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宝塚月組公演 『1789 -バスティーユの恋人たち-』を観て 感想その1

2015年05月27日 | 宝塚
かなり遅くなりましたが、1789観てきました。

出かけたのは木曜日。予定通り順調に走って駐車場へは9時50分に到着。
今回の席はPCで確保した10列下手側の席。かなり端に近かったのですが、まあ良席です。でも私の前に座ったのはかなり大きな男性客。それでちょうど舞台中央部が頭でブロックされてしまったので、こちらは首を絶えず動かさないといけないのが残念。(笑)

その感想ですが、よくできていました!見ごたえ大有り!
とにかく面白い。フランス革命についての視点がベルバラと全く違う民衆史観なのがまず気に入りました。

オリジナルはご存じ2011年にパリで初演されたフレンチ・ミュージカル。これを小池修一郎がほとんど別作品といえるぐらいに再構成しています。
梅芸で観たフランス版ロミジュリがそうだったのですが、フレンチ・ミュージカルは芝居としての構成は最小限で、ひたすら歌とダンスでぐいぐいと展開するドライな作りです。私はそれが新鮮ですっかりハマったのですが、その分話の筋が理解しにくいきらいがあります。

それでヅカ版ロミジュリでは小池先生が丁寧に作り直して、だれでもわかる話に仕上げられていました。歌詞も話が分かるように工夫したとか。
今回も、公式ホームページの制作発表会レポートにあるように、ロナンを軸に大幅に話が作りこまれています。ほとんど書き下ろしに近いほどで、小池流のサービス精神旺盛です。

あとで触れますが、舞台装置も重厚で豪華。衣装も、どこまでも華美な宝塚衣装としてはかなり汚しを入れてリアル(とくにシトワイアンの衣装。タイシルクだそうです)。さらに化粧もふだんの宝塚化粧としては異例の、立体感のあるリアルなもの(いずれも小池氏@ステージ・ドア談 以下関係者のコメント引用元は同じ)。

でも、観劇しながら、同じ小池演出のロミジュリと違って、かな~~り元のフレンチミュージカル寄りになっていると思いました。
その一端が音楽。ロック調の曲が多くて迫力があります。ただ音域の広い曲が多くて、歌うのは大変そうです。
音楽担当の太田健さんは、

「今回はコンピュータ(の音楽)を流しながら生演奏をミックスしているので、使える音や楽器が飛躍的に広がった。大人数で演奏していると感じてもらえるのではないか。またクィーンとかローリングストーンズ、マイケルジャクソンのようなリズムの曲があって楽しい」と語っています。確かにこれまでの公演とは違う音楽と、ド迫力な演奏にすぐ気づかされます。さらに西野淳の音楽指揮も情熱的でユニークです。


ダンスも大胆で新鮮な振り付けでインパクトがあり。とくに軍隊に対峙する民集の群舞のボディパーカッションが強烈でした。










その振り付けはこの人が担当しました↓。



関西発の表現系ジャズダンスチーム「Memorable Moment」のリーダー・KAORIaliveさんです。近作の「No war」を観た小池氏がぜひにと依頼したそうです。
最初は全員アザだらけだったとか。でも二回目の練習ではもう生徒たちがある程度こなしてきたと感心していました。
小池氏は「これまでもステージを見て面白かったので、何度か依頼したがスケジュールが合わなくて実現しなかった。今回は本当にドンピシャと思って依頼した」と言っていますが、選んだ彼も頼まれた彼女もいい仕事していますね。見どころの一つです。

それ以外のダンスシーンは、スカピン以来、宝塚版ロミジュリをはじめ多くの小池作品の振り付けを担当した桜木涼介さん。↓

前回はフランス版に影響されたので、今回はフランス版は見ずに全くオリジナルなものにするよう努めたとのこと。確かに新鮮なダンスシーンが目につきました。

そしてフィナーレショーのダンスはTETSUHARUさんが振り付け。↓

タカラヅカではロケットに代表されるように揃ってナンボの印象があるが、今回は個の集合としてのエネルギーを引き出したいと思ったとか。ただ、大階段を使うのは初めてなので、寸法を聞いたり、一番いい立ち位置を聞いたりして参考にしたとも。従来のタカラヅカにないバラバラな立ち位置の大階段がユニークでした。
それと、芝居ではからむことがなかったトップコンビのデュエットにも工夫したとか。

練習の様子です↓








そして本番↓

ということで、ダンスひとつとっても見所満載でした。本当に登用した小池センセイの意図が大当たりでしたね。アンテナ広い!

ストーリーは小池修一郎のベルバラというか、同じ人物が登場していますが、主人公に代表されるように民衆の視線からフランス革命を見ていて面白かったです。といっても、主人公を中心に話が進むというより、革命を軸とした群像劇という感じ。

観終わって、それまでの月組メンバーについての印象が大幅に塗り替わる結果となりました。
とくにアントワネットが上々の出来で、驚きの歌唱力でした。
さらに帰宅してから、スカステ「ステージ・ドア」を見て、「これはもう一度観ないわけにはいかないね」ということになって、某チケット仲介サイトでリーズナブルなチケットをゲット。(ということは売れていない?)
観劇前には思いもしなかったリピート決定となりました。

ということで、以下、とりあえず1回目の感想です。「ステージ・ドア」の話を引用しながら書いてみます。いつものとおり敬称略で、画像は「ステージ・ドア」から。

まずロナン役の龍真咲

でその前に少し。
単に好みの問題ですが、私はこの人がかなり苦手。なので、トップ就任以来月はあまり観劇してきませんでした。とはいえ、前回の「パック」は懐かしの作品なので観ましたが、幸い役が妖精なのでそんなに苦にならず(殴)観られました。
そして今回はなんといっても今年一番の大作ということで観劇決定となりました。

