思いつくままに書いています

間口は広くても、極めて浅い趣味の世界です。
御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

宝塚雪組公演 『Shall we ダンス?』『CONGRATULATIONS 宝塚!!』を観て

2013年11月30日 | 宝塚

前回の兵庫芸文センターでのイーハトーボ観劇は、途中予期せぬ渋滞に巻き込まれてハラハラの連続だったので、今回はゆとりを持って大劇場へ。やはり途中少し渋滞したものの、10時には駐車場に到着。
冷たい風の中を車椅子を押して大劇場に向かいました。

前々回の観劇からずっと工事中だった旧チケット売り場の跡は、なんと新しい入り口に変わっていました。




それに伴い従来の門は囲いで覆われて工事中。劇場の建物も、スロープ側は従来のままですが、通常の階段入り口のドアは閉ざされていました。まだ改修工事は続くようです。

劇場内は修学旅行の女子高生軍団で活気があり、大挙して土産物売り場で買い物していました。この日ばかりはレジもフル稼働、混雑していました。私たちも宝塚フィナンシェ天下もちを買って劇場内へ。

席は先行予約でゲットした9列の下手よりの良席でした。見やすい席でした。

というわけで、ようやく観劇の感想になります。

で、いきなり全体の感想から。(笑)

芝居は、脚本・演出ともに良くできていました。担当は小柳奈穂子でまだ若手ですが、要領よくまとめていてGood Job
でも、それはバウホールでやればの話です。大劇場でフルメンバーでやるのは厳しいですね。
なにせ原作の映画からして登場人物が少なく、役の振りようがないので、とてもじゃないけど大劇場向きとはいえません。なので通行人にたくさんの生徒を動員している場面など観たときは、ちらっと正塚作品を連想してしまいましたね。(殴)
話自体も、平凡なサラリーマンがふとしたはずみ(かな~り不純な動機ですが(笑))でダンスを始めたことから起きた騒動程度なので盛り上がりに欠けますね。

それでも演出では気の利いた場面転換や、効果的なプロジェクタ利用、舞台もダンスの練習風景とかエキシビジョン、競技会などの見せ場では頑張って華やかに盛り上げていましたが。
というわけで、芝居を観終えての感想は、二人とも「なんとも小さい世界やねぇ」で一致しました。(笑)
まあアンドレア・シェニェを観てしまった後なので、比べられる演出家も気の毒ですが。

ちなみに当日買ったプログラムによれば、今回の芝居の話は歌劇団が小柳奈穂子に担当するよう命じたそうで、演出家の発案ではないとのこと。歌劇団としては、映画が日米で大ヒットした作品なのでその人気を当て込んだのかもしれませんが、どちらかといえば渋めの話。それを99年の締めくくり・100年の幕開けとなる節目の公演に選定した意図は私などの理解を超えるものがあります。

プログラムの表紙です


そんなわけで、演出家の努力は評価できるし、壮一帆を先頭に雪組メンバーも頑張っていて、それなりに楽しめたのですが、とてもリピートとはいきませんね。でもオリジナル作品だし、一度は観ておくべきとは思いますよ(ちと説得力ないかな)。

以下、主な出演者別の感想です。

まずは壮一帆から。

この人、いい意味で肩すかしでしたね。(笑)
実は最近のスカステなどを見ていてちよっと壮一帆は敬遠気味でした。なにがというと、とにかくこの人、口を開くと饒舌多弁アグレッシブ、すぐ演説調になるのが少々辛いので。(笑) サービス精神から来るのか、話に分厚い衣を付け過ぎで、聞いていてこちらが息苦しくなるのがプチ残念。
「Now on Stage」などで普通にみんなと話しているときは自然で話も面白いのですが。

以下、画像はスカイステージの「Now on Stage」の画面撮りです。モアレで汚いです。^^;


なので、演技もきっとやりすぎでコテコテになるのではと、ちょっと期待薄でした。でも芝居を観始めたら、これがなんとよく抑えたいい演技でした! 予想外で驚きました。考えてみたら、私たちにとっては今回の公演が彼女の雪トップ就任後初の観劇でしたね。
本当に、リチャード・ギアや役所広司のヘイリー・ハーツと比べても、「平凡」「普通」なサラリーマン度では負けていないほど(ちょっとホメすぎかな)抑制のきいた落ち着いた演技ですっかり見直しました。


ただ、いくら平凡とかフツーといわれてもね、働いているオフィスから見える高層ビル群とか、社内の様子、部下に付き合って残業しながら居眠りしている安楽なポジション、郊外とはいえ家も新築したなど、今のご時世では到底平凡とかフツーとは思えないのがやや難。原作の役所広司の会社がボタン会社(地味です)だったのに比べると全体にハイソ(死語!)ですね。

