思いつくままに書いています

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御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

宝塚雪組公演 『ドン・カルロス』と『Shining Rhythm!』を観て

2012年03月11日 | 宝塚
3月10日午前11時からの宝塚雪組公演『ドン・カルロス』と『Shining Rhythm!』を観てきました。

良かったですね!あまり期待していなかっただけに、余計見てよかったと思いました。
久しぶりに、もう一度みたいなと私たちが思ったほどの出来栄えでした。

恥ずかしながら、私はヴェルディの「ドン・カルロ」も、その原作となったシラー作の戯曲『スペイン王子ドン・カルロス』も知らなかったし、今回の作品についても何も事前に調べていなかったので、実際に観るまでどんな筋書きかはわからないままでした。

もっとも、今回のタカラヅカ・バージョンはかなり換骨奪胎されているので、原作を知っている人はむしろかなり違和感を感じたかもしれませんね。
大体、史実の王子はかなりかわいそうな人物だったようで、容貌も全く冴えず、若くして獄死しています。(笑)

それはさておき、今回のタカラヅカ版「ドン・カルロス」はよくまとまった話になっていました。少し説明不足なところもありますが、一本物ではないので仕方がないと思います。

芝居は狩りの場面から始まります。そこでの衣装からして、時代考証に忠実で地味な色合いながら豪華なものでした。舞台装置もよくできていました。

はじめのほうは少し展開が遅く感じましたが、だんだん展開に調子が出てきて、引き込まれていきました。この辺り、観劇したのが初日から間がないので、出演者も乗りきれていないせいもあるかもしれません。

作者についても何の予備知識もなく観ていたのですが、話が進んで全体の場面構成や舞台全体を使ったアンサンブルを観ていくにつれて、だんだん作者が見えてきました。

どう見てもこれはキムシン((木村信司センセイ)だと確信しました。(笑)
で、幕間にプログラムを買って確かめたらやはりそうでしたね。
(ちなみにビンボーな私たち夫婦がプログラムを買うのはよほど作品の出来がいいときです。(笑))

↓プログラムです。


この人は宝塚大劇場の大舞台を使うのがうまいですね。それと、時代の趨勢に対するメッセージを織り込んだ作品を作る能力にも長けています。
代表作は言わずと知れた「王家‥」です。その後の「スサノオ」もメッセージが強かったですが、よくできていたと思います。
彼のメッセージには共感するところが多いので、今の宝塚では一番好みの作者です。

ただ、このセンセイ、ついメッセージだけが先走ってしまい、話としての完成度が低くコケてしまった作品も少なくないのですが、今回は久々のクリーンヒットでしたね。(笑)

「ドン・カルロス」役の音月桂は役にぴったりのキャラクタで好演していました。演技力ももちろんですが、歌唱力があって、容貌に似合わず(笑)、低い声から無理なく歌い上げる歌声が素晴らしいです。容貌とのギャップ感アリなのが面白いです。

「レオノール」役の舞羽美海は、可憐な中にも芯があり、しかも大胆なところもある王妃の侍女役のヒロインをよく演じていて好印象です。慎み深さとひたむきさがよく伝わってきました。
私的には現トップ娘役中夢咲ねね・蒼乃夕妃と並び好感度の高い一人です。
(ただ、三人とも歌がやや難ありというところが惜しいです。^^;)

プログラムより


ところで今回のお話は、トップ二人の恋愛に、フェリペ2世とその王妃イサベルとの冷めた夫婦の関係が大きく絡んでいます。むしろこの夫婦の関係が大きな柱となっているといえるでしょう。
その悩み多い「フェリペ2世」を演じているのが未涼亜希。インパクトではトップを食ってしまっているともいえるおいしい役どころを好演しています。

帰宅して、プログラムの挨拶記事にキムシンが書いているのを読むと、今回の作品を書く動機がフェリペ2世への関心であったことがよくわかります。

おいしい役といえば、フェリペ2世の妹フアナも王子と侍女のよき理解者として重要な役割をはたしていますが、これを涼花リサが演じていて、いい感じでした。

詳しい筋書きは書きませんが、ドン・カルロスと王妃が不倫疑惑と異端審問で追い詰められていくところから、最後は逆転するところまで(←結構ネタバレです)緊迫感が高まっていくところがよかったです。
重苦しい展開から一転、最後は痛快な結末、気分よく劇場を後にできる(笑)昂揚感が心地よい作品になっていました。私たち二人とも、「もう一回観たい!」と思った次第です。

ショーのほうも前回の月組と比べたらよほどまともで、とくにスペインの場面がよかったです。
プログラムより


特に最後のエトワール!私は名前すら知らなかったのですが、透水さらさという生徒とのこと。

久しぶりに聞く美声、本当に感嘆しました。まあ最近これぞエトワールという人にはお耳にかかっていないので(笑)、新鮮な驚きでした。
雪組というと私たちは草笛雅子とか毬谷友子とかの伝説的なエトワール(古すぎ!)を思い浮かべてしまいますが、その再来といってもいいほどの美声で、うれしかったですね。


