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進化する魂

フリートーク
AKB48が中心。
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ジブリ映画の真髄

2010-03-08 16:24:26 | 哲学・思想
どこかで既になされた話とは思いますが、抜けがちな視点だと思います

最近、我が家ではジブリ映画のヘビーローテーションが行われており、少し疲れている。
(ほんと「肉も食いたきゃ魚も食いたい」状態)

ジブリ映画の素晴らしさは、歳をとってこそわかるのだが、しかし、私はジブリの映画を見ていると、どうしても宮崎駿の趣味(大人的というかオタク的男的な子供感)を感じぜずにはいられず、どこか気持ち悪さが残る。
いや、それこそがジブリ映画のコア・コンピタンスでもあるのだが、非常に日本人特有の感覚に依拠している部分でもあると考える。
以前、内田樹が「(宮崎駿氏自身の発言として)宮崎アニメは日本の人口が1億人を超えたから成立したものだ。」という類のコメントをしていたが、それがヘビーローテーションを経ることで、私にもようやく理解できた。

世界的アニメーション・スタジオといえばピクサーがある。
「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」、「ファインディング・ニモ」など、世界的ヒットを飛ばしている。
ピクサーとジブリのつながり事ある毎に強調されるが、両者が作る映画は全く違う。

この違いに対する認識は、現在の日本のあらゆる議論から徹底的に欠けている認識の一つなので、少し時間をかけて説明しよう。

ピクサーがなぜ世界的に支持されるのか?

この問いに対する答えには、人それぞれ意見があるだろう。
アニメーション技術、マーケティング、プロモーション、ブランド、etc...
私は上記のどれでもなく、「ストーリー」にあると断言しよう。
(いや、もちろんストーリーだけじゃだめですよ。面倒だから説明省くけど)

「ストーリー」というのは「話が面白い」という意味ではない。
「誰にでも話がわかりやすい。」ということだ。
ピクサーが優れているのは「誰にでも、しかも世界中で、瞬時に理解できるストーリーをを構想できる力」である。

一方、ジブリはどうだろうか。
ジブリの初期の作品である「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」は傑作の誉れ高く、根強い人気ながらも、実はジブリ作品にとって異色な作品である。
私が考えるに、これはジブリが一流スタジオとして認知されるために作った試作のようなもので、本来作りたかったものとは違うだろう。
だから最初の2作は、実にジブリらしくない作品になっている。

では、「ジブリらしさ」とは何であろうか。

それは「叙述的であること」である。
ここでいう叙述とは、「見ている人に物語を強要しない」ということ、ジブリ映画の特徴はこの一点にあるといっていい。
もっとわかりやすくいえば「正義が悪を倒す」とか「誰かを救う」とか、「努力の結果、勝利すること」、こういったことを物語の中心には据えず、「誰かのある物語をただ述べること」に徹しているのだ。

どう解釈するかは、見ている人が決めればいい。
映画としてわかりきった答えは用意しない。

ピクサーのようにストーリーの終盤にあるであろうハイライトに向かって盛り上げていって「ハラハラドキドキ」といったインパクトを与えるためには、見ている人をストーリーに入り込ませなければならない。
その時に必要になるのが「話のわかりやすさ」である。
「わかりやすさ」というのは「AならB」という合理性(論理)が用意されているということだ。

「世界共通のわかりやすさ」を追求するためには、「論理」が非常に重要である。
なぜなら、世界中の人間が文化や情緒を共有するのは非常に難しいからだ。
わかりやすいストーリーを作るためには、「AならB」、「BならC」ということは「AならCだ」というような展開で構成される必要がある。
だから、ピクサーのように世界的ヒットを生み出すためには、「わかりやすい」ことが非常に重要であるが、日本市場だけでペイできるのならば、ジブリのように日本人の肌感覚に訴えかける叙述手法が成立できる。
これが「日本の人口が1億人を超えたからジブリ映画ができる」の本意であり、それを宮崎駿本人が認識しているという点に、改めてジブリのマーケティング深度を知るのである。

最近のマーケティングではことさら「わかりやすい=良いこと」のような風潮があるが、実はそうではない領域もまたあるということを認識すべきだ。
「ものづくり神話」が崩壊しつつある日本において、サービスの高付加価値化、「ユーザ体験価値」なるものを持てはやす風潮もある。
「ユーザ体験」が指し示す意味が、狭義のものとならぬことを、願うばかりである。


ジブリの映画は、見ている人に物語を強要しないから、見ている人は疲れない。
我が家でジブリ・ローテーションが組まれる前は、実はピクサー・ローテーションが組まれていたのだが、日本的家庭の我が家では、ピクサーはジブリに圧倒されてしまった。

ナウシカやラピュタは面白いのだが、2回、3回と見てられない。
その点、トトロや千と千尋、ポニョはすごいのである。

ジブリ、恐るべし。