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宝塚宙組公演『神々の土地』&『クラシカル ビジュー』の観劇メモ その1

2017年09月12日 | 宝塚
先日、宙組公演『神々の土地』&『クラシカル ビジュー』を観てきました。
朝夏まなと伶美うららの退団公演となる今回の舞台、二人が主演した名作「翼ある人びと」と同じ脚本・演出家の作とあって、大いに期待しながら劇場に向かいました。今回も大した渋滞もなく、9時30分には駐車場へ。

観劇の前日、ヨメさんとスカステのナウオンステージを見て事前学習。(笑)
でもこの番組、ネタバレに極度に配慮して、話の中身がよくわからないように作られています。(笑)「娘トップ不在」ということで、いつもは披露される娘トップの苦労話みたいなのもナシ。
なので、結局どんな話かよくわからないまま、7列上手側端の席で開演を待ちました。
当日は凪七瑠海さんや壱城あずささんたちもご観劇でした。

という、どうでもいい前置きはこのくらいにして、いつものとおり、薄味かつ極めて個人的な、独断と偏見満載の感想です。ネタバレもあるので、未見の方はスルーしたほうが、今後の観劇の感激(殴)は大でしょう。

(今回は大作の予感がしたので(笑)、先行販売で2回分のチケットをなんとか確保。なので、とりあえず「感想その1」となる予定です(笑))

以下敬称略。画像はナウオンの画面撮りなので、参考程度にご覧ください。

で、いきなり感想の結論ですが、まあなんとも凄いものを観てしまった

幕が下りてしばらく茫然自失。そしてヨメさんと顔を見合わせて、お互い「すごいね」の一言だけ。
「絶対チケットを2回分取って!!」というヨメさんの指示は大正解でしたね。

今まで観てきた宝塚の作品でもトップクラスの完成度。」とは、長年のタカラヅカ・ウォッチャー・ヨメさん談です。

そのとおりで、本当にこんな高密度の脚本を、二本物の時間的制約の中で書き上げるとは大した力量です。
恐れ入りました。

構成も、プロローグの皇帝暗殺から、二人の出会いの雪原の場面、そして最後にまた雪原の別れの場面、そしてドミトリーのモノローグで始まる洒落たエピローグとよく考えられていて、泣かせどころもタップリでした。

それと、キャスティングも絶妙。「翼ある人びと」のあの大感動を、さらに大きな舞台設定で再び味わえるとは望外の喜びでした。今回も台詞がよく練られていて、とくに主演二人の情感あふれるやり取りは深く心に沁みました。沈黙さえ雄弁な演出が見事でした。

ただ、<ミュージカル・プレイ「神々の土地」~ロマノフたちの黄昏~>といってもあまりミュージカルらしくなくて歌は少なく、台詞中心の舞台でした。でもそのおかげで話の展開はよくわかり、複雑な人間関係と社会背景も理解しやすかったです。ヒロインに配慮したのでしょうか?(殴)

一回目の観劇なので、簡単に(二回目も簡単だったりして(殴))役ごとの感想です。

まずドミトリー役の朝夏まなとから。

主人公ドミトリーは、農民たちの悲惨な生活の上に胡坐をかいて、贅沢の限りを尽くし、爛熟・腐敗したロマノフ一族をはじめとする皇族・貴族たちとは違って、ロシアの現状を憂う青年貴族という設定です。

ロシアを覆う深刻な政治危機に深く憂慮し苦悩する一方、大公妃イリナ(イレーネ)への慕情を持ち続け、やがて局面打開のため立ち上るという、純粋で多感なドミトリーを、抑えた演技で見事に演じていました。



凛々しくて爽やかで優しさもあって、しかも愚直なまでに誠実というまさに理想の主人公。

前作のブラームスで感じた、台詞や動作の隅々にまで細やかな心理描写が込められていて、抑制のきいた演技なのに強く伝わってきます。もうしょっぱなから感情移入しまくりです。
演出が冴えていました。

しかしまあ、「翼~」といい今回の作品といい、朝夏まなとと伶美うららのコンビの魅力をこれでもかと見せてくれて、先に触れた二回の雪原の場面など、この世のものとは思えない美しさ。(笑)