それと、マジメ一筋の彼がダンスを始めようと思い至った心境の変化などがやや説明不足。まあこれは彼女の演技の問題ではないですが。
とにかく壮一帆は、演技だけでなく歌でも、これまでの「ドヤ歌」(笑)はなくなり、芝居でもショーでも感情がこめられたいい歌になっていたのも好感度大。こんな風に芝居も歌もできるんや!と認識を改めました。
最初はこんなふうに両手に花となればと思っていたのでしょうか。↓

夢は限りなく、でも現実は厳しいです。^^;

次は妻ジョセリン役の愛加あゆです。
3Kな娘トップですね。「健康」で「健全」で「健気」な雰囲気が全身から発散されているから3K。(殴)
ふっくらしていて安心です。役ももう見るからに良妻賢母。着ている服はかなり若いですが。(笑)


でもこれまで疑ったことがなかった夫の行状に疑心暗鬼となり、探偵社に素行調査を依頼します。




芝居では自然な演技が光っていました。
ちなみに私はいつも彼女を見て、実の姉よりも彩乃かなみのほうが似ていると思って仕方がないですね。すぐ太る体質とか(殴)、歌のうまいところとか。

次はダンス教師・エラ役の早霧せいな



ヘイリーのスケベ心を見透かすように「私を目当てにダンスに来るのは迷惑です!」とバシっと冷水を浴びせる役が似合っています。

ヘイリーもいっぺんに目が覚めたでしょうね。
早霧せいなは大人の女として全く違和感なく、声も聴きやすく自然でした。心に傷を負った影のある元トップダンサーの女性というエラをよく体現していました。硬質なキャラクターが印象的です。
ただ、少しヤセ過ぎ感があり、ちょっと痛々しい感じさえしますね。雪2番手のポジションは間違いないでしょうが、今からこんなに痩せていたら先が心配になります。

エラとは逆に、地味な今回の芝居で一番元気だったのがヘイリーの会社同僚ドニー・カーティス役の夢乃聖夏


カクカク・クネクネと歩くだけで笑いを取っていました。

ただ、カツラを落としても頭が禿げていないのが残念(笑)。やはりここは丸禿げでないと衝撃度は少ないですね(笑)。
出番も多くて目立つ役で今回一番おいしい役でした。ただ仕事では大失敗するし、絵にかいたようなダメ社員ですがちょっとやり過ぎていてリアリティが希薄な感じが残念。

続いて目立っていたのはヘイリーの会社の同僚でドニーを目の敵にしているキャシー役の透水さらさと、ダンス教室の生徒でド派手な女性・バーバラ役の大湖せしる。どちらも美人で、ついオペラで追ってしまったり。(笑) ともにキャラクターがはっきりした役です。大湖せしるはネイティブな女役(笑)といってもいいほどきれいで、しかも大柄で目立っていましたね。夢乃聖夏と並んで今回はトクな役をもらっていました。
スカイステージの「Now on Stage」の画面撮りから


いつも自信満々なバーバラと対照的なヘイリー


誰に対しても強気です


でもこの後悲劇(いやコメディなので喜劇かな)が襲います↓


結末場面でキャシーとドニーの立場が逆転するのも、おきまりのパターンとはいえ楽しいです。

あと、探偵クリストファーの奏乃はるととその助手ポール・帆風成海(代役)がいい味出していました。普通だと探偵が悪い方に話を持っていって探偵料を稼ごうとしますが、この探偵社は良心的でおすすめです。(笑)

ジョセリンにいろいろ慰めてやったりしてやさしい探偵です。年の功でしょうか。ポールが軽く狂言回しになっています。

あとは世話好きなダンス教師シーラの梨花ますみが味のある役。そしてダンスホールの歌手ジェニファーの麻樹ゆめみも歌ウマが印象に残りました。

逆に印象の薄い役が気の毒だったのがダンス教室に通う不器用な生徒ジャンの鳳翔大
なんとも目立たない役で気の毒です。


ところで今回購入したプログラムにはこんな紙が↓。


でも休演していなくても未涼亜希が予定していたアルバート役は出番が少なかったですね。芝居では二場面ぐらいかな。
エラの相手で、競技ダンス界のトップダンサーという割には影の薄い役でした。代役の彩凪翔も少ない出番ながら頑張っていましたが。

ショー「CONGRATULATIONS 宝塚!!」は藤井大介
100周年の祝祭ショーですね。ひたすらCONGRATULATIONSの連発。自分でお祝いとはタカラヅカらしくて能天気です。(笑)


