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再び兵庫芸文センターで「炎 アンサンディ」を観て さらに磨きのかかった舞台でした

2017年04月24日 | 観劇メモ
「ザ・空気」の観劇一週間後の3月25日に、再び兵庫芸文センターへ。
2014年の初演から2度目の「炎 アンサンディ」観劇です。先週同様、道路は渋滞もなく、一時間強で劇場につきました。劇場ホールは男性客も多く、麻実れいファンらしい年恰好の女性グループがあちこちにおられました。
前回と違って花はなし。

初演と同じ俳優とスタッフなので、基本的に前回のとおりですが、今回の公演では最後にナワルの場面が付け加わったのをはじめ、演出も細かく手が加えられていて、より分かりやすい舞台になっていました。それと二回目の観劇なので、ようやく過去と現在が交錯する複雑な場面構成のストーリーが理解できたので、観た甲斐がありました。(以下敬称略。画像は当日購入のプログラムから)
以下、簡単に感想です。

幕が開くと舞台はカナダ・モントリオール。突然の母の死を前にして、双子の姉弟がそれぞれに託された母の遺言の中に込められた願いをかなえるため、母の祖国レバノンを訪れるという展開です。

前回にも書きましたが、母の残した謎の言葉に従って、姉弟それぞれが母の過去をたどるうちに、次第に衝撃的な事実が明らかになっていきます。サスペンス風の話ですが、またギリシャ悲劇な要素も色濃く、最初のほうの若い二人の現代風な会話から受ける印象が、途中からガラっと変わって、内戦のレバノンの深刻な民族抗争をベースに展開される重い悲劇が胸を打ちます。

母親ナワル役の麻実れいはますます演技が深くなっていました。

まさに座長芝居。彼女の渾身の演技がこの舞台の柱になっています。宝塚時代から、長年麻実れいの舞台を観続けてきたヨメさんは、「もう間違いなく代表作!前回よりさらに良くなっている!」と激賞していました。

実際麻実れいは、本場フランス版では3人の女優が演じ分けたという主人公ナワルを、セリフのトーンを変えたり、身のこなしを演じ分けて見事に体現していました。大したものです。

舞台で岡本健一を観るのは蜷川の『タイタス・アンドロニカス』以来3度目ですが、

前回感じた通りしっかり芯のある演技で、ニハッド以外にも医師ガイド墓地管理人老人、ナワルの最初の恋人役など何役も兼ねる大奮闘でした。

双子の姉弟のジャンヌは栗田桃子

シモンを小柳 友

この二人も複数の役を演じていて、栗田桃子はなんとナワルの祖母ナジーラ役!。
小柳 友も民兵で頑張っていました。最初は母に対する不信と反発が強かった二人が、次第に母と自分たちの出自を知って、次第に変わっていく様子をよく表現していました。

役を兼ねるといえば中村彰男も大奮闘。

元看護士のアントワーヌ、シモンのボクシングコーチ・ラルフ、ナワルの故郷の村の長老学校の門番抵抗勢力のリーダー産婆!、戦争写真家と八面六臂の大活躍。全く同じ役者と思わせない巧みな演じ分けで、またしても騙されました。(笑)
演技に説得力があって大したものです。

今回の観劇は再演ということで、私はヨメさんの付き添い程度の気分で出かけたのですが、やはり麻実れいの全力投球の演技と、それに応える他の役者さんの好演、脚本・演出のブラッシュアップとの相乗効果で、私も大満足の観劇となりました。

もちろん最後は全員総立ちの拍手。心地よい余韻に浸りながら、帰途につきました。

今月観た星組の『スカピン』の感想も書けていないのに、今週また雪組公演『幕末太陽傳』&『Dramatic “S”!』の観劇です。(^^; 
ほかにも、万葉文化館でいい絵を見てきた感想とか、馬見丘陵公園できれいな花たちを見てきた報告とか、お金はたまらないのに、ネタはたまる一方。(殴)
そしてそんなプレッシャーを感じながらも、晴れたらPhantom2とInspire1を連れ出して空撮三昧という自堕落ぶり(笑)。まったくつける薬がありません。

ともあれ、トップ退団公演、どんな出来になっているのでしょうか。


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兵庫芸文センター・二兎社公演「ザ・空気」の観劇メモ いい舞台でした 

2017年04月19日 | 観劇メモ



先月3月18日に、久しぶりの兵庫芸文セーターで「ザ・空気」を観てきました。
作・演出は永井愛さん。観劇は「鴎外の怪談」「書く女」に次いで3度目となりますが、描かれた作品の深さとシャープな問題意識に毎観劇感心しまくっています。作品のテーマは井上ひさしにも共通するものがありますが、取り上げ方ははるかに生真面目です。(笑)