朝夏まなとが、この上田先生渾身のオリジナル作品で退団することになって、本当に良かったですね。

余談ですが、はじめのほうの雪原に登場する大鹿が、小道具さんの大変な力作でした。一回しか使われないのにリアルな作りの鹿で、もったいない。(笑)
逆に雪合戦が「エアー雪合戦(殴)」なのがプチ残念。



次は大公妃イリナ(イレーネ)の伶美うらら
この人、トップ就任もかなわず退団と聞いて残念に思っていましたが、こんなドンデン返しが待っていたとは。まるで9回裏・ツーアウトで満塁サヨナラホームランです。(殴)

もう文句なしのトップ娘役


伶美うららは、スカステで見た「キャパ」や、大劇場で観た「王家~」ではキャラクタと役が合っていない感じでしたが、上田久美子の二作品ではまさに水を得た魚!

これまでの彼女の集大成といえる、魅力満載の舞台でした。彼女も「翼~」に続くこの作品で再度本領発揮で、本当に良かったです。

史実がベースの舞台でも、この「大公妃イリナ」は創作された人物(「大公女マーリア」の体験などが参考にされていますね)ですが、しっかりとした人物像はさすがです。

気品ある美貌と、抑揚のきいたしかも情感にあふれた演技、低く抑えた声でもよく通る台詞など、非の打ちどころのない大公妃イリナでした。
センスのいい色彩とデザインの豪華な衣装が良く似合い、今のタカラヅカでこんな着こなしが出来る娘役が他にどれだけいるだろうかと思わせるぐらいで、シックな髪形もピッタリでした。


でもあくまでも非トップなので、プログラム(久しぶりに買ってしまった^^;)はその他大勢(殴)扱いですが、実質文句なしのトップ娘役なのでよしとしましょう。
くりかえしになりますが、とにかく私たちは再び「翼~」以来の気品に満ちた麗姿と演技がタップリ観られて、大満足でした。

続いてフェリックス・ユスポフ役の真風涼帆です。
この人物は貴族の生活を享受しながら、反面ロシアの現状についても醒めた目で見ていて、
ラスプーチン暗殺と皇帝一家を排除するクーデター計画を企てて、ドミトリーにも加担するよう持ち掛けたりします。こんな一筋縄ではいかない、したたかな人物を真風はのびのびと演じていました。二番手によく回ってくるおいしい役です。


個人的には、プロローグのニューヨークの場面で、
「人間は生活に必要な量以上に食物を手に入れるようになってから、文化や芸術を手に入れた」みたいなことを言ってから、「ニューヨーカーやボルシェビキどもには文化や芸術はわからない」と続けるところがツボでした。(私はロシアン・アバンギャルドの芸術とその時代が大好きですが)

太古の昔、生産力の発展とともに「階級」分化が発生し、フェリックスもまた、その支配階級の一員として、優雅な生活を築いてきたことを反省するどころか、革命後もあっけらかんと居直る姿に、反語的な表現ながら作者の歴史観が垣間見えた気がして、面白かったです。

怪僧ラスプーチン役は愛月ひかる
今回も、ナウオンなどでの、おっとりとした話しぶりからは想像もできない怪僧ラスプーチンを体当たりで演じていました。






見始めてすぐに、絶品だったルキーニを思い出しました。

今回も鬼気迫る演技で、断末魔の形相もすごい。実際の暗殺の詳細は不明とのことですが、一説では、毒を盛られ、銃弾数発を撃ち込まれても死なず、最後は川に投げ込まれて絶命したとか。舞台でもしぶといです。(笑)

ドミトリーの婚約者オリガ星風まどか


役としては、小さい時から王族の一員として、蝶よ花よ(古いなぁ)と大切に育てられた世間知らずな王女様ですが、時代に翻弄される(←これまた陳腐な表現ですが(殴))境遇をよく体現していました。
タカラヅカ事情に疎い私なので、ナウオンで見たとき「なんでこの人が次期娘役トップ?」と思ったのですが、歌、物凄くうまいです。納得でした。

