粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

ピアノと管楽器のための五重奏曲

2013-12-20 21:44:26 | 音楽

自分の勝手で恐縮だが、たまには好きな音楽について書いてみたい。モーツアルトの隠れた名曲の一つに「ピアノと管楽器のための五重奏曲(K.452)」という長たらしいタイトルの曲がある。ピアノと四つの管楽器オーボエ、クラリネット、ホルン、ファッゴットによる五重奏曲だ。

このうち管楽器四つは、クラシック音楽の基本ともいえる楽器で、それぞれが独特の音色と味わいがある。どこか鼻にかかって鮮明で澄んだ響きのオーボエ、人間の秘めた感情が伝わってくるクラリネット、心からの叫びのようなホルン、とぼけた感じがあって親しみやすいファゴット。そして、旋律、リズム、ハーモニーが明快なピアノがこれら管楽器をリードしていく。

とはいっても、ピアノを含めた全ての楽器がそれぞれ独奏部分を与えられていて、全てが主役、ソロになりうるし、また他楽器を引き立てる脇役、オーケストラにもなる。

この曲が初演されたときモーツアルトはピアノを演奏しているが、他の管楽器奏者は皆日頃親しい仲間同士であり。それぞれが当時その楽器の名手であった。この曲を聴くと当時のモーツアルトの親密な交遊を思い出される。お互いを尊重しあい、音楽を通じて深い絆で繋がっている。

この曲が創られたのはモーツアルトが28歳(享年35歳)の時であったが、彼が父に宛てた手紙には「私自身これまでの作品の中で、この曲を最高のものだと思います」とまで書いている。まさに自信作、名曲と言える。

35年の短い音楽家の人生で晩年は借金苦で不遇な最期を迎えたモーツアルトであったが、この当時は音楽の都ウィーンで彼の音楽が愛され絶頂期であったといえる。その後は彼の芸術性がさらに深化して時代を飛び越えていく。

そんな幸せな時代の傑作で全体的に明るさに満ちているが、モーツアルト特有の寂しさが感じられる。それが単に楽しいだけでなく、何か心の琴線に深く触れて離さない。美しい天上と現世の哀しみが交錯する天才の音楽といえる。