本当に遅くなりすぎですが、2月11日(土)・午前11時の月組大劇場公演を見てきました。
今回は『エドワード8世』と『Misty Station』と題した霧矢大夢&蒼乃夕妃の退団公演です。
芝居のほうはご存知シンプソン夫人とディビッド王子の話です。まあトップ二人が芸達者なので、安心して見られましたね。(笑)
宝塚でも、長い歴史の中には、何をやっても同じキャラ・「でくの棒」芝居しかできないトップさんもいたりしますが、今回は二人をはじめ月組の好演でちゃんと芝居が成り立っていたのがなによりでした。(笑)
ただ、話の筋がけっこう地味なので、時折睡魔に襲われそうになったこともありましたが、そこは脇を固めるチャーチル役に芸達者の一樹千尋(私は今の専科ではこの人が最高の役者さんと思っています)を配するなどの効果もあり、なんとか眠らず見終えることができました。(笑)
気の強そうな蒼乃「シンプソン夫人」も魅力的で、よかったです。(笑)
でも私としては、今回の観劇で一番印象に残ったのは芝居ではなくショーでの蒼乃夕紀のダンスでした。
もともと霧やん(霧矢大夢)も力量には定評のあるダンサーですから、二人のデュエットダンスももちろん見応え大アリでしたが、私としてはなんといっても今回は蒼乃夕妃がよかったですね。
ショーでの役名も「孤独な戦士」とか「狩人」などと「男前な娘役」(笑)といわれるだけあって、実に凛々しく、ダイナミックなダンスをみせてくれました。
前回の「アルジェの男」では、タカラヅカでここまでやるか!と思ったほどセクシーなベリーダンスなどを披露していましたが、今回は鮮やかな剣さばき(LED入り)がツボで、剣をくるくると頭上で回したかと思うと、一閃ののちピタッと相手の正面に突きつけるなど、アクロバティックな振りを難なくこなして凄く手練れな剣豪ぶりでした。
この人のダンスは手足の振りのストロークが大きく動きにスピード感があって、なおかつ繊細さがあるので圧巻です。ダンスの凛々しさは娘役をはるかに超えていて、これぞ男役2番手といってもいい活躍ぶりでした。
鈍い私は前回の公演でようやく彼女のダンスの力量に気付いたのですが、もう退団なのが残念です。
最近の娘役では出色のダンス巧者だと思います。
と思ってスカイステージで以前の公演を放送していたので改めて注目して観ましたが、やはり群舞でもはっきり違いが分かりますね。もっとよく見ていたらよかったと後悔しきりの昨日今日です。
ところでこの公演を見た後で、WOWOWシネマで「英国王のスピーチ」を見ました。
こちらは兄王に王位を投げ出されて突然後継者のお鉢が回ってきて王位に就かざるを得なくなったジョージ6世、つまり今のエリザベス女王の父親になる人の話です。
この人は、幼年時代に体験した父親ジョージ5世の厳しい躾のために吃音障害になり、もともと内気な性格だったこともあって、努めて人の前に立つことを避けながら成長してきた人です。
それが兄エドワード8世の突然の退位宣言で「演説が仕事となる」羽目になり、苦悩しながらも吃音障害を克服して王位にふさわしく成長していくというお話です。
このように、宝塚とはまったく対照的な角度から、「シンプソン事件」を描いていて面白かったです。
というか、宝塚がこの映画をヒントに今回の公演を企画したというところでしょうか。
しかしこの映画や宝塚の公演を見ても、同じ王制といっても日本とはえらい違いですね。
近年のチャールズ王子とダイアナ妃の離婚騒動すら日本では絶対ありえない話(あったとしても宮内庁あたりが無理やり抑え込んでウヤムヤにしてしまうでしょう)です。
まして戦前に、バツ2の人妻と公然と不倫関係になり、国王に即位してから、その地位を投げ出してその女性と結婚した!というのですから、日本の皇室と比べたら空前絶後の世界です(笑)。
そういえば、ダイアナ妃の事故死から葬儀に至る時期の英王室の内幕を描いた映画「クィーン」でも、王室の内幕がかなり詳しく描かれていましたね。フィクションもあるでしょうが、情報公開の差を痛感しました。

余談ですが、私が映画「クィーン」で驚いたのは、エリザベス女王が王女時代の大戦中に軍用車両の整備業務に従事していたというエピソードです。
