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天然コケッコー・アスミックエース/集英社/角川エンターテイメント

2014-08-09 02:04:44 | 映画・DVD・CD

 天然コケッコー(A Gentle Breeze in the Village)は、2007年に製作された青春映画。原作は、1994年から2000年にかけて漫画雑誌コーラス/集英社に連載されたくらもちふさこさんによる同名漫画。


 小学校と中学校が同じ校舎にあり、両方あわせても6人しかいない田舎の分校を舞台に、そこに都会から越してきた転校生と主人公そよの交流を描く。原作では、高校に舞台を移して以降も物語は続いているが、映画ではそよの中学2年の夏から高校入学までを映像化している。物語の舞台となるのはS県香取郡木村稲垣という架空の村で、主人公が通う分校は木村小学校・中学校となるが、原作者の田舎である島根県をモデルとしており、映画でも実際に島根でロケが行われている。


 監督は、リンダ リンダ リンダで知られる山下敦弘監督。そよ役にこれが映画初主演となる夏帆さん、東京からの転校生の広海役に岡田将生さんが配役されている。120分という長い映画だが、特に大きな出来事が起こるわけではなく、田舎の日常生活の中の小さなエピソードが積み重ねられていくという構成をとっている。キャッチコピーは、そよがラスト近くで呟くせりふ“もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やあ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう”。


 この映画のもうひとつの主役ともいえるのが子供たち。実際は、全員都会の子役たちだそうだが、なんともいえないよい味をだしている。夏休みに分校のみんなで海に行くエピソードがあり、その通り道には自殺者が出たと噂される古びた橋があって、主人公たちは線路際を歩いて海へと向かう。そこには少女版の少年時代や少女版のスタンド・バイ・ミーみたいな趣がある。すいかやお祭り(夏ではないが)、海水浴など、夏休みの定番イベントがもれなく収められている。


 そよを演じた夏帆さんは、このとき15歳。実際は東京出身だそうだが、田舎の素朴な子をごく自然に演じている。
 

 大沢広海役の岡田将生さんは、この時17歳。そのため田舎の中学生にしては、ずいぶん大人びて見える。田舎の中学生なんて、実際にはもっと落ち着きがなくてもっと子供だとは思うが。少女漫画の王子様キャラという意味では適役なのだろう。


 脇を固める大人たちには、そよの父親役に佐藤浩市さん、母親役に夏川結衣さん。父親の不倫疑惑など、大人たちのエピソードも入るのだが、それも大事件には発展しない。ただ、子供が6人しかいない田舎の村だと高齢化が相当進んでいると思われるが、田舎の風景の中にもそれらはほとんど描かれない。田舎の風景、役者さんたちも含めて、あまりにも綺麗過ぎるという気はする。


 表のテーマとしては、そよと広海の恋愛を描いているが、美しい田舎の自然の風景と何もおこらない田舎の日常がもうひとつのテーマとして置かれている。そよは、広海が暮らしていた東京に憧れはするが、田舎での生活に愛着を持っている。そして将来の夢は、この分校に戻り先生となること。ただ、学校の最年少は1年生のさっちゃん1人で、村にはその後子供が生まれていない。“もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やあ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう”というせりふに表現されている、いずれは終わってしまう貴重な時間の儚さも見え隠れしている。


 この作品、アマゾンや映画サイトでの評価は星★★★★くらいで、2007年度の日本アカデミー賞(主演女優賞)、報知映画賞(監督賞、新人賞)、毎日映画コンクール(最優秀賞、脚本賞、音楽賞)、キネ旬報2位など、数々の賞を受賞している。ということで、個人的なお勧め度は星★★★★+☆(星半分)。


 綺麗な田舎町の風景と、どこか懐かしい夏休みを描いた、新しい夏の定番映画としてもお勧め。



参考:Wiki 天然コケッコーの項、天然コケッコー公式サイト、しまね観光ナビ


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