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宝塚雪組『幕末太陽傳』&『Dramatic “S”!』の遅すぎる感想

2017年05月24日 | 宝塚
星組「スカピン」観劇の2週間後の27日に、雪組トップ退団公演「幕末太陽伝」「ダイナミック」を観てきました。
当日はカラッと晴れた好天で、道路も渋滞せず1時間余りで到着。前回は満開の桜だった花の道もすっかり葉桜。代わって山吹がきれいに咲いていました。

かつては、実力に人気が比例せず、チケット販売も苦戦気味の雪組でしたが、現トップ就任から打って変わって毎公演チケ難となる変わりよう。なので最近は先行予約で以前のような前方席は取れなくなり、今回も舞台上手側17列・通路横。でも見やすくていい席でした。

ということで、感想です。以下、いつもの通り敬称略。画像はスカステ・ナウオンとステージドアの画面撮りです。

まず全体の感想。宙組サヨナラ公演と同じく、今回もドタバタ喜劇。でも脚本の完成度は今回のほうがはるかに高く、見ごたえのある作品になっていました。

スカステのステージドアのインタビューで脚本演出担当の小柳奈穂子が、「二人を涙で送り出すのではなく、明るく笑って送ってあげたい」と語っていましたが、そのとおりで、抜群のコメディセンスに恵まれた早霧せいなの退団には打ってつけの作品でした。


舞台には、ちょっと梅芸版グランドホテルのそれを連想させる二階建ての旅篭(実は女郎屋)相模屋の大きなセットが据えられていて、海鼠壁がリアルでした。




今回も宝塚らしく大道具・小道具いずれもスタッフは頑張っていて、旅篭だけでなく墓地のセットをはじめ、

相模屋で出される料理の品々に至るまで、まるで食品サンプルみたいにリアルに作りこまれています。(私は見逃しましたが^^;)

女郎屋が舞台ということでドロドロした話かと予想していましたが、巧みに原作の映画を宝塚化していて、古典落語をベースにした人情味にあふれる喜劇をさわやかなストーリーに作り変えていて、感心しました。巧みな構成で、テンポよく話を進める手際の良さが光っていました。今の宝塚は女性演出家でもっているという感じです。(笑)

早霧せいなはまさに宛書!。

人前では軽薄なまでに明るく陽気にふるまっているが、実は永く結核を患っていて、一人になると死の恐怖に苛まれ続けている陰影のある佐平次を好演していました。見るからに二枚目な早霧が演じるコミカルな演技でますます面白さが増しているという感じですね。
トップに就任するまで私が持っていた彼女のイメージは、見事に覆されました。
軽妙洒脱、力まず自然に佐平次を演じていて、その姿とルパン三世がダブって見えました。





咲妃みゆとも良く似合っていました。


「星逢‥」だけはちょっと私には??な演目でしたが、「ルパン三世」や「るろうに~」は、彼女以外の演者が思いつかないぐらいのハマリ役。
退団後の活躍を期待したいです。

女郎おそめ役の咲妃みゆも、これまでの彼女の舞台イメージの対極にありそうな百戦錬磨(笑)の女郎役をしっかり演じていて、これまで彼女が舞台で獲得してきたものの大きさを感じさせる演技でした。ライバルとの大立ち回りなどのドタバタで笑わせながら、一方ではおそめの内面までよく描かれていて、存在感がありました。


この人、訥々とした話し方につい騙されそうになりますが(笑)、役を演じる上での考え方は深いものがあって、そのギャップが面白いです。それと、娘トップ就任後も痩せすぎていないのも好感度大。(笑)


ラストは、佐平次とおそめの前途に希望を見いだせる結末になっていたのが良かったです。やはり宝塚はハッピーエンドが吉です。(笑)

長州藩士・高杉晋作役は望海風斗。男らしくがっしりとした晋作ですが、力まず自然に演じていて、出てきただけで安心感があります。(笑)





異人館焼き討ちもきっとうまくいくだろうと思わせる説得力のある演技ですが、ストーリー上はあまりしどころのない役の位置なのがちょっと残念。
でも、歌も演技も安心して観ていられるのがなにより。

相模屋の息子・徳三郎を演じるのは、私たちの観劇直前に復帰した彩風咲奈
家業を顧みず吉原の遊郭に通う道楽息子ですが、真彩希帆演じる幼なじみの女中おひさが借金のかたに遊郭に売り飛ばされるのを見て、店の金を手にとばく場に行き、スッテンテンになってしまうダメさを好演(笑)していました。
↓おひさです


相模屋に入り浸る貸本屋の金造は、この公演で退団する鳳翔大です。
おそめにそそのかされて心中するはずが、自分一人海中へ落されてしまうという道化役を熱演して大うけしていました。この人の舞台をもっと観たかったのですが、残念です。
おそめのライバルこはる役の星乃あんりも退団です。おそめとの庭での大立ち回りや、仏壇屋倉造とその息子清七を手玉に取る「三枚起請」の場などで活躍していました。


女役では相模屋のやり手おくま役の舞咲りんが印象に残るいい演技でした。こういうしっかりしたわき役の存在が、舞台に厚みを加えています。他にも、専科のふたり、汝鳥伶悠真倫が円熟味のある好演で、安心して観ていられました。

今回の脚本では多くの役が設定されていましたが、まったく破綻なくよくまとめられているのはさすがです。

ショーの「Dramatic“S”!」もよかったです。








こちらは芝居と違ってサヨナラ感満載で、お約束通り早霧・咲妃のコンビだけでなく今回退団するメンバーにも見せ場が多く作られていて、「非破壊検査」のコマーシャル(殴)みたいな演出のロケット

に続く「絆」の場面では、惜別感が最高潮。

個人的には第8場から始まる「サプール(パリ)」で、絵画の女Aの真彩季帆が絵から抜け出して歌い始める場面が一番印象に残りました。

立ち姿も歌も表情も超絶品!ずっとオペラで追い続けてしまいました。
おひさはあまり注目しなかったのですが(殴)、ショーでは別人のインパクトで、一度で脳内の不揮発メモリーに書き込まれてしまいました。(といいながら、すぐ揮発するかも(笑))これから注目していきたいです。

というわけで、サヨナラ公演にふさわしい作品で、大満足で劇場を後にしました。もちろんプログラムも久しぶりに買いました。(笑)

次は兵庫芸文センターで観てきた「ハムレット」と「フェードル」(大竹しのぶが圧巻の演技!!)ですが、日に日に記憶は薄れつつあるので、早く書かないと。(^^;
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