この映画の初めのほうに、英王室として当初ダイアナ元妃の葬儀に関与しない方針を決めて、女王もスコットランドでの休暇を継続し、一人で野遊び中に彼女の運転するランドローバーが川の横断中に故障したため立ち往生する場面が出てきます。
そして女王から故障の連絡を受けた王室関係者?が、女王の状況説明を信用せず素人扱いしたところ、「私は戦争中軍隊で車両整備をしていたから、故障の原因がプロペラシャフトだというくらいわかります。部品と工具さえあれば自分で修理できます。」といった意味の返事(細かいところは記憶違いがあるかもしれません)をしていたのには驚きました。
映画を見たあとで、実際に車両整備だけでなく武器弾薬の管理や、大型の運転免許も取得していたということも知りました。
繰り返しになりますが、英王室の在り様と日本の皇室のそれとでは、あらゆる点で天と地の開きがありますね。日本の皇室の現状は、宮内庁などの官僚機構が前に出てあれこれ干渉しすぎる弊害ではないかと思います。
宝塚の話に戻りますが、昨夜(3月6日)のスカイステージのタカラヅカニュースで、この公演の千秋楽の模様が放送されていました。
千秋楽での私たちの関心は、サヨナラショーの様子もさることながら、もっぱら霧やん(霧矢大夢)と蒼乃夕妃の退団のあいさつがどんなものだったかというところにありました。
まだ東京公演があるにしても、まあ本拠地・大劇場での挨拶が一つの区切りですから、それを聞けばトップ二人の歌劇団での来し方がよくわかると思います。
で、やはりこの二人の挨拶は期待通り良かったです。久々に心に残る挨拶を聞きました。
ニュースでは、同時期に退団する何人かの紹介とあいさつの後、蒼乃夕妃の挨拶の番となりました。
その前の挨拶はみんな最近恒例のパターン挨拶の域を出ず、「今私は本当に幸せ一杯です」というフレーズから始まり、これまで世話になったり・指導してもらったり・支えてくれたり・応援してくれた人達を順に列挙したあと、「宝塚での生活は私の人生の宝物です」・「これからも私らしく歩んでいきます」となって、最後に「すべての皆様に心から感謝の気持ちを込めて、本当にありがとうございましたと締めくくるという、まあかなり聞き飽きたものでした。
最近の退団挨拶はほとんどが程度の差はあれ、このワンパターンのバリエーションばかりなので、正直言ってウンザリ気味です。
そして蒼乃夕妃の挨拶になりましたが、それまでの声を張りあげるセリフの発声法ではなく、穏やかに彼女の地声での語りで始まりました。
そして、これまで舞台でいろんな役を演じてきたが、今初めて「蒼乃夕妃」として話すことができるということから、初めはタカラヅカにたくさんいる娘役の一人だったが、いつのまにか「男前」の娘役と言われるようになり、そのことを彼女自身一時「これでいいのか」と悩んでいたこと、でもそれが自分の個性なのでそれを通すことに踏ん切りがついたこと、そしてなによりも彼女を大きく大きく受け止めてくれた霧矢大夢がいたからこそやってこれた、霧矢大夢の横に立つことができてよかったというようなことを涙をこらえながら語っていました。いや、期待通りのいい挨拶でしたね。
霧やんも肩の力の抜けた、でも心のこもった挨拶で、息の合った二人にふさわしいものでした。
大夢という芸名は、何気なく入った書店で手にした赤ちゃんの名づけ本にあった名前からとったこと、でも最初はそんな大きな夢は持っていなかったことなどを紹介して笑いを誘っていました。
何度目かのカーテンコールでの挨拶で彼女が在団80期生の最後であったこともわかりました。研18ですから、病気のことなどもあったりで結構遅咲きでしたね。(でも、大空祐飛はそれより先輩の78期生なのでさらに遅咲きでしたが)
今まで一番良かった退団挨拶は歌ウマ・安蘭けい&遠野あすかのコンビでしたが、今回の二人の挨拶はそれに匹敵する心のこもったものでした。
月組はこのあと東京公演があります。
まだご覧になられていない方は、ぜひ、この最近随一のダンスウマ・トップ二人の最終公演『エドワード8世』と『Misty Station』を一人でも多く見ていただければと思います。