ショーのオープニングの直後はびっくりの白衣の大軍団。なかなかインパクトがあります。白いコートを翻して踊るところは大迫力です。おまけに大挙して客席降りの大サービス。今回は客席降りも多かったです。舞台が空になりそうなほど。(笑)





衣装も白衣とその下の喪服みたいな(殴)黒っぽいもの、尼僧の衣装以外は華やかです。

びっくりといえば壮一帆の女王!といいたいところですが、最近はこの手の演出が定番で少々食傷気味ですね。脚はさすがにすんなりきれいでしたが、顔はコラージュ画像みたい(殴)で‥。^^;

私が気に入ったのはまずラテンの場面。ギターの音色がすばらしく、落ち着いた曲がよかったですね。そしてビックリだったのは早霧せいなのロックシンガー「SAGIRI」の登場するところ。良かったですね。
何がというと、歌です。歌。
彼女、芝居の方では???な心もとない歌でしたが、ショーのSAGIRIはまるで別人で、これは口パク?新手のカゲソロ?(殴)と思ったほど聴かせる迫力のロックシンガーぶり。ほんとは歌ウマだったのかと印象を改めました。これだけでもモトが取れました。(笑) あと思い残すところはもっとふっくらしてほしいことだけです。(笑)




ショーでも芝居同様、夢乃聖夏が目立っていましたね。タカラヅカ化粧が似合っていて眼にチカラがあって成長が目立ちますね。
それとショーでももっと登用してほしかったのは鳳翔大。大柄で演技力もあり私たちは期待しているのですが、ちよっとガッカリ(でもドッキリ衣装があったりでまあいいか)。今後に期待することにしましょう。

パレードのエトワールはやはり愛加あゆでした。さすがの歌で、きっと姉と違うDNAが伝えられたのでしよう。(姉にももう少し入っていたら最強ですが)


というわけで、今回も中途半端で内容希薄な感想になりましたがm(__)m、最後までお読みいただきありがとうございました。

もう私たちの今年のタカラヅカ観劇は予定終了です。新年公演のナポレオン、楽しみですね。



コメント (2)
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こまつ座第101回公演「イーハトーボの劇列車」を観て

2013年11月27日 | 観劇メモ

今回はがんばって劇場の先行予約で最前列の席をゲット。


ただあまりにも舞台に近いので、熱演する出演者の口から出る飛沫(はっきり見えました(笑))を浴びるのではと心配したほどでした。(笑) 自分の前に観客が誰もいないというのはすごいです。本当に久しぶり。とにかくすっぽり浸れる臨場感です。

最初は出演者全員の挨拶から。「農民たちによる注文の多い序景」の場です。
以下画像は当日購入した「the座」に掲載された「稽古場風景」と役者紹介の記事の写真の一部です


挨拶に続いて、「大正七(1918)年十二月二十六日夜の上野行き上り急行二○二列車の車内」の場面へ。

向かい合わせの列車の椅子と窓枠がやや傾斜した楕円形の盆の上に置かれています。


ここは賢治が上京するところ。汽車の擬音が愉快です。

まずここでいきなり宮沢賢治役の井上芳雄↓が目と耳に飛び込んできました。うまかったですねー、セリフも演技も。


まず東北弁がよかった。(笑)もっとも、非関西在住の役者の関西弁が関西在住者には違和感を感じることがあるように、東北の方が聞かれたらしっくりこないかもしれませんが、とにかく彼の東北弁のセリフはきわめて明快で、自然に聞き取れるところにびっくり。東北弁独特の抑揚がクセになります。(笑)
まあ明快な東北弁というのも変かもしれませんが(殴)、朴訥とした語り口でありながら、あの時代の青年らしい純なキャラクタで極めて好印象。大したものでした。私は「組曲虐殺」では彼についてはさほど印象に残らなかったのですが、今回の観劇で見直しました。いい役者です。それと学生服が実にカッコよく、似合っていました!

この列車には、人買いで曲馬団団長の神野仁吉(田村勝彦)と、


その人買いに買われた娘(鹿野真央)、


西根山の山男(小椋毅)と


熊打ちの淵沢三十郎(土屋良太


が乗り合わせています。

井上ひさしの作品には真の悪人はいないといわれますが、田村勝彦演ずる人買いの曲馬団団長もそうですね。
人買いというと、私などの世代は子供の時に聞かされた「サーカスに売られる」といったイメージが強く、また「女工哀史」なども連想しますが、この神野仁吉はどこか温かくて憎めないところがあり、彼も彼なりに、サーカス団で働かせることでなんとか当時の悲惨な農民の家族を救おうとしたいい人だったのではなどと考えたりします。(笑)

