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宝塚星組公演「眠らない男-ナポレオン」を観て その2

2014年01月22日 | 宝塚

約十日ぶりのナポレオンとの再会。
木曜日なのに立ち見の出るびっくりの盛況ぶり。幸先良いスタートでご同慶の至りです。

で、再度観劇した感想ですが、やはり二度観ると、新たに見えてくるものがありますね。記念すべき年の年頭を飾るにふさわしいいい出来栄えでした。宝塚ならではの豪華な舞台装置と衣装は何度見ても圧倒されますが、それよりなにより、オリジナル脚本としてよくできていたと思いました。
それと、この観劇後にスカステのNow on Stageを見ましたが、そこでもトップコンビをはじめ出演者全員の苦心と頑張りがよく伝わってきました。
以下の画像は全てスカステNow on Stageより

前回はかなり醒めた感想だったヨメさんも、今回観劇して評価を大幅にアップしていました。

以下、今回の観劇とスカステの上記番組を見て、それに出演しているメンバーを中心とした感想です。

やはり最初の印象どおり、この芝居に出てくる人物のキャラクターとしては、ジョセフィーヌが一番勝っていますね。
ねねは役作りに際して小池御大から「オカミさんを入れて」と言われたそうで、そのとおりこれまで演じてこなかった、したたかなバイタリティと奔放さを持った強いジョセフィーヌをうまく演じていました。
自分が女王になれるという予言を信じつつ社交界で浮名を流し、そこで有望株のナポレオンに目を付けてまんまと結婚した後も、臆面もなく愛人を連れて歩くなど奔放さは治まりません。一方で姑や小姑などとの葛藤もあり、最後には落魄したナポレオンの配流先についてロシアの将軍に嘆願するなど、人間的なエピソードも豊富です。


それに比べると、主人公のナポレオンはいささか影が薄いです。(笑)というか、ジョセフィーヌ以外はみんな役を際立たせるエピソードが少ないので、それぞれ役作りに苦労しています。

ナポレオンの基本的な性格としては、即断即決・直情径行なのはわかりますが、彼が波乱の人生をどういう思いを持ちながら駆け抜けていったのか、一介の軍人から究極の栄誉を得たのちの敗北と挫折、そこでの葛藤とか苦悩については余り描かれていません。このあたり、叙事詩的・年代記的に描こうとした脚本家の意図からくるものかもしれませんが、もう少しナポレオンの人間像がわかる材料などがあれば、観客ももっと感情移入しやすかっただろうと思いました。
でもそんなナポレオンを、柚希礼音はさらにがんばって演じていました。今の宝塚のトップでは最も安定した力量がある存在だといえると思います。

↓冒頭の空飛ぶ勉強机。結構揺れていて、まるでダンプの運転席(殴)。

精悍な風貌で迫力があります




他の出演者の感想ですが、今回とくに印象的だったのは真風涼帆でした。

役そのものはそれほど目立つものではないのですが、それでも光る演技と歌で印象に残りました。特に声の質が歌にしても台詞にしても耳に気持ちよく響いてきて、思わずオペラで確認したことが何回かありました。

北翔海莉のタレーランも、革命後の無政府状態の中で、王党派を抑えながら同時に民衆の蜂起も押さえ込むために巧みにナポレオンを利用し、果ては退位を迫るという新興ブルジョア階級の時代と利害を象徴する存在として、出色の演技でした。これまで見た彼女の演技のなかでは一番印象に残りました。

ちなみに髪型は演出家の注文だそうです。


フィナーレではなんとエトワールまで


余談ですが、彼女の専科への移籍を聞いたとき、私たちはかなり落胆したものですが、その後の活躍を見ていると「これでいいのかも」と思えてきたりしました。さらに先日、スカステ・ニュースで『THE MERRY WIDOW』の千秋楽での星条海斗の北翔への感謝にあふれた挨拶と、それに対する北翔海莉の飾らない感謝の様子を見てからは、これがベストなのだと思いましたね。そして今回の公演での歌劇団の配慮ぶり。いいポジションに落ち着いたと思います。

真風と対比すると、紅ゆずるは歌が少々物足りなく思いました。今の組でのポジションに見あうように、かなり精進してもらう必要があると思いました。Now on Stageでは歌や役作りについて努力していることがわかりますが、今はまだそれが結実していないように思えました。今後に期待したいですね。




十輝いりすのジョセフは今回の公演では兄弟姉妹の諍い以外はあまりしどころのない役で気の毒でした。なので、民間人のはずなのにあちこち顔を出しています。前半はただそこにいるだけみたいな感じが多いですが。^^;





つぎに音楽について。
二度目の観劇なので、ストーリーを追うのに余念がなかった前回と違って、今回は曲を楽しむ余裕がありました。
で、まずオープニングのコーラスがよかった。すぐ口ずさめるほどではないですが、いい曲でした。
今回一番耳に残ったのは「嵐のように生きた男」です。これはROM化できました。(笑)
その他の曲も、みんな歌いなれてきたのか耳によくなじんできました。ただ、さすがにプレスギュルヴイック!と絶賛するまでには至らなかったですが。

歌といえばウジェーヌ役の礼真琴の歌もよかったですね。新公ではナポレオンをやるとのことで、小柄なので適役かと思いますが、他の役になるとその点がちょっと難しいのが残念ですね。
それに対してアレクサンドルI世の麻央侑希は長身を生かしてなかなか見ごたえのある姿でよかったです。最後しか出てこないのが気の毒ですが。逆に彼女の場合は、ルックスは申し分ないので、もっと歌や芝居で伸びてくれればと思いますが、なかなかうまくいかないですね。

レティツィアの美穂圭子や、テレーズの音花ゆりの歌はさすがの出来。安心して浸れます。前後しますが、夢咲ねねの歌も本人比さらにうまくなっていて、前回みたいに思わず体を固くして緊張しながら聞く(笑)といったことがなかったのは良かったです。セリフの声もよく通って耳になじみました。

さて、二回の観劇を終えて、今回の公演について振り返ってみると、なんといっても今の星組全体の充実した力量を感じました。
レオンとねねを先頭に頑張っています。それに加えて専科のみなさんの文句なしの好演で、重厚なナポレオン年代記になっていました。

ただ、劇化しているタイムスパンが長いので登場人物も増え、さらに楽曲が多いのでその分台詞が減って、結果的には話の掘り下げが足りなくなった感じです。もう少し場面を整理して、とくにナポレオンの人物像を描くことに注力したほうがよかったのではないかと思いました。
革命後の混乱と無政府状態のなかで、王党派の台頭を封じながら「革命の守護神」として登場(まさにボナパったわけですね)しながら、だんだん軸足を「民衆」からブルジョア階級に移していく変節の過程、そしてロシア遠征の敗北後タレーランから退位を迫られていく落魄の末期まで、彼がどう感じて生きてきたのか、その折々の内面の葛藤、そして歴史における彼の役割などについて触れるストーリー展開があればさらによくなったと思います。

ともあれ、今回の観劇で、久しく考えたことのなかったナポレオンとその時代について、あれこれ私なりに考えることができてよかったです。王と皇帝の違いなども面白かったです。

宝塚らしい豪華な作品なので、ぜひ皆さんもご覧になってください。
↓プログラムより


今回も拙い感想をご覧いただいたき、大変ありがとうございました。


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