今回は『エドワード8世』と『Misty Station』と題した霧矢大夢&蒼乃夕妃の退団公演です。
芝居のほうはご存知シンプソン夫人とディビッド王子の話です。まあトップ二人が芸達者なので、安心して見られましたね。(笑)
宝塚でも、長い歴史の中には、何をやっても同じキャラ・「でくの棒」芝居しかできないトップさんもいたりしますが、今回は二人をはじめ月組の好演でちゃんと芝居が成り立っていたのがなによりでした。(笑)
ただ、話の筋がけっこう地味なので、時折睡魔に襲われそうになったこともありましたが、そこは脇を固めるチャーチル役に芸達者の一樹千尋(私は今の専科ではこの人が最高の役者さんと思っています)を配するなどの効果もあり、なんとか眠らず見終えることができました。(笑)
気の強そうな蒼乃「シンプソン夫人」も魅力的で、よかったです。(笑)
でも私としては、今回の観劇で一番印象に残ったのは芝居ではなくショーでの蒼乃夕紀のダンスでした。
もともと霧やん(霧矢大夢)も力量には定評のあるダンサーですから、二人のデュエットダンスももちろん見応え大アリでしたが、私としてはなんといっても今回は蒼乃夕妃がよかったですね。
ショーでの役名も「孤独な戦士」とか「狩人」などと「男前な娘役」(笑)といわれるだけあって、実に凛々しく、ダイナミックなダンスをみせてくれました。
前回の「アルジェの男」では、タカラヅカでここまでやるか!と思ったほどセクシーなベリーダンスなどを披露していましたが、今回は鮮やかな剣さばき(LED入り)がツボで、剣をくるくると頭上で回したかと思うと、一閃ののちピタッと相手の正面に突きつけるなど、アクロバティックな振りを難なくこなして凄く手練れな剣豪ぶりでした。
この人のダンスは手足の振りのストロークが大きく動きにスピード感があって、なおかつ繊細さがあるので圧巻です。ダンスの凛々しさは娘役をはるかに超えていて、これぞ男役2番手といってもいい活躍ぶりでした。
鈍い私は前回の公演でようやく彼女のダンスの力量に気付いたのですが、もう退団なのが残念です。
最近の娘役では出色のダンス巧者だと思います。
と思ってスカイステージで以前の公演を放送していたので改めて注目して観ましたが、やはり群舞でもはっきり違いが分かりますね。もっとよく見ていたらよかったと後悔しきりの昨日今日です。
ところでこの公演を見た後で、WOWOWシネマで「英国王のスピーチ」を見ました。
こちらは兄王に王位を投げ出されて突然後継者のお鉢が回ってきて王位に就かざるを得なくなったジョージ6世、つまり今のエリザベス女王の父親になる人の話です。
この人は、幼年時代に体験した父親ジョージ5世の厳しい躾のために吃音障害になり、もともと内気な性格だったこともあって、努めて人の前に立つことを避けながら成長してきた人です。
それが兄エドワード8世の突然の退位宣言で「演説が仕事となる」羽目になり、苦悩しながらも吃音障害を克服して王位にふさわしく成長していくというお話です。
このように、宝塚とはまったく対照的な角度から、「シンプソン事件」を描いていて面白かったです。
というか、宝塚がこの映画をヒントに今回の公演を企画したというところでしょうか。
しかしこの映画や宝塚の公演を見ても、同じ王制といっても日本とはえらい違いですね。
近年のチャールズ王子とダイアナ妃の離婚騒動すら日本では絶対ありえない話(あったとしても宮内庁あたりが無理やり抑え込んでウヤムヤにしてしまうでしょう)です。
まして戦前に、バツ2の人妻と公然と不倫関係になり、国王に即位してから、その地位を投げ出してその女性と結婚した!というのですから、日本の皇室と比べたら空前絶後の世界です(笑)。
そういえば、ダイアナ妃の事故死から葬儀に至る時期の英王室の内幕を描いた映画「クィーン」でも、王室の内幕がかなり詳しく描かれていましたね。フィクションもあるでしょうが、情報公開の差を痛感しました。

余談ですが、私が映画「クィーン」で驚いたのは、エリザベス女王が王女時代の大戦中に軍用車両の整備業務に従事していたというエピソードです。