人買いに売られた娘役の鹿野真央は今回が初舞台とのこと。でも周りのベテラン勢に臆せず頑張っていて、最初のウブで売られたわが身の不幸を嘆くばかりだった少女から、世間の荒波に揉まれながらしたたかな大人の女に変わっていくあたりをうまく演じていました。セリフは「お食べ」だけですが。(笑)
とても初舞台とは思えなかったです。

小椋毅の「山男」は、急速に近代化しつつあった当時の日本から取り残されたような東北・岩手県を象徴する土俗的な存在として描かれています。同時にこれは宮沢賢治の分身のようで、彼の内的な世界を表象したような存在でもあります。

その後、病院のベッドが2つ置かれた場面になります。ここが今回の観劇で一番ハマったところです。
ベッドには賢治の妹・とし子(大和田美帆)と


福地ケイ子(松永玲子)がいます。


大和田美帆もあまりセリフがないのですが(この芝居は全体的に女優のセリフが少ないですね)、実際に仲が良かったといわれている兄妹の間柄が偲ばれるひたむきに賢治を慕うとし子をうまく演じていました。小顔が印象的です。

福地ケイ子役の松永玲子も同様あまりセリフがないので、どういうキャラクタの役なのかわかりにくかったのですが、少ないながらも兄・福地第一郎役の石橋徹郎と息の合ったセリフのキャッチボールが良かったですね。この兄妹も仲がいいです。


で、その福地第一郎役の石橋徹郎。うまい役者さんです!
第一郎は三菱の社員で、当時の殖産興業のシンボルみたいな役です。初めて知った役者ですが、井上ひさしの十八番、膨大なセリフを立て板に水、見事にこなしていて、本当に観ごたえ・聞きごたえがありました。まだまだ知らない役者さんが多いです。セリフ劇としてまずこの石橋徹郎と井上芳雄のバトルがすごかったですね。

そして彼と、賢治役の井上芳雄(彼のセリフ量も半端じゃないです)がそれぞれの妹の見舞いに来て顔を合わせます。
対極といえるこの2人の兄のコミカルで息の合った掛け合いを通して、明治から大正、昭和という時代、その時代を生きた宮沢賢治の価値観や人生観などが笑いとともに展開されていくところは、これぞ井上ひさしワールド!ですね。こちらも観ていて盛り上がったところです。

人間の肉食についての「ベコ」の話とか、財閥三菱と賢治の父の生業を批判した「物を左右に動かすだけで儲けたり、金を貸して利子で儲けるなどは人の労働じゃない」という賢治のセリフは、今の時代にこそあてはまる批判ですね。

あと、母親役と稲垣未亡人の二役を演じた木野花、うまいのはいうまでもないところですが、この人も登場場面が少ないので二人の区別がつき辛いのが気の毒です。名前を聞くまでどちらの役か区別がわかりにくかったです。


順が逆になりましたが、重要な役が残っていました(殴)。
辻萬長みのすけです。

辻萬帳は賢治の父親と、思想警察の刑事の二役ですが、すごい存在感。父親役としてはまさに家父長そのもので、刑事も得体のしれない凄みのある存在です。父親は、賢治とは宗教や処世感が全く違っていて対立していますが、それでいて賢治に仕送りするなど、複雑な親子関係がよく演じられていて説得力がありました。
思想警察の刑事役も味のある演技で「組曲虐殺」の刑事にも一脈通じるところがあって、これも根っからの悪人ではないかなと思ってしまいますね。脇役として十二分にいい演技をみせていてました。

みのすけの車掌は、唯一吊りもので登場する派手な存在です。さまざまな事情を抱えて、道半ばで意に反してこの世を去らざるを得なかった人々の思いを「思い残し切符」として後世に配る、この世とあの世の橋渡し役を務めています。
劇の最後にこの「思い残し切符」が客席に撒かれましたが、これは作家から私たちへのメッセージそのものですね。拾おうかどうか迷っている間にどなたかに拾われてしまいましたが。(笑)

劇の進行では中盤でやや中だるみ的なところがあったり、最後の場面ではかなりクサいセリフが気になったりしましたが、まあ実際の宮沢賢治自体、啓蒙主義的でやや農民に対する教化主義の傾向が感じられるので、作家自身これは確信犯的に演出したのでしょうね。

