少し前の記事だが、こういう記事を読むと日本との違いが出ていて面白い。
グーグルの最新のデータセンターは非常識なほど進化している(Publickey)
http://www.publickey.jp/blog/09/post_36.html
記事によると、これまでのデータセンターでは、通常は外気と水冷を組み合わせて冷却し、外気温が高いときには冷房装置をさらに稼働させていたそうですが、その冷却装置を持たないデータセンターをグーグルがベルギーで運用開始したとのこと。
この記事では「でももし気候が変わって気温が上がってきたらどうするのか?」と突っ込んだ質問をしていますが、それに対するグーグルの回答はまさに非常識なものでした。データセンターにまたがって負荷を切り替える、というのです。
Google says it will turn off equipment as needed in Belgium and shift computing load to other data centers. This approach is made possible by the scope of the company's global network of data centers,
グーグルの回答は、そのときにはデータセンターの機器をオフにして、負荷をほかのデータセンターに切り替える、というものでした。これは、グローバルにデータセンターをネットワーク化しているグーグルだから可能なことです。
つまりサーバが熱くなったら冷房で冷やすのではなくて、単にスイッチを切って冷めるのを待つというのです。そこまでして冷房を節約することにグーグルはこだわっているのですね。
グーグルは5月に「The Datacenter as a Computer: An Introduction to the Design of Warehouse-Scale Machines (PDF)」という論文を発表していますが、この表題のように、まるで故障時にサーバを切り替えるようにデータセンターを切り替える、というスケールの大きさには圧倒されそうです。
しかもこの話には続きがあり、この記事ではさらに驚くべき考えが紹介されています。それは「月を追いかける(follow the moon)データセンター」というコンセプトです。
夜間は外気温も低く、また電気料金も安くなっています。そこで、世界中のデータセンターのうち、夜になっている地域のデータセンターだけを稼働させれば、低い外気温を活用でき、しかも夜間の安い電気料金を利用できます。これはクラウド技術者のあいだで議論されている構想ですが、グローバルにデータセンターを展開し、その負荷をダイナミックに切り替えられるグーグルであればそれを実現可能かもしれない
普通、データセンターには大量のサーバが設置されているので大規模な冷却システムを備えるものだが、工夫を凝らせば冷却システムを整えなくても済む。という話。
当然、データセンター毎切り替えるとなると、その分、処理能力に余剰が必要となるので、冷却システムにかかるコストと、データセンターを余分に持つコストと、どちらの費用対効果が勝るのかという話になる。
グーグルが後者を取るということは、冷却システムの方がコスト高だということなのだろう。
それともう一つの視点として、データセンターは大規模になると必要な電力量が大きくて、その電力需要を満たせる地域でないと建設できない問題がある。
安定した大規模な電力供給が必要なのだ。
その点、データセンター毎切り替える方式であれば、建設地の自由度が広がる。
だが、これが日本の場合、ちょっと変わる。
まず、データセンターは十分な耐震強度や冷却能力が備わっていなければならないと考える。
抜けのない管理体制もだ。
データを格納する「データセンター」の管理が万全でなければならないと考えるので、コストが高まり、それに従って料金も高くなり、顧客は増えない。
顧客が増えないとサービスの質は高まらず、またビジネス規模も発展しない。
一方、グーグル的観点に立つと、管理が万全であればよいのは「システム」全体であって、「データセンター」ではない。
システム全体でサービスが保証されればよいのであって、そのためのコストが低い方法を選べばいいのだ。
このあたりの発想の違いになんとも日米の差がわかりやすく出ている。
ただ、日本の場合、何か問題があると「データセンターの管理を怠った」などといって叩かれるため、経営者としてはコスト高だとわかっていても、データセンターに重きを置かずにはいられない。
前に当Blogでも述べたが、日本は入力ばかりが重要視されて、出力についてあまり目が行かないのである。
入力を揃えるということが重要で、出力がどうであったかは評価されない。
形式主義もこの一環なのである。
(それが最適であった環境があったからなのだが、ここでは説明は繰り返さない。)
で、ここまでは過去にも述べたことであるが、続きを少し語りたい。
入力と出力の認識に関する違いがどういうところに表れるかというと、「プロセスの創造性」に表れる。
どういうことかというと、入力偏重主義というのは、出力を入力によって制御しようとする試みである。
それに対して、出力に比重を置くと、入力だけでなくプロセスによって制御しようとするのだ。
入力を整えることではなく、プロセスを変える、既存のプロセスではない新しいプロセスを開発するという動きの違いになって表れる。
「プロセスの創造」である。
常識を変え、ルールを変え、やり方を変えるということだ。
組織論を語る上では、この柔軟性が非常に重要になる。
なぜ日本的組織がこの罠にはまり込んでしまうかであるが、それは日本的組織があまりにも環境に適応しようとしてしまうから、適応できてしまうからである。
日本的組織は適応能力が非常に高いが、構造変化に弱い。
適応し切ると組織は硬直化して柔軟性を失う。
だから、組織を進化させたいと思うなら、常に組織を適応しきらない状況に置かねばならない。ありがちな方法は、常に危機感を植えつけることであるが、より本質的な方法は、常に組織をオープンにすることである。
