粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

引っかかる言葉

2013-12-03 13:53:58 | 一般

今年の流行語大賞は、「倍返し」「おもてなし」「今でしょ」「じぇじぇじぇ」の4つが選ばれた。自分自身は冒頭に挙げた順番で印象度が高い。あまり、NHKの朝のドラマは見ていなかったからちょっとピンと来ない。半沢直樹のドラマは好きで毎週見ていて、自分のブログでも引用したことがあった。

ところで、テレビなどで発せられる言葉で最近ちょっと引っかかる言葉がいくつかある。ひとつは「温度差」という言葉だ。この言葉はテレビの出演者でも記者や評論家などインテリ層でよく聞かれるが、なぜか好きになれない。これに関しては、最近武田邦彦中部大学教授も指摘している。教授は、そのブログで「認識の違い」などが適当ではないかとしているが、確かにそうだ。

武田教授に対しては、日頃原発問題で意見を異にすることが多いが、それ以外ではたまに100年の友?のように共鳴することがある。今回のブログでは中心は東京裁判や環境破壊に関することだった。環境破壊については異議があるものの、東京裁判を教授が「東京リンチ」とすべきだとする考え方には同意する。

「温度差」については一つの例えとして挙げているだけだが、なかなか的を射ている。「適当な言葉がなければ見当はずれの言葉を使うのが今の新聞記者です」という指摘には納得がいく。

どこかシャレた響きがあるが、事の本質が曖昧にしている感じがする。意見や感情の対立している現実があるのに、その具体的分析を怠って都合の良い「温度差」という言葉で済ませる安易さを感じる。例えは悪いが、売春を「援助交際」と置き換えるようなものではないか。

一つ目とは全く関連性はないが、二つ目の引っかかる言葉は、地図で方角を示す表現だ。具体的には東西南北の方角を右側、左側、下、上、」と呼ぶ言い方だ。これは主に文章よりも口述の場合がほとんどだ。普通のタレントが使うのはやむを得ないとしても、会話のプロというべきアナウンサーが使うのには興醒めする。

高校時代、地理の成績は芳しくなかったが、地理教師から注意されたことを今でもよく覚えている。「地理で地図に関して上とか右側という言葉は絶対禁句だ」と。その戒めが40年過ぎた今でもある種トラウマとして残っている。だから、テレビでその禁句がたまたま飛び出すと強い抵抗感を覚えてしまう。

ただ方角ではなくて同じ「位置」を示す言葉で今では笑い話になってしまう経験がある。学生時代、アルバイトをしていた時にそこの社長と同乗したことがあった。その社長は運転席のガソリンメーターを見たとき、「もうすぐガス欠になる。針がエンドの近くになっている」と言った。

その後わかったのだが、この社長、メーターのFとEをファースト(first・最初)とエンド(end・終わり)だと勝手に思い込んでいたようだ。もちろん正確にはフル(full・満杯)エンプティ(empty・空)となるのだが、一代で会社を築きあげた社長の自信ありげな物言いに圧倒されて敢えてこちらから口を挟むことはできなかった。愛すべき社長でその後は会っていないがどうしているだろうか。