忠実に支える友人とか部下とかの役が多かったと思いますが、そんな彼女に、アナーキストでテロリストでハプスブルグ家の滅亡を暗示させる狂言回しの黒い役が似合うのか大疑問でした。なので私たちは、ルキーニが今回の公演の一番の不安材料でした。

ところが、まずスカステのニュースで練習風景の様子を見て「あれっ?」とな。(殴)
ニュースでは短時間の練習場面でしたが、それでもよく演じられているのが見て取れてビックリでした。

そして今回実際に舞台で観て、もうただただ感心するばかり。久し振りに全く違和感のないルキーニに出会えました。

初演の轟悠以来の、完成度の高いルキーニでした。この役は男役トップ候補が必ず経験する通過儀礼みたいな大役ですが、初演以外は大体みんなルキーニ像の解釈を間違えていて、やり過ぎばかりが目立って、変な作り笑いをしながら腰をかがめて舞台をヒョコヒョコ歩き回ったりするなど、興ざめな演技が多かったです。
でも今回の愛月ひかるはよかったですねー。久し振りのイケメン・ルキーニ。(笑)

役柄を正確に把握していて、過不足ない破たんのない演技でただただ感心するばかり。これまで見たことのない愛月ひかるで、縁遠いと思っていた男臭い役柄を自然に演じていて、全く違和感なし。うれしい大誤算でした。

これまでの例では、初めからヤリ過ぎていて、回を重ねるにつれてますますしつこくなって破たんするルキーニが多かったのですが、今回はノビしろを持った演技で安心して観ていられました。次作品が楽しみです。

純矢ちとせゾフィーもオリジナリティがあって良かったです。

この役もこれまで初演の朱未知留ゾフィーがベストと思っていましたが、今回はそれに負けず劣らずの出来。

「ハプスブルグ家の存亡を考えての、ゾフィーなりの行動や決断ということが出せれば」という純矢ちとせの役作りへの思いがよく伝わってきました。
初演のゾフィーは、冷酷で鬼のように怖い印象が前面に出ていましたが(それもそれまでの宝塚には見られないインパクトがあり新鮮でしたが)、今回の純矢ゾフィーは同じような迫力ながら、演技のディテールには人間らしさも宿っていて、新たなゾフィーになっていました。

板挟みになるフランツの苦悩の理由がわかるゾフィーで、これもアリかなと思っていました。

トリプルキャストのルドルフは役替わりAで澄輝さやと。この人もよく役と合っていて違和感なしに観ていられました。
少年時代のルドルフの星風まどかもかわいらしく、そんな姿につい初演の安蘭けいを思い出したり。


それと、びっくりだったのがマダム・ヴォルフ伶美うらら
これまで観劇していて、せっかくの美貌が頼りなげな歌で残念感満載だったのに(あくまで個人の感想です(殴))、今回は自信に満ちた歌で、ド迫力な美貌の娼館の主を演じていました。この人、見かけと違って低音域のほうが得意なんですな。






「翼ある人びと」での好演以来久しぶりの演技の伶美うららに出会えて良かったです。しかし、こんな美人オーナーだと娼婦たちも働きづらい(笑)。
実際、せっかくマデレーネががんばっても、つい伶美うららを見てしまったりしていました。(殴)

フィナーレの始まりは真風の「愛と死の輪舞」のソロダンスから。
そして朝夏トートが娘役をひきつれて「最後のダンス」になり、

男役群舞での「闇が広がる」から

実咲凜音とのデュエットへと続いて、

落ち着いた色彩の衣装とも相まって、記念すべき公演にふさわしい完成度の高いフィナーレになっていました。本当に観てよかったです。

というわけで、遅刻の痛手も補ってくれる(笑)いい舞台の余韻に浸りながら、劇場を後にしました。


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