101期生の初舞台生口上が終わり、いったん降りた幕が上がると、いきなりロナンがバスティーユ要塞襲撃の一番乗りとなる場面になります。そのあと、すぐに回想する形で展開していくます。
どんな役かなと思いながら観ていたのですが、そんなに濃い役ではなく(笑)、どちらかというと存在感が薄いです。
父を殺されて、復讐の鬼となって仇敵を追い詰めて復讐する展開かと思ったら、それは初めのうちだけ。




途中からは、革命の巨大なうねりに飲み込まれる群像の一人という立ち位置になっていきます。なので今回も苦手を意識せず、普通に観ることができました。(殴)

ちょっと歌の発声が昔の男性アイドル歌手っぽくて気になったりしましたが、基本的にド安定な歌唱力だし、役作りも、極貧の農民の息子が、見知らぬ街で戸惑いながらも革命に合流していく素朴な姿がよく出ていました。この人は抑え気味の演技のほうがいい感じです。

次はマリー・アントワネットの愛希れいか


まあこんなに歌える人だったのかとびっくりでした。先に書いたように今回は音域がかなり広くて歌いにくそうな曲が多かったのですが、よく歌いこなしていました。

以前のロミジュリでは歌についての記憶がなかったので、本当に別人のような印象でした。大したものです。
歌の自信がもたらしているのか、演技も余裕の出来。






王妃の貫録さえあって、これまで娘役オンリーな印象があったのですが、今回は女役をうまく演じていてよかったです。

小池修一郎は、

「今回はこれまでのベルバラのそれとは違ったアントワネットで、大きな存在になっていて、愛希でないと背負えない」とか「愛希の歌唱力はふつうの娘役の群を抜いている」と大絶賛しているのが印象的です。

今回、愛希とならんで私的に再発見だったのが、ルイ16世の弟アルトワ役の美弥るりか

一番黒くて濃い役でした。もう悪意と野心と謀略の化身です。それを毒々しいまでにインパクトのある美貌(あくまで私個人の感想です)で演じているので、もともとプチ気になる存在でしたが、これで一挙にお気に入りに追加。(笑)

これまではあまり印象的な役がなかったと思いますが、今回は登場シーンも多く、得な役でしたね。代表作といえるでしょうね。これであともう少し大きかったら‥。次作も期待の人です。

反対に残念だったのが、ペイロール伯爵を演じる星条海斗

この人については、月組ベルバラの衛兵隊のアラン役の好演でプチひいきになったのが発端。
その後、月組『THE MERRY WIDOW』を報じるスカステ・ニュースで、ミルコ・ツェータ男爵を演じた彼女が、主演の北翔海莉への謝意を、真情に溢れた言葉で表していたのを見て、完全にトドメを刺されました。あんなに率直に、人目もはばからず(笑)身も世もなく感謝されたら、みっちゃんもついホロリとしたのも当然ですね。
この姿を見てから夫婦で勝手に注目してきたのですが、今回は主人公の父を銃殺する敵役ながら出番が少ない!!
残念でした。でもみっちゃんと入れ替わりの専科入りで、これから各組で活躍する姿を見られるので、まあいいとするか。

同じ専科ではルイ16世役の美城れんがさすがの出来でした。ただし、ちょっと可愛らしすぎるかな(殴)。自分がのちにそれにかけられるとも知らずに模型のギロチンを愛玩している姿で運命の皮肉を表したいのでしょうが、ちょっと演出がしつこいですね。でも存在感のある余裕の演技でした。

今回の作品で実質的なヒロインとなる、ロナンの恋人オランプを演じたのは海乃美月

早乙女わかばとのダブルキャストですが、出番も多くておいしい役ですね。ロナンともよく合っていい役です。二度目の観劇は早乙女オランプなので、比較できるのが楽しみです。

あと、移籍してきた珠城りょうのマクシミリアン・ロべスピエールに期待していたのですが、歌はよかったものの、セリフがちょっと聞こえにくいのが残念。でも今後の期待の星です。

専科からの沙央くらま(弁護士ジョルジュ・ジャック・ダントン役)と、カミーユ・デムーラン役の凪七瑠海も頑張っていますが、

どうも三人トリオというのはどの公演でも一山いくらな扱いになるので、個々の印象は薄いですね。

逆にフェルゼン役の暁千星が目立っていました。これまであまり知らなかった人ですが、劇団の大抜擢にこたえて、歌も立ち姿も初々しさを見せながらもよくやっています。目立つ存在でした。それと最近の歌劇団の入れ込み方も目立ちます。(笑)

以上、とりあえずの簡単すぎる感想ですが、続きはまたリピート観劇後に書くことにして、あと印象に残ったのは舞台装置。

小池作品につきものの手の込んだセットがまず目を引きました。
担当した大橋泰弘は、

「今回のセットも小池先生独特のセンスで、とにかく原作とは違う独自のものを作ってくれということで、フランス版では映像中心で作っている小さな舞台なので、一からセットを作った」とのこと。
セットのリアルさは客席についてすぐ気が付きました。建物の石造りの質感が半端じゃないです。もう石そのもの。







場面転換も手慣れたものですが、もうひとつ、映像の使い方もそれとはすぐ気づかないほど巧みでした。ステンドグラスなど、初めは映像とは思わなかったです。
担当した奥秀太郎

「フランス版を見て多用していたので、宝塚でもチャレンジしてみようと思いました。あれ?ひょっとして映像?みたいに思っていただけるようにミックスした」といっています。




というわけで、いつものとおりの超薄味な感想となりましたが、ステージ・ドアをみて作品への興味が倍増したので、初見で見落としていたことも含めて、もう一度この力作をよく観てこようと思います。

またご覧いただければ幸いです。ありがとうございました。



コメント (2)
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