ドランクモンキー 酔拳(Drunken Master)は、1978年製作の香港映画。日本での公開は翌1979年で、日本にジャッキー・チェンを知らしめた一作。
当時、ロー・ウェイのプロダクションと専属契約していたジャッキーが、呉思遠(ン・シーユェン)のプロダクションにレンタル契約で出向して作られた作品のうちの一本。もう一本は、初期ジャッキー作品としては酔拳とならぶ有名作である蛇拳。監督は、マトリックスなどの武術指導としても知られる袁和平(ユエン・ウーピン)で、彼は赤鼻のお師匠さん袁小田(ユエン・シャオティエン)の実の息子でもある。この作品の前までのジャッキーは、敵討ちものなどを典型とした昔からある古いタイプのカンフー映画を作っていて、知名度もそれほどではなかった。蛇拳でシリアスな展開の中にコミカルな要素を混ぜたところ受けがよく、映画もヒットしたため、続編としてよりコミカルな要素を増やしほぼ同じスタッフで作られたのが、この酔拳である。日本では、香港で評判になっていたジャッキーの映画を買い付けた映画会社が、同時に買った3本の内の出来が良く面白いものから公開したため、酔拳→蛇拳と公開順序が異なっている。日本でもこの作品で一躍有名となり、次々とジャッキー映画が公開されるようになった。
過去に何度もVHSやDVD化されているが、これは最近のソニーピクチャーズから出ているバージョン。ディアゴスティーニの隔週刊ジャッキー・チェンでも第一弾プロジェクトAに続いて、第二弾に選ばれている。
あの一度聞いたら忘れられない、いかにも中国っぽい曲“将軍令”(黄飛鴻のテーマ)が流れ出しそうなポーズ。この楽曲は中国では有名な曲で、一般にも親しまれているらしい。
この作品の中で、ジャッキーは若き日の黄飛鴻(ウォン・フェィフォン)を演じている。この人は、中国では歴史的に有名な英雄でジェット・リーなども彼を主題にした作品を作っている。ただ、この映画では設定は完全にオリジナルで、映画内でのジャッキーは有名なカンフー道場のどら息子といった役柄になっている。親父が有名なカンフーの師範で、お調子者で自身も多少腕が立つことから、好き勝手をやって生活している。そこで、ジャッキーの親父は息子の性根を入れ替えて鍛えなおしてもらうために、カンフーの達人である蘇化子に弟子入りさせることにした。しかし、根っからのお調子者であるジャッキーは、カンフーの修行もそこそこに途中で逃げ出してしまう。そこに、カンフーの達人で殺し屋の鉄心が現われて、ジャッキーはぼこぼこにされてしまい、股の下をくぐらされるという屈辱を味わう。そこで、心を入れ替えて蘇化子の元に戻り、カンフーの修行に励み始めるジャッキーであったが・・・。
お調子者の主人公がいて、そこに仙人のような老子が現われ、その老子の元でカンフーの修行を積んで、強敵を倒すという、これ以降お約束となった、カンフー映画の教科書のような作品です。このお調子者の若者と老師匠というモチーフは、この後の漫画やゲームなどで散々使われることになりました。
赤鼻のお師匠さん蘇化子を演じた袁小田(ユエン・シャオティエン)。すごく印象が強いのは、蛇拳でも同じようなお師匠さんを演じているから。蘇化子とは、実在の人物で酔拳の創始者の一人らしい。ちなみに袁小田(ユエン・シャオティエン)さんは、酔拳の後78年に癌で亡くなられている。
酔拳の前に作られた蛇拳。日本では、酔拳がヒットした後でジャッキー映画の第二弾として公開された。この後、ジャッキー・チェンの映画は、プロジェクトAくらいまでは、昔の古い作品でも何でも○○拳という邦題を付けられて、新たにジャッキーの新作として公開されていく。
ただ手を動かすだけで、ボッボッボボボボボと風きり音が効果音として入る。当時は、カンフーの達人になるとこんな音が出せるようになると思っていた。また、空手やボクシングの様に一撃一撃が当たるのではなく、身のこなしで避けたり、手で受けたりして、流れるように連続して続く殺陣が演出されていた。これで、カンフーというものが神秘的で特別な技に見えた。この後のプロジェクトA以降では、風きり音もなく、マーシャルアーツの試合の様な普通の殺陣になっていた。
こちらは、ちょっと古いVHS版の酔拳。
この頃のゴールデン洋画劇場などでも、ジャッキー・チェンの映画はよく放送されていた。ジャッキー映画があった次の日の学校では、口でボボボボボと風きり音を出しながら、カンフーごっこをやっていた。酔えば酔うほど強くなるとは、当時の有名な映画のコピー。
若き日の輝かんばかりのジャッキーチェン。この当時は、香港返還前だったので台湾などでもロケをしていたようで、今見ると日差しが強くて画面が非常に明るい。ジャッキーもコミカルカンフーという新しい活路を見出したためか、映画全体から楽しさが溢れ出している。
カンフーを習いたかったが、この頃の田舎では空手しかやっていなかった。そのため、少林寺拳法を習いに行った。そのうち、ジェット・リー主演の少林寺という映画も公開されて、カンフーブームがやってきた。70年代のブルース・リーや空手バカ一代は直撃世代ではなかったので、このコミカルなカンフーというものがとても新しく感じた。
単に戦うだけでなく、椅子や机、お椀や箸など小物の使い方も上手かった。普通では、武器ではない日用品を上手に使用して、殺陣の中に組み込んでいた。ジャッキー映画に影響を受けた、武田鉄也の刑事物語でもハンガーヌンチャクが話題となった。
ということで、80年代ジャッキー直撃世代には、永遠のカンフー映画ドランクモンキー 酔拳(Drunken Master)でした。
Wiki 酔拳、ドランクモンキー酔拳、スネーキ-モンキー蛇拳、袁和平(ユエン・ウーピン)、袁小田(ユエン・シャオティエン)、黄飛鴻(ウォン・フェィフォン)の項、隔週刊 ジャッキーチェンDVDコレクション公式HP、ジャッキー・チェンを語れ
それまでのカンフー映画はブルース・リーのようなシリアス物しかないと思っていたので、酔拳は衝撃的でした。このパターンの映画で印象に残っているのは、この酔拳とベスト・キッドぐらいでしょうか。