演出では場面転換を出演者が行ったり、役者自身が擬音などで効果音の代わりにしていたりで、手作り感たっぷり。素朴でエコな宮沢賢治らしさが出ていました。

ちなみに私はこの芝居を観て初めて、賢治が裕福な家庭の長男でけっこうな親のすねかじり(笑)だったことを知りました。
それまでは、きっと貧農の生まれで、苦学して農学校を出て教師になったのだろうと思い込んでいましたが、そうではなかったのですね。そのあたりの賢治の立ち位置の甘さを痛烈に批判する農民の言葉が衝撃的でした。
知っていたつもりでも宮沢賢治について知らないことばかりでした。劇の中で紹介されていた賢治のいろいろなエピソード(親子の宗教的対立など)も面白かったです。

いつものことですが、観劇後いろいろなことを考えていました。とくに最近発表された政府のTPP参加に合わせた減反政策廃止決定などを聞くにつけ、これからの農業政策について考えてしまいますね。

まあそんな下世話な話は別にして、今回の舞台、本当に全員芸達者ぞろいで観ごたえ十分でした。おすすめです。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回のこまつ座公演観劇は来年2月の「太鼓たたいて笛ふいて」からスタートです。楽しみです。




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特定秘密保護法案、「何が秘密?それは秘密!」のとんでもない悪法

2013年11月16日 | 日記

今回はいつもと違ってお堅い話ですが、どうしても書かずにはいられませんでした。
今国会で審議中の「特定秘密保護法」(以下、『秘密保護法』)案です。

これについては朝日や毎日二紙がその危険性を連日報じていますが、東京新聞の最近の記事でも分かりやすくその危険な本質を書いていました。
ちなみに11月16日には、とうとう日本経済新聞も社説で反対の意思表示をしていました。財界の広報紙の日経でさえ反対せざるを得なくなったということです。

この秘密保護法案、自民党政府は「外交や防衛など国の安全保障にかかわる重要な情報を守るため」とその必要性を強調しています。それを聞いたら多くの人は「国を守るためには秘密保護も仕方がない」と思うでしょうが、この法案を作る狙いは別のところにあると11月1日付・東京新聞の記事が指摘しています。

以下、その記事を要約しながら紹介することにします。

秘密保護法案の対象となるのは、
 1.防衛
 2.外交
 3.特定有害活動の防止
 4.テロの防止
の4つの分野とされています。

しかし1と2についてはすでに法律があります。
防衛分野では2001年10月に改正された「自衛隊法」と、日米間では「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」(1954年施行)および「日米地位協定に伴う刑事特別法」」(1952年施行)があり、それ以外にも既存の法律があるので十分カバー可能です。
外交関係では、「外務公務員法」」(1952年施行)に加えて国家と地方両方の公務員法があるので、今新たに法を作る必要は全くありません。

それでは、今回の秘密保護法案が本当に意図しているのはなんでしょうか。それは3の「特定有害活動の防止」と4の「テロの防止」にあります。これを担当するのは警察です。

この法案を作成したのは内閣官房内閣情報調査室(内調)。その職員290人のうち、約90人の生え抜き職員以外は、各省庁からの出向者です。このうちトップの室長をはじめ一番多数が警察。さらにその主軸となっているのは公安警察です。
公安警察の前身は、前に感想を書いたこまつ座の「組曲虐殺」の特高警察そのものですね。

法案の別表には秘密とする情報の対象が定義されていますが、これがまったく定義になっていない。というのは、別表の最後に「その他の重要な情報」という一文が入っているからです。官僚の嫌らしいところで、これでオールマイティ、実質的に対象が無制限です。

ところで、この秘密保護法案で対象と想定される情報件数はどれくらいだと思いますか?

これがなんと、現段階で41万件とのこと。

これは、11月18日放送のNHKの「ラジオあさいちばん」という番組中の「ニュースアップ」で報じられていたものです。
現在でも驚きの件数ですが、この法案が通ってしまえば、公安警察の活動をはじめ、国民の目に触れさせたくない情報はすべて官僚の裁量だけでどんどん指定できてしまいます。
その歯止めとして「指定に当たっては総理大臣が承認する」とした野党の修正案すら自民党は拒否。もっとも修正を受け入れたとしても、担当官僚が書類を山のように机上に積み上げて「さあ承認を」といえば、首相がいちいち眼を通して決済するのは不可能だと思いますが。

おまけに指定された情報が公開されるのは最長30年先。でも例外規定があり、今日の日経朝刊ではそれが60年先とも報じられています。30年でも責任者はとっくに辞めて責任を問われることはないと思われるのに、60年先となれば実質永久非公開と同じです。

公安警察の活動は現在でもベールに包まれていますが、それでも少しずつ違法な捜査活動が露見しています。最近ではイスラム教徒を監視していた捜査情報がネット上に流出。警察協力者のリストも明らかにされて問題となっています。