夫とともにラスプーチンに誑かされる皇后アレクサンドルは、凛城きら
はじめ、あれこんな女役さんいた?と思いながら見ていましたが、凛城きらとわかってびっくり&納得。やはりマリア皇太后と張り合うには、この配役でないとね。(笑) 
でも女役が良く似合っていてきれいで(よく考えたら変な話ですが)、見とれました。

その敵役となるマリア皇太后寿つかさ


冒頭に暗殺されるセルゲイ大公との二役というビックリの配役でしたが、ゾフィーばりの男っぷり(笑)はなかなかのものです。

最初は男役そのままの発声に違和感を感じたりしましたが、そこが演出家の計算だったのでしょうね。いい役で存在感タップリでした。

そしてジナイーダ純矢ちとせ


冒頭、ドミトリーを送る舞踏会で、この人が狂言回し的に、これから始まる芝居の初期設定(笑)みたいな説明を兼ねた会話をしてくれて、登場人物や時代背景がよくわかって助かりました。(笑)

いつも感じることですが、なぜか私はこの人が舞台に現れるとホッとしたりします。(笑) 歌も演技も好みです。

あと目立つ役だったのは、コンスタンチン役の澄輝さやとと、瀬音リサのジプシーの踊り子ラッダ
二人の関係が、当時の世情の一面を切り取っています。瀬音リサの野性的な強さのある歌とダンスが目立っていました。昔なら矢代鴻さんの十八番みたいな役ですね。


桜木みなとは急進的なボルシェビキのリーダー・ソバール




革命の闘士として、頑張っていました。レーニンを信奉する急進的なボリシェビキですが、宝塚でレーニン主義者が見られるとは。初めてじゃないかな。でも姉も死んでしまうし、まあ過酷なツアーリの体制下ではリアルな話ですが、みんなほんとによく死んでしまいます。(笑)

最初と最後に出てくる農夫・イワン役が風馬翔
出てくるのは最初と最後の短い場面で、ドミトリーと交わす台詞も多くないのですが、二人の台詞の行間に漂う情感が、場面を味わい深いものにしていました。幕間の休憩でヨメさんも、「あの農夫、誰かな、うまいね~」と褒めていました。まったく同感でした。


「クラシカルビジュー」は、宝石がテーマのショーでした。

私は結構きれいなしっとりした場面が多くて気に入りましたが、ヨメさんの感想は「普通」。

まあ確かに、最近の良作のショーと比べたらあまり新味はないですが、私は朝夏まなとと伶美うららのルビーの場面でのデュエットが見られただけで大満足。伶美うららの真紅のドレスを眼に刻み込みました。(笑)




真風涼帆が王冠を盗もうとする場面も美しい!




ショーでも愛月ひかるは驚きの太神官。

トップ交代も順調で、


真風もはやトップの風格が漂い始めていました




今回はショーでも、最初はそれほどサヨナラ公演という感じはせず、終盤の[継がれる輝き]から、トップ継承をモチーフとした演出に変わり、BijouⅠ「美宙」でジュピターが流れた後、純矢ちとせが歌いだして舞台はサヨナラモード全開となりました。

朝夏まなとは黒燕尾もバッチリで、ダンサーとしても存分にその力量を見せてくれました。










フィナーレのエトワールはもちろん星風まどか。申し分ない歌で、娘役新トップとしての力量を披露してくれました。

芝居のほうはサヨナラ公演臭のまったくしない作品だったので、ショーになってから最後のパレードで、ようやく、ああこれで朝夏まなとの最後の舞台になるのかという感慨がわいてきました。誰でもいつかは退団するとはいえ、やっぱり惜しまれます。

というわけで、第一回目の観劇の感想はおしまいです。

今週また大劇場に行きますが、今度はもう少し、主演二人以外の人物にも目を向けられる余裕がありそうです。いつとは言えませんが(殴)、また感想をアップしたら、覗いていただければ嬉しいです。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。



↓おまけです。最後のナウオンの収録後、恒例の花束贈呈です。






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