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梅田芸術劇場で『十二夜』を観て

2015年04月21日 | 観劇メモ
梅田芸術劇場メインホールで「十二夜」観てきました。


『十二夜』はシェイクスピア喜劇の最高傑作だそうです。

話はご存じの方も多いと思いますが、音月桂が一人二役で演じる、船の難破で離れ離れになった双子の兄妹が主人公。
その二人にからんで、妹が男に扮することで登場人物の間に生じるさまざまな勘違いと片想いが交錯するコメディですが、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのディレクターも務める、『レ・ミゼラブル』などで有名なジョン・ケアードがどう作り上げているのか、興味津々でした。
音月以外でも、小西遼生や、『おそるべき親たち』の中嶋朋子、そして『祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~』の橋本さとしと、出演メンバーも豪華です。

土曜日の12時公演ということで、朝10時に出発。

この日は車も少なく、予定通りのコースタイム40分程度で駐車場に到着。地下一階のシアタードラマシティ近くで早めの昼食をとってから、車椅子を押して地上へ。
時間があったので劇場前で写真などを撮っていると、近くにいたスタッフの男性が声をかけてくれて、そのまま劇場内に案内されました。この劇場、ロビーにはエレベーターがないので、車椅子だと楽屋のエレベーターで入らなくてはならないのがプチ残念。
私たちの席は中通路から6列ほど上がったところだったので、慣れないヨメさんは一苦労。でも何とかたどり着けました。ただ後ろとはいえ、ほぼセンターで舞台はよく見えました。
見渡せば1階席は埋まっていました。けっこう男性客も多かったです。でもやはりメインホールは大きすぎの感ありで、ドラマシティのほうがいいかなと思ったり。
という前フリは終わりにして、以下いつも同様の薄味感想になります。

プロローグは最近はやりの幕なしのいきなりのスタート。
まず目に入ってくるのは舞台のセット。

デザインしたのは、衣装も担当したヨハン・エンゲルスです。当人は昨年11月、このデザイン完成させた直後に亡くなったそうで、まさに遺作となった作品です。衣装も豪華でしたが、セットも本当によくできていました。

舞台上には円形の、八百屋になった台が置かれていて、それを取り囲むように石の壁を模したセットが置かれています。


余談になりますが(えっ、もう余談?(笑))、このセットと、『十二夜』つながりで思い出したのが、16年前に訪ねた「ミナックシアター」。イギリス・コーンウォール半島の先端部に位置する野外劇場です。


どうですか?似ているでしょう。後ろ向きに立っているのは当日主演していたイギリスの有名女優、ではなくウチのヨメさんです。(笑)

さらに手作りのコンクリート+芝生の客席の下面には『十二夜』(Twelfth Night)と上演年の1933が刻まれていました。
観劇しながら思わずこの写真がよみがえってきました。

大西洋に突き出た断崖の上に作られたこの野外劇場は、ロウィーナ・ケードという女性が生涯の大半を費やして、たった一人の使用人とともに岩を削って舞台を作り、セメントをこねて芝生を植えるなどして客席を設けるなど、50年かけて手作りしたものです。

セメントに混入した砂は、切り立った断崖を90m下って海岸からバケツで運び上げたということです。私たちも海岸まで降りてみましたが、一度でどっと疲れました。(笑)
今回の舞台でも、はじめのうちは背景に海が見える設定になっていたので、観劇しながらさらに懐かしさが募りました。
みなさんもランズエンドなどに行かれた際は、ぜひ足を延ばしてみてください。

余談はこれくらいで(殴)、まず主役の音月桂から。
↓当日買ったプログラムから

雪組サヨナラ公演以来、本当に久しぶりの音月桂でしたが、変わらぬ容姿に安心しました。(笑)もともと宝塚時代から若々しい容貌がそのまま維持されているのにプチびっくり。劣化が少ないです。(殴)


とくに今回の演目が、彼女のキャラクタにぴったりでした。女が男に扮するとかはお手の物だし、しかももともと雪組時代から爽やかなボーイッシュなイメージだったので(あくまで個人の感想です)、演じる人物に自然になじめました。


セバスチャン/ヴァイオラ(シザーリオ)という二役の兄妹を、声のトーンや話法、身のこなしや細かなしぐさを使い分けて巧みに演じていて、当然とはいえ感心しました。いい役を選んだものですね。
立ち回りも決まっています。

劇の終盤に兄妹が同時に現れる場面があって、一瞬アレ、どうやっているんだろう?と思いましたが、そっくりなキャスティングをしてあって面白かったです。
↓オーシーノ公爵の小姓になったシザーリオ


プログラムで自身が言っているように、音月桂は退団後映像の方に関心があったとのことですが、今後はもっと舞台でも活躍してほしいですね。演技も歌も定評がある彼女の今後の活動が楽しみです。