今でも問題なのに、この法律ができてしまえば、公安警察の活動がさらにおおっびらになり、「合法化された違法捜査」が大手を振ってまかり通ってしまいます。
福島第一原発事故ではメルトダウンが隠ぺいされ、SPEEDIの情報公開も必要な時期に公開されませんでした。法律の成立後はますます政府に都合の悪い情報は「その他の重要な情報」として公開されなくなるでしょうね。原発関連では、事故や放射能汚染の状況、その対処方法、原発の構造や周辺地図、使用済み核燃料やMOX燃料の輸送等、全てが非公開にされる危険が指摘されています。それを知ろうとしただけで逮捕できるのですから恐ろしいです。マスコミも委縮して何も報道しなくなります。


繰り返しになりますが、秘密保護法の危険性の根本は、警察トップをはじめ行政のトップ、すなわち官僚が恣意的に秘密の範囲を指定できること
予算や人員、活動内容などを一切国民の目から隠して、国会でさえ監視やコントロールできなくなってしまいます。
要するに防衛や外交についての秘密保護は現行法規で十分カバーできていますが、安倍政権が狙っているのは自分の政策に反対するものをすべて「特定有害活動の防止」とか「テロ防止」として取り締まるために公安警察を野放しにするということです。

「集団的自衛権の行使」「積極平和主義」を掲げて戦争への道を開きくためNSCを新設し、反対する国民はすべて秘密保護法で取り締まる。
本当に戦前への回帰が始まろうとしています。安倍首相は自分の祖父・岸信介が戦犯となったことがよほど悔しいのでしょうね。で、孫である自分が再び同じような方向にふたたび日本を導いて、祖父の「汚名」を雪ごうとしているのでしょう。首相は普段から、日本の過去の侵略行為をあいまいにして、「侵略かどうかの歴史的評価は後世の歴史家に判断を任せる」などと述べていますが、法制定後は肝心の重要公文書が闇から闇へと葬られてしまって、後世の歴史家も正しい判断や検証ができなくなりますね。

本当に今、日本は危険な分岐点に来ていると思います。
私も遅まきながら周りの人に呼び掛けて、何とか成立させないために微力ですが行動したいと思います。

皆さんもこの法律について、よく考えていただければと思います。

最後になりますが、毎日新聞に面白い記事が載っていました。以下、参考までに全文引用します。ただし読みやすいように改行しています。

余録:少年忍者を主人公にした漫画「ワタリ」…

毎日新聞 2013年11月17日
少年忍者を主人公にした漫画「ワタリ」に「死の掟(おきて)」という話が出てくる。下層の忍者たちは掟を破ると支配者から殺されてしまう。ところがその掟の中身とは何なのか、支配者以外は誰も知らないのだ
▲「その掟を知らねば掟の守りようがないではござりませぬか」。忍者たちは見えない掟に恐れおののき、疑心暗鬼になり、支配者に服従するしかない。実は掟とは支配者が衆人を都合よく統制するために編み出した秘密のことで、その秘密を知った者は消されていくのだ
▲ならば現代の「死の掟」となりはしないのか。国会で審議が進む特定秘密保護法案のことである。情報を行政機関だけの判断で特定秘密に指定し、その秘密の中身が何かを国民は一切知ることができない。秘密を知ろうと近づけば、場合によっては逮捕され、処罰される
▲作者は「カムイ伝」「サスケ」などで知られる漫画家の白土三平(しらと・さんぺい)さん(81)。プロレタリア画家だった父や軍国主義教育を受けた自身の体験を踏まえ、権力支配の有りように鋭い批判の目を向けた作品が多い。彼の目に法案はどう映るのか
▲「(特定秘密という)わからないもののために罰せられるというのは理不尽。背景にはこの法案を作り上げた精神や雰囲気のようなものがあるはずで、それが広がっていくようであれば大きな問題です」。白土さんはそう懸念する
▲「ワタリ」では、忍者たちが最後に団結して支配者を捕らえ、掟の呪縛(じゅばく)から解き放たれる。「理不尽なことを押しつけてくるものに対して、我々国民の側は正当に防衛する権利を行使できるはずです」。白土さんは世論の高まりに期待する。

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タカラヅカスカイステージ/ 「The Back Stage #2 ~舞台進行・公演大道具~」 究極のキュー!