この映画の初めのほうに、英王室として当初ダイアナ元妃の葬儀に関与しない方針を決めて、女王もスコットランドでの休暇を継続し、一人で野遊び中に彼女の運転するランドローバーが川の横断中に故障したため立ち往生する場面が出てきます。
そして女王から故障の連絡を受けた王室関係者?が、女王の状況説明を信用せず素人扱いしたところ、「私は戦争中軍隊で車両整備をしていたから、故障の原因がプロペラシャフトだというくらいわかります。部品と工具さえあれば自分で修理できます。」といった意味の返事(細かいところは記憶違いがあるかもしれません)をしていたのには驚きました。
映画を見たあとで、実際に車両整備だけでなく武器弾薬の管理や、大型の運転免許も取得していたということも知りました。
繰り返しになりますが、英王室の在り様と日本の皇室のそれとでは、あらゆる点で天と地の開きがありますね。日本の皇室の現状は、宮内庁などの官僚機構が前に出てあれこれ干渉しすぎる弊害ではないかと思います。
宝塚の話に戻りますが、昨夜(3月6日)のスカイステージのタカラヅカニュースで、この公演の千秋楽の模様が放送されていました。
千秋楽での私たちの関心は、サヨナラショーの様子もさることながら、もっぱら霧やん(霧矢大夢)と蒼乃夕妃の退団のあいさつがどんなものだったかというところにありました。
まだ東京公演があるにしても、まあ本拠地・大劇場での挨拶が一つの区切りですから、それを聞けばトップ二人の歌劇団での来し方がよくわかると思います。
で、やはりこの二人の挨拶は期待通り良かったです。久々に心に残る挨拶を聞きました。
ニュースでは、同時期に退団する何人かの紹介とあいさつの後、蒼乃夕妃の挨拶の番となりました。
その前の挨拶はみんな最近恒例のパターン挨拶の域を出ず、「今私は本当に幸せ一杯です」というフレーズから始まり、これまで世話になったり・指導してもらったり・支えてくれたり・応援してくれた人達を順に列挙したあと、「宝塚での生活は私の人生の宝物です」・「これからも私らしく歩んでいきます」となって、最後に「すべての皆様に心から感謝の気持ちを込めて、本当にありがとうございましたと締めくくるという、まあかなり聞き飽きたものでした。
最近の退団挨拶はほとんどが程度の差はあれ、このワンパターンのバリエーションばかりなので、正直言ってウンザリ気味です。
そして蒼乃夕妃の挨拶になりましたが、それまでの声を張りあげるセリフの発声法ではなく、穏やかに彼女の地声での語りで始まりました。
そして、これまで舞台でいろんな役を演じてきたが、今初めて「蒼乃夕妃」として話すことができるということから、初めはタカラヅカにたくさんいる娘役の一人だったが、いつのまにか「男前」の娘役と言われるようになり、そのことを彼女自身一時「これでいいのか」と悩んでいたこと、でもそれが自分の個性なのでそれを通すことに踏ん切りがついたこと、そしてなによりも彼女を大きく大きく受け止めてくれた霧矢大夢がいたからこそやってこれた、霧矢大夢の横に立つことができてよかったというようなことを涙をこらえながら語っていました。いや、期待通りのいい挨拶でしたね。
霧やんも肩の力の抜けた、でも心のこもった挨拶で、息の合った二人にふさわしいものでした。
大夢という芸名は、何気なく入った書店で手にした赤ちゃんの名づけ本にあった名前からとったこと、でも最初はそんな大きな夢は持っていなかったことなどを紹介して笑いを誘っていました。
何度目かのカーテンコールでの挨拶で彼女が在団80期生の最後であったこともわかりました。研18ですから、病気のことなどもあったりで結構遅咲きでしたね。(でも、大空祐飛はそれより先輩の78期生なのでさらに遅咲きでしたが)
今まで一番良かった退団挨拶は歌ウマ・安蘭けい&遠野あすかのコンビでしたが、今回の二人の挨拶はそれに匹敵する心のこもったものでした。
月組はこのあと東京公演があります。
まだご覧になられていない方は、ぜひ、この最近随一のダンスウマ・トップ二人の最終公演『エドワード8世』と『Misty Station』を一人でも多く見ていただければと思います。