しかし今回、芝居もショーもこんなにいい出来なのに、私たちの観劇日に客席にぽっかり空席があったのは残念でした。
おそらく団体の予約席が何かの理由でキャンセルになったのか、一階S席16列から21列まで下手側の席がまとまって空席だったのは驚きでした。
前回の「仮面の男」が大コケだった影響なのか、ホームページで見るチケット販売状況も思わしくないのが気がかりですね。

まあそれもあって今回私たちもあまり期待せず観たのですが、うれしい誤算で、最近の公演では「オーシャンズ」に次ぐ良作だと思いました。

せっかくのいい公演ですが、幸か不幸かまだいい席が手に入ると思いますので(笑)、ぜひ皆さんもご覧になってください。
絶対お勧めです!


宝塚大劇場公演
公演期間:3月9日(金)~4月9日(月)


東京宝塚劇場公演
公演期間:4月27日(金)~5月27日(日)
 一般前売:3月18日(日)


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宝塚歌劇 月組公演『エドワード8世』と『Misty Station』を見て

2012年03月09日 | 宝塚
本当に遅くなりすぎですが、2月11日(土)・午前11時の月組大劇場公演を見てきました。

今回は『エドワード8世』と『Misty Station』と題した霧矢大夢&蒼乃夕妃の退団公演です。
芝居のほうはご存知シンプソン夫人とディビッド王子の話です。まあトップ二人が芸達者なので、安心して見られましたね。(笑)

宝塚でも、長い歴史の中には、何をやっても同じキャラ・「でくの棒」芝居しかできないトップさんもいたりしますが、今回は二人をはじめ月組の好演でちゃんと芝居が成り立っていたのがなによりでした。(笑)

ただ、話の筋がけっこう地味なので、時折睡魔に襲われそうになったこともありましたが、そこは脇を固めるチャーチル役に芸達者の一樹千尋(私は今の専科ではこの人が最高の役者さんと思っています)を配するなどの効果もあり、なんとか眠らず見終えることができました。(笑)
気の強そうな蒼乃「シンプソン夫人」も魅力的で、よかったです。(笑)

でも私としては、今回の観劇で一番印象に残ったのは芝居ではなくショーでの蒼乃夕紀のダンスでした。

もともと霧やん(霧矢大夢)も力量には定評のあるダンサーですから、二人のデュエットダンスももちろん見応え大アリでしたが、私としてはなんといっても今回は蒼乃夕妃がよかったですね。
ショーでの役名も「孤独な戦士」とか「狩人」などと「男前な娘役」(笑)といわれるだけあって、実に凛々しく、ダイナミックなダンスをみせてくれました。

前回の「アルジェの男」では、タカラヅカでここまでやるか!と思ったほどセクシーなベリーダンスなどを披露していましたが、今回は鮮やかな剣さばき(LED入り)がツボで、剣をくるくると頭上で回したかと思うと、一閃ののちピタッと相手の正面に突きつけるなど、アクロバティックな振りを難なくこなして凄く手練れな剣豪ぶりでした。

この人のダンスは手足の振りのストロークが大きく動きにスピード感があって、なおかつ繊細さがあるので圧巻です。ダンスの凛々しさは娘役をはるかに超えていて、これぞ男役2番手といってもいい活躍ぶりでした。

鈍い私は前回の公演でようやく彼女のダンスの力量に気付いたのですが、もう退団なのが残念です。
最近の娘役では出色のダンス巧者だと思います。

と思ってスカイステージで以前の公演を放送していたので改めて注目して観ましたが、やはり群舞でもはっきり違いが分かりますね。もっとよく見ていたらよかったと後悔しきりの昨日今日です。

ところでこの公演を見た後で、WOWOWシネマで「英国王のスピーチ」を見ました。

こちらは兄王に王位を投げ出されて突然後継者のお鉢が回ってきて王位に就かざるを得なくなったジョージ6世、つまり今のエリザベス女王の父親になる人の話です。

この人は、幼年時代に体験した父親ジョージ5世の厳しい躾のために吃音障害になり、もともと内気な性格だったこともあって、努めて人の前に立つことを避けながら成長してきた人です。
それが兄エドワード8世の突然の退位宣言で「演説が仕事となる」羽目になり、苦悩しながらも吃音障害を克服して王位にふさわしく成長していくというお話です。

このように、宝塚とはまったく対照的な角度から、「シンプソン事件」を描いていて面白かったです。
というか、宝塚がこの映画をヒントに今回の公演を企画したというところでしょうか。

しかしこの映画や宝塚の公演を見ても、同じ王制といっても日本とはえらい違いですね。

近年のチャールズ王子とダイアナ妃の離婚騒動すら日本では絶対ありえない話(あったとしても宮内庁あたりが無理やり抑え込んでウヤムヤにしてしまうでしょう)です。
まして戦前に、バツ2の人妻と公然と不倫関係になり、国王に即位してから、その地位を投げ出してその女性と結婚した!というのですから、日本の皇室と比べたら空前絶後の世界です(笑)。