出演は田中哲司若村麻由美江口のりこ大窪人衛木場勝己と芸達者ぞろい。

テーマは、「報道の自由度ランキング世界第72位!と惨憺たる日本のマスコミの現状を、正面からリアルに描いています。
あるテレビ局が、法務大臣の「電波停止」発言を契機に、ドイツと日本の報道の現状を特集番組で取り上げることになり、その作成過程での、番組内容を巡り、現場のスタッフと、経営陣との息詰まるリアルな駆け引きが描かれていました。

放送開始まであと数時間という限られた時間設定のもとで、内容の変更を迫られる現場スタッフ。そのリアルなやりとりがドキュメンタリーを見ているような緊迫感で、観ていてこちらも息苦しくなるほどで、終始客席で固まっていました。(笑)
見終えても重い余韻が胸にたまって金縛り状態、脚本・演出そして出演者の演技どれをとっても良くできたいい舞台でしたが、とてもスタンディングできずにいました。誰もが同じ思いだったようで、拍手で熱演にこたえていたものの、誰も立てず。(笑)

でも観劇して本当に良かったです。
政府自らが憲法違反の悪法を次々と出してきて、それを一部のマスコミがなりふり構わず翼賛報道する、現在の日本に流れるきな臭い「時代の空気」と、名ばかりの「報道の自由」。その現実について改めて考えさせられました。
日本の演劇界のもっとも鋭敏ですぐれた感性が作り上げた作品でした。

「鴎外の怪談」も森鴎外について、これまで取り上げられてこなかった視点からその人物像を描いていて新鮮でした。また「書く女」では、井上ひさしとは違った角度から一葉とその作品を取り上げていて、「頭痛肩こり‥」との対比が面白かったです。

ということで簡単に役者さんごとに感想です。例によって敬称略です。

舞台にはテレビ局内のエレベーターホールと各室への通路を切り取ったようなシンプルなセット。両開きのエレベーターの乗降ドアの開閉がリアルで、よくできていました。

主役は田中哲司演じる編集長・今森俊一

はじめてお目にかかる役者さんでした。最初はお手並み拝見みたいに距離を置いてみていましたが、すぐ感情移入できるようになった説得力のある演技でした。若村麻由美の演じる人気キャスター・来宮楠子とのせりふの応酬も絶妙。

若村麻由美も役と自身のキャラクターがうまく重なって、こちらも違和感のない人物でした。

「鉈きり丸」の北条雅子や「頭痛肩こり‥」の幽霊とはまた違った、実在感のある演技でした。役的には、最後に会社の「空気」にちゃっかり寄り添って、世渡り上手なキャスターになって現れたのでガッカリしかけたら、最後の最後にまた意味深な行動を見せて、二人のその後についていろいろ含みのあるエンディングでした。観ていてこちらも救われました。(笑)

ただ、彼女、最近かなり体を絞ったのか、お顔が前二作よりシャープになったというかやつれたというか(殴)、ちょっとアレ?なとんがった感じでした。まあバリバリ売り出し中のキャスターらしいといえますが、私的には前のフックラなほうが良かったな。

報道番組のアンカー・大雲要人(まんまな名前(笑)で、かなとと読むそうです)役はおなじみの木場勝己

この人もピッタリのキャストです。古狸で、海千山千というか百戦錬磨というか、経営者への目配り重視、「空気」をよむ達人という役。円熟した演技で、出てきただけで舞台に重厚さが加わる、宝塚で言えば一樹千尋みたいな存在です。

あとはディレクター・丹下百代役が江口のりこ

舞台では初めてお目にかかりましたが、映画やテレビで活躍中のベテラン女優さんですね。当然ですが、さすがにこの人もうまい。ディレクターになりきっていて、自然な演技で感心しました。最後は会社に見切りをつけて、バイク便のライダーに転職!していて、その姿がまたリアルでカッコ良かったです。

あと一人、編集マン・花田路也役が大窪人衛

「焼肉ドラゴン」の一人息子・金時生役で初めて知りましたが、今回もユニークな雰囲気の演技でした。ちょっと性別不明な容姿で、ヨメさんも「はじめは男か女かようわからんかった」と言っていました。この人も演出家の要求に誠実に応えるいい演技でした。前作の金時生はあっけなく死んでしまったのであまり印象に残らなかったのですが、今回はじっくり見ることができました。

というわけで、重くシリアスな主題で、劇中でもいろいろ考えさせられましたが、前二作に劣らず完成度の高いいい舞台で、大満足でした。二兎社の今後の作品に注目です。

国会では、各方面から懸念や反対の声があがっているにもかかわらず、日本社会の「空気」をいっそう悪くする、治安維持法の再来・「共謀罪」の審議が始まりました。「テロ防止」は名ばかりで、実際は日本を監視社会にするこの法案の危険な正体を、もっと多くの人に知ってもらうにはどうしたらいいか、悩ましい日々です。

さて次は、一週間後に観た「炎 アンサンディ」。これも現代社会を抉り出すいい舞台で、内容も前回からさらに良くなっていて、見ごたえたっぷり。3月の兵庫芸文センターは実りの多い月でした。

頑張って書かないと、「スカピン」もあるし、たまる一方です。(^^;


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