ちょっと時間がないのでここまで。
続きはまた今度。
グーグルの最新のデータセンターは非常識なほど進化している(Publickey)
http://www.publickey.jp/blog/09/post_36.html
記事によると、これまでのデータセンターでは、通常は外気と水冷を組み合わせて冷却し、外気温が高いときには冷房装置をさらに稼働させていたそうですが、その冷却装置を持たないデータセンターをグーグルがベルギーで運用開始したとのこと。
この記事では「でももし気候が変わって気温が上がってきたらどうするのか?」と突っ込んだ質問をしていますが、それに対するグーグルの回答はまさに非常識なものでした。データセンターにまたがって負荷を切り替える、というのです。
Google says it will turn off equipment as needed in Belgium and shift computing load to other data centers. This approach is made possible by the scope of the company's global network of data centers,
グーグルの回答は、そのときにはデータセンターの機器をオフにして、負荷をほかのデータセンターに切り替える、というものでした。これは、グローバルにデータセンターをネットワーク化しているグーグルだから可能なことです。
つまりサーバが熱くなったら冷房で冷やすのではなくて、単にスイッチを切って冷めるのを待つというのです。そこまでして冷房を節約することにグーグルはこだわっているのですね。
グーグルは5月に「The Datacenter as a Computer: An Introduction to the Design of Warehouse-Scale Machines (PDF)」という論文を発表していますが、この表題のように、まるで故障時にサーバを切り替えるようにデータセンターを切り替える、というスケールの大きさには圧倒されそうです。
しかもこの話には続きがあり、この記事ではさらに驚くべき考えが紹介されています。それは「月を追いかける(follow the moon)データセンター」というコンセプトです。
夜間は外気温も低く、また電気料金も安くなっています。そこで、世界中のデータセンターのうち、夜になっている地域のデータセンターだけを稼働させれば、低い外気温を活用でき、しかも夜間の安い電気料金を利用できます。これはクラウド技術者のあいだで議論されている構想ですが、グローバルにデータセンターを展開し、その負荷をダイナミックに切り替えられるグーグルであればそれを実現可能かもしれない
普通、データセンターには大量のサーバが設置されているので大規模な冷却システムを備えるものだが、工夫を凝らせば冷却システムを整えなくても済む。という話。
当然、データセンター毎切り替えるとなると、その分、処理能力に余剰が必要となるので、冷却システムにかかるコストと、データセンターを余分に持つコストと、どちらの費用対効果が勝るのかという話になる。
グーグルが後者を取るということは、冷却システムの方がコスト高だということなのだろう。
それともう一つの視点として、データセンターは大規模になると必要な電力量が大きくて、その電力需要を満たせる地域でないと建設できない問題がある。
安定した大規模な電力供給が必要なのだ。
その点、データセンター毎切り替える方式であれば、建設地の自由度が広がる。
だが、これが日本の場合、ちょっと変わる。
まず、データセンターは十分な耐震強度や冷却能力が備わっていなければならないと考える。
抜けのない管理体制もだ。
データを格納する「データセンター」の管理が万全でなければならないと考えるので、コストが高まり、それに従って料金も高くなり、顧客は増えない。
顧客が増えないとサービスの質は高まらず、またビジネス規模も発展しない。
一方、グーグル的観点に立つと、管理が万全であればよいのは「システム」全体であって、「データセンター」ではない。
システム全体でサービスが保証されればよいのであって、そのためのコストが低い方法を選べばいいのだ。
このあたりの発想の違いになんとも日米の差がわかりやすく出ている。
ただ、日本の場合、何か問題があると「データセンターの管理を怠った」などといって叩かれるため、経営者としてはコスト高だとわかっていても、データセンターに重きを置かずにはいられない。
前に当Blogでも述べたが、日本は入力ばかりが重要視されて、出力についてあまり目が行かないのである。
入力を揃えるということが重要で、出力がどうであったかは評価されない。
形式主義もこの一環なのである。
(それが最適であった環境があったからなのだが、ここでは説明は繰り返さない。)
で、ここまでは過去にも述べたことであるが、続きを少し語りたい。
入力と出力の認識に関する違いがどういうところに表れるかというと、「プロセスの創造性」に表れる。
どういうことかというと、入力偏重主義というのは、出力を入力によって制御しようとする試みである。
それに対して、出力に比重を置くと、入力だけでなくプロセスによって制御しようとするのだ。
入力を整えることではなく、プロセスを変える、既存のプロセスではない新しいプロセスを開発するという動きの違いになって表れる。
「プロセスの創造」である。
常識を変え、ルールを変え、やり方を変えるということだ。
組織論を語る上では、この柔軟性が非常に重要になる。
なぜ日本的組織がこの罠にはまり込んでしまうかであるが、それは日本的組織があまりにも環境に適応しようとしてしまうから、適応できてしまうからである。
日本的組織は適応能力が非常に高いが、構造変化に弱い。
適応し切ると組織は硬直化して柔軟性を失う。
だから、組織を進化させたいと思うなら、常に組織を適応しきらない状況に置かねばならない。ありがちな方法は、常に危機感を植えつけることであるが、より本質的な方法は、常に組織をオープンにすることである。
ちょっと時間がないのでここまで。
続きはまた今度。