2013年11月07日 | スカイステージ感想

前回は宝塚の大道具製作についての放送をご紹介しましたが、今回の番組テーマは「舞台進行・公演大道具」というものです。

舞台進行公演大道具という2つのタイトルになっていますが、実際は舞台進行が中心となっています。前回は大道具でも製作の裏話で、今回は出来上がったその大道具をどう使うかも含めた、舞台進行のカギとなる「きっかけ」、つまりキューの作成にまつわるお話です。

いつも観劇していて思っていたのですが、宝塚の舞台は、舞台上の大勢の出演者の演技と、それと一体となった生演奏、そして多彩な照明、スピーディーな場面転換のための大がかりな舞台機構が魅力ですが、それらを誰が、どうやって同期させているのだろうかというのが知りたいところでした。一応その答えとなっているのが今回の番組です。

以下、番組の内容を放映順にキャプチャ画像とあわせて書いていきます。

7月23日、稽古場では花組の「サンテクジュペリ」と「コンガ」の通し稽古が行われています。


稽古の様子を見守るたくさんのスタッフ。数人の黒シャツ軍団にご注意。


彼らの台本には場面ごとの絵コンテ?のようなものが描かれています。この段階ではおおよその流れをチェックしているようです。


こちらは舞台進行担当さん。台本と見比べながら稽古を見守ります。


彼の職名は正式には「劇場部宝塚公園課進行・楽屋担当


自分の担当する舞台進行とはどういうものかを語っています。

舞台進行とは?と聞かれた阪田さんは、
「進行担当の一番大きな仕事は『きっかけを出す』ということ。
稽古場の時点から演出家と話をさせていただいて、どこでこの道具を動かすのか、どこで吊りものを飛ばしていくのか、しかもそれが安全に、しっかりと舞台を運営できるようにということを考えながら、すべての『きっかけ』を作っていくということが進行の大きな仕事になりますね。」と語っています。

7月25日「サンテクジュペリ」の舞台稽古。演出助手の大野拓史さんと阪田さんがプロローグのけいこを観ながら相談しているところ。


再び阪田さん:
「プロローグの場面ですと、セリをこういう順番で使いたいと、この歌の何小節目でセリを動かしたいとかの話を受けまして、そのほかドライアイスを使いたいとか、煙を出したいとかのお話を事前に演出部の大野さんからいただきまして、それを進行担当としては舞台装置を使うので大道具さんにも話をしに行ったりしまして、で、舞台機構的に床機構などちゃんと動かせるのかということをすべて調整をして、実際の舞台稽古に臨んでいくということをしています。」

宝塚歌劇の魅力のひとつでもある大規模な舞台機構。でもそれを動かしたり止めたりするスタッフに「きっかけ」を出す仕事は大変です。話の中ではコンピュータでタイミング管理をしているとかの話も。

ナレーター
「今回の作品で苦労した点はどこなのでしょうか?」
阪田さん:
「今回の公演では、プロローグが一番きっかけが多いところですが、(演出部から)当初いただいた計画では舞台機構が動かせないということがわかって、どうしたらコンピュータで枠を作って動かせるのかというところで、舞台稽古の段階で大道具さんとか演出部と話をして、それぞれ動かすタイミングを決めていったところが一番苦労したところですね。」
長年やってきているはずなのに、舞台機構が動かせないようなプランが演出部から出たりするというところが面白いです。

さて映像は変わってプロローグでの舞台下の奈落の場面。そこでは複数のスタッフが出番でセリに乗った蘭トムの状態を確認して、口々に「OKです~」「はい、上がりまーす」とか声をかけています。ただ画像は真っ暗でよく見えず(笑)。


丸い台座の中にはセリが仕込まれています


そしてセリが上がってきて蘭トムが登場。


阪田さん:
「次に苦労したのは、飛行機をセリを使って高いところから下げてくるところ。しかも飛行機を盆を使って2回転させて、さらにそこにはドライアイスを使いたいとか、盆が止まったら吊ものを下したいとか、ま、実際には椰子が降りてくるのですけれど、それらが本当に動くかどうか検証していくところが大変だったところですね」

実際の舞台上ではこんな場面になっていますが、


舞台裏ではすでに飛行機を大道具のスタッフが押していってスタンバイ。まだ翼は畳まれています。


やがて翼も伸ばされて


登場です。盆が回りドライアイスも出ています。


操作しているのはこちら。



まるでSF映画の宇宙船か潜水艦のオペレーションルームです。シーンごとにパソコンのプログラムによって順番に各パートのボタンが光り、それを実際の進行を確認しながらスタッフが押すことで各部署が動いているみたいですが、詳細は不明です。

公演大道具さんの感想
「宝塚は舞台のスケールの大きさがウリの一つでセットが大仕掛けなので一人ではできませんね。なので、みんなで息を合わせて一斉に動かすというのが必要で、でも自分たちがそれを客席から見る機会は基本的にまずありませんから、きれいに息が合っていると見栄えがするやろうなとイメージしながら動かしています」