次は、そのヴァイオラに勘違いして言い寄る伯爵家の令嬢オリヴィア役の中嶋朋子

さすがにベテラン、うまいですね。喜劇とはいえ自然な演技で安心して観ていられました。
はじめのうちは、兄の喪に服するという理由で冷たくオーシーノを拒み続けているオリヴィアです。


私はそんな様子がまるでエリザベートみたいだなと思って見ていましたが、そのオリヴイアがシザーリオに出会ったとたん一目惚れ。
絵にかいたようなツンデレぶりで面白かったですね。シザーリオに身も世もなく夢中!なオリヴィアと、その強引な勘違いぶりに戸惑うシザーリオとの絶妙のやりとりが一番の見所でした。

ただ、お疲れなのか、役年齢(若き令嬢ですから)&実年齢より老けた感じ(殴)なのが気になりました。ただどこか大竹しのぶにも似た台詞の声は若々しくて、すぐ容姿は気にならなくなりましたが。

うまいといえばオーシーノの小西遼生も存在感たっぷりで、スノッブな公爵ぶりが板についていました。




貫録さえあって堂々としています。舞台では初めて見ましたが、セリフも明瞭、いい役者さんですね。

執事マルヴォーリオの橋本さとしは、騙されてイジられて笑いものにされる、かわいそうな役をうまく演じていて、客席から大きな笑いを誘っていました。




しかし、今回の公演でうまさが光っていたのは道化者のフェステを演じた成河
台詞も歌も道化の仕草もうまい!!
のびのびと自由闊達、余裕さえ感じられました。大活躍でした。





陳腐な言い方ですが、滑稽さと悲哀が巧みに表現されていて、感心しました。
昨年観た『ビッグ・フェラー』でもIRAの若手メンバーの一人・ルエリ・オドリスコル役がピカイチでしたが、今回もそれに劣らぬ活躍ぶりでした。今後の活動に注目したいです。

それ以外の役者さんもそれぞれいい仕事ぶりでしたが、中にはちょっと台詞の不明瞭な方もおられて、ちよっとコックリとな(殴)としそうになったり。
ご存じのように、シェイクスピアの台詞は、一流の美文調で形容詞満載なので、聞き取りにくいと台詞が睡眠術の呪文みたいに聞こえてつい瞼が‥(殴)
でもそんな序盤をなんとか持ちこたえたら(笑)、中盤から一転俄然面白くなってきて、客席も笑いの連続。面白かったです。

最後は客席も大いに乗ってきていました。
カーテンコールの出演者全員の歌は鳥肌モノ。圧巻でした。


というわけで、シェイクスピアかと身構えて観劇に臨みましたが(なにしろ十二夜は初めてなので)、素直に楽しめて面白かったですね。なにより厚みのある俳優陣と、一流の演出に、重厚なセットと衣裳。上質な演劇を堪能できました。

音月桂の大阪演劇デビュー、成功して本当によかったです。



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宝塚花組公演『カリスタの海に抱かれて』 『宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』 観劇 その2

2015年04月13日 | 宝塚
カリスタ、2回目観劇の感想です。
前回は予期しないラッキーチャンスが舞い込んでの観劇でしたが、今回はオンラインチケットの一般前売りで購入したもの。20列とかなり後ろの席でした。

4月初めのこの日は絶好の花見日和。渋滞が懸念されたので8時30分に出ましたが、所要時間1時間10分と、ほぼ順調に到着しました。やはり平日だったのが幸いでした。

着いてみると、花の道も桜が満開、通行の花見客も多く、結構な賑わいになっていました。

桜の下に植えられた雪柳やローズマリーも咲いていてきれいでした。
時間があったので私たちも花の道で桜見物。




写真などを撮ってから劇場ロビーに向かうと、当日券を求める長蛇の列。「小学生は1,500円割引」とあって、列には子供連れも目立ちました。
これは人気があるのかないのか?
長蛇の列なので観たい人が多いというわけですが、一方で当日券がそんなにあるというのは売れていないということか?よくわかりませんね。(笑)
一階の客席はほぼ満席。さすがに立ち見までは出ていませんでしたが、平日でもよく入っていました。

さて前置きはこのぐらいで、感想です。いつものとおり敬称略。

さすがに2回目となると、初回みたいに話を追うのに必死みたいな感じはなく、余裕で舞台上の小芝居などもチェックできました。(笑) 

今回の観劇で私の一番ツボだったのは、冒頭のスッポンの場面。
軍服姿も凛々しく明日海りおが後ろ向きに登場します。
こんな表情でした。


島に足を踏み入れてあたりを見回すその表情が清々しい。ほほ笑みを浮かべて、懐旧の情と、新しい任務への気概にもあふれているようです。
しか~し!!、そんなはずはないですね。

カルロとその両親はその昔、石もて追われるごとく、カリスタを後にしています。
なにしろ父は札付きの裏切り者、そして息子カルロは、親友ロベルトと血の約束を交わしながら、それを破っての離島。普通なら不安と緊張でいっぱいのはずですね。そもそも士官学校出たての新米士官が自分からそんないわく因縁のある任地を希望しないだろうし。