そういえば、ダイアナ妃の事故死から葬儀に至る時期の英王室の内幕を描いた映画「クィーン」でも、王室の内幕がかなり詳しく描かれていましたね。フィクションもあるでしょうが、情報公開の差を痛感しました。

余談ですが、私が映画「クィーン」で驚いたのは、エリザベス女王が王女時代の大戦中に軍用車両の整備業務に従事していたというエピソードです。

この映画の初めのほうに、英王室として当初ダイアナ元妃の葬儀に関与しない方針を決めて、女王もスコットランドでの休暇を継続し、一人で野遊び中に彼女の運転するランドローバーが川の横断中に故障したため立ち往生する場面が出てきます。
そして女王から故障の連絡を受けた王室関係者?が、女王の状況説明を信用せず素人扱いしたところ、「私は戦争中軍隊で車両整備をしていたから、故障の原因がプロペラシャフトだというくらいわかります。部品と工具さえあれば自分で修理できます。」といった意味の返事(細かいところは記憶違いがあるかもしれません)をしていたのには驚きました。
映画を見たあとで、実際に車両整備だけでなく武器弾薬の管理や、大型の運転免許も取得していたということも知りました。

繰り返しになりますが、英王室の在り様と日本の皇室のそれとでは、あらゆる点で天と地の開きがありますね。日本の皇室の現状は、宮内庁などの官僚機構が前に出てあれこれ干渉しすぎる弊害ではないかと思います。

宝塚の話に戻りますが、昨夜(3月6日)のスカイステージのタカラヅカニュースで、この公演の千秋楽の模様が放送されていました。
千秋楽での私たちの関心は、サヨナラショーの様子もさることながら、もっぱら霧やん(霧矢大夢)と蒼乃夕妃の退団のあいさつがどんなものだったかというところにありました。

まだ東京公演があるにしても、まあ本拠地・大劇場での挨拶が一つの区切りですから、それを聞けばトップ二人の歌劇団での来し方がよくわかると思います。
で、やはりこの二人の挨拶は期待通り良かったです。久々に心に残る挨拶を聞きました。

ニュースでは、同時期に退団する何人かの紹介とあいさつの後、蒼乃夕妃の挨拶の番となりました。
その前の挨拶はみんな最近恒例のパターン挨拶の域を出ず、「今私は本当に幸せ一杯です」というフレーズから始まり、これまで世話になったり・指導してもらったり・支えてくれたり・応援してくれた人達を順に列挙したあと、「宝塚での生活は私の人生の宝物です」・「これからも私らしく歩んでいきます」となって、最後に「すべての皆様に心から感謝の気持ちを込めて、本当にありがとうございましたと締めくくるという、まあかなり聞き飽きたものでした。
最近の退団挨拶はほとんどが程度の差はあれ、このワンパターンのバリエーションばかりなので、正直言ってウンザリ気味です。

そして蒼乃夕妃の挨拶になりましたが、それまでの声を張りあげるセリフの発声法ではなく、穏やかに彼女の地声での語りで始まりました。

そして、これまで舞台でいろんな役を演じてきたが、今初めて「蒼乃夕妃」として話すことができるということから、初めはタカラヅカにたくさんいる娘役の一人だったが、いつのまにか「男前」の娘役と言われるようになり、そのことを彼女自身一時「これでいいのか」と悩んでいたこと、でもそれが自分の個性なのでそれを通すことに踏ん切りがついたこと、そしてなによりも彼女を大きく大きく受け止めてくれた霧矢大夢がいたからこそやってこれた、霧矢大夢の横に立つことができてよかったというようなことを涙をこらえながら語っていました。いや、期待通りのいい挨拶でしたね。

霧やんも肩の力の抜けた、でも心のこもった挨拶で、息の合った二人にふさわしいものでした。
大夢という芸名は、何気なく入った書店で手にした赤ちゃんの名づけ本にあった名前からとったこと、でも最初はそんな大きな夢は持っていなかったことなどを紹介して笑いを誘っていました。
何度目かのカーテンコールでの挨拶で彼女が在団80期生の最後であったこともわかりました。研18ですから、病気のことなどもあったりで結構遅咲きでしたね。(でも、大空祐飛はそれより先輩の78期生なのでさらに遅咲きでしたが)

今まで一番良かった退団挨拶は歌ウマ・安蘭けい&遠野あすかのコンビでしたが、今回の二人の挨拶はそれに匹敵する心のこもったものでした。

月組はこのあと東京公演があります。
まだご覧になられていない方は、ぜひ、この最近随一のダンスウマ・トップ二人の最終公演『エドワード8世』と『Misty Station』を一人でも多く見ていただければと思います。


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