進行の阪田さんは
「進行係は舞台稽古から初日、千秋楽まで演出部と一番長く話をしていく部署になると思うのですが、初日の幕が上がり、舞台が終わって最後に緞帳が降りたあとのお客さんの拍手や歓声を聞いた瞬間というのが、一番達成感があるといいますか、肩の荷が降りたといいますか、ホッとする瞬間ではありますね」


ショー「コンガ」の方は舞台進行は別の担当になっています。なぜか東京公演課の舞台進行13年のベテラン宮脇さん。


てきぱきと指示を出していますが、演出サイドからの要求通りに進行できない場合もあるようです。

「演出的にはここで動かしたくても、いろいろ安全面での条件とか、そのほか視覚的な条件とか整わない場合はやはりキューは出せなかったり、また無理な条件としては人員的なもの、具体的には大道具は上下(かみしも)7人・7人と、あと舞台機構を動かすオペレータが3人、小道具が大劇場でしたら上手4人・下手3人の7人、あと進行の係が上下に2人ずついますので合計28人。この28人でやっていくしかないので、それで手が回らないときには転換を2段階に分けてもらうとか、そういうやり取りをしながら決めていくことが多いですね。」


↓蘭の花を出すところです




舞台上では


<ナレーション>
舞台転換の速さでは世界一といわれる宝塚歌劇。進行係さんはどう思っているのでしょうか

宮脇さんは語ります
「ぼくは宝塚に入る前も比較的キューを出す仕事が多かったのですが、歌劇の仕事をやらせていただいたときに、はじめは面食らいましたね。こんなにもキューがあるのかと。
入った当時は1000days劇場からのスタートだったので、床機構が全くない状態で、吊もののきっかけを出すのが中心だったのですが、それでもこの仕事をするにあたって、宝塚のテンポ感の速さとかに体が慣れるまでものすごい時間がかかったことを今でも憶えています。
その後も外の現場とかの仕事をやってまた宝塚に戻ったりすると、かなりリハビリをする時間がかかりました。
意識とかをタカラヅカモードに変えていかないととてもやっていけないですし、ここまで忙しく転換をやっているカンパニーは他にはないのではないでしょうか。
まあ今回のコンガは比較的少ない方で、まあキューも数えたら50くらいでしょうが、多いものでは一幕もので120とか150とかのキューになることもありますので、そういう意味では宝塚の舞台進行、要するにキューを出していく仕事というのは気が抜けないですね。」


最後に各担当さんの感想が紹介されていました。

まず大道具の福岡さん:
「速さを求められるという点では新入社員のころから急げ急げというのがあるんですけど、私たちは自分の身も守らないといけないし、出演者を守らなくてはいけないのはもちろんですから、とにかく安全第一を心掛けて、その中で速くということを追求していくことで、ご覧いただいた皆さんに『どうやっているんだろう?』と思っていただければ僕らの仕事としては成功やと思っています。」

進行担当の阪田さん:
「裏方としてはこの転換の速さですとか、それはまあ大道具さんがしっかりとした技術を持ってやってくれているから出来ることなんですが、宝塚の一番の魅力と言いますとやはり華麗な衣装ですとか、裏方としては素早い転換というのが見せ場と言いますか、そういうところも見ていただけれるうれしいですね」

進行担当の宮脇さん:
「ぼく個人としてはまだまだ日々学ぶことが多くて、13年ぐらいですかこの宝塚の仕事を始めて。でもまだまだスキル的に上げていかなくてはいけないなと、自分の中で能力の足りていないなというところを毎回感じることが多いので、ま、それを一つ一つなくしていき、それでお客様が舞台を喜んでいただければいいかなと思っています」

最後に舞台裏もわかる貴重な画像が映されて終わっています。

セットするのに見えているだけでも8人のスタッフが動員されています↓


この吊ものは↓


なんと手動で上下しています↓


フィナーレですが↓


このシーンの後方にご注意


楽しく踊っていますが↓


大道具さんが頑張っています


今回も面白い放送でした。

多くの持ち場の協働で成り立っている舞台の場面転換が、芝居の流れにぴったりシンクロするためには「キュー出し・きっかけ出し」がキーポイントですね。話の中で紹介されていた150ものキューとなるとそのタイミング調整だけでも大変です。
たまに座った席によってはセットの裏に大道具さんが見えたりすることもありますが、この放送を見た後は、その苦労が偲ばれて仕事とはいえ本当によくやっているなあと感心するばかりです。
こういう話、もっと深めてまた放送してほしいですね。

ご覧いただきましてありがとうございました。m(__)m

次回はシリーズ #3 「電飾・照明」です。
できるだけ早くアップするよう心がけますので、ご覧いただければ幸いです。



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