でもね。それは素人の浅はかさというもの。(殴)

カルロには大きな計画がありました。(キッパリ)
父の汚名返上と、島民の悲願であるフランスからの独立。それを実現できるカギは、ちょうど彼が士官学校を卒業する時期に始まった偉大なフランス革命。
この革命の歴史的意義に強い共感と確信を持つ中で、彼は故郷カリスタの解放への展望をも見出したのです。
それが、冒頭の、自信に満ちた表情に現れたというわけです。しかも無用の流血を避けるため、革命政府に現地のフランス軍の無血撤退を保証させる手筈さえ整えていました。
士官学校出の新米士官(それにしては大尉とは出世が早すぎ?)にしては大した度量です。
というのはあくまで私の妄想(笑)。
でもそう考えれば、本来二の足を踏むはずの上陸時の表情があんなにスッキリ晴れ晴れなのが腑に落ちます。(笑)

それともうひとつ、気になっていたのが前回の観劇で感じた滑舌の悪さですが、今回はかな~り良くなっていました。ほぼ気にならない感じ。でも一回だけ台詞を噛んでしまったのが残念ですが、これも回を重ねれば解消されるでしょう。

演技自体は自然で表情もリアル、そして歌は安定した歌唱力で聞かせてくれます。
カルロが相手に強く語りかけるとき、いつも人差し指を振っているのが面白いです。

アリシアの花乃まりあも、やりすぎたら蓮っ葉なジャジャ馬娘になりそうな役柄ですが、そうならずにひたむきにカルロを思う純粋でいじらしい乙女心をよく体現していました。


カルロを助ける場面です。

こういう人物像がはっきりしている役はやりやすそうで、実は結構難しい役ですね。
総督府に入りこんで動向を探る大胆さを持ちながら、きれいな服に憧れたりする娘心をうまく演じていました。

いいコンビになりそうです。いやもうなっているか。(笑)


それとやはり印象的だったのがロベルトの芹香斗亜。繰り返しになりますが、びっくりの成長ぶりでした。以前の頼りなげな(殴)印象は雲散霧消、大きく見えます。


裏切り者の息子カルロが信用できるのか迷いながら、賭けてみようとするロベルト。いい演技でした。


最後は新天地アメリカに向かうカルロとアリシアを、アニータとともに丘の上から見送ります。


で、このシーンを観ながら私は、これ続編も作ればいいのにと思ったり。
というのは、ナポレオンが最後のほうで、「いずれカリスタは私の庭になる」みたいなことを言っています。
それからすると、続編は革命の反動期、王となったナポレオンがカリスタを占領、またフランスの圧政下におかれるカリスタと、それに抵抗するロベルトが話の前段で、その窮状を知ったカルロは妻とともにアメリカで得た資金でカリスタにノルマンディばりの逆上陸、ナポレオンの軍隊を島から追い出す、みたいな話に出来ると思うのですが、石田さん、書きませんか?(殴)

まあ妄想はこれぐらいにして(笑)、今回、二度目の観劇でも、改めていい芝居だと思いました。台詞も筋書きも、流れがよくて、安心して感情移入して観られました。

ショーのほうは、今年8月8日~8月16日の第二回台湾公演に合わせて、和のテイストたっぷりな作りになっています。
で、こういうショーは、ともすればダサダサで野暮ったくなったりしますが、『宝塚幻想曲(タカラヅカファンタジア)』は巧みに和と洋を織り交ぜた洒落たアレンジで、いいショーになっていました。
稲葉太地、このところ大活躍ですね。


明日海りおは豪華な衣装で登場、やはりきれいです。

途中で花魁からタキシードに早変わりするお約束の場面もあって楽しいです。

ショーでも息の合ったふたりです。




タンポポです。


そしてやっぱり目を引いたのが芹香斗亜。すっかり大人びて、変われば変わるもの。(笑)


やはりシュートが気になりました。(笑)


そして最後のパレード。一度見ているのに、大きさではトップコンビと同格の羽根が気になりました。最近ではあまり見ない二番手登用で、改めていろいろ考えましたね。

ここから蛇足。
しかし、ナウオンなどを見ていて思いますが、明日海りおは本当に控えめというか、自分の主張を押し付けないやさしいトップさんですね。よく、自説を開陳することに懸命なアグレッシブなトップもいて違和感を感じたりしますが、逆に控えめすぎなのももどかしくて、もうちょっとリーダーシップを発揮してもいいのではと思ったり。
でもどちらかといえば、私は後者のほうが好みですが。(笑)

というところで、カリスタの感想は終わりです。

さて、お次は土曜日に観てきた「十二夜」です。最近とみに物忘れがひどいので、記憶の消えないうちに(笑)、感想を書かなくてはと焦っています。
久しぶりの音月桂さんでしたが、これがとてもよかったです。いつアップできるかわかりませんが(殴)、また機会があったらご覧いただければ幸いです。

どうもありがとうございました。




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