
読み終えた。
しょしてー
感動した (T-T)
私は勉強もあって本を毎日読んでいるのですが、エッセイはほとんど読みません。
(ここ1年だと中日ドラゴンズ監督の落合さんによる『采配』を読んだくらいです。)
そんな私をして、あえて言いますが、この仲谷明香『非選抜アイドル』、
数十年の修行を終えた僧侶の言葉のように深みと広がりがあり、
新進気鋭の学者の論説のように鋭く研ぎ澄まされています。
それでいて、嵐の後に虹がかかった空のように希望に溢れています。
これを本当に「なかやん」が書いたのかっ?!
と思ってしまいました。
全国の中高生に推薦図書として配ってよいレベルの内容です。
この本に書いてあることが「素晴らしい」と礼賛したいのではありません。
この本に書いてあるような「物事には多面的な見方がある」ということを学ぶのに、この本が適していると思うのです。
さらに言えば、そのような視点を、現役を引退して人生を達観した仙人のような立場で語るのではなく、現在進行形の20歳が語ることに意味があると思います。
これは外の人間が語った物語ではありません。
中の人間が、今起きていることを、今創られている物語を語っているのです。
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ネタバレしないように語るのはとても難しいのだが、少しだけ内容に触れたい。
この本を読むと、読み手に突きつけられることが幾つかあるが、特に2つに注目したい。
1つは、「努力」には「表の努力」と「裏の努力」がある。
1つは、人生を賢く生きようと思うのは賢くない。
「努力」には「表の努力」と「裏の努力」がある
これは経営学者の藤本隆宏さんの「表の競争力」と「裏の競争力」の応用だ。
努力には、表だって見える努力と、見えない努力があり、その双方ともに重要だ。
「表の努力」とは、外から努力していることが見える努力の形だ。
ルックスにこだわり美容院に行ったり眼鏡をコンタクトに変えたりすること、ボーカルレッスンをして歌唱力が向上すること、レッスンでダンス・パフォーマンスを向上させること、DVDを繰り返し鑑賞してトーク力を磨くこと、などだ。
「裏の努力」とは、外から努力していることが見えない努力の形だ。
わかりにくい概念だが、「努力をするための努力」と言い換えるといいだろう。
「メタ努力」でもいいかもしれない。
上で説明した表の努力と対比して言うのであれば、美容院へ行くために他の用事を早く片付けて時間を作るだとか、レッスンの効果を高めるために睡眠時間をしっかり確保するだと、栄養のある食事をとるように心がけるだとか、集中力を高めるために瞑想をするだとか、人脈を作るために人から話かけられやすいように人の話を真剣に聞くだとか、いろいろな努力がある。
先日のエントリでも書いたが、たとえば一流のスポーツ選手は、練習の仕方も一流なのだ。
仲谷明香は「準備」という形で、この「表の努力」と「裏の努力」を体現している。
準備によって、チャンスを創るのだ。
メンバーもファンもプロを目指そう! アマチュアゆえに。
http://blog.goo.ne.jp/advanced_future/e/f02170772281427e3762bd75f57c937e
人生を賢く生きようと思うのは賢くない
この本を読まずとも、ある程度年齢を重ねればわかると思うが、人生というのは思ったようにはいかない。
良い意味でも、悪い意味でもだ。
人生は不確実性の塊だ。
未来は本質的に予知不能である。
アダム・カヘンは、これを問題の生成的複雑性といった。
どれだけ問題を事前に潰そうと思っても、問題は生成的に発生するのだ。
(問題は生まれてくる)
また、クレイトン・クリステンセンはイノベーションを生み出す組織を作る際には、戦略には「意図的戦略」と「創発的戦略」の2種類があることに注意する必要があると言っている。
どれだけ事前に入念に計画を立案しても、生成的に問題が生まれてくる以上、生成的な対応を取るしかない。
しかし、その生成的な問題こそが、新しい視座を与えてくれる。
新しい発想、新しいやり方、新しい技術が必要になる。
それこそが成長のエンジンだ。
人生を意図した通りにコントロールしようとするのは愚かな生き方だ。
不確実なものをコントロールできようはずがない。
まるで、病一つかからんとして躍起になって生きるようなものだ。
そうではなく、創発的な生き方を選ぶ方がより良い人生を味わうことができるだろう。
QOL(Quality Of Life)こそが重要で、そのために病とうまく付き合っていくのだ。
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以上、ネタバレしないように、精一杯がんばって書評を書いたつもりです。
私は「希望の書」を読むように、この本を読みました。
「非選抜アイドル」は「選抜アイドル」と「陰」と「陽」でありながら、2つで1つなのです。
「非選抜アイドル」なくしてAKB48は成り立たず、「非選抜アイドル」こそがAKB48をAKB48たらしめる重要で不可欠な要素であることを、この本を読んで改めて考えさせられました。
「非選抜アイドル」という書籍名がまた深いとも思います。
AKB48の1つの側面をたまたま「非選抜アイドル」と呼んでるに過ぎないのであって、その本質は「AKB48という新次元のアイドル」なのです。
本当に、若干二十歳の学校も満足に通っていない1人の女の子が書いたものとは思えない、素晴らしい本です。
AKB48に興味のあるなしに関わらず、得るものがきっとあるでしょう。
親世代の人々は子供の教育にもよいかもしれません。
少しでも興味をもたれた方は読んでみることをおススメします。
では、最後にまたこのフレーズを。
僕の目は節穴だ。
だから、みんなにチャンスがある。
仲谷明香も見逃していた。
彼女の才能に
今さらながら
驚いた。
そして、この本を読み終えて、すぐチームBの「初日」を聴いたのは